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第9話:市民のための任務

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家出したボクは転移装置で、遠い地に転移。
ダラクという都市国家に到着。

駆け出しだけど、憧れの冒険者のなることが出来た。
色々あってマリア姉弟との共同生活することになった。



マリアの家に泊まった翌朝。
朝の準備を終えて、ボクは家を出る。

「それじゃ、行ってきます!」

「ハリト君、気をつけね」

「ハリトさん、また冒険者の話を聞かせてくださいね!」

マリア兄妹に見送られて出発。
向かう先は、冒険者ギルドだ。

「あっ、でも、時間が早いから、街の様子を見ていこうかな?」

少し遠回りしていく。
朝のダラクの様子を見て回る。

「うーん、やっぱり市民の暮らしは、貧しい感じだな……」

朝だというのに、街には活気がない。
広場には市場バザールが一応あって、買い物客もいた。

でも並んでいる生活必需品は少なく、価格も高騰している。
戦火によって、明らかに品不足が起きているのだ。

「やっぱり自給自足だけじゃ、市民の生活をまかないきれないのか……」

このダラクは都市国家。
城を中心にして、周りに街が展開している。

一番外の城壁までが国土。
つまり外の農耕地帯は、それほど広くはないのだ。

「こうして見ると、一番の問題は食糧不足かな? あとは衣類や香辛料、医薬品が不足している感じもしれないな」

市場バザールには暗い顔で、物を探す市民がいた。
彼らの会話を聞いていれば、ダラクで何が不足しているか一目瞭然いちもくりょうぜん

「ボクの収納にも“ある程度”の食事は入れてあるけど、街の人口を考えたら“焼け石に水”。根本を改善しないと、解決できないんだろうな」

実家にあった専門書で、色んな知識は覚えている。
だが今のボクは経験不足。

こうした事態をどう解決すればいいのか、まだ浮かんでこない。

「ん? あっ、時間だ。冒険者ギルドに行かなきゃ!」

街の調査をしていたら、いつの間にか時間が経っていた。
急いで冒険者ギルドに向かう。



冒険者ギルドに到着。

「おはようございます、皆さん!」

中に入ったら、ギルドの皆がいた。
朝早くから、ギルドの仕事に来ているのだ。

「よう、ハリト。昨日はよく眠れたか?」

「あっ、ゼオンさん。おはようございます! お陰様でなんとか」

熊のような顔の、斧使いゼオンさんもいた。
今のダラク冒険者ギルドを、取り仕切っている人物の一人だ。

「そうか。あと、これが昨日の魔石の、換金した代金だ」

「はい、ありがとうございます……って、こんなにですか⁉」

もらった袋の中身を見て、びっくり。
すごい大金が入っている。

「昨日も言ったが、魔石は重要品だ。城と商人の奴が買い取ってくれた。ウチのギルドの手数料は、先に抜いてある」

「そうだったんですか。わざわざありがとうございます! ん?」

大金を見ながら、あることに気が付く。

「このダラクは大陸共通硬貨が、ちゃんと流通しているんですね? しかも、結構な額が?」

「ん? ああ、そうだな。街は品不足で、こんな感じだが、一応、ダラクには特産品もある。常時なら、ここは豊かな街だった。だが今は東西の街道が使えないから、不足品が多いんだ」

「なるほど、そういうことだったんですね」

ゼオンさんの話ではこうだった。

ダラクには他の街に行けば、高値で売れる特産がある。
だが今は魔物と野盗の悪影響で、他の国への輸送経路が塞がれている。

だから生活必需品の不足が発生して、市民は困窮こんきゅうしているという。

「あとハリト、いきなりだが、今日の仕事ができたぞ」

「えっ、仕事ですか⁉ はい、やります! ちなみにどんな依頼ですか?」

「タイムリーな話だが、今回は西の街への、商隊の護衛任務だ」

「『商隊の護衛任務』……ですか?」

「ああ、今日この街から、大規模な荷馬車隊が出発する。荷物はダラクの特産品。それを西の街に納品。向こうでダラクの街で不足している生活必需品を買い込んで、また戻ってくる仕事だ」

「えっ、ということは、今回の任務が成功したら?」

「ああ、このクソッたれな街の暮らしも、少しはマシになるっていうことさ」

「やっぱり! 分かりました。絶対に成功させましょう!」

「ああ、そうだな。よし、それじゃ、準備をして、さっそく商隊の集合場所に向かうぞ!」

「えっ、はい。それにしてもいきなりですね、そんな大規模な商隊なのに?」

「相手は野盗な場合もある。そいつ等にバレないように、情報は極秘で動かせしていたのさ、今回の作戦は」

「なるほど、そういうこともあるんですね」

ダラク城の宝物庫には、すごいお宝がある。
それを狙うは近隣の魔物と盗賊団たち。

特に知恵がある盗賊団は、厄介らしい。

街の中にスパイを潜り込ませて、ダラクの国力を削いでくる。
そのため輸送団が今までも、何回も狙われているという。

「市民の生活物資か……よし、ボクも頑張るぞ!」

そんな想いを胸に、ボクは準備をしていく。



その後はゼオンさんたちと、商隊の集合場所へと向かう。

「よし、それでは出発するぞ!」

全員が揃ったところで、商隊は動き出す。

街の城門をくぐり抜け、長い列を作って街道を進んでいく。

向かう先は、西にあるユフクという街だ。

「ハリト、お前は後ろの警備を頼む」

「はい、ゼオンさん! 任せてください!」

ボクの担当は商隊の最後尾。
周囲を警戒しながら、急ぎ足で街道を進んでいく。

「よし、今日はここで野営するぞ!」

商隊は陽が落ちる前に、街道脇でストップ。
陣形を組んで、夜を明かす。

夜は魔物や野盗の危険が多き。
ボクたちは交代で見張りに立つ。

「よし、出発するぞ!」

陽が昇ったら出発。
明るい内に、なるべき距離を稼ぎたい作戦だ。

そんな感じで数日が経つ。
今のところ襲撃もなく、商隊は順緒に進んでいた。



だがある日、休憩中のゼオンさんの顔が曇る。

「どうしました? ゼオンさん? なにかいましたか?」

「いや、まだ何も見えねぇ。だが、この先はかなり危険だ。大盗賊団の縄張りで、待ち伏せにも絶好の場所だからな……」

ここから見える、街道脇の森。
そこで何度も、商隊が襲われているという。

ゼオンさんたちも今まで必死で応戦してきた。

だが相手は森の中を縄張りとして、相手に地の利がある。
しかも盗賊団の規模も大きく、苦戦してきたという。

「なるほどです。ちなみに先に相手を見つけて、先制攻撃をしてもいいんですか?」

「ん? 先制攻撃? ああ、もちろんだ。相手は人殺しの罪がある凶悪な賊だ。手加減はいらない」

「おお、そうだったんですか⁉ 勉強になります」

てっきり商隊の護衛の任務は、専守防衛が必須だと思っていた。
なるほど、手加減は不要なのか。

「ん? 『先に相手を見つけて』とは、どういう意味だ、ハリト」

「えーと、それはですね、口で説明するのは難しいので、実践してみます」

ボクは意識を集中。
視線の先を、遠くに見える森にロックオン。

「では、いきます……【完全探知エクス・スキャン】!」

ピッ、コーン♪

探知系の魔法を発動。
森の中の全生物の情報が、得られた。

よし、ゼオンさんにも説明しないと。
とりあえず同行している冒険者ギルドの皆に、情報を共有しておこう。

「えーと、たしか……これだ【探知共有スキャン・リンク】!」

探知と同時に、精神系の魔法を発動。
これでボクと同じ情報を、みんなも見られるはずだ。

大丈夫かな?

「な、なんだ、こりゃぁ⁉ 目の前に何かの地図と、点が出現したぞ⁉」

あっ、よかった。
ゼオンさんと情報が、共有できている。

あと他の皆も騒いでいるから、見えているのだろう。

とりあえず、騒いでいる皆を集めて、事情を説明する。

「えーと、今みなさんが見えているのは、ボクの【完全探知エクス・スキャン】している共有情報です。赤い点が賊です。あと青色は他の動物や獣。白い点は仲間です。賊は強さによって赤い点の大きさが違いので、先制攻撃の参考にしてください」

全員に説明をする。

でも上手く理解してもらえたかな?
ボクの魔法は未熟だから、ちょっと不安だ。

「なん、だと……」

ん?
ゼオンさんが口をパクパクさせて、何かに驚いている。

「「「なっ…………」」」

そして他のギルドの人たちも。
ボクの説明を聞いて、目を丸くして硬直している。

もしか説明が悪くて、意味不明だったのかな?

――――だが次の瞬間、ギルドメンバーが急に騒がしくなる。

「せ、説明とかの問題じゃねーぞ、なんだ、この意味不明な魔法は⁉」

「な、仲間が全員で、意識を共有する魔法なんて、今まで聞いたことがないぞ⁉」

「しかも【完全探知エクス・スキャン】って超上級魔法で、【大魔導士】や【大賢者】クラスしか使えない、究極な探知魔法だし⁉」

「こんな詳細を探知されたら、相手が逆に可哀想になる精度だろ、こりゃ⁉」

えっ……どうしたんだろう?

皆はボクのことを見ながら、すごく興奮している。
なんか分からないけど、ちょっと怖い雰囲気だ。

こ、こんな時はゼオンさんに、助けてもらうしかない。

「ふう……【完全探知エクス・スキャン】に【探知共有スキャン・リンク】とやらか。まったく、いったい何個のスゲエ魔法を会得しているんだ、ウチのスーパールーキーは……今までのオレたちの探索が、馬鹿みたに感じるぜ」

「はっはっは……なんか分からないけど、面目ないです」

なんか気まずいので、笑ってごまかす。

「だが、このお蔭で、今回は何とかなりそうだな。よし、野郎ども! 準備をしろ! 憎い野盗団に先制攻撃をしかけるぞ!」

「「「おー!」」」

ゼオンさんの号令で、全員が動き出す。
商隊をここに置いたまま、冒険者ギルドのメンバーで森の中に乗りこむのだ。

そんな時、大慌てで近づいて来る人がいた。

「おい、待て。なぜ部隊を動かすのだ? 私の商隊の護衛は、どうするつもりだ⁉」

やって来たのは、この商隊の持ち主であるマルキンさん。
ダラクでも有数の大商人だという。

「大丈夫だ、旦那。ウチのスーパールーキーのお蔭で、あの盗賊団を殲滅できるチャンスができた」

「なんだと、ゼオン⁉ そんな子どもを頼りにするのか⁉」

「ああ、そういうことさ。少しはウチのメンバーもここに残していくから、旦那は吉報を待っていてくれ」

「おい、待て、ゼオン⁉」

雇い主のマルキンさんを振りきって、ゼオンさんは動き出す。

「ところで、ハリト……お前はどうする? これだけお膳立てしてくれたら、お前は留守でも成功はするが?」

「いえ、ボクも付いていきます。覚悟はできています」

「そうか、それならいくぞ!」

こうしてダラク冒険者隊は、盗賊団の本拠地へと奇襲に向かう。

(凶暴な盗賊団との戦いか……大丈夫かな、ボクは……)

とても不安しかないけど、頑張って付いていくしかない。

でも、かなり不安だ。
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