王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫

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第23話 モフモフして癒されます。

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 ――一族、全員が死罪……。
 それは、それは……。

 私が見ている前で、体を震わしているレオン様。

「連れて行きなさい」

 騎士の方が、王妃様の命令に従って、ショックで腰が抜けて座っているアデリナさんの縄を掴んで強引に立たせる。
 痛がる様子も見せずに、目は虚ろなまま。
 レオン様は、それを見ていることしかできない。
 何故なら、この現状を作り出したのは二人なのだから何を言っても変わらない。
 それは事実でしかない訳で……。

「王妃様」
「何かしら?」
「死罪は良くないと思います」
「私は言いましたよね? 王家と公爵家の名誉に泥を塗ったと――、それをエリーゼ、貴女は聞いていましたわよね?」
「はい。聞いておりました」

 王妃様の言っていることは間違ってない。
 間違ってはいないけど……。

「たしかに貴族の序列は絶対です。レオン様やアドリナさんが行った行動は貴族として間違っていると思います」
「そうね。だから死罪の可能性が高いと伝えたのよ?」
「わかっています」

 私は、王妃様を真正面から見て言葉を紡ぐ。

「ですが、ここは極力――、罪の関しては抑えるべきではないでしょうか? 貴族の淑女と言いますのは恋に恋する生き物です。そこを踏まえた上で寛大な処置をとる事こそ王家の威信を――、器を見せる事だと思うのです」
「エリーゼ?」

 私の名前を呟きながらレオン様が、私を見上げてくる。

「それは、王家と貴女の実家の公爵家の名誉に泥を塗った事を無条件で許すと言っているのかしら?」
「いいえ。罪が重すぎても軽すぎても問題だとお伝えてしているのです。レオン様の御身分は確かに王太子様ですが、その王太子様は貴族院の卒業後という事になっていたはずです。つまり私に婚約破棄を告げたのは王太子前という事になるわけです」
「つまり、貴女は子供の戯言で済ませと言いたい訳なのかしら?」 

 私は、王妃様を見ながら頭を振る。

「それなりの処罰は必要だと思いますが……、死罪というのは――」

 いくら何でも死罪はやりすぎです。
 貴族籍剥奪くらいが妥当だと思います。

「……貴方は、息子や、そこの貴族の娘に貶められたのよ? それは貴族として――、そして社交の場においては最大限の侮辱なのよ? それを許すというの?」
「はい」


 これで私は王族になる程の覚悟や貴族としての自覚がないと思われ、きっと再度、レオン様との婚約が結ばれることはないはず。

「貴族の令嬢としては正しくない事は重々理解しています。ですが、何卒――」
「そう。それなら言うわよ? 王家の威信に傷つけた者、それを許すと考えているという事は王家に反逆の意思ありと取られるのよ? それでもいいのかしら?」
「反逆の意思はありません。――ですが、結果的にそうなるのでしたら、この身を好きにしてもらって構いません」

 王妃様は、扇を口元から離すと、満足そうに頷くと、アデリナさんを座らせていた騎士の方へ視線を向ける。

「ヘルトリング男爵家アデリナ令嬢を、ヘルトリング男爵家まで届けなさい。いいわね?」
「はっ」

 騎士の方が頭を下げるとアデリナさんの縄を解いていく。

「――わ、私……、エリーゼ様……私……」
 
 縄を解かれたアデリナさんが、涙声で私の名前を呟いてくるけど、私は王妃様と真正面から見つめあっていて身動きが取れない。

「エリーゼ。今回のことは、国王陛下に私の方から伝えておきます。貴女の覚悟も含めてね」
「は、はい……」
「レオン、立ちなさい。王城に戻ります」
「母上?」

 王妃様は、中庭から立ち去る際に、私の方を見て笑みを浮かべると、そのまま去っていく。
 王妃様の姿見えなくなったところで緊張が途切れたこともあって椅子に座りこんでしまう。

「エリーゼ様、大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫ですわ」

 勢い余って王妃様に楯突いてしまった。
 ただ、いくら何でも一族全員死罪という可能性は何とかしたかった。

「お父様とお母様に……お兄様にも迷惑をかけてしまうかもしれないです……」
「エリーゼ様、おそらく問題ないと思いますけどね」
「どういうことなの?」
「たぶんです」

 何故か分からないけど、ウルリカは何か確信があるように自信ありげに呟いた。
 そのあとは、気分転換も兼ねて私は、屋根裏部屋に向かう。

「フェルシアさん!」
「どうした? 主よ」
「モフモフさせてください!」
「……まぁ、よいだろう」

 ドレスを脱いで下着姿でフェルシアさんのモフモフな艶やかな毛の中へダイブする。

「ふぁああ、癒され――」

 仔犬を抱きながらのフェルシアさんの毛の中で瞼を閉じる。
 するとすぐに睡魔が襲ってきました。

  
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