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第86話 王都事件(11)
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王都に戻ってきたという事で、夜会を行い社交界のお仕事というよりも貴族としての仕事を終え、さらに回復魔法で大勢の貴族関係者を治療してから数日が経過。
私は、自室でボーッと天井を見ながら溜息をついていた。
「エリーゼは、何をしているんだ?」
「天井を見ています」
少し前に室内に入ってきたカーネルさんへ私は言葉を返す。
すでに王都の邸宅に戻ってきてから、2週間以上、邸宅に缶詰め状態。
もうする事は無くなってしまって、ベッドの上でゴロゴロすることしかない。
「そ、そうか……。どこかの貴族の令嬢に、お茶会に招待されるような事はないのか?」
「あるにはありますけど……」
私は、視線をテーブルの方へと向ける。
そこには山積みな手紙が! それは、全て男爵以上の方々からのお茶会への招待状。
100通届いたあたりから、私は見るのを止めた。
「ふむ。つまり、あれか? どこかの貴族のお茶会に出たら、他の貴族家の招待にも応じないといけないから、ゴロゴロしているのか?」
「いえ!」
私は、きっぱりとそこだけは否定する。
「なら、何でベッドの上でゴロゴロしているだけなんだ? アディーなども、心配していたぞ? エリーゼの体調が優れないのではないのかと」
「何となく……。それに、もう読みたいモノも無くなってしまいましたし……」
私は部屋の片隅の棚を見る。
そこには恋愛系の小説がたくさん置かれている。
本を読んで妄想するのは好きなのですけれど、さすがに数週間の間、代わり映えのない日々が過ぎると何かをするという気力が無くなってきてしまうものなのです。
「それにしても、貴族の茶会というのは嗜みのようなモノなのだろう? 気分転換に、行ってきたらどうだ? 全部に参加する必要もないだろう?」
「それはそうですけど……、私は貴族同士の駆け引きとか苦手なのです。それなら、川で魚を取って河原で捌いて焼いて食べていた方がいいです」
「……完全に貴族の令嬢の会話の内容ではないな」
「理解しています」
私は枕を抱きしめつつ、ベッドの上で座る。
「――でも、本当に人付き合いは大変なのですよ? 疲れますし……」
「そうか……。――なら王都を散策して見るか?」
「でも、私が王都を歩いたら色々と面倒な事になりそうですし……」
「そこは何とかなる。それでアディーから依頼されていたからな」
カーネルさんが、差し出してきたものは、小さな虹色の石が嵌めこまれた小さなブローチ。
「これって?」
「変化のイヤリングだ。髪色を変化させることができる」
「そんなモノがあるのですか?」
「ああ。かなり希少な鉱石だが、容姿を変化させれば王都の散策に出られるだろう? 気分転換にもなる。さすがにフェンリルを連れていくのは、周りに威圧感を与えるからな」
「そうですよね」
私は、興味が出てきてカーネルさんからブローチを受け取る。
ブローチをつけて、姿見の前に立つ。
「カーネルさん、髪の色はどうすれば変わりますか?」
「心の中で思い描くだけで変わる」
「つまり、魔法を使うときと同じと……」
私は、心の中で赤髪を連想する。
すると、姿見に映っていた私の髪色が黄金色から真っ赤に燃える赤髪に変化した。
「これってマジックアイテムですよね? 結構、高かったのでは? それに変化形のアイテムの所有と使用って王国法で細かく決まっていませんでしたっけ?」
「一応、王宮からの許可は得ている」
「――え?」
私は、自室でボーッと天井を見ながら溜息をついていた。
「エリーゼは、何をしているんだ?」
「天井を見ています」
少し前に室内に入ってきたカーネルさんへ私は言葉を返す。
すでに王都の邸宅に戻ってきてから、2週間以上、邸宅に缶詰め状態。
もうする事は無くなってしまって、ベッドの上でゴロゴロすることしかない。
「そ、そうか……。どこかの貴族の令嬢に、お茶会に招待されるような事はないのか?」
「あるにはありますけど……」
私は、視線をテーブルの方へと向ける。
そこには山積みな手紙が! それは、全て男爵以上の方々からのお茶会への招待状。
100通届いたあたりから、私は見るのを止めた。
「ふむ。つまり、あれか? どこかの貴族のお茶会に出たら、他の貴族家の招待にも応じないといけないから、ゴロゴロしているのか?」
「いえ!」
私は、きっぱりとそこだけは否定する。
「なら、何でベッドの上でゴロゴロしているだけなんだ? アディーなども、心配していたぞ? エリーゼの体調が優れないのではないのかと」
「何となく……。それに、もう読みたいモノも無くなってしまいましたし……」
私は部屋の片隅の棚を見る。
そこには恋愛系の小説がたくさん置かれている。
本を読んで妄想するのは好きなのですけれど、さすがに数週間の間、代わり映えのない日々が過ぎると何かをするという気力が無くなってきてしまうものなのです。
「それにしても、貴族の茶会というのは嗜みのようなモノなのだろう? 気分転換に、行ってきたらどうだ? 全部に参加する必要もないだろう?」
「それはそうですけど……、私は貴族同士の駆け引きとか苦手なのです。それなら、川で魚を取って河原で捌いて焼いて食べていた方がいいです」
「……完全に貴族の令嬢の会話の内容ではないな」
「理解しています」
私は枕を抱きしめつつ、ベッドの上で座る。
「――でも、本当に人付き合いは大変なのですよ? 疲れますし……」
「そうか……。――なら王都を散策して見るか?」
「でも、私が王都を歩いたら色々と面倒な事になりそうですし……」
「そこは何とかなる。それでアディーから依頼されていたからな」
カーネルさんが、差し出してきたものは、小さな虹色の石が嵌めこまれた小さなブローチ。
「これって?」
「変化のイヤリングだ。髪色を変化させることができる」
「そんなモノがあるのですか?」
「ああ。かなり希少な鉱石だが、容姿を変化させれば王都の散策に出られるだろう? 気分転換にもなる。さすがにフェンリルを連れていくのは、周りに威圧感を与えるからな」
「そうですよね」
私は、興味が出てきてカーネルさんからブローチを受け取る。
ブローチをつけて、姿見の前に立つ。
「カーネルさん、髪の色はどうすれば変わりますか?」
「心の中で思い描くだけで変わる」
「つまり、魔法を使うときと同じと……」
私は、心の中で赤髪を連想する。
すると、姿見に映っていた私の髪色が黄金色から真っ赤に燃える赤髪に変化した。
「これってマジックアイテムですよね? 結構、高かったのでは? それに変化形のアイテムの所有と使用って王国法で細かく決まっていませんでしたっけ?」
「一応、王宮からの許可は得ている」
「――え?」
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