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ハナは野に咲け
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城に帰って以来、竹千代は、ハナのことをずっと忘れることはなかった。
ハナは年老いた祖父とふたり、山で狩りをしてくらしていた。
いつか恩返しをと、ずっと藤次郎に見守らせていたが、ハナは持ち前の頭のよさと運動能力の高さで、暮らしに困るようなこともなく、のびのびと暮らしていた。
ハナをだれかの養女として、近くに呼び寄せたらどうかと藤次郎が進言したこともあったが
「いや。ハナには、こんな固苦しい生活は似合わない。野山でのびのび生きるのが幸せだろう」
と、見守ることを続けさせた。
やがて、時は過ぎ、祖父が亡くなり、一人になったハナは江戸の小料理屋に嫁に来ることになった。
竹千代にとっては、ほんのたまに、お忍びで客として訪れるのが、何よりの楽しみとなった。もちろん、ハナは昔助けた子どもだなどは、まったくきがつかない。
ハナに娘の『たま』が生まれると、うでのいい料理人の亭主、明るくきっぷのいいおかみのハナ、可愛い赤ん坊のたまも人気者で、店は繁昌した。
そのころは、もう竹千代ではなく、家治として、政のいろいろに忙しく、店を訪れる足も遠のきつつあった。
そのまま、それぞれに幸せであればよかったのだが、たまが五つになった頃、ハナの亭主が流行り病で亡くなってしまった。
残されたハナは店を閉めねばならぬかと、あきらめかけた。
そんなとき、流れ者の腕利きの料理人が ふらりと現れ 、店で寝泊まりさせてもらえれば、給金はいらぬので、置いてくれないかと申し出てくれたのだった。
その料理人、実は、家治のお庭番をしていた藤次郎であったが、ハナは知るよしもない。
こうして、藤次郎は料理人として、働きながら、ハナとたまを守る生活が始まったのだ。
ハナは年老いた祖父とふたり、山で狩りをしてくらしていた。
いつか恩返しをと、ずっと藤次郎に見守らせていたが、ハナは持ち前の頭のよさと運動能力の高さで、暮らしに困るようなこともなく、のびのびと暮らしていた。
ハナをだれかの養女として、近くに呼び寄せたらどうかと藤次郎が進言したこともあったが
「いや。ハナには、こんな固苦しい生活は似合わない。野山でのびのび生きるのが幸せだろう」
と、見守ることを続けさせた。
やがて、時は過ぎ、祖父が亡くなり、一人になったハナは江戸の小料理屋に嫁に来ることになった。
竹千代にとっては、ほんのたまに、お忍びで客として訪れるのが、何よりの楽しみとなった。もちろん、ハナは昔助けた子どもだなどは、まったくきがつかない。
ハナに娘の『たま』が生まれると、うでのいい料理人の亭主、明るくきっぷのいいおかみのハナ、可愛い赤ん坊のたまも人気者で、店は繁昌した。
そのころは、もう竹千代ではなく、家治として、政のいろいろに忙しく、店を訪れる足も遠のきつつあった。
そのまま、それぞれに幸せであればよかったのだが、たまが五つになった頃、ハナの亭主が流行り病で亡くなってしまった。
残されたハナは店を閉めねばならぬかと、あきらめかけた。
そんなとき、流れ者の腕利きの料理人が ふらりと現れ 、店で寝泊まりさせてもらえれば、給金はいらぬので、置いてくれないかと申し出てくれたのだった。
その料理人、実は、家治のお庭番をしていた藤次郎であったが、ハナは知るよしもない。
こうして、藤次郎は料理人として、働きながら、ハナとたまを守る生活が始まったのだ。
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