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第109話 後宮の噂話(10)
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陛下が起しになられてから数日が経過し、私は暇を持て余していた。
「王妃様への話が難航しているのでしょうか?」
「分からないわ」
バルコニーで本を読みながら、私は言葉を返す。
ここ数日は晴天が続いている。
そして、私が後宮に滞在している理由はただ一つ。
陛下が後宮から出てもいいと許可をくれたけど、下手に邸宅に戻ったら王妃様に何か言われるかも知れないと憂慮したから。
「エリーゼ!」
これから、どうしようと、読んでいた本を閉じたところで部屋の扉が開き、王妃様が部屋に入ってきた。
しかも急ぎ足で。
「ご機嫌麗しゅう」
「それはいいわ。それよりも、貴女が使役しているフェンリルが王城の門前に居座って動かないの!」
「そうなのですか?」
「ええ。貴女、何かしたの?」
「いえ。私は後宮にずっといました。その事は、皆様はご存知かと思われますが?」
「……そう。とにかく、フェンリルをどこかに移動してちょうだい。門前に居たら、仕事にならないと官僚たちからも苦情が上がっているみたいなの」
「陛下は何か仰られておりましたか?」
「――ッ! と、とくには何も言ってないわ」
「そうですか」
つまり説得に失敗した可能性が高いと。
「もしかして王妃様が、こちらに起こしになられなかったのは……」
私の言葉に王妃様が視線を逸らす。
それだけで、私は何となく察してしまう。
たぶん、陛下と王妃様の間で何かゴタゴタがあって――、そのゴタゴタというのは私を王宮から返すことで、それに反対した王妃様は、私を王宮に軟禁したかったけど、それを察したフェルシアさんが王城にきて陣取ったと。
そして王城内の機能が低下し、各方面から苦情が上がってきた結果、陛下は王妃様に言ってくれと、話されたのかも知れない。
その結果、王妃様がノックする事も忘れるほどに慌てて来られたと。
「それはいいの! それよりも、あのフェンリルを何とかできるのよね?」
「一応、使役というか使い魔という感じですので、お願いすれば退いてくれると思いますが、フェルシアさんは私と一緒に居るのが好きみたいですので」
「……フェンリルが……!?」
私の言葉に目を大きく見開く王妃様。
「もしかして王妃様は、フェンリルが苦手なのですか?」
「そ、そんなことないわよ? ただ、一国を滅ぼすほどの力を持つ獣が王城前に居たら色々と威圧感もあるでしょう?」
「そうでしょうか? 私としては、モフモフして素晴らしいと思いますけど。王妃様も、フェルシアさんの毛に埋もれて目を瞑れば、良い感じだと思います」
「……そんなことできないわ」
「それは残念です」
「とにかく、何とかして!」
「でも、そうしますと私は邸宅に帰らないと……」
「……分かったわ。戻っていいから」
「分かりました」
王妃様の了承を取り付けた私は、すぐに荷物をまとめて後宮から出る。
そして王城の正門前には、白いモフモフな毛並みのフェンリル――、フェルシアさんの姿が見えた。
「フェルシアさん!」
「ようやく来たか」
「はい! それより、フェルシアさんは、どうして、ここに?」
「うむ。カーネルが頼んできたのだ。まぁ、妾とは意思疎通はできんが、それでも妾は人の言葉は分かるからな」
「そうだったのですか」
タイミングが良すぎると思いました!
「うむ。――で、禊は済んだのか? 主よ」
「はい。何とか」
「それならばよい。では帰るとするか」
「そうですね。――では、王妃様! 私は帰ります」
フェルシアさんが、モフモフの白い尻尾で私の身体を抱き上げると背中に乗せる。
モフッ! と、いう感触と共に、フェルシアさんの毛が椅子のような形になり、私は楽に座れるようになった。
そんな中、フェルシアさんは王妃様の方へ向くと、ジッと王妃様の方へ視線を向けていて――、突然、王妃様が卒倒して倒れてしまう。
「――え?」
「話は精霊達から聞いておる。我が主に無礼な口を聞いたとな。だから軽く威圧しただけだ。夢の中でもな」
「そういうことですか……」
どうりで、王妃様はフェルシアさんを怖がっていると思いました。
それにしても、さすがはフェルシアさんです。
「王妃様への話が難航しているのでしょうか?」
「分からないわ」
バルコニーで本を読みながら、私は言葉を返す。
ここ数日は晴天が続いている。
そして、私が後宮に滞在している理由はただ一つ。
陛下が後宮から出てもいいと許可をくれたけど、下手に邸宅に戻ったら王妃様に何か言われるかも知れないと憂慮したから。
「エリーゼ!」
これから、どうしようと、読んでいた本を閉じたところで部屋の扉が開き、王妃様が部屋に入ってきた。
しかも急ぎ足で。
「ご機嫌麗しゅう」
「それはいいわ。それよりも、貴女が使役しているフェンリルが王城の門前に居座って動かないの!」
「そうなのですか?」
「ええ。貴女、何かしたの?」
「いえ。私は後宮にずっといました。その事は、皆様はご存知かと思われますが?」
「……そう。とにかく、フェンリルをどこかに移動してちょうだい。門前に居たら、仕事にならないと官僚たちからも苦情が上がっているみたいなの」
「陛下は何か仰られておりましたか?」
「――ッ! と、とくには何も言ってないわ」
「そうですか」
つまり説得に失敗した可能性が高いと。
「もしかして王妃様が、こちらに起こしになられなかったのは……」
私の言葉に王妃様が視線を逸らす。
それだけで、私は何となく察してしまう。
たぶん、陛下と王妃様の間で何かゴタゴタがあって――、そのゴタゴタというのは私を王宮から返すことで、それに反対した王妃様は、私を王宮に軟禁したかったけど、それを察したフェルシアさんが王城にきて陣取ったと。
そして王城内の機能が低下し、各方面から苦情が上がってきた結果、陛下は王妃様に言ってくれと、話されたのかも知れない。
その結果、王妃様がノックする事も忘れるほどに慌てて来られたと。
「それはいいの! それよりも、あのフェンリルを何とかできるのよね?」
「一応、使役というか使い魔という感じですので、お願いすれば退いてくれると思いますが、フェルシアさんは私と一緒に居るのが好きみたいですので」
「……フェンリルが……!?」
私の言葉に目を大きく見開く王妃様。
「もしかして王妃様は、フェンリルが苦手なのですか?」
「そ、そんなことないわよ? ただ、一国を滅ぼすほどの力を持つ獣が王城前に居たら色々と威圧感もあるでしょう?」
「そうでしょうか? 私としては、モフモフして素晴らしいと思いますけど。王妃様も、フェルシアさんの毛に埋もれて目を瞑れば、良い感じだと思います」
「……そんなことできないわ」
「それは残念です」
「とにかく、何とかして!」
「でも、そうしますと私は邸宅に帰らないと……」
「……分かったわ。戻っていいから」
「分かりました」
王妃様の了承を取り付けた私は、すぐに荷物をまとめて後宮から出る。
そして王城の正門前には、白いモフモフな毛並みのフェンリル――、フェルシアさんの姿が見えた。
「フェルシアさん!」
「ようやく来たか」
「はい! それより、フェルシアさんは、どうして、ここに?」
「うむ。カーネルが頼んできたのだ。まぁ、妾とは意思疎通はできんが、それでも妾は人の言葉は分かるからな」
「そうだったのですか」
タイミングが良すぎると思いました!
「うむ。――で、禊は済んだのか? 主よ」
「はい。何とか」
「それならばよい。では帰るとするか」
「そうですね。――では、王妃様! 私は帰ります」
フェルシアさんが、モフモフの白い尻尾で私の身体を抱き上げると背中に乗せる。
モフッ! と、いう感触と共に、フェルシアさんの毛が椅子のような形になり、私は楽に座れるようになった。
そんな中、フェルシアさんは王妃様の方へ向くと、ジッと王妃様の方へ視線を向けていて――、突然、王妃様が卒倒して倒れてしまう。
「――え?」
「話は精霊達から聞いておる。我が主に無礼な口を聞いたとな。だから軽く威圧しただけだ。夢の中でもな」
「そういうことですか……」
どうりで、王妃様はフェルシアさんを怖がっていると思いました。
それにしても、さすがはフェルシアさんです。
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