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第60話 キルワ王国のダンジョン探索(15)
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「エミにそっくりだな」
テーブルの上に広げられた似顔絵を少し離れた所から見ていたアネットさんがポツリと呟く。
それに同意するかのように。
「ほんまや、そっくりやね」
アネットさんの横で壁の華となっていたユーリエさんも頷きながら言葉を漏らす。
「そういうことだ。――で、君はこれをどう思うのかね?」
「気のせいだと思います」
私の答えに、額に手を当てながら溜息で応じてくるネルガンさん。
それと共に、身を乗り出すようにして口を開けるブレイズさん。
「エミ君、君は本当に何も知らないと言うのか?」
「はい。私には何のことか……」
あくまでもシラを切ることにする。
「この似顔絵には、黒髪・黒瞳という特徴が記載されている。その事に関して、君はどう思うのかね?」
「さあ? 私は、魔法を全力で使用する時だけ体質がほんの少しだけ変わるという特徴がありますので。実際に、いまの私は金髪碧眼だと思いますが? その隣国の次期王妃という方が、黒髪に黒瞳でしたら、常時魔法を全力で使用していたという事ですよね? そんな事をする必要性が次期王妃の方にあるとは私には思えないのですが?」
「つまり、エミ君の黒髪と黒瞳に変化したというのは、あくまでも魔法を使った際の特性と言いたい訳か?」
「そうなります」
副ギルドマスターのブレイズさんの言葉に私は答える。
簡単に言うのなら、私の普段の姿はあくまでも金髪碧眼と言うこと。
そこは譲れない。
「……エミ君」
「何でしょうか?」
私とブレイズさんとの会話を、ブレイズさんの横で聞いていたネルガンさんが重々しく口を開く。
「君は知らないと思うが、君が冒険者ギルドカードを作ったのはセルトラ王国の王都だという事は既に判明している」
「そうなのですか?」
冒険者ギルドカードは、金属製の板に文字が書かれた古典的なモノで、私は冒険者ギルドカードが何処で発行されたモノかまでは判別がついていない。
なので、そういう切り口をされてしまうと、否定ができない。
否定をしたあとで、証拠を出されてしまうと言質を取られてしまう可能性があるから。
「うむ。冒険者ギルドカードには、偽造防止を含めて、所持している冒険者が、どこの冒険者ギルドで発行したのかが記載されている。もちろん、発行日もな」
「……そうですか。それで、それが何か問題が?」
あくまでも私は無関係ですよ? と、答えておく。
そんな私の様子に、冒険者ギルドマスターのネルガンさんは、似顔絵に書かれている私が失踪した日を指差す。
「エミ君。セルトラ王国の次期王妃であるアマーリエ・フォン・オイレンブルグが失踪した日と、君が所持している冒険者ギルドカードが発行された日は同じなのだが、そこに思い当たる節はないのかね?」
「まったくないですね」
「しかも見た目は瓜二つ。黒髪黒瞳という特徴もあり、聖女のみが使う事が出来るグレーター系のヒールを使う事も出来るのにか?」
「何の事でしょうか?」
「君が、ブレイズにかけた回復魔法のことだ。瀕死に近い人間を、何の後遺症もなく短時間で回復させるほどの魔法を使う事が出来るのは聖女のみだ」
「はぁ……。うちの村では良くあったことですけど……」
「エミ君。ここまで言っても、君は自分が次期王妃の人間だということを――」
「私は一般人ですから」
間髪入れずに私は返す。
テーブルの上に広げられた似顔絵を少し離れた所から見ていたアネットさんがポツリと呟く。
それに同意するかのように。
「ほんまや、そっくりやね」
アネットさんの横で壁の華となっていたユーリエさんも頷きながら言葉を漏らす。
「そういうことだ。――で、君はこれをどう思うのかね?」
「気のせいだと思います」
私の答えに、額に手を当てながら溜息で応じてくるネルガンさん。
それと共に、身を乗り出すようにして口を開けるブレイズさん。
「エミ君、君は本当に何も知らないと言うのか?」
「はい。私には何のことか……」
あくまでもシラを切ることにする。
「この似顔絵には、黒髪・黒瞳という特徴が記載されている。その事に関して、君はどう思うのかね?」
「さあ? 私は、魔法を全力で使用する時だけ体質がほんの少しだけ変わるという特徴がありますので。実際に、いまの私は金髪碧眼だと思いますが? その隣国の次期王妃という方が、黒髪に黒瞳でしたら、常時魔法を全力で使用していたという事ですよね? そんな事をする必要性が次期王妃の方にあるとは私には思えないのですが?」
「つまり、エミ君の黒髪と黒瞳に変化したというのは、あくまでも魔法を使った際の特性と言いたい訳か?」
「そうなります」
副ギルドマスターのブレイズさんの言葉に私は答える。
簡単に言うのなら、私の普段の姿はあくまでも金髪碧眼と言うこと。
そこは譲れない。
「……エミ君」
「何でしょうか?」
私とブレイズさんとの会話を、ブレイズさんの横で聞いていたネルガンさんが重々しく口を開く。
「君は知らないと思うが、君が冒険者ギルドカードを作ったのはセルトラ王国の王都だという事は既に判明している」
「そうなのですか?」
冒険者ギルドカードは、金属製の板に文字が書かれた古典的なモノで、私は冒険者ギルドカードが何処で発行されたモノかまでは判別がついていない。
なので、そういう切り口をされてしまうと、否定ができない。
否定をしたあとで、証拠を出されてしまうと言質を取られてしまう可能性があるから。
「うむ。冒険者ギルドカードには、偽造防止を含めて、所持している冒険者が、どこの冒険者ギルドで発行したのかが記載されている。もちろん、発行日もな」
「……そうですか。それで、それが何か問題が?」
あくまでも私は無関係ですよ? と、答えておく。
そんな私の様子に、冒険者ギルドマスターのネルガンさんは、似顔絵に書かれている私が失踪した日を指差す。
「エミ君。セルトラ王国の次期王妃であるアマーリエ・フォン・オイレンブルグが失踪した日と、君が所持している冒険者ギルドカードが発行された日は同じなのだが、そこに思い当たる節はないのかね?」
「まったくないですね」
「しかも見た目は瓜二つ。黒髪黒瞳という特徴もあり、聖女のみが使う事が出来るグレーター系のヒールを使う事も出来るのにか?」
「何の事でしょうか?」
「君が、ブレイズにかけた回復魔法のことだ。瀕死に近い人間を、何の後遺症もなく短時間で回復させるほどの魔法を使う事が出来るのは聖女のみだ」
「はぁ……。うちの村では良くあったことですけど……」
「エミ君。ここまで言っても、君は自分が次期王妃の人間だということを――」
「私は一般人ですから」
間髪入れずに私は返す。
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