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第69話 法王様との対談(6)
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「そうなのですか」
やはりというか何と言うかカーネルさんやロマネスクさんが警戒していたような事はなかったみたい。
「ずいぶんとホッとしたような様子だの」
「いえ、じつはフェルベール地方に来てから色々と良くない噂がありましたので……」
「噂?」
「はい。精霊教会は回復魔法を民に施す際に莫大な寄進を要求するなどです」
「ふむ……。そのような話は上がってきてはいないが……、エリーゼの勘違いではないのかの?」
「私も、そう思いたいのですが、噂というのは真実が見え隠れしているモノと聞き及んだことがありますので」
「そうだの……、分かった。調べてみるとしよう」
「ありがとうございます」
「ところで、エリーゼに一つ頼みがあるのだが」
「何でしょうか?」
「このイオス村に何人か宣教師や教会関係者を移住させたいと思っているのだが……」
「常識の範囲で活動して頂けるのでしたら別に構いません」
「うむ。そこはキチンと約束をしよう」
「それでは移住場所と、教会建築の為の場所も必要ですよね?」
「そうだな」
「では、そちらに関しましては後程、私の方から精霊教会へ土地の借用場所などを含めた書類をお送りするという形で宜しいでしょうか?」
「それで問題ない」
私の提案に頷く法王様。
私としては、法王様を疑ってはいない。
――けれど、この辺境の地に来るまでの間、回復魔法に関して色々と教会が動いていた事。そして、それらを多くの冒険者やカーネルさん、そしてロマネスクさんにも伺っていた事から、ある程度は距離を保った方がいいと判断した。
つまり、教会に貸し出す土地に関しては代官の方や他の方と相談するという形で結果を出すことにする。
ただし、断るという方針だけは取れない。
それだけ精霊教会の力はクラウディール王国内において強いから。
「それにしてもエリーゼが、領主らしき仕事をしていて、すこしは感心したぞ?」
「そうですか? 一応、公爵家の娘ですし……王妃としての教育も受けていましたので、普通かと」
「儂の知っている孫は、大聖堂の椅子で良く寝ているというイメージしかないのだがな」
「それは……弁明の余地もありません」
「別に攻めている訳ではないからの。気を悪くしないでおくれ」
「いえ、そんなつもりは毛頭ありませんので」
そこまで会話したところで、通路に続く扉をノックする音が室内に鳴り響く。
「どうぞ」
「失礼致します。法王様、神殿騎士の方がこのようなモノを」
ウルリカが両手に持っていたのは両手で抱えるほど、大きな包み。
しかも、それは真っ白な紙で羊皮紙でもない。
「おおっ、忘れておった。エリーゼにプレゼントがあるのだ」
「プレゼントですか?」
「うむ。ぜひ受け取ってもらいたい。エリーゼに渡してもらえるかの?」
「畏まりました」
ウルリカが、私の目の前のテーブルの上に包みを置く。
包みの大きさは、私が横になった時と同じくらい大きい。
「お爺様、これは?」
「開けてみてくれるかの?」
「はい」
私は、素直に頷く。
だって、中に何が入っているのか気になったから。
「これは……枕ですか?」
包みを空けた所で、中から出てきたのは、真っ白な大きな抱き枕。
私が教会の大聖堂で昼寝をするようになった時に、固い椅子だと不便だからと、お爺様が用意してくれた枕を一回り大きくしたもの。
「エリーゼは、枕が大好きだったからの。エリーゼへの手土産と言ったところだ。貰ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます」
プレゼントを辞退することは相手方の行為を無駄にしてしまう事なので、素直に受け取る。
やはりというか何と言うかカーネルさんやロマネスクさんが警戒していたような事はなかったみたい。
「ずいぶんとホッとしたような様子だの」
「いえ、じつはフェルベール地方に来てから色々と良くない噂がありましたので……」
「噂?」
「はい。精霊教会は回復魔法を民に施す際に莫大な寄進を要求するなどです」
「ふむ……。そのような話は上がってきてはいないが……、エリーゼの勘違いではないのかの?」
「私も、そう思いたいのですが、噂というのは真実が見え隠れしているモノと聞き及んだことがありますので」
「そうだの……、分かった。調べてみるとしよう」
「ありがとうございます」
「ところで、エリーゼに一つ頼みがあるのだが」
「何でしょうか?」
「このイオス村に何人か宣教師や教会関係者を移住させたいと思っているのだが……」
「常識の範囲で活動して頂けるのでしたら別に構いません」
「うむ。そこはキチンと約束をしよう」
「それでは移住場所と、教会建築の為の場所も必要ですよね?」
「そうだな」
「では、そちらに関しましては後程、私の方から精霊教会へ土地の借用場所などを含めた書類をお送りするという形で宜しいでしょうか?」
「それで問題ない」
私の提案に頷く法王様。
私としては、法王様を疑ってはいない。
――けれど、この辺境の地に来るまでの間、回復魔法に関して色々と教会が動いていた事。そして、それらを多くの冒険者やカーネルさん、そしてロマネスクさんにも伺っていた事から、ある程度は距離を保った方がいいと判断した。
つまり、教会に貸し出す土地に関しては代官の方や他の方と相談するという形で結果を出すことにする。
ただし、断るという方針だけは取れない。
それだけ精霊教会の力はクラウディール王国内において強いから。
「それにしてもエリーゼが、領主らしき仕事をしていて、すこしは感心したぞ?」
「そうですか? 一応、公爵家の娘ですし……王妃としての教育も受けていましたので、普通かと」
「儂の知っている孫は、大聖堂の椅子で良く寝ているというイメージしかないのだがな」
「それは……弁明の余地もありません」
「別に攻めている訳ではないからの。気を悪くしないでおくれ」
「いえ、そんなつもりは毛頭ありませんので」
そこまで会話したところで、通路に続く扉をノックする音が室内に鳴り響く。
「どうぞ」
「失礼致します。法王様、神殿騎士の方がこのようなモノを」
ウルリカが両手に持っていたのは両手で抱えるほど、大きな包み。
しかも、それは真っ白な紙で羊皮紙でもない。
「おおっ、忘れておった。エリーゼにプレゼントがあるのだ」
「プレゼントですか?」
「うむ。ぜひ受け取ってもらいたい。エリーゼに渡してもらえるかの?」
「畏まりました」
ウルリカが、私の目の前のテーブルの上に包みを置く。
包みの大きさは、私が横になった時と同じくらい大きい。
「お爺様、これは?」
「開けてみてくれるかの?」
「はい」
私は、素直に頷く。
だって、中に何が入っているのか気になったから。
「これは……枕ですか?」
包みを空けた所で、中から出てきたのは、真っ白な大きな抱き枕。
私が教会の大聖堂で昼寝をするようになった時に、固い椅子だと不便だからと、お爺様が用意してくれた枕を一回り大きくしたもの。
「エリーゼは、枕が大好きだったからの。エリーゼへの手土産と言ったところだ。貰ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます」
プレゼントを辞退することは相手方の行為を無駄にしてしまう事なので、素直に受け取る。
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