66 / 112
第66話 法王様との対談(3)
しおりを挟む
カーネルさんの危惧も理解できるけど……、あの方が私に何かを求めてきたような事はありませんでしたので、そこまで心配するようなことは……、と言うのが素直なところなので、複雑な気持ちになってしまう。
それから、すぐに数人の冒険者の方が中庭に来るとカーネルさんの警備についての指示を受けて迅速に動き始めた。
カーネルさんの指示から、邸宅の警護を強化するという内容だったので、冒険者の動員を増やしているのかも知れない。
いままでには無かった光景。
戦いに無頓着な私にも分かるほど空気が張り詰めていくのが理解できてしまう。
しばらくしてから、一人の女性冒険者が小走りで中庭に入ってくる。
「団長、教会の馬車が此方に向かってきているのが確認できました」
「そうか、エリーゼ」
「分かっています」
二人の会話から、精霊教会の最高権力者である法王様が向かってきているのは理解出来ていたので、私もすぐに椅子から立ち上がる。
向かう先には、邸宅の玄関。
両開きの扉を開けて、視線を邸宅敷地内へと入る際に通り抜ける門へと向ける。
すると、鉄格子の扉が開いていく光景が目に飛び込んでくる。
「丁度、間に合ったようですね」
「ああ、そのようだな」
「そういえば、アルさんの姿が見えませんが……」
一応、アルさんも代官としての職務がありますので、法皇様に紹介はしておきたいのですが……。
「あの男は、元は中央で働いていたのだろう? なら、色々と柵というのがあるのかも知れないぞ?」
「そうですわね」
ただ教会のトップの人が、貴族で王国の中枢部で働いていたと言っても、一役人の方の名前や顔を存じているとは思えないのですが……。
ただ、アルさんが何も言わずに席を外すのは――。
「エリーゼ様。イオス村の村長を務めていた方は、教会と一度、ご家族のことで確執があると聞いた事があります」
私とカーネルさんが小声で話していた所で、草むらから先ほど私達を呼びにきた女性冒険者が語りかけてくる。
「そうなの?」
そんな話を一度も伺ったことはない。
「はい。なんでも――」
「いいわ。言わなくても……。本人が話したいと思わない限り、第三者から話を聞くのはマナーに反していると思うもの」
「そうですか。わかりました」
「でも、よくそんな情報を知っていたわね?」
「はい。これでも村で畑作業を手伝っておりますので」
ということは、つまり……、村の方々が話していた事情を小耳に挟んだという訳なのね。
何となくだけど納得する。
そして、そんな会話をしていた中――、目の前に教会の紋章を掲げた馬車が停止した。
それから、すぐに数人の冒険者の方が中庭に来るとカーネルさんの警備についての指示を受けて迅速に動き始めた。
カーネルさんの指示から、邸宅の警護を強化するという内容だったので、冒険者の動員を増やしているのかも知れない。
いままでには無かった光景。
戦いに無頓着な私にも分かるほど空気が張り詰めていくのが理解できてしまう。
しばらくしてから、一人の女性冒険者が小走りで中庭に入ってくる。
「団長、教会の馬車が此方に向かってきているのが確認できました」
「そうか、エリーゼ」
「分かっています」
二人の会話から、精霊教会の最高権力者である法王様が向かってきているのは理解出来ていたので、私もすぐに椅子から立ち上がる。
向かう先には、邸宅の玄関。
両開きの扉を開けて、視線を邸宅敷地内へと入る際に通り抜ける門へと向ける。
すると、鉄格子の扉が開いていく光景が目に飛び込んでくる。
「丁度、間に合ったようですね」
「ああ、そのようだな」
「そういえば、アルさんの姿が見えませんが……」
一応、アルさんも代官としての職務がありますので、法皇様に紹介はしておきたいのですが……。
「あの男は、元は中央で働いていたのだろう? なら、色々と柵というのがあるのかも知れないぞ?」
「そうですわね」
ただ教会のトップの人が、貴族で王国の中枢部で働いていたと言っても、一役人の方の名前や顔を存じているとは思えないのですが……。
ただ、アルさんが何も言わずに席を外すのは――。
「エリーゼ様。イオス村の村長を務めていた方は、教会と一度、ご家族のことで確執があると聞いた事があります」
私とカーネルさんが小声で話していた所で、草むらから先ほど私達を呼びにきた女性冒険者が語りかけてくる。
「そうなの?」
そんな話を一度も伺ったことはない。
「はい。なんでも――」
「いいわ。言わなくても……。本人が話したいと思わない限り、第三者から話を聞くのはマナーに反していると思うもの」
「そうですか。わかりました」
「でも、よくそんな情報を知っていたわね?」
「はい。これでも村で畑作業を手伝っておりますので」
ということは、つまり……、村の方々が話していた事情を小耳に挟んだという訳なのね。
何となくだけど納得する。
そして、そんな会話をしていた中――、目の前に教会の紋章を掲げた馬車が停止した。
355
お気に入りに追加
2,321
あなたにおすすめの小説
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる