77 / 112
第77話 王都事件(2)
しおりを挟む
「そういえば、カーネルさん。王都には冒険者の方々が先に来られているのですよね?」
「――ん? あ、ああ。そうだな」
他人の家庭の事情について聞くのは、あまりよろしくない事ですし、私は話題を変える。
カーネルさんは、私が詳しく聞いてくると思っていたのか、少しだけ怪訝な様子ではあったけれど、すぐにいつも通りの冷静な雰囲気を取り戻す。
「それで、現在は屋敷の周囲を警護されているのですか?」
「そうなる」
「滞在場所などは決まっているのですか?」
「ああ、その辺は、問題ない」
「そうですか。警護と言うことでしたら邸宅を利用してもいいと思いますが……」
「それは出来ないだろう? あまり王都に来ていることを知られたくないからな。護衛の数が多くなれば、それだけ要人が居る事を相手に知らせる事になるからな」
「――ですが……、フェルシアさんが居る時点で既に……」
「まぁ、それはそうだが……、邸宅に滞在していると普通に入ってくる情報も入ってこない事もあるからな」
「それも冒険者の知恵ですか?」
「まぁ、そうだな……」
「色々とあるのですね。冒険者の方は――」
「ああ、それよりもエリーゼは、しばらくは大変な事になりそうだな」
会話をしていたカーネルさんは、視線を閉まっている扉の方へと向ける。
言いたいことは何となくですけど、理解できる。
「やっぱり、アディ―さんのことは……」
「アディ―でいい。貴族が、そのような気遣いをしていたら怒られるぞ? アイツに」
「そうですよね……」
婚約破棄されてから辺境の土地に引きこもっていた事もあり、かなり貴族の作法とか忘れているかも……。
だって、他の方々に何か言われるような事はなかったし。
「色々と言われそうで頭が痛いです……」
「まぁ、貴族として生まれたんだから仕方ないな」
「ですよね……」
結局、婚約は破談という形になったけれど、貴族籍である以上、家を存続させる事は重要なことであり、婿を入れることになる事にはなると思う。
「カーネルさん」
「王都を散策するのは止しておいた方がいいと思うぞ?」
「……」
先手を打ってきたカーネルさんを見上げる。
「おいおい、そういう恨めしそうな表情を向けられても困るんだが?」
「それは分かっていますけど……」
邸宅滞在時間が減れば、それだけアディ―さんと顔を合わせる時間が減るのでは? と、淡い期待を持ってしまったけれど、やっぱり……それは難しいというのは分かる。
何故なら、クラウディール王国は現在、食料物資が高騰する兆しを見せているというのは、ロマネスクさんから聞いていたから。
一応、他国から食料物資を輸入することで当座を凌いではいるけど、それは根本的な解決にはなっていない。
つまり経済的に安定していないという事になる。
経済は表立って問題が起きてからでは遅いというのは妃教育で習った。
おそらく、城下町だけでなくフェルベール地方から遠い貴族領では、経済難民が発生している可能性がある。
そして経済的に窮地に立たされた場合には、犯罪が発生する場合する可能性が非常に高く、カーネルさんは、その事を心配していると思う。
「なら、邸宅内でゆっくりとしておいた方がいい」
「そうですよね」
「――ん? あ、ああ。そうだな」
他人の家庭の事情について聞くのは、あまりよろしくない事ですし、私は話題を変える。
カーネルさんは、私が詳しく聞いてくると思っていたのか、少しだけ怪訝な様子ではあったけれど、すぐにいつも通りの冷静な雰囲気を取り戻す。
「それで、現在は屋敷の周囲を警護されているのですか?」
「そうなる」
「滞在場所などは決まっているのですか?」
「ああ、その辺は、問題ない」
「そうですか。警護と言うことでしたら邸宅を利用してもいいと思いますが……」
「それは出来ないだろう? あまり王都に来ていることを知られたくないからな。護衛の数が多くなれば、それだけ要人が居る事を相手に知らせる事になるからな」
「――ですが……、フェルシアさんが居る時点で既に……」
「まぁ、それはそうだが……、邸宅に滞在していると普通に入ってくる情報も入ってこない事もあるからな」
「それも冒険者の知恵ですか?」
「まぁ、そうだな……」
「色々とあるのですね。冒険者の方は――」
「ああ、それよりもエリーゼは、しばらくは大変な事になりそうだな」
会話をしていたカーネルさんは、視線を閉まっている扉の方へと向ける。
言いたいことは何となくですけど、理解できる。
「やっぱり、アディ―さんのことは……」
「アディ―でいい。貴族が、そのような気遣いをしていたら怒られるぞ? アイツに」
「そうですよね……」
婚約破棄されてから辺境の土地に引きこもっていた事もあり、かなり貴族の作法とか忘れているかも……。
だって、他の方々に何か言われるような事はなかったし。
「色々と言われそうで頭が痛いです……」
「まぁ、貴族として生まれたんだから仕方ないな」
「ですよね……」
結局、婚約は破談という形になったけれど、貴族籍である以上、家を存続させる事は重要なことであり、婿を入れることになる事にはなると思う。
「カーネルさん」
「王都を散策するのは止しておいた方がいいと思うぞ?」
「……」
先手を打ってきたカーネルさんを見上げる。
「おいおい、そういう恨めしそうな表情を向けられても困るんだが?」
「それは分かっていますけど……」
邸宅滞在時間が減れば、それだけアディ―さんと顔を合わせる時間が減るのでは? と、淡い期待を持ってしまったけれど、やっぱり……それは難しいというのは分かる。
何故なら、クラウディール王国は現在、食料物資が高騰する兆しを見せているというのは、ロマネスクさんから聞いていたから。
一応、他国から食料物資を輸入することで当座を凌いではいるけど、それは根本的な解決にはなっていない。
つまり経済的に安定していないという事になる。
経済は表立って問題が起きてからでは遅いというのは妃教育で習った。
おそらく、城下町だけでなくフェルベール地方から遠い貴族領では、経済難民が発生している可能性がある。
そして経済的に窮地に立たされた場合には、犯罪が発生する場合する可能性が非常に高く、カーネルさんは、その事を心配していると思う。
「なら、邸宅内でゆっくりとしておいた方がいい」
「そうですよね」
293
お気に入りに追加
2,294
あなたにおすすめの小説
田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~
なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。
そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。
少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。
この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。
小説家になろう 日間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 週間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 月間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 四半期ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 年間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 総合日間 6位獲得!
小説家になろう 総合週間 7位獲得!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろうでも公開しています。
2025年1月18日、内容を一部修正しました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる