王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫

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第13話 モフモフは正義です。

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 精霊王のお導きという事になり、冒険者の方々を何とか説得してから一週間が経過しました。
 今、メレンドルフ公爵家の館には、

 魔物フェンリルのフェルシアお母さん。
 そして、その仔犬が3匹。
 2匹は、モフモフなお母さんの毛の中に隠れていた。
 あと警備としてカーネルさんと、そのパーティメンバーが10人。
 そして、私とウルリカが暮らしています。

 部屋数は20を超える屋敷なので、全然、空き部屋はあるので特に問題ない。
 応接室とか来客室とかも後回しにしているけど、辺境の地に訪問客も来ないので全然問題ない。
 
「エリーゼ様! エリーゼ様!」

 何やら、私を探すウルリカの声が聞こえてくる。
 きっと、何か仕事を押し付けられる。
 そんな感じ。
 だって、この一週間、領地に暮らすのなら飛び地であってもキチンと管理しませんと! と、お父様に向けて領地の管理の許可申請の紙を書かされたし。
 たしかにお父様とお母様は大好きだけど、私に領地管理は無理。

「よいのか? 行かなくて」
「眠いからいいのです」

 私は、フェルシアさんの天然100%の長い毛の中に隠れ――、仔犬を抱きながら瞼を閉じていく。
 暖かくて、モフモフで、癒されて――。

「もう私は貴族としてダメかも知れません。毎日、24時間ずっと寝ていたいです」
「それは貴族どころか人としても駄目だと思うのだが?」

 フェルシアさんが、何か言ってくるけど、抱いている仔犬からもフェルシアさんからも良い匂いがしているので、何も問題ないのです。

「失礼ですね……充電期間ですよ、充電期間。明日になったら本気をだしますわ」
「昨日も同じことを言っていなかったか?」
「気のせいです」

 ああ、もう眠い。
 もう寝てもいいよね……。
 
「駄目だ。この主、早くなんとかしないと」
「ここに居ましたか!」

 そう言って屋根裏部屋に上がってきたウルリカ。
 そして、ウルリカの手は毛並みの生えそろった極上の毛布団の中へと入ってきて、私の腕を掴んできた。

「エリーゼ様! 村の視察の約束があるでしょう!」
「私には無理よ。そういうのは苦手だからっ。誰か仕事をチェックするなんて、私には無理。それよりも、どうして、わたしがここに居るって分かったの?」
「それは、フェルシア様が吠えたからです」
「フェルシアさん!?」
「何のことか知らぬな」

 私は愕然とする。
 裏切られた! もう、ここまま夢の世界に旅立ちます。

「エリーゼ様! エリーゼ様は、ここの領地を治める貴族の令嬢なのです」

 寝ようと瞼を閉じようとしたら、ウルリカが手を引っ張ってきて寝られない。

「それは分かっていますけど……」
「それと、領地管理をしてお金を稼ぎませんと、警備をして頂いている方への給金も出せません。エリーゼ様は、警備をしてくれている方へ給金も出さないおつもりなのですか?」

 そういえば、カーネルさん達の好意に甘えているばかりで、私は一切、カーネルさん達や冒険者の方や職人さんに給金を渡していなかった。
 それは上に立つ者としてではなく、仕事をしてくれた方へのお礼――、つまり対価です。
 払うのは当然なのです。
 そして、それを怠るのは貴族してはよくないし、お父様やお母様の名前にまで迷惑をかける事になる。

「分かったわ。ごめんなさい。私、貴族として間違っていたわ」
「ご理解頂けたのなら幸いです。エリーゼ様が、やらなくて――って、どうして下着姿なんですか!?」
「こんなに極上のモフモフにモフモフされてモフモフするのに服を着ていたら失礼に当たりますわ!」
「我が主は、貴族以前に人として、どうなのか? というレベルではあるな」
「何をドヤ顔で……。今、服を持ってまいりますのでお待ちください。それと、あとで説教ですから!」
「あ、はい……」

 呆れたような物言いのフェルシアさんと、お怒りなウルリカ。
 きっと、あとでたくさん小言言われると思うの。
 もう、モフモフな国を作れないかな?
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