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第20話 アデリナさんが来られました。
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「病が移るといけないから、貴女はアデリナに会う必要はないわよ」
「ですが……」
「貴女は、優しすぎるのが問題よね。そのへん、きちんと公私混同しないように教育したはずなのだけど?」
私の瞳を、まっすぐに見てくる王妃様。
それは、まるで、私に手を出すなと言っているようで……。
だけど、アデリナさんが体調復帰してくれないと、私にも色々と不都合が生じる。
モフモフな生活が出来なくなるという大事なことが……。
「マレルダ様」
私が考えていた所で、ウルリカが王妃様の名前を呼ぶ。
何事!? と、思ってみれば、ウルリカの手には便箋が握られていた。
「村から伝令とのことです」
「そう……」
残念そうな雰囲気を醸し出したあと、王妃様は席から立ち上がる。
そして――、「エリーゼ。続きは、またあとで話しましょう」と語り掛けてきた。
だけど、私としては、非常に困る。
本当のところ、アデリナさんの容体を回復させに行きたいけど、王妃様に停められている以上、どうにもならない。
王妃様を乗せた馬車を見送り、その馬車の姿が見えなくなったところで
「はぁー」
「エリーゼ様」
「どうしたの? ウルリカ」
「少し言いにくい事が……」
「どうしたの?」
話を躊躇するなんて、ウルリカらしくない。
「ちょっと! まだなの!」
何か困っていることがあるのか聞こうとしたところで、館の扉がバンッ! と開き、館から女性が出てきた。
服装は貴族の令嬢らしく整えられていて、すぐに誰か分かってしまう。
「どうして、アデリナさんがここに……?」
たしか、王妃様がアデリナさんは病だと言っていたのに……。
「どうしてもこうもないわよ! 何なの? あの王妃教育ってやつ! 頭おかしいわよ! 毎日毎日勉強勉強勉強って!」
「もしかして……逃げて来られました? 王城から」
私は手紙に書かれていた内容を思い出す。
アデリナさんが、王城から何度も逃げ出そうとしていると書かれていたことを。
「悪い? 逃げたら悪い? あんなの耐えられないわ!」
地面を蹴りつけて、私を睨みつけてくるアデリナさん。
「あんた代わんなさいよ!」
「――え? ……で、でも、アデリナさんはレオン様と結婚するのでは?」
「私は! 楽して! 暮らせるって思ったからレオンに近づいたの! 毎日、睡眠が3時間とか頭がおかしくなるわ!」
「でも、アデリナさん。王妃という仕事は大変ですので……」
「分かっているわよ! 嫌と言うほど教えられているから! だから! あんたが王妃を代わりなさいよ!」
「それは、困ります……」
「どうしてよ!?」
「レオン様は、アデリナさんを好いていると言われましたので……。だから、私はレオン様を愛していましたけど、レオン様の幸せを思って身を引いたのです」
「――なら! 問題は解決じゃない! 私は、レオンは好きじゃないもの! レオンの王太子って位と将来、国王になる王妃である私が贅沢できる事が好きだったの! ――でも、もーむり! 耐えられないわ! レオンは、エリーゼ、貴女にあげるから! だから、貴女が代わりに王妃やってよ!」
なんという……、身勝手というか……。
それは、王妃教育は大変だけど……レオン様が、真実の恋に目覚めたって語って時の事を思い出すと流石に私も……。
「アデリナさん」
私は、居住まいを正す。
「な、なによ……」
「レオン様は、アデリナさんとの結婚を思って――、貴族からの反発もお考えの上で、卒業式の場で、私に婚約破棄を申し入れたのです。それは、アデリナさんを愛しているに他ならないと思います。その好意を無碍にされるおつもりですか?」
「だから言ったじゃない! 私は、レオンなんてどうも思ってないの! だから、レオンは、あなたにあげるから王妃もあげるから、代わって! このままだと、私、教育という拷問で殺されちゃうから!」
「……いい加減にしてください! レオン様を物のように――。そのような素振りや話し方をレオン様が聞いたら悲しむことを、どうして理解されないのですか? きちんと王妃としての教育を受けて、レオン様を愛してあげて――「もういい」……え?」
振り返る。
そこには、肩で息をしているレオン様の姿が。
「アデリナ。俺は君を追ってきたんだ。すぐに戻れば、父上も母上も説得できると思って……。だが――、そうか……君は……アデリナは、俺のことを愛してくれていなかったのか……」
「そ、それは……」
たじろぐアデリナさん。
もう何がなんだか分からない。
何とか仲直りしてほしい。
ここに王妃様が来たら大変なことになってしまいます。
それと一つ、私は別の事を考えていた。
どうして病だったはずのアデリナさんが、ここまで元気なのに、王妃様が病だと嘘をついたのか? という点。
でも、何となく理由は分かってしまった。
もしかして、行方不明になったから、アデリナさんを病という事にして、逃げた事を隠そうとした? と、そうとしか考えられない。
「分かった。アデリナ、君とは婚約を解消する」
「本当ですか!?」
「ああ。すまなかった……」
すごく落ち込んでいるレオン様。
それとは対称的に、喜んでいるアデリナさん。
――ほんと場の空気が居た堪れない程、痛い……。
誰か、助けて……。
「ですが……」
「貴女は、優しすぎるのが問題よね。そのへん、きちんと公私混同しないように教育したはずなのだけど?」
私の瞳を、まっすぐに見てくる王妃様。
それは、まるで、私に手を出すなと言っているようで……。
だけど、アデリナさんが体調復帰してくれないと、私にも色々と不都合が生じる。
モフモフな生活が出来なくなるという大事なことが……。
「マレルダ様」
私が考えていた所で、ウルリカが王妃様の名前を呼ぶ。
何事!? と、思ってみれば、ウルリカの手には便箋が握られていた。
「村から伝令とのことです」
「そう……」
残念そうな雰囲気を醸し出したあと、王妃様は席から立ち上がる。
そして――、「エリーゼ。続きは、またあとで話しましょう」と語り掛けてきた。
だけど、私としては、非常に困る。
本当のところ、アデリナさんの容体を回復させに行きたいけど、王妃様に停められている以上、どうにもならない。
王妃様を乗せた馬車を見送り、その馬車の姿が見えなくなったところで
「はぁー」
「エリーゼ様」
「どうしたの? ウルリカ」
「少し言いにくい事が……」
「どうしたの?」
話を躊躇するなんて、ウルリカらしくない。
「ちょっと! まだなの!」
何か困っていることがあるのか聞こうとしたところで、館の扉がバンッ! と開き、館から女性が出てきた。
服装は貴族の令嬢らしく整えられていて、すぐに誰か分かってしまう。
「どうして、アデリナさんがここに……?」
たしか、王妃様がアデリナさんは病だと言っていたのに……。
「どうしてもこうもないわよ! 何なの? あの王妃教育ってやつ! 頭おかしいわよ! 毎日毎日勉強勉強勉強って!」
「もしかして……逃げて来られました? 王城から」
私は手紙に書かれていた内容を思い出す。
アデリナさんが、王城から何度も逃げ出そうとしていると書かれていたことを。
「悪い? 逃げたら悪い? あんなの耐えられないわ!」
地面を蹴りつけて、私を睨みつけてくるアデリナさん。
「あんた代わんなさいよ!」
「――え? ……で、でも、アデリナさんはレオン様と結婚するのでは?」
「私は! 楽して! 暮らせるって思ったからレオンに近づいたの! 毎日、睡眠が3時間とか頭がおかしくなるわ!」
「でも、アデリナさん。王妃という仕事は大変ですので……」
「分かっているわよ! 嫌と言うほど教えられているから! だから! あんたが王妃を代わりなさいよ!」
「それは、困ります……」
「どうしてよ!?」
「レオン様は、アデリナさんを好いていると言われましたので……。だから、私はレオン様を愛していましたけど、レオン様の幸せを思って身を引いたのです」
「――なら! 問題は解決じゃない! 私は、レオンは好きじゃないもの! レオンの王太子って位と将来、国王になる王妃である私が贅沢できる事が好きだったの! ――でも、もーむり! 耐えられないわ! レオンは、エリーゼ、貴女にあげるから! だから、貴女が代わりに王妃やってよ!」
なんという……、身勝手というか……。
それは、王妃教育は大変だけど……レオン様が、真実の恋に目覚めたって語って時の事を思い出すと流石に私も……。
「アデリナさん」
私は、居住まいを正す。
「な、なによ……」
「レオン様は、アデリナさんとの結婚を思って――、貴族からの反発もお考えの上で、卒業式の場で、私に婚約破棄を申し入れたのです。それは、アデリナさんを愛しているに他ならないと思います。その好意を無碍にされるおつもりですか?」
「だから言ったじゃない! 私は、レオンなんてどうも思ってないの! だから、レオンは、あなたにあげるから王妃もあげるから、代わって! このままだと、私、教育という拷問で殺されちゃうから!」
「……いい加減にしてください! レオン様を物のように――。そのような素振りや話し方をレオン様が聞いたら悲しむことを、どうして理解されないのですか? きちんと王妃としての教育を受けて、レオン様を愛してあげて――「もういい」……え?」
振り返る。
そこには、肩で息をしているレオン様の姿が。
「アデリナ。俺は君を追ってきたんだ。すぐに戻れば、父上も母上も説得できると思って……。だが――、そうか……君は……アデリナは、俺のことを愛してくれていなかったのか……」
「そ、それは……」
たじろぐアデリナさん。
もう何がなんだか分からない。
何とか仲直りしてほしい。
ここに王妃様が来たら大変なことになってしまいます。
それと一つ、私は別の事を考えていた。
どうして病だったはずのアデリナさんが、ここまで元気なのに、王妃様が病だと嘘をついたのか? という点。
でも、何となく理由は分かってしまった。
もしかして、行方不明になったから、アデリナさんを病という事にして、逃げた事を隠そうとした? と、そうとしか考えられない。
「分かった。アデリナ、君とは婚約を解消する」
「本当ですか!?」
「ああ。すまなかった……」
すごく落ち込んでいるレオン様。
それとは対称的に、喜んでいるアデリナさん。
――ほんと場の空気が居た堪れない程、痛い……。
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