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第92話 暗殺ギルド討伐(6)

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「その赤い目……。お前、ガルシスか!」

 エリザベートに、正体を看過されたガルシスは首を一回転させると同時に地を蹴り一足飛びにエリザベートに肉薄すると同時にナイフをエリザベートの首筋に向けて突き出した。
 普通の人間が見たのならば、反応するどころか認識できる速度を遥かに超えた攻撃。
 だが、エリザベードは、自身の首を刺すように向けられたナイフの刃を人差し指と中指で挟むようにし――真剣白刃をしていた。

 それを見たガルシスはナイフから手を離すと、回し蹴りを放つ。
 しかも足元に向けて。
 ただ、ガルシスが放った下段蹴りは空を切る。

「ばか――なっ!?」

 ガルシスが最後まで言い終える前に、彼の頬が何かに殴られ――、視界が回転――、次に衝撃が体中を襲ってくる。

「ガハッ!」

 気が付いた時には、ガルシスの体は壁にめり込み、口からは血反吐をぶちまけていた。
 ずり落ちるようにして、地に足をつけるガルシス。
 足には力が入らず視界もブレており、意識は飛びかけていた。

「なん……だと……。これほどとは……」

 驚愕の眼差しをエリザベートに向けるガルシス。
 その瞳には、殺意の色が篭っていた。

「やはり剣聖の一族……出来損ないという情報であったが……とんだ化け物だ」
「御託は良い。ガルシス、お前に聞きたいことがある」
「ふん。依頼者のことか?」
「そうだ。話さなければ、どうなるかは――」

 エリザベートが、腰から魔力が付与されたブロードソードを抜き放ち近づくと――、笑みを浮かべると共に「愚かな……」と、ガルシスは呟く。
 そして、唐突に周囲の黒服の――、暗殺者たちの身体が爆発する。

「――なっ!?」
「もらった!」

 唐突の人体爆発。
 周囲には大量の人の血が雨のように降り注ぐ。
 それに一瞬動揺したエリザベートの隙を見逃さずガルシスは腕に括りつけたショートソードを握り、エリザベートの腹目掛けて突きを放つ。

 ――キンッ!

 ただ、その突きは、闇夜に煌めく剣閃により両断される。
 ショートソードだけでなく、ガルシスの腕――、さらに、その体まで縦に真っ二つに斬り裂かれた。
 ガルシスの視界は二つに分かれていく。

「こ、この化け物が……」

 その言葉を最後に、体を両断されたガルシスは地面に崩れ息を引き取った。
 それを見て、エリザベートは空を見上げて呟く。

「化け物か……」

 その声は、気温が下がり始めた砂漠の大気と同じくらいの冷淡さを秘めていた。






 
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