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第36話 エリーゼに関しての話(1)第三者視点
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会議室で行われた定例会議。
夜遅くまで及んだ議題は、いくつか改善する糸口もなく終わり……。
――王城の執務室。
「フェル」
「マレルダか」
執務室の一角。
革張りの高級ソファーに座り、会議が終わり国王という仮面の重責から解き放たれたフェルディナンドは、室内に入ってきた彼の妻である王妃マレルダの名を疲れた様子で口にした。
「何か飲む?」
「そうだな……。他国から輸入したコーヒーなどでも……」
「分かったわ」
慣れた手つきで、水と火の魔法を使いコーヒー豆から、コーヒーを抽出し、カップに入れていく王妃。
「はい。アナタ」
「すまないな。お前も疲れているというのに……」
「大丈夫よ」
「それにしても、普段は政務には極力、関わらない方針であったお前が珍しいものだな。重鎮の貴族も、お前が、あそこまで発言していたことに驚いていたぞ?」
「それは、息子の進退が掛かっていますもの。どんなにダメな子供でも、私がお腹を痛めて産んだ子供には代わりないもの」
「――だが、レオンが起こした問題は大きいぞ? 少なくとも、私の承諾を一切得ずにメレンドルフ公爵家の令嬢に一方的に婚約破棄を告げたのは、貴族だけでなく、たとえ一国民だったとしても駄目なことだ」
「それは分かっているわ」
「――なら、何故、時間稼ぎをするような真似をする?」
「決まっているわ」
「何かあるのか?」
「エリーゼちゃんと話をした事は、フェルに伝えたわよね?」
「ああ、この前、聞いたな」
「そこで、エリーゼちゃんは、ヘルトリング男爵家の娘の行いを不問に伏すと言ったの」
「ふむ、それは聞いているが?」
「その時にね、エリーゼちゃんは、息子のことを庇ってくれたのよね。ヘルトリング男爵家の娘にレオンが何の価値もないと言われた時に、本当に真剣に怒ってくれたの」
マレルダの言葉に、フェルディナンドは目を細める。
「つまり?」
「エリーゼちゃんは、息子のことを本当は好きだけど、婚約破棄された手前、それを口にできないという事なの」
「なるほど……。だから、少しでも時間を稼ぎ、国内におけるレオンの貴族内における評価を少しでも改善して、レオンの方からという訳か?」
「そう。それに、エリーゼちゃんくらいだから」
「お前の御眼鏡に叶った娘という意味ではか?」
「ええ。それに精霊の御子が王家に嫁ぐ理由も大きいわ」
「教会が暴走した時に、王家の後ろ盾には精霊が居るということにするということか」
「ええ」
そこまで話したところで、フェルディナンドはコーヒーを口にする。
苦味のある味。
それが疲れを癒し、疲れ切っていた頭を冴えわたらせる。
「エリーゼちゃんも、息子を悪くは思っていないようだし、何なら、好きと思っているみたいだから、レオンにはしばらく外交ということで国外に使節として派遣して、外を見せるのもいいと思うのよね」
「その間に国内で情報操作を行うという訳か」
「ええ。これはレオンとエリーゼちゃんの為、そして精霊の寵愛を受けているエリーゼちゃんには世継ぎを産んでもらえば、王国としても悪くはないでしょう?」
「そうだな……。まぁ、そのためにヘルトリング男爵家に関しては国外追放で許したのだからな」
「そうね。エリーゼちゃんとの約束だし、彼女が将来の王妃になれば下手な工作は良くは無いもの。それなら約束は守っておいた方がいいでしょう?」
「そうだな」
ソファーに二人座りながら、今後の事を相談していく。
夜遅くまで及んだ議題は、いくつか改善する糸口もなく終わり……。
――王城の執務室。
「フェル」
「マレルダか」
執務室の一角。
革張りの高級ソファーに座り、会議が終わり国王という仮面の重責から解き放たれたフェルディナンドは、室内に入ってきた彼の妻である王妃マレルダの名を疲れた様子で口にした。
「何か飲む?」
「そうだな……。他国から輸入したコーヒーなどでも……」
「分かったわ」
慣れた手つきで、水と火の魔法を使いコーヒー豆から、コーヒーを抽出し、カップに入れていく王妃。
「はい。アナタ」
「すまないな。お前も疲れているというのに……」
「大丈夫よ」
「それにしても、普段は政務には極力、関わらない方針であったお前が珍しいものだな。重鎮の貴族も、お前が、あそこまで発言していたことに驚いていたぞ?」
「それは、息子の進退が掛かっていますもの。どんなにダメな子供でも、私がお腹を痛めて産んだ子供には代わりないもの」
「――だが、レオンが起こした問題は大きいぞ? 少なくとも、私の承諾を一切得ずにメレンドルフ公爵家の令嬢に一方的に婚約破棄を告げたのは、貴族だけでなく、たとえ一国民だったとしても駄目なことだ」
「それは分かっているわ」
「――なら、何故、時間稼ぎをするような真似をする?」
「決まっているわ」
「何かあるのか?」
「エリーゼちゃんと話をした事は、フェルに伝えたわよね?」
「ああ、この前、聞いたな」
「そこで、エリーゼちゃんは、ヘルトリング男爵家の娘の行いを不問に伏すと言ったの」
「ふむ、それは聞いているが?」
「その時にね、エリーゼちゃんは、息子のことを庇ってくれたのよね。ヘルトリング男爵家の娘にレオンが何の価値もないと言われた時に、本当に真剣に怒ってくれたの」
マレルダの言葉に、フェルディナンドは目を細める。
「つまり?」
「エリーゼちゃんは、息子のことを本当は好きだけど、婚約破棄された手前、それを口にできないという事なの」
「なるほど……。だから、少しでも時間を稼ぎ、国内におけるレオンの貴族内における評価を少しでも改善して、レオンの方からという訳か?」
「そう。それに、エリーゼちゃんくらいだから」
「お前の御眼鏡に叶った娘という意味ではか?」
「ええ。それに精霊の御子が王家に嫁ぐ理由も大きいわ」
「教会が暴走した時に、王家の後ろ盾には精霊が居るということにするということか」
「ええ」
そこまで話したところで、フェルディナンドはコーヒーを口にする。
苦味のある味。
それが疲れを癒し、疲れ切っていた頭を冴えわたらせる。
「エリーゼちゃんも、息子を悪くは思っていないようだし、何なら、好きと思っているみたいだから、レオンにはしばらく外交ということで国外に使節として派遣して、外を見せるのもいいと思うのよね」
「その間に国内で情報操作を行うという訳か」
「ええ。これはレオンとエリーゼちゃんの為、そして精霊の寵愛を受けているエリーゼちゃんには世継ぎを産んでもらえば、王国としても悪くはないでしょう?」
「そうだな……。まぁ、そのためにヘルトリング男爵家に関しては国外追放で許したのだからな」
「そうね。エリーゼちゃんとの約束だし、彼女が将来の王妃になれば下手な工作は良くは無いもの。それなら約束は守っておいた方がいいでしょう?」
「そうだな」
ソファーに二人座りながら、今後の事を相談していく。
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