上 下
34 / 57

第34話:学園祭の情報

しおりを挟む

 ヒドリーナさんのお蔭で、いつのも学園生活の日常が戻ってきた。

 でも昼休憩の学食の様子が、いつもと何か違う。

「あら、学園の皆さま、何かザワついておりますわね?」

 昼食を食しながら、他のみんなが、何かそわそわしている。
どうしたんだろう?

「おそらくはマリアンヌ様。“ファルマ学園祭”が近づいているから、だと思いますわ」

 差し迫ったイベントが原因だと、ヒドリーナさんが教えてくれる。

「“ファルマ学園祭”……ですか?」

どこかで聞き覚えのある単語だ。
説明会で聞いたような気がする。
 
 でも、なぜか内容に関しては、あまり記憶がない。
そういえば説明会は、私は浮かれて話を聞いていなかったんだ。

ごめんなさい、ヒドリーナさん。
学園祭について教えてちょうだい。

「学園祭は最大級のお祭りだと、聞いておりますわ、マリアンヌ様」

 ヒドリーナさんの説明によると、ファルマ学園祭はかなり大掛かりなイベントらしい。 
 生徒会が主体となり企画運営。
各クラスが当日は出店や、イベントの出展をする。

 普段は閉鎖されている学園も、この日だけは一般市民に開放される。
ファルマ市民たちが訪れ、祭りを楽しむという。

生徒たちもワイワイしながら、学園祭をエンジョイするみたいだ。

 ふむふむ、なるほど。
簡単にいうと現世日本での、高校や大学の学際に似ている。
というか規模が大きくなっただけで、基本的に同じかな。

でも学園は人類を守るべく人材を、育てる大事な機関だ。
そんなのんきなイベントをしていてもいいのかな?

まぁ、変なところはゲームしているから、気にしない方がいいのだろう。

そういえばゲーム内にも学園祭はあった。

 ゲームの方の学園祭は、けっこう需要なイベントだ。
入学以降、主人公は身分の違いから、他の貴族令嬢たちとぶつかり、孤立化してしまう。
 
でも主人公は負けずに全身全霊、学園祭を成功に導こうとする。
批判していた他の令嬢や騎士たちも、そんな賢明な姿に、次第に心を打たれていく。

お蔭で主人公にはクラスの中に、少しずつ仲間が増殖。
学園祭の夜のキャンプファイアーでは、美男騎士のメンバーからお気に入りを選択。
二人きりになって、距離が一気に近くなるのだ。
 
――――そんな感じで、ゲーム内でも需要なイベントだった。

他にも学園祭用のミニゲームや、隠れフラグもあった。
だから私自身もゲームでは、学園祭に関してはよく覚えていた。
ミニゲームとかやり込んでいたなー。
 
 そっか、そんな楽しいイベントが、もうすぐなのか
楽しみだね!
 
ん?
あれ、でも、おかしいな?
 私はとある事に気がつく。
 
「そういえば私、学園祭での"係り”をうかがっておりませんわ……誰からも?」

 そう……自分の担当するべき係りを。私は知らないのだ。
 普通はクラス委員長の子からは、各自の係りの担当の連絡があるはず。

どうしたんだろう?
もしかして生徒会が各クラスの内容を、勝手に決めちゃっていたとかかな? 
 
 でも、こういうのって、放課後にクラスの皆で集まって、話し合いで決まる感じだよね。
 出し物の内容を多数決で決めたり、出店の料理を何にするか、ワイワイ皆で考えたり、と。

 でも、まったくそういった話を、自分はまったく聞いていなかった。
つまり私の知らないところで、クラスの準備が進んでいた?

 あっ……これはもしかして。

 ある可能性が浮かんできた。
考えたくもないけど、もしかしたら『私は仲間外れにされていた』のか⁉

――――そう考えたら、この状況も納得できる。

『けっ、マリアンヌのヤツは協調性がないから、ハブろうぜ!』

『おお、いいねー、それ』

 みたいな感じで、クラス内で口裏合わせがあったのかもしれない。
 
 私はどちらかといえば、鈍感な方。
みたいなので、まったく気が付いていなかったよ。

もしかしたらクラス内で、私は嫌われていたのかもしれない。
何しろ私はラスボス系の悪役令嬢キャラなのだ

――――そんな絶望感の時。

ヒドリーナさんが優しく声をかけてくれる。

「大丈夫ですわ。マリアンヌ様はクラスでも、特別な存在。きっと皆さまが配慮しているのですよ」

 えっ、それってどういうこと?

ふむふむ、なるほど。
どうやら仲間外れ疑惑は、私の勘違いだったみたいだ。
 
なんでも上級貴族の令嬢である自分に、みんなが気をつかっていたという。
私は学園祭の当日に、重役出勤みたいに来てくれるだけでいいらしい。

 そっか、それはよかった!
 私は仲間はずれにされていた訳じゃなかったんだ。
みんな疑ってごめんなさい。

 ん?
ということは私だけ学園祭の当日まで、何もしなくてもいいのか。
 でも、それも何か寂しいよね。
 
 なぜなら学園祭はといえが学生生活の一大イベント。
 最初はみんなで異なる意見を、互いにぶつかり合っていく。
でも最後には協力し合って、友情を深めていく。

……それが普通の学園祭だ。

 でも、このままでいったら、私は一人だけ蚊帳の外だ。
 学園祭が終わった後が怖い。
苦労話や思い出で、ワイワイ盛り上がるクラスメイトたち。
それを横目に私はその輪に入っていけないのよ。

 うっ……想像しただけでも、寂しい。

今までも一人(ぼっち)だったのに、学園祭の後には更に強化されてしまう。
 これはマズイ。何とかしないと。

よし、決めた!

「ヒドリーナ様、私も名乗りをあげますわ」

「名乗り……ですか?」

 ヒドリーナさんは首をかしげて、訪ねてくる。
私がいったい何をしようとしているか、分からないのだ。

「ええ、そうですわ。学園祭で私も協力することを、これから皆さまにお願いしてきますわ!」

「ええ、マリアンヌ様⁉」

ヒドリーナさんは驚いていた。
普通は高位の令嬢は、自ら雑務を引き受けたりしないのだ。
 
 でも私は決めていた。
 ぼっち強化フラグを回避するために、勇気を出してクラスのみんなに歩み寄るんだ。

「では、行ってまいりますわ」

 こうしてク学園祭の打ち合わせをしている教室へ、私は足を進めるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈 
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...