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第15話 お金を稼ぐのは大変ですね。
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屋敷に戻り、これからのことを冒険者の方々へと説明する。
すると、カーネルさんは「それは止した方がいいな」と、渋い顔をして駄目出しをしてきた。
「ど、どうしてですか?」
「理由はいくつがあるが……」
いくつもあるんだ……。
「まず一つ目は、今回の治療行為は商売で行う点だ」
「それは、駄目なことなんですか?」
私は、ウルリカの方を見る。
ウルリカも、何が何だかサッパリと言った様子。
「まぁ――、ウルリカは、一応はAランク冒険者だったようだが、引退せずに公爵家に抱えられたんだろう?」
「はい。そうですが……」
「俺は、パーティが解散する直前だったから、色々と調べていたんだが、回復魔法ってのは神様の奇跡ってことになっている」
「つまり、教会が何か言っていること言う事ですか?」
「平たく言えばそう言う事だな」
「――ですが、エリーゼ様は精霊王様から魔法を教わっていて会話もしている方ですが……」
「そこが問題なんだよ。教会としては精霊王と繋がりがあると分かったら……あとは、分かるな?」
「それって、教会の方も精霊王さんと話をしたいってことですか?」
なるほど。
教会の方は、神様と話したことがないって言っていたから、私を経由して話をしたいと。
「まぁ、少し違うが――。色々と面倒だってことだ」
「たしかに……。皆が、精霊さんと話をしたいって言ったら、翻訳するの大変ですものね」
「くくくっ……」
カーネルさんが、私の話を聞いていきなり小さく笑った。
「私、何か、変な事言いましたか?」
「――いや。なんでもない。とにかく面倒だってことだ。それと――」
カーネルさんは頭を掻きながら、人差し指を立てます。
「さっきも言ったが、商売で治療を目的として魔法を使う場合、エリーゼの魔法は万能すぎて脅威なんだ。特に教会にとってはな」
「つまり、エリーゼ様が魔法で。日常的に回復魔法で病や怪我人を治療すると――」
「ああ、教会の威信が崩れる」
「なるほど……」
「だから、必ず商売の邪魔をしてくるし、下手すれば……」
「ほう……。主に手を出すのなら、私が、教会ごと! この国を滅ぼしてもいいのだが?」
凄みのある声で、私が背中を預けていたフェルシアさんが怖い事を言います。
「フェルシアさんは、ストップ! そういうことしたらダメ!」
「何て言ったんだ?」
やっぱり気になったのかカーネルさんが聞いてくる。
「私に手を出したら教会ごと国を滅ぼすって……」
「冗談に聞こえないから困るな。だから止めたのか」
「はい。冗談でも言って良い事と言ったらダメなことがあります。――でも、そうなると別の稼ぎを考えないと駄目ですよね」
「ああ。ちなみに、もう一つはフェンリルに乗って移動すると国中がパニックになるからダメだ」
「……あ、はい……」
私のモフモフ移動ライフは潰える方向のようです。
「あ!」
「何かあったのか?」
「それなら、私が教会に許可を取ってから治療をすればいいんじゃないですか?」
「教会所属の人間は、基本的に無償で回復をしている」
「そうなのですか!?」
無償で回復魔法をかけてくれるのなら、銅貨1枚でも高かったのかも知れない。
やっぱり、私! ぼったくりだったかも!
あとで返金騒ぎとか起きないかしら――。
そしたら森の中に小屋でも立てて余生を過ごしましょう。
私は頭の中で夜逃げをする時の算段を考える。
――必死に!
「まぁ、お布施と言う形で莫大な寄進を求められるが、これはエリーゼには言うのは駄目だな」
「――え?」
一生懸命、逃亡のことを考えていたので、カーネルさんが何を言ったのか良く聞こえなかった。
「いや、なんでもない。とにかく、俺達のために無理をしてお金を稼ぐ必要はない。むしろ、ここの辺境は、殆ど人がいないからな。珍しい魔物や、採取物がある。それだけで十分以上の稼ぎは出ているし、エリーゼが毎日、回復をしてくれているから、それだけで黒字だ」
「そうなんですか……。なんか、すごく……ごめんなさい。それでは私! 畑をして農作物で支払います!」
「エリーゼ様、それでは私も一緒に手伝います!」
「いや、いいから! 気にする必要は無いからな。冒険者ってのは、どんな時でも生活を工面できるように立ち回っているからな」
「ううっ……。わ、わかりました……。それでは何かあったら、回復は任せてください……微力ながら力になります」
「主」
居た堪れなくなった所で助け船を出してくれるのかフェルシアさんが私に話しかけてくる。
その瞳はランランと輝いていて、何か妙案を思いついたみたい。
「どうかしましたか?」
「私が、毎日一匹ずつワイバーンを捕まえてくれば、それで事が足りるのではないのか? ワイバーンは人間の国では高く売れると風の噂で聞いたことがある」
「そうなんですか?」
私の疑問に、頷くフェルシアさん。
さすが一国を滅ぼす力を持つドラゴンよりも強いフェルシアさんなだけはあります。
「あの、カーネルさん」
「なんだ?」
「フェルシアさんが、ワイバーンを毎日持ってきてくれるって言っています」
「それだけは、絶対にやめてくれ! 毎日、町を一個は滅ぼせるワイバーンを倒してギルドに届けにくるような領地とか、教会じゃなくて国が総力をかけて動くから!」
「ふむ。人間の世界は難しいのう」
「難しいですね。お金を稼ぐのって……」
「エリーゼ様もエリーゼ様なら、フェルシア様も大概ですね」
ウルリカは、私達を見ながら溜息をついていたけど、私ってそんなにおかしくないから。
すると、カーネルさんは「それは止した方がいいな」と、渋い顔をして駄目出しをしてきた。
「ど、どうしてですか?」
「理由はいくつがあるが……」
いくつもあるんだ……。
「まず一つ目は、今回の治療行為は商売で行う点だ」
「それは、駄目なことなんですか?」
私は、ウルリカの方を見る。
ウルリカも、何が何だかサッパリと言った様子。
「まぁ――、ウルリカは、一応はAランク冒険者だったようだが、引退せずに公爵家に抱えられたんだろう?」
「はい。そうですが……」
「俺は、パーティが解散する直前だったから、色々と調べていたんだが、回復魔法ってのは神様の奇跡ってことになっている」
「つまり、教会が何か言っていること言う事ですか?」
「平たく言えばそう言う事だな」
「――ですが、エリーゼ様は精霊王様から魔法を教わっていて会話もしている方ですが……」
「そこが問題なんだよ。教会としては精霊王と繋がりがあると分かったら……あとは、分かるな?」
「それって、教会の方も精霊王さんと話をしたいってことですか?」
なるほど。
教会の方は、神様と話したことがないって言っていたから、私を経由して話をしたいと。
「まぁ、少し違うが――。色々と面倒だってことだ」
「たしかに……。皆が、精霊さんと話をしたいって言ったら、翻訳するの大変ですものね」
「くくくっ……」
カーネルさんが、私の話を聞いていきなり小さく笑った。
「私、何か、変な事言いましたか?」
「――いや。なんでもない。とにかく面倒だってことだ。それと――」
カーネルさんは頭を掻きながら、人差し指を立てます。
「さっきも言ったが、商売で治療を目的として魔法を使う場合、エリーゼの魔法は万能すぎて脅威なんだ。特に教会にとってはな」
「つまり、エリーゼ様が魔法で。日常的に回復魔法で病や怪我人を治療すると――」
「ああ、教会の威信が崩れる」
「なるほど……」
「だから、必ず商売の邪魔をしてくるし、下手すれば……」
「ほう……。主に手を出すのなら、私が、教会ごと! この国を滅ぼしてもいいのだが?」
凄みのある声で、私が背中を預けていたフェルシアさんが怖い事を言います。
「フェルシアさんは、ストップ! そういうことしたらダメ!」
「何て言ったんだ?」
やっぱり気になったのかカーネルさんが聞いてくる。
「私に手を出したら教会ごと国を滅ぼすって……」
「冗談に聞こえないから困るな。だから止めたのか」
「はい。冗談でも言って良い事と言ったらダメなことがあります。――でも、そうなると別の稼ぎを考えないと駄目ですよね」
「ああ。ちなみに、もう一つはフェンリルに乗って移動すると国中がパニックになるからダメだ」
「……あ、はい……」
私のモフモフ移動ライフは潰える方向のようです。
「あ!」
「何かあったのか?」
「それなら、私が教会に許可を取ってから治療をすればいいんじゃないですか?」
「教会所属の人間は、基本的に無償で回復をしている」
「そうなのですか!?」
無償で回復魔法をかけてくれるのなら、銅貨1枚でも高かったのかも知れない。
やっぱり、私! ぼったくりだったかも!
あとで返金騒ぎとか起きないかしら――。
そしたら森の中に小屋でも立てて余生を過ごしましょう。
私は頭の中で夜逃げをする時の算段を考える。
――必死に!
「まぁ、お布施と言う形で莫大な寄進を求められるが、これはエリーゼには言うのは駄目だな」
「――え?」
一生懸命、逃亡のことを考えていたので、カーネルさんが何を言ったのか良く聞こえなかった。
「いや、なんでもない。とにかく、俺達のために無理をしてお金を稼ぐ必要はない。むしろ、ここの辺境は、殆ど人がいないからな。珍しい魔物や、採取物がある。それだけで十分以上の稼ぎは出ているし、エリーゼが毎日、回復をしてくれているから、それだけで黒字だ」
「そうなんですか……。なんか、すごく……ごめんなさい。それでは私! 畑をして農作物で支払います!」
「エリーゼ様、それでは私も一緒に手伝います!」
「いや、いいから! 気にする必要は無いからな。冒険者ってのは、どんな時でも生活を工面できるように立ち回っているからな」
「ううっ……。わ、わかりました……。それでは何かあったら、回復は任せてください……微力ながら力になります」
「主」
居た堪れなくなった所で助け船を出してくれるのかフェルシアさんが私に話しかけてくる。
その瞳はランランと輝いていて、何か妙案を思いついたみたい。
「どうかしましたか?」
「私が、毎日一匹ずつワイバーンを捕まえてくれば、それで事が足りるのではないのか? ワイバーンは人間の国では高く売れると風の噂で聞いたことがある」
「そうなんですか?」
私の疑問に、頷くフェルシアさん。
さすが一国を滅ぼす力を持つドラゴンよりも強いフェルシアさんなだけはあります。
「あの、カーネルさん」
「なんだ?」
「フェルシアさんが、ワイバーンを毎日持ってきてくれるって言っています」
「それだけは、絶対にやめてくれ! 毎日、町を一個は滅ぼせるワイバーンを倒してギルドに届けにくるような領地とか、教会じゃなくて国が総力をかけて動くから!」
「ふむ。人間の世界は難しいのう」
「難しいですね。お金を稼ぐのって……」
「エリーゼ様もエリーゼ様なら、フェルシア様も大概ですね」
ウルリカは、私達を見ながら溜息をついていたけど、私ってそんなにおかしくないから。
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