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第10話 真っ白な仔犬がいました。

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 私と、仔犬の目の視線が交差する。
 仔犬は、つぶらな瞳にまっしろな毛並みをしていて、とっても可愛い。
 
「どこの子なの?」
 
 私は、毛布を捲って、仔犬を両手でそっと抱えると抱きかかえる。
 ほんのりと人よりも温かい。
 まだ肌寒い時期という事もあり、腕の中に抱えているだけで、癒されるー。

「くーん」

 甘えるように私の胸に顔をこすりつけてくる。
 
「お母さんは、どこにいるの? って、答えられないわよね」
 
 これから、どうしよう? と、思い私は、仔犬を抱きしめたまま立ち上がり、片手で部屋の扉を開けて館の中から外へ出る。

「ウルリカっ」
「エリーゼ様? もう、いいのですか?」
「――えっと……、何が?」
「いえ。お気持ちを切り替えることが出来たのでしたら、私が何か言う事もありませんので」
「それより、この子見て!」

 ウルリカに、腕で抱きかかえている仔犬を見せる。
 しばらくウルリカは、私が抱きかかえている仔犬を見ていると、目を大きく見開く。

「エリーゼ様、コレはどこに居たのですか?」
「私の部屋の毛布の中で寝ていたわ」
「なんという……。カーネル、いますか!?」
「――ん? どうかしたのか? いまいく!」

 何故、慌てているのか分からないけど、ウルリカはカーネルさんへ声をかけていた。
 その様子から、何か只ならぬ気配を感じてしまう。

「もしかして、ウルリカは犬が嫌いなのですか?」
「――いえ。そうではなくて……」

 話している間にも、金槌を持ったカーネルさんは2階から飛び降りると小走りで走ってくる。
 そして、私が抱きかかえている仔犬をみると顔色を変えた。

「おいおい、これは……。Sランクの魔物フェンリルの子供じゃないか。どこで、これを――」
「お嬢様の部屋――、毛布の中で寝ていたそうです」
「そうなのか? だが――、大人しいな……。見た目は、フェンリルの子供に瓜二つだが……、人間には絶対に懐かないはずだぞ?」
「そういえば、そうですね……」

 二人は、ジッと私の腕の中で眠ってしまった仔犬を見て困惑した表情を浮かべている。

「あの、フェンリルって……」
「ドラゴンよりも強い魔獣だ」
「ドラゴンよりも?」
「そうだ。俺が腕を失った相手は、ドラゴンだったからな。ここにフェンリルの子供がいるとなると大問題だぞ」

 カーネルさんの、その言葉に、私は村長のアルさんが教えてくれた事を思い出す。

「あの、カーネルさん」
「なんだ?」
「実は、村長さんが近くの森で魔物が出現していると教えてくれました」
「それは、本当か!?」
「はい」
「――ちっ。お前ら! いったん、館の修復作業は中止だ! 森の中を冒険者全員で調べるぞ! フェンリルが居る可能性がある!」

 カーネルさんの号令に次々と冒険者の皆さんが装備を整えていく。
 誰もが先ほどまでの、まったりとした雰囲気ではなく緊張感ある面持ちで鎧や武器を身に着けていき――、すぐに探索が始まった。

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