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第29話 続・獣魔契約なのです。

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 ――というわけです!

「このモフモフはいいモフモフね」
「これは、素晴らしいものだ」

 お父様や、お母様はフェルシアさんの体を預けながら目を閉じています。
 どうやら、もふもふ伝道師としての仕事を完結できたようで良かったです。

「……主の両親だという事が何となく理解できた」

 呆れたような表情で溜息交じりにフェルシアさんが溜息をついていますが、何だか褒められているような気がしないのは何故でしょうか?

「シロというのか」

 お父様の足元で転がっていた仔犬のお腹を触りながら小さく呟く。

「――え? お父様?」
「ふむ。どうやら、主の父君は、私の子供と契約を結んだようだな」

 私の驚きに、フェルシアさんが補足してきます。

「どうかしたのか? エリーゼ」
「フェルシアさんが、御自分の子供が、お父様と契約を結んだと――」
「何!? どういうことだ?」
「えっとですね……」

 お父様に、獣魔契約に関してフェルシアさんから教えてもらった内容を説明していく。
 その間にも、お母様は、もう一匹のフェルシアさんの子供をあやしている。
 もしかして……。

「なるほど、大体は理解した。だが、いいのか? この私と契約を結んでも?」
「さあ? フェルシアさん、その辺はどうなんですか?」

 私の質問に、フェルシアさんは「以前に説明した通りだ」と返してくる。

「えっと……、お父様。フェンリルにとって契約は名誉な事なので問題ないらしいです」
「そうか」

 納得いったのか、お父様は頷きシロちゃんを撫でています。
 
「そうなのね! それなら、ギンちゃんも私と契約してくれたのね?」
「やっぱり、お母様も、フェルシアさんの子供の声が?」
「ええ。気のせいだと思ったのだけれど……、それなら良かったわ」

 それにしても、ビックリ。
 フェルシアさんの方を見ると、笑みを浮かべているように見えてしまう。

「さすがは私の主の父君と母君であるな。フェンリルと契約する事が出来る人間は多くないのだぞ」
「ここに3人いますけど……」
「それだけ、主とご両親は稀有な存在ということであろう。――さて、主よ。主の両親には、私の子らの面倒を、契約者としてキチンと見てほしいと伝えてほしい」

 途中から、真剣な表情で語り掛けてくるフェルシアさん。
 そこには親として愛情を感じる。

「分かりました! あの! お父様、お母様」
「なんだい?」
「どうかしたの? エリーゼ」
「フェルシアさんが子供を頼みますって、立派に育ててほしいと――」

 お父様とお母様は、一瞬――、呆気に取られていたけれど、すぐに立ち上がり、フェルシアさんの前に立ち居住まいを正すと二人して頭を下げた。
 
 それから数日後、お父様とお母様は領内と王宮の政務があるからと、王都へと戻っていった。
 その馬車を、フェルシアさんと見送る。

「やはり主の御両親であったの」
「フェルシアさん、良かったんですか? 子供達が、私の両親と行ってしまって……」
「うむ。子供は、親から巣立つものだ。それにフェンリル族にとって契約をし、契約者共に在ろうとすることは名誉なことだ。だから気に病む必要はない。それは、主の腕の中にいるチロも同様だ」
「はい!」

 私は、抱きしめている尻尾を振っているチロちゃんを見ながら頷く。

「うむ。やっぱり主は笑顔が似合う」
「フェルシアさん……」

 私とフェルシアさんが話をしている間にも、お父様とお母様が乗っている馬車の姿は小さくなっていった。

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