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第44話 屋敷に戻ってきました。

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「ううっ……遠いです」

 思ったよりも屋敷まで遠い。
 痛みなどは回復魔法で何とかなるけど、疲労だけはそうもいかないので、もう途中で……寝たい。

「エリーゼ、寝ていると怪我をするぞ?」
「ふぁーい」

 王宮で身に着けた私の技。
 寝ながら行動する技術。
 王宮では、誰にも看過されることが無かったのに、すぐにカーネルさんは見破ってきたので、困りものです。

「ほら、屋敷が見えてきたぞ」
「結構、遠いですよね。歩くと」
「そうだな。だが、冒険者だと歩いた距離にも入らないな。エリーゼも冒険者なのだから慣れておいた方がいいぞ?」

 5分近く歩いている距離が、歩いた距離に入らないなんて……、私には迷宮探索は無理です。

「そういえば、ロマネスクさんはカーネルさんとは同じ冒険者の方だったのですよね?」
「ああ、そうだな。――というよりも、いまの冒険者パーティの原型を作ったのはアイツと俺だったからな」
「そうなのですか」
「ああ。最初は二人で始めたパーティだったが、いまでは30人規模のクランになったからな」
「そう言えばそうでしたね」

 カーネルさんの怪我を魔法で治療したあと、彼のパーティメンバーが一緒に旅に同行してきたのは記憶に新しいし、その時に30人近くの方が一緒に付いて来てくれた。
 
「それで、ロマネスクさんはパーティの運営が軌道に乗ったから脱退したという事ですか? それで商人に?」
「まぁ、元々、アイツの親父は特権商人だったからな。子供もアイツ一人だったし、いつまでも冒険者をしている訳にはいかなかったんだろうな」

 少し、遠くを見るカーネルさん。

「という事は、親の仕事を継いだということですか?」
「そうなるな」
「冒険者を辞めて?」
「そうだな」
「そうなのですか。自身が作って大きくしたパーティを脱退する時って、どういう感じだったのでしょうね」
「どうだろうな……。少なくとも、アイツにはアイツなりに考えはあったようだからな。俺は引き止めるような事はしなかった」
「カーネルさん……」
「昔話は、こんなものだ。ほら、屋敷を警護している奴らが俺達に気がついたようだぞ?」

 気がつけば屋敷前の門が見える位置にまで来ていた。
 そして、カーネルさんの言う通り冒険者の方々が手を振ってくる。
 私も、それに釣られて手を振る。

「まったくアイツらは……」
「駄目ですか?」
「いや、そこまで俺が注意するのはな」
「そうですよね」

 門前に辿り着いたところで。

「お帰り。エリーゼ様」

 冒険者の方々が次々と話しかけてきてくれる。

「ただいま戻りました」

 挨拶が終わったところで、カーネルさんが口を開く。
 それも冒険者の方々に向けて。

「お前達、何か変わったことは無かったか?」
「団長、とくにおかしな事はありませんでした」
「そうか。森の方は何か問題があるかどうかの報告はあったか?」
「そのような報告も上がっていません」
「分かった」

 短い話を終えたところで、屋敷へと通じる門を冒険者の方々が開けてくれる。
 私とカーネルさんは門を抜けて、屋敷の方へと。

「おかえりなさいませ。エリーゼ様」

 屋敷に到着し、屋敷の扉を開けると、恭しく頭を下げてくるウルリカ。
 
「ただいま戻りました」
「ウルリカ、これからエリーゼ様は帳簿の作業に入るが作業の準備をしてもらえるか?」
「分かりました。ただ、その前にエリーゼ様の湯浴みと身だしなみを行っても?」
「もちろんだ」
 
 湯浴みをしたら、絶対に眠くなる自信があるのですけれど……。
 

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