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第21話 一つ屋根の下での事情(6)
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「……」
何故か、私の言葉に無言になる総司さん。
少しの間、沈黙が流れる。
そこで私は――、
「そういえば……。結局、昨日はお帰りになられなかったんですか?」
「そうだな。仕事が溜まっていたからな」
たぶん、高槻さんは平社員ではなく上の方の役職だと思う。
運転手さんが付いているし。
ただ、私生活は結構ズボラな所があるので、その辺だけはアレだと思うけどね。
「今日は、帰ってきますか? それによって献立も変わってきますので」
「そうだな。何とか帰れると思うが?」
「そうですか。分かりました。何か、食べたい物とかありますか? あったら用意しておきますけど」
「俺が食べたい物か……、別に何でもいい」
何でもいいっていう答えが一番困るんですけど!
とくに私の場合は雇ってもらっている訳なので、立場的に非常に低いわけで――、しかも借金返済だから、普通の家政婦よりも扱いはどん底。
「分かりました」
でも、私の立場では文句を言うことも出来ないので素直に頷くしかない。
幸い、朝食を作って出した時も文句は言われなかったので大丈夫だと思うし。
「それと……、櫟原は、送り迎えは出来ない。分かったな?」
「分かりました」
そもそも好意で送り迎えをしてもらっていると思うし、何より学校までロールスロイスでの送り迎えは少し気が引けていたので丁度いい。
「……と、とりあえずだ。借金を返済し終わるまで怪我なんてするんじゃないぞ?」
「分かっています!」
ほんと一々、事あるごとに小言を言ってくるんだから。
しかも借金に関して――、そんなに借金返済が大事なのか……。
「それじゃな」
「はい。総司さんもお仕事がんばってくださいね」
通話を切ったあと、ドッと疲れが溜まった。
まだ、一日は始まったばかりなのに……。
「とりあえず朝食でも食べよ」
一人分なので、朝は軽く済ませる。
そのあとは、学校へ向かう。
「莉緒、おっはー! あれ? 今日は車じゃないの?」
校門前でバッタリと会った私の親友の美穂。
「おはよ。うん、今日は忙しいみたいなの」
「へー。それじゃ、お嬢様バージョンの莉緒様デーは終了なのかな?」
「何よ、それ――」
突っ込みをしてくる友達に言葉を返しながら昇降口へ共に向かう。
すると、剣道着を着た大和と剣道部の顧問をしている先生が廊下で話している姿が見える。
その様子を見て靴箱に靴を入れたまま、硬直する私。
「そういえば莉緒。大和、剣道の県大会に出場が決定したんだって」
「そうなんだ……」
彼の横顔。
それは、すごく嬉しそうで――、大和の笑顔を見るだけで胸が温かくなる。
だけど、それは長続きしなかった。
先生と話していた大和が私に気が付いた途端に眉間に皺を寄せたかと思うと、顧問の先生に頭を下げて、すぐに体育館の方へ行ってしまったから。
「大和……」
よく分かんない。
でも、よく分かんないけど……、胸をギュッと締め付けられる。
それは、痛くないのに、すごく痛い思い。
言葉では言い表せられない複雑な感情が胸中を支配する。
「莉緒……、ほら! 急がないとホームルームに間に合わないよ!」
美穂が私の手を掴むと明るい声で引っ張ってくる。
ホームルーム開始までは、まだ時間はあるのに――。
でも、私は何となくだけど分かっていた。
美穂は、泣きそうになっていた私を――、周りに生徒たちが居て大勢の目があったから遠ざけようとしていたと言う事を。
「……」
何故か、私の言葉に無言になる総司さん。
少しの間、沈黙が流れる。
そこで私は――、
「そういえば……。結局、昨日はお帰りになられなかったんですか?」
「そうだな。仕事が溜まっていたからな」
たぶん、高槻さんは平社員ではなく上の方の役職だと思う。
運転手さんが付いているし。
ただ、私生活は結構ズボラな所があるので、その辺だけはアレだと思うけどね。
「今日は、帰ってきますか? それによって献立も変わってきますので」
「そうだな。何とか帰れると思うが?」
「そうですか。分かりました。何か、食べたい物とかありますか? あったら用意しておきますけど」
「俺が食べたい物か……、別に何でもいい」
何でもいいっていう答えが一番困るんですけど!
とくに私の場合は雇ってもらっている訳なので、立場的に非常に低いわけで――、しかも借金返済だから、普通の家政婦よりも扱いはどん底。
「分かりました」
でも、私の立場では文句を言うことも出来ないので素直に頷くしかない。
幸い、朝食を作って出した時も文句は言われなかったので大丈夫だと思うし。
「それと……、櫟原は、送り迎えは出来ない。分かったな?」
「分かりました」
そもそも好意で送り迎えをしてもらっていると思うし、何より学校までロールスロイスでの送り迎えは少し気が引けていたので丁度いい。
「……と、とりあえずだ。借金を返済し終わるまで怪我なんてするんじゃないぞ?」
「分かっています!」
ほんと一々、事あるごとに小言を言ってくるんだから。
しかも借金に関して――、そんなに借金返済が大事なのか……。
「それじゃな」
「はい。総司さんもお仕事がんばってくださいね」
通話を切ったあと、ドッと疲れが溜まった。
まだ、一日は始まったばかりなのに……。
「とりあえず朝食でも食べよ」
一人分なので、朝は軽く済ませる。
そのあとは、学校へ向かう。
「莉緒、おっはー! あれ? 今日は車じゃないの?」
校門前でバッタリと会った私の親友の美穂。
「おはよ。うん、今日は忙しいみたいなの」
「へー。それじゃ、お嬢様バージョンの莉緒様デーは終了なのかな?」
「何よ、それ――」
突っ込みをしてくる友達に言葉を返しながら昇降口へ共に向かう。
すると、剣道着を着た大和と剣道部の顧問をしている先生が廊下で話している姿が見える。
その様子を見て靴箱に靴を入れたまま、硬直する私。
「そういえば莉緒。大和、剣道の県大会に出場が決定したんだって」
「そうなんだ……」
彼の横顔。
それは、すごく嬉しそうで――、大和の笑顔を見るだけで胸が温かくなる。
だけど、それは長続きしなかった。
先生と話していた大和が私に気が付いた途端に眉間に皺を寄せたかと思うと、顧問の先生に頭を下げて、すぐに体育館の方へ行ってしまったから。
「大和……」
よく分かんない。
でも、よく分かんないけど……、胸をギュッと締め付けられる。
それは、痛くないのに、すごく痛い思い。
言葉では言い表せられない複雑な感情が胸中を支配する。
「莉緒……、ほら! 急がないとホームルームに間に合わないよ!」
美穂が私の手を掴むと明るい声で引っ張ってくる。
ホームルーム開始までは、まだ時間はあるのに――。
でも、私は何となくだけど分かっていた。
美穂は、泣きそうになっていた私を――、周りに生徒たちが居て大勢の目があったから遠ざけようとしていたと言う事を。
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