婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

第79話 正体がバレそう！？（２）

「私が魔力の質に関して間違ったことはないのだが……」
「きっと気のせいです」
「…………分かりました。――では、エミさんには王宮までお越しいただくことは可能でしょうか？」
「不可能です」
「……理由をお聞きしても？」
「人見知りですので」

　私の態度に深く溜息をつくパールさん。

「エミ、どうしたんだ？　パール様は、私よりも上の爵位を持つ方だぞ？」
「ロドリア様。私は、王宮に出向けるほど、身分は高くありません。つまり、そういうことなのです」
「――だが、パール様が同行して欲しいと」
「分かりました。じつは、村の掟で、王宮に行くと死んでしまう呪いに罹っているのです」
「なん……だと……！？」

　のけ反るロドリアさん。
　
「ふむ。王宮に行くと死ぬ呪いか。それは、王族と会っても駄目ということか？」
「その通りです。パール様」

　私の言葉に苦笑いのパールさん。
　
「分かった。では無理強いすることはできないな」
「ご理解いただけまして幸いです」
「それは残念だな」

　パールさんは、渋々と納得してくれて、ロドリアさんも上司の方が折れたことで、了承してくれた。

「パール様、ロドリア様。私達は、これで失礼します」
「ああ、また何かあったらよろしく頼む」
「はい。ロドリア様」

　挨拶を交わし、アネットさん、ユーリエさんと共に、迷宮前から移動する。
　しばらく歩き、大通りに出る手前まで来たところで徐々に人通りが増えていく。

「エミ」
「何でしょうか？」
「さっき、近衛騎士団長のパールって言うのが、エミの事をアマーリエと勘違いしていたな」
「そうですね」

　私は、表情を取り繕いながらアネットさんの問いかけに相槌を打つ。

「それにしても、団長さんはエミの魔力の質がアマーリエって人物と似とるって言っとらへんかった？」
「そんな事を言っていましたね」

　ユーリエさんが、鋭い指摘をしてくる。

「そういえば、以前、入国審査の時にエミと瓜二つの隣国の次期王妃の似顔絵があれへんかった？」
「そんな事がありましたね。でも、この世界には同じ顔の人が3人いると、私の村では言われていましたから」
「なるほど……」
「そか」

　二人とも、私の言い訳に納得したのか頷く。
　これで何とか誤魔化せたと見ていいかな？
　それからしばらく歩き、冒険者ギルドに到着。
　クエストが終わったことを報告したあとは、金貨を報酬としてもらう。
　獲得したアイテムや砂金などについては、後日、追加報酬としてもらえるようなので、その報酬を貰うまでは、報酬の金貨10枚で何とか暮らしていくしかない。
　金貨10枚と言っても日本円で言う所の10万円ほどはあるので当分は大丈夫だけど、しばらくは、一人で出来る仕事をしてお金を稼ぐとしましょうか。