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第25話 両親がやってきました。
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お父様が、来られるという事で用意を始めてから数刻が経った頃――、「エリーゼ様、メレンドルフ公爵家の馬車が村を通り抜けたと冒険者より報告がありました」と、ウルリカから報告を受けた。
「えっと……、馬車よりも早い情報伝達って……」
「魔法による信号弾の構築をしておりました」
「そうなのね」
「はい。冒険者は魔物を倒す際に、情報伝達共有と速度は重要ですので」
そういえば、戦場でも情報伝達は最重要と習ったような……。
「それにしても――、冒険者の方々にご迷惑ばかりかけてしまいますね」
「カーネルさんが、新人冒険者の連携練習の為にと行っているようです」
「そうですか。まったく私に情報が降りてきていないのだけれど……」
「エリーゼ様には、何度かお伝えしましたが、フェルシアさんの所で寝ていましたので――」
「……何か、ごめんなさい」
「本来でしたら、ご理解頂けるまで何度も説明を差し上げる所なのですが、そこまで重要な事ではありませんでしたので一度の報告だけに留めておきました」
「そうなのね」
「それでは、エリーゼ様。そろそろ――」
「そうね! 早く、出迎えを致しませんと」
ウルリカを供だって館の入り口に向かう。
館から出たところで、メレンドルフ公爵家――、つまり私の実家の家紋を掲げた馬4頭が引く馬車の姿が見えた。
「今日は、余所行きの馬車なのね」
「恐らくは幾つかの領内を通り抜けますので、箔を見せる為かと――」
「そうね。貴族には見栄も大事ですものね」
間近まで、馬車が来たところで、立ち姿を正す。
そして、馬車は目の前で停まり従者の方が、馬車の扉を開けるとお父様が馬車から降りてくる。
今年で齢34歳になられるけど、もっと若く見える事から、お父様は社交の場では、女性には人気だと伺った事がある。
元々は剣で身を立てた武門の貴族家という事もあり、鍛錬を行っていないらしく、引き締まった体つきをしている。
「エリーゼ」
馬車から降りてきた時は、鋭い眼光を目に宿していて――、少し怖そうな雰囲気を醸し出していたけれど、私の名前を呼びながら小走りに近寄ってきて抱きしめてくるお父様。
「おお、エリーゼだ。遠くからは何度か見ていたが、大きくなったな」
「お父様、少し痛いです」
「――おっ……と。すまん」
「貴方、エリーゼに会えて嬉しいのは分かりますが、エリーゼは武術の鍛錬をしていないのですから、貴方が力を入れて抱きしめたら壊れてしまいますわ」
「――お、お母様!?」
「久しぶりね。エリーゼ。今日は、ルーカスが黙って此方に来ようとしたから一緒に来たのよ?」
「そうだったのですか……」
「ええ。それにしても、廃墟同然ということで話を伺っていましたが――」
お母様は、館を見たあと、私の方へと視線を戻してくる。
「ずいぶんと優秀な人を雇っているようね」
「雇っているというか、お力を貸して頂いております」
「そうなの?」
「ルーカス様、ルアナ様。お部屋の準備が整っております」
「久しぶりね、ウルリカ」
「はい。ルアナ様」
「エリーゼを支えてくれたこと感謝するわ」
お母様の労いの言葉に、ウルリカは頭を下げたあと、両親を連れて部屋まで案内していく。
「なるほど。あれがお嬢ちゃんの両親ってわけか」
「カーネルさん!?」
草むらから出てくるカーネルさん。
一体、いつからそこに……。
「いや、何――、俺達みたいな冒険者が姿を見せていると、色々と貴族様に失礼かなと思ってな」
「メレンドルフ公爵家は武門の家柄ですし、お母様の実家の貴族家も軍務に従事する貴族の出ですので、そこまで気にしないと思います」
「まぁ、それでもな」
「そうですか」
「とりあえずだ。両親に会ったのは久しぶりなんだろう? ゆっくりと話でもしてきたらどうだ?」
「はい」
「えっと……、馬車よりも早い情報伝達って……」
「魔法による信号弾の構築をしておりました」
「そうなのね」
「はい。冒険者は魔物を倒す際に、情報伝達共有と速度は重要ですので」
そういえば、戦場でも情報伝達は最重要と習ったような……。
「それにしても――、冒険者の方々にご迷惑ばかりかけてしまいますね」
「カーネルさんが、新人冒険者の連携練習の為にと行っているようです」
「そうですか。まったく私に情報が降りてきていないのだけれど……」
「エリーゼ様には、何度かお伝えしましたが、フェルシアさんの所で寝ていましたので――」
「……何か、ごめんなさい」
「本来でしたら、ご理解頂けるまで何度も説明を差し上げる所なのですが、そこまで重要な事ではありませんでしたので一度の報告だけに留めておきました」
「そうなのね」
「それでは、エリーゼ様。そろそろ――」
「そうね! 早く、出迎えを致しませんと」
ウルリカを供だって館の入り口に向かう。
館から出たところで、メレンドルフ公爵家――、つまり私の実家の家紋を掲げた馬4頭が引く馬車の姿が見えた。
「今日は、余所行きの馬車なのね」
「恐らくは幾つかの領内を通り抜けますので、箔を見せる為かと――」
「そうね。貴族には見栄も大事ですものね」
間近まで、馬車が来たところで、立ち姿を正す。
そして、馬車は目の前で停まり従者の方が、馬車の扉を開けるとお父様が馬車から降りてくる。
今年で齢34歳になられるけど、もっと若く見える事から、お父様は社交の場では、女性には人気だと伺った事がある。
元々は剣で身を立てた武門の貴族家という事もあり、鍛錬を行っていないらしく、引き締まった体つきをしている。
「エリーゼ」
馬車から降りてきた時は、鋭い眼光を目に宿していて――、少し怖そうな雰囲気を醸し出していたけれど、私の名前を呼びながら小走りに近寄ってきて抱きしめてくるお父様。
「おお、エリーゼだ。遠くからは何度か見ていたが、大きくなったな」
「お父様、少し痛いです」
「――おっ……と。すまん」
「貴方、エリーゼに会えて嬉しいのは分かりますが、エリーゼは武術の鍛錬をしていないのですから、貴方が力を入れて抱きしめたら壊れてしまいますわ」
「――お、お母様!?」
「久しぶりね。エリーゼ。今日は、ルーカスが黙って此方に来ようとしたから一緒に来たのよ?」
「そうだったのですか……」
「ええ。それにしても、廃墟同然ということで話を伺っていましたが――」
お母様は、館を見たあと、私の方へと視線を戻してくる。
「ずいぶんと優秀な人を雇っているようね」
「雇っているというか、お力を貸して頂いております」
「そうなの?」
「ルーカス様、ルアナ様。お部屋の準備が整っております」
「久しぶりね、ウルリカ」
「はい。ルアナ様」
「エリーゼを支えてくれたこと感謝するわ」
お母様の労いの言葉に、ウルリカは頭を下げたあと、両親を連れて部屋まで案内していく。
「なるほど。あれがお嬢ちゃんの両親ってわけか」
「カーネルさん!?」
草むらから出てくるカーネルさん。
一体、いつからそこに……。
「いや、何――、俺達みたいな冒険者が姿を見せていると、色々と貴族様に失礼かなと思ってな」
「メレンドルフ公爵家は武門の家柄ですし、お母様の実家の貴族家も軍務に従事する貴族の出ですので、そこまで気にしないと思います」
「まぁ、それでもな」
「そうですか」
「とりあえずだ。両親に会ったのは久しぶりなんだろう? ゆっくりと話でもしてきたらどうだ?」
「はい」
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