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第64話 ダンジョン探索(14)

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「あのカグラさん。想定外の問題が起きたら、普通は帰るものなのですよ?」
「その心得は?」
「昔から幽霊が出てくる童話でも好奇心とか、最初に何かイレギュラーが起きたのを無視して先に進んだら大問題になったって事がよくありますよね?」
「お前は、何に影響されているんだ」

 カグラさんが、両手に腰を当てながら深く溜息をついてくる。

「そうだぞ、アリーシャ。アリーシャと私なら何とかなる!」
「……分かりました。ただ無理だと思ったら、さっさと帰りますから」
「まったく、君は慎重なのか大胆なのか良く分からない人間だな」

 頭を左右に振りながら、私の提案について色よい返事を見せないカグラさんに私は、『これはエリザさんと同じ猪突猛進タイプですね』と、心の中で突っ込みを入れつつ、『何か言ってもどうせ私の話はスルーされてしまうのでしょうね』と思いながら、溜息をつく。

「それでは、先に進みましょう」

 気持ちを切り替えて私は提案したけれど、すでにエリザさんは階段を下りて行くところで――。

「さて、私達も行くとするか」
「そうですね」

 エリザさんの後を追うようにして、私とカグラさんは階段を降りる。
 
「結構、長いですね……」

 思ったよりも地下へ通じる階段が長い。
 すでに100段くらいは降りている。

「ああ、地下1階から地下2階は距離があるからな」
「そうなのですか? でも、その言い方ですと、他の階層間は、そんなに距離はないのですか?」
「そうだな。だいたい50段前後と言ったところだ」

 カグラさんの説明に「そうなのか」と、横から話しに割って入ってくるエリザさん。

「だが――、もう到着だな」
「――え?」

 私には、まだ階段の先は灯りが照らしきれておらず暗闇に覆われていたので、到着という意味は分からなかったけど、エリザさんが言う通り、数十段降りたところでようやく階段からだだっ広い広間に到着する事ができた。

「ずいぶんと広いですね」

 迷宮内だというのに、足元は地面があり、地面を踏みしめるまで20段付近からダンジョン内が、まるで外にいるかのように明るくなっていた。
 
「そうだな。ここは農耕の階層だからな」
「農耕とは、農業ということですか?」
「ああ、アリーシャ君も理解していると思うが、迷宮都市グラナドは物資を外部から輸入するのは非常に困難だ。だから、迷宮2階層は、穀物や野菜、肉などを得る為の施設が点在している」
「それって……、迷宮としてはどうなのでしょうか?」
「本格的に迷宮探索を行うようになるのは5階層からだからな。4階層までは基本的に、迷宮都市グラナドの産業を支える設備が置かれている」
「なるほど……」

 どうも王宮で私が読んだ文献のダンジョンとはずいぶんと毛色が違うみたい。



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