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第34話 モンスターの襲撃(6)

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 そんな様子を見たあと、私はパン屋のドアを塞いでいた石壁の前で立ち竦んでいる女の子の元へと近寄る。

「お姉ちゃん……」
「もう大丈夫だからね」

 私は、ドアを塞いでいた石壁に手を触れながら分子構造の結合を解く。
 すると魔法により作られた石壁は砂となり崩れていく。

「すごいっ!?」
「皆には内緒だからね?」
「うんっ!」

 女の子は、母親に会えると思って元気よく頷くと「お母さん!」とドアを叩く。
 すると、恐る恐ると言った様子でドアが開いていき、中から20代後半と思わしき女性が顔を見せる。
 女性は、緊張した面持ちで視線を女の子へと向けたかと思うと驚いた表情を見せ――、「マリー」と、女の子の名前を呼ぶと強く抱きしめ――、私の方へと視線を向けると頭を下げてきた。

「ありがとうございます。マリーを連れてきてくれて。あの……、オーガーは……」

 オーガーが存在していた時は、逃げ回る住民の喧騒が周辺に鳴り響いていた。
だけど、いま周囲は耳が痛くなるほどの静寂に包まれている。

「オーガーは、冒険者達が倒してくれました。もう大丈夫です」
「本当ですか!?」
「はい。もう大丈夫です」
「あの、ちなみに貴女は……?」
「私は見習い冒険者ですので――」
「そうなのですか……」

 私は女性に答えながら、アネットさんとユーリエさんを手招きする。
 幸い、白のワンピース姿の私とは違い二人とも冒険者暦が長いこともありベージュ色の丈夫な旅人の服を着ているので、冒険者だと紹介すれば信じてくれるはず。
 アネットさんはブロードソードを手にしているし……。

「この二人が、オーガーを倒してくれた冒険者です」
「――ん? どういうことだ? エミ」
「エミはん。また?」

 私は頷く。
 あまり目立つような事には巻き込まれたくないから。

「えっと……お二人とも冒険者の方なのですか?」
「せや」
「ああ、そうだ」
「私、メルルと言います。娘のマリーを助けてくださって、ありがとうございます」
「気にする事はない。ダンジョンから出てきた魔物を倒すことは冒険者の仕事だ。それに、冒険者ギルドからも報酬は出るからな」

 報酬は出るのね……。
 それにしても、報酬が出るって話だけど、どうやって報酬を算出するのか気になるところではあるけれど……。

「ほなうちは牙を集めるさかい、あとはアネットはん、説明は任せたさかいね。いくで、エミはん」
「は、はい」

 アネットさんに説明を任せて、私は女性から離れる。

「それにしてもオーガーを倒した報酬はかなりの物になんねんけど、ほんまにええの?」
「はい。あまり目立ちたくないので。だって、オーガーは、かなり強いのでしょう?」
「そらそうやけど」
「それなら必要ないです」

 目の前の誰かを守れたのなら、それが報酬だと思うから。



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