上 下
68 / 105

第68話 キルワ王国のダンジョン探索(23)

しおりを挟む
「それは残念だな」

 ロドリアさんが心底残念そうな表情で呟くと、目視警戒を怠らないようにと先を進んでいた騎士の方々へと指示を出す。
 それから、しばらくは、私の索敵魔法にも引っかかる事もなく、1階層とも呼べる広場に到着する。
 広場からは、空が見えていて見上げると雲の流れも確認できた。

「ダンジョンというのは、こういうモノなのですか?」
「そないなことないねん。普通は洞窟みたいになっていて、階段でフロア間を移動するのが普通やねん」
「そうなのですか」

 ダンジョンには魔物や宝があると本では読んだ事がありますけど、つまり、ここの迷宮は普通とは違うと……。

「前回と同じ道を通るぞ」
「分かりました」

 ロドリアさんの指示で、騎士の方々が歩き出す。
 それは広場に幾つも空いている通路の一つ。
 以前に掛ったトラップの通路なら、注意深く進めば攻略できるという考えなのかも知れない。
 通路の高さは3メートルほどで、横幅は5メートル程度。
 長い槍を所持していた場合、戦いに制限が掛かるかもしれない。

 先を進んでいる騎士の方々が、慎重に歩みを進めていき――10メートルほど進んだところで、私の索敵魔法に反応があった。

「ロドリア様」
「何だ?」
「あそこの通路から先は全てに転移系のトラップ魔法が仕掛けられています」
「何!? 全部にか?」
「はい。壁、天井、床に至るまで全てに転移系の魔力が確認できます」

 私は、自身の索敵魔法で確認した領域から先に小石を投げる。
 すると10秒ほど経過してから小石は、瞬時に消える。
 
「消えたぞ? これが転移魔法だったのか……」

 先を進んでいた騎士の一人がポツリと呟く。
 その顔色はあまりよくないと思う。

「どうしますか? ロドリア様」
「……別の通路を探すしかないだろう?」
「分かりました」

 広場まで戻ったあと、私達は幾つかの通路を確認していく。
 その都度、私の索敵魔法に反応があり、一つずつ通路を潰していき――。

「ここの通路にはトラップらしきものはありません」

 運が悪いのか最後の通路でようやく当たり? を引き、先に進むことが出来た。
 しばらく進むと、再度、索敵魔法に反応があり。

「(ユーリエさん。100メートル先にオーガがいます)」

 小声で、ユーリエさんに魔物が居る事を告げる。
 ユーリエさんは、小さくコクリと頷くと、私が作成した弓を引き絞り、鋼鉄製の矢を暗闇に向かって放つ。
 鋼鉄製の矢は、先行していた騎士団の横をすり抜けると凄まじい速度で迷宮内を直進したと思うと、何かの魔物の断末魔が聞こえてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~

芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。 案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが 思うのはただ一つ 「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」 そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。 エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず 攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。 そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。 自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する これは異世界におけるスローライフが出来る? 希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。 だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証? もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ! ※場所が正道院で女性中心のお話です ※小説家になろう! カクヨムにも掲載中

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』 *書籍発売中です 彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?! 王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。 しかも、私……ざまぁ対象!! ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!! ※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。 感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。

「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。 「あなたこそが聖女です」 「あなたは俺の領地で保護します」 「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」 こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。 やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...