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第106話 後宮の噂話(7)
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「畏まりました」
颯爽とした身のこなし。
王妃様が、来られたとイーナが報告してきた時には、すでに室内は綺麗に片付けられていた。
「エリーゼ、昨日ぶりね」
「王妃様もご機嫌麗しゅう」
「そういうのはいいわ。貴女のことは実の娘だと思っているもの」
煌びやかなドレスを着た王妃様は、バルコニーに用意されていた細かな細工が施された椅子に座ると、私の方へと視線を向けてくる。
それは無言の圧力。
私も近くにいき、椅子へ座るとテレーゼが絶妙なタイミングで紅茶を淹れ、私達から距離を取った。
そしてティーカップに口をつけた王妃様は、流し目をテレーゼの方へと送る。
何か不平不問があったの? と、心配になった。
ただ、それは杞憂のようで。
「テレーゼ」
「はい。王妃様」
「もうそろそろセルガルトへ戻ってもいい頃合いではなくて?」
「当主は、エリーゼ様に仕えるようにと侍女として派遣されましたので」
「でも、エリーゼはフェルベールで暮らすのよね?」
「はい。そのつもりです」
私の返答に、テレーゼは表情を曇らせる。
「そうすると、テレーゼが王城で侍女をする意味は無くなってしまうわよね?」
「それは……」
王妃様の言い分だと、私がフェルベール地方に引き篭もったら、テレーゼは職を失いセルガルト領に戻らないといけないみたい。
「エリーゼ様は、王都から出ていかれるのですか!?」
「イーナ!」
静かに表情を曇らせていたテレーゼだったけど、まだ侍女見習いで日が浅いイーナが驚いたように声を上げていた。
すぐにテレーゼが窘めたけど……。
「王妃様」
「マレルダでもいいわよ? お母様でも――」
「王妃様、二人の処遇は……」
「貴女が、王都から去ったら職を失ってしまうわね。エリーゼ、貴女が次期王妃として国を支えるために、その貴女を支える為に、セルガルト伯爵やラムセス子爵は自身の娘を侍女として王宮へ仕えさせてくれているのよ? それが、どういう意味かは分かるわよね?」
思わず、私は無言になってしまう。
「イーナは、元々、貴女が失踪する前に、ラムセス子爵が次期王妃である貴女を支えるために実の娘を王宮に派遣してくれたのよ?」
「そうなのですか」
「そう。それにテレーゼなんて、貴女が失踪してから、ずっと! 仕事が無かったのよ? 主が不在の従者が、どういう風に王宮内で見られるのか、貴女だって分かっているわよね? きっとセルガルド伯爵も、テレーゼの進退については色々と考えていると思うわ」
「エリーゼ様。お気になさらないでください。私は、大丈夫ですので……」
ああ、もう! こういう絡め手で来られると私としては本当に困るのですけど!
颯爽とした身のこなし。
王妃様が、来られたとイーナが報告してきた時には、すでに室内は綺麗に片付けられていた。
「エリーゼ、昨日ぶりね」
「王妃様もご機嫌麗しゅう」
「そういうのはいいわ。貴女のことは実の娘だと思っているもの」
煌びやかなドレスを着た王妃様は、バルコニーに用意されていた細かな細工が施された椅子に座ると、私の方へと視線を向けてくる。
それは無言の圧力。
私も近くにいき、椅子へ座るとテレーゼが絶妙なタイミングで紅茶を淹れ、私達から距離を取った。
そしてティーカップに口をつけた王妃様は、流し目をテレーゼの方へと送る。
何か不平不問があったの? と、心配になった。
ただ、それは杞憂のようで。
「テレーゼ」
「はい。王妃様」
「もうそろそろセルガルトへ戻ってもいい頃合いではなくて?」
「当主は、エリーゼ様に仕えるようにと侍女として派遣されましたので」
「でも、エリーゼはフェルベールで暮らすのよね?」
「はい。そのつもりです」
私の返答に、テレーゼは表情を曇らせる。
「そうすると、テレーゼが王城で侍女をする意味は無くなってしまうわよね?」
「それは……」
王妃様の言い分だと、私がフェルベール地方に引き篭もったら、テレーゼは職を失いセルガルト領に戻らないといけないみたい。
「エリーゼ様は、王都から出ていかれるのですか!?」
「イーナ!」
静かに表情を曇らせていたテレーゼだったけど、まだ侍女見習いで日が浅いイーナが驚いたように声を上げていた。
すぐにテレーゼが窘めたけど……。
「王妃様」
「マレルダでもいいわよ? お母様でも――」
「王妃様、二人の処遇は……」
「貴女が、王都から去ったら職を失ってしまうわね。エリーゼ、貴女が次期王妃として国を支えるために、その貴女を支える為に、セルガルト伯爵やラムセス子爵は自身の娘を侍女として王宮へ仕えさせてくれているのよ? それが、どういう意味かは分かるわよね?」
思わず、私は無言になってしまう。
「イーナは、元々、貴女が失踪する前に、ラムセス子爵が次期王妃である貴女を支えるために実の娘を王宮に派遣してくれたのよ?」
「そうなのですか」
「そう。それにテレーゼなんて、貴女が失踪してから、ずっと! 仕事が無かったのよ? 主が不在の従者が、どういう風に王宮内で見られるのか、貴女だって分かっているわよね? きっとセルガルド伯爵も、テレーゼの進退については色々と考えていると思うわ」
「エリーゼ様。お気になさらないでください。私は、大丈夫ですので……」
ああ、もう! こういう絡め手で来られると私としては本当に困るのですけど!
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