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第2話 探さないでください。
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「ウルリカ」
私は、目を伏せながらメイドのウルリカの名前を呟く。
「申し訳ありません。エリーゼ様の方が、遥かにショックは大きいでしょうに……私が動揺してしまって……」
「気にしないで」
驚くのはいいけれど、レオン様に婚約破棄された事で悲嘆に暮れた貴族の令嬢として立ち振る舞って貴族院を逃げ出さないといけない。
時間をかけていたら、今日はレオン様の卒業式であり王太子殿下としての一歩でもあるから、警護を任されている近衛兵騎士団団長のお兄様が私のことを心配し絶対に見にくる。
早く逃げ出さないと捕まってしまう。
「ウルリカ……」
「エリーゼ様。お可哀そうに……、このウルリカ! お嬢様の為なら何でも致します。美味しい御菓子でも、お作りしましょうか?」
その言葉に私は頭を左右に振る。
「…………私、少しでいいから……一人になりたいの」
俯いたまま、涙声で呟く。
もちろん、これは王妃教育の賜物で、どんな時でも場に相応しい声色を出せるようにと訓練されたもの。
「エリーゼ様……」
「ねえ、ウルリカ」
「何でしょうか?」
「うちには――、公爵家には辺境の地に領土が飛び地としてあったわよね?」
「はい。伺っておりますが……。――ですが、あそこは人口30人程度の小さな村しか……」
「そうなのね……。私、少し静かに心の落ち着かせたいの。本当に、少しの時間でいいから……ダメかしら?」
「それでは、アディ―が戻られたら伺って――」
「きっと反対されるわ。私には、年の近いウルリカした頼れる人はいないの! お願い! もう、此処には居たくないの!」
私は必死にウルリカを説得する為に、かつてない程、頭をフル回転させながら言葉を紡いでいく。
「エリーゼ様。ですが……」
「書き置きは置いていくからっ! おねがい! ウルリカのせいにはしないから!」
「……そこまで、お心を傷つけられて……。レオンめ!」
ガタッ! と、音と立てて、ウルリカが、箱の中からロングソードを持ち出して部屋から出ていこうとする。
「やめてっ!」
私は、扉の前に立って両手を広げて、必死に止める。
「ウルリカが、私のことを大事に思ってくれている事は、痛いほど伝わってくるわ。――でも、それで、ウルリカが罪人になったら、私は嫌だもの」
「エリーゼ様……。申し訳ありません。つい冒険者の時の癖で」
「ううん。ウルリカの気持ちは本当にうれしかったから。だから――」
「分かりました。それでは辺境まで、すぐに出立致しましょう」
何とか、ウルリカを説得することが出来た。
すぐに、私は手紙を書く。
内容は『辺境の地で静かに暮らします。探さないでください』というもの。
手紙を置いたあとは、すぐに着替えて部屋から出る。
そして誰にも見つからないように中庭を通り、私とウルリカは、ドレスなどを運んできてくれたメレンドルフ公爵家の馬車へと乗り込む。
もちろん従者の役は、ウルリカが兼任してくれるので、従者を探さなくて良かったのは幸いと言える。
――そして、すぐに馬の嘶きと共に馬車は走り出す。
ちなみに貴族院の門を潜る時に、後ろから、お兄様の声が聞こえたけど、きっと気のせい。
私は、目を伏せながらメイドのウルリカの名前を呟く。
「申し訳ありません。エリーゼ様の方が、遥かにショックは大きいでしょうに……私が動揺してしまって……」
「気にしないで」
驚くのはいいけれど、レオン様に婚約破棄された事で悲嘆に暮れた貴族の令嬢として立ち振る舞って貴族院を逃げ出さないといけない。
時間をかけていたら、今日はレオン様の卒業式であり王太子殿下としての一歩でもあるから、警護を任されている近衛兵騎士団団長のお兄様が私のことを心配し絶対に見にくる。
早く逃げ出さないと捕まってしまう。
「ウルリカ……」
「エリーゼ様。お可哀そうに……、このウルリカ! お嬢様の為なら何でも致します。美味しい御菓子でも、お作りしましょうか?」
その言葉に私は頭を左右に振る。
「…………私、少しでいいから……一人になりたいの」
俯いたまま、涙声で呟く。
もちろん、これは王妃教育の賜物で、どんな時でも場に相応しい声色を出せるようにと訓練されたもの。
「エリーゼ様……」
「ねえ、ウルリカ」
「何でしょうか?」
「うちには――、公爵家には辺境の地に領土が飛び地としてあったわよね?」
「はい。伺っておりますが……。――ですが、あそこは人口30人程度の小さな村しか……」
「そうなのね……。私、少し静かに心の落ち着かせたいの。本当に、少しの時間でいいから……ダメかしら?」
「それでは、アディ―が戻られたら伺って――」
「きっと反対されるわ。私には、年の近いウルリカした頼れる人はいないの! お願い! もう、此処には居たくないの!」
私は必死にウルリカを説得する為に、かつてない程、頭をフル回転させながら言葉を紡いでいく。
「エリーゼ様。ですが……」
「書き置きは置いていくからっ! おねがい! ウルリカのせいにはしないから!」
「……そこまで、お心を傷つけられて……。レオンめ!」
ガタッ! と、音と立てて、ウルリカが、箱の中からロングソードを持ち出して部屋から出ていこうとする。
「やめてっ!」
私は、扉の前に立って両手を広げて、必死に止める。
「ウルリカが、私のことを大事に思ってくれている事は、痛いほど伝わってくるわ。――でも、それで、ウルリカが罪人になったら、私は嫌だもの」
「エリーゼ様……。申し訳ありません。つい冒険者の時の癖で」
「ううん。ウルリカの気持ちは本当にうれしかったから。だから――」
「分かりました。それでは辺境まで、すぐに出立致しましょう」
何とか、ウルリカを説得することが出来た。
すぐに、私は手紙を書く。
内容は『辺境の地で静かに暮らします。探さないでください』というもの。
手紙を置いたあとは、すぐに着替えて部屋から出る。
そして誰にも見つからないように中庭を通り、私とウルリカは、ドレスなどを運んできてくれたメレンドルフ公爵家の馬車へと乗り込む。
もちろん従者の役は、ウルリカが兼任してくれるので、従者を探さなくて良かったのは幸いと言える。
――そして、すぐに馬の嘶きと共に馬車は走り出す。
ちなみに貴族院の門を潜る時に、後ろから、お兄様の声が聞こえたけど、きっと気のせい。
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