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第34話:学園祭の情報
しおりを挟むヒドリーナさんのお蔭で、いつのも学園生活の日常が戻ってきた。
でも昼休憩の学食の様子が、いつもと何か違う。
「あら、学園の皆さま、何かザワついておりますわね?」
昼食を食しながら、他のみんなが、何かそわそわしている。
どうしたんだろう?
「おそらくはマリアンヌ様。“ファルマ学園祭”が近づいているから、だと思いますわ」
差し迫ったイベントが原因だと、ヒドリーナさんが教えてくれる。
「“ファルマ学園祭”……ですか?」
どこかで聞き覚えのある単語だ。
説明会で聞いたような気がする。
でも、なぜか内容に関しては、あまり記憶がない。
そういえば説明会は、私は浮かれて話を聞いていなかったんだ。
ごめんなさい、ヒドリーナさん。
学園祭について教えてちょうだい。
「学園祭は最大級のお祭りだと、聞いておりますわ、マリアンヌ様」
ヒドリーナさんの説明によると、ファルマ学園祭はかなり大掛かりなイベントらしい。
生徒会が主体となり企画運営。
各クラスが当日は出店や、イベントの出展をする。
普段は閉鎖されている学園も、この日だけは一般市民に開放される。
ファルマ市民たちが訪れ、祭りを楽しむという。
生徒たちもワイワイしながら、学園祭をエンジョイするみたいだ。
ふむふむ、なるほど。
簡単にいうと現世日本での、高校や大学の学際に似ている。
というか規模が大きくなっただけで、基本的に同じかな。
でも学園は人類を守るべく人材を、育てる大事な機関だ。
そんなのんきなイベントをしていてもいいのかな?
まぁ、変なところはゲームしているから、気にしない方がいいのだろう。
そういえばゲーム内にも学園祭はあった。
ゲームの方の学園祭は、けっこう需要なイベントだ。
入学以降、主人公は身分の違いから、他の貴族令嬢たちとぶつかり、孤立化してしまう。
でも主人公は負けずに全身全霊、学園祭を成功に導こうとする。
批判していた他の令嬢や騎士たちも、そんな賢明な姿に、次第に心を打たれていく。
お蔭で主人公にはクラスの中に、少しずつ仲間が増殖。
学園祭の夜のキャンプファイアーでは、美男騎士のメンバーからお気に入りを選択。
二人きりになって、距離が一気に近くなるのだ。
――――そんな感じで、ゲーム内でも需要なイベントだった。
他にも学園祭用のミニゲームや、隠れフラグもあった。
だから私自身もゲームでは、学園祭に関してはよく覚えていた。
ミニゲームとかやり込んでいたなー。
そっか、そんな楽しいイベントが、もうすぐなのか
楽しみだね!
ん?
あれ、でも、おかしいな?
私はとある事に気がつく。
「そういえば私、学園祭での"係り”をうかがっておりませんわ……誰からも?」
そう……自分の担当するべき係りを。私は知らないのだ。
普通はクラス委員長の子からは、各自の係りの担当の連絡があるはず。
どうしたんだろう?
もしかして生徒会が各クラスの内容を、勝手に決めちゃっていたとかかな?
でも、こういうのって、放課後にクラスの皆で集まって、話し合いで決まる感じだよね。
出し物の内容を多数決で決めたり、出店の料理を何にするか、ワイワイ皆で考えたり、と。
でも、まったくそういった話を、自分はまったく聞いていなかった。
つまり私の知らないところで、クラスの準備が進んでいた?
あっ……これはもしかして。
ある可能性が浮かんできた。
考えたくもないけど、もしかしたら『私は仲間外れにされていた』のか⁉
――――そう考えたら、この状況も納得できる。
『けっ、マリアンヌのヤツは協調性がないから、ハブろうぜ!』
『おお、いいねー、それ』
みたいな感じで、クラス内で口裏合わせがあったのかもしれない。
私はどちらかといえば、鈍感な方。
みたいなので、まったく気が付いていなかったよ。
もしかしたらクラス内で、私は嫌われていたのかもしれない。
何しろ私はラスボス系の悪役令嬢キャラなのだ
――――そんな絶望感の時。
ヒドリーナさんが優しく声をかけてくれる。
「大丈夫ですわ。マリアンヌ様はクラスでも、特別な存在。きっと皆さまが配慮しているのですよ」
えっ、それってどういうこと?
ふむふむ、なるほど。
どうやら仲間外れ疑惑は、私の勘違いだったみたいだ。
なんでも上級貴族の令嬢である自分に、みんなが気をつかっていたという。
私は学園祭の当日に、重役出勤みたいに来てくれるだけでいいらしい。
そっか、それはよかった!
私は仲間はずれにされていた訳じゃなかったんだ。
みんな疑ってごめんなさい。
ん?
ということは私だけ学園祭の当日まで、何もしなくてもいいのか。
でも、それも何か寂しいよね。
なぜなら学園祭はといえが学生生活の一大イベント。
最初はみんなで異なる意見を、互いにぶつかり合っていく。
でも最後には協力し合って、友情を深めていく。
……それが普通の学園祭だ。
でも、このままでいったら、私は一人だけ蚊帳の外だ。
学園祭が終わった後が怖い。
苦労話や思い出で、ワイワイ盛り上がるクラスメイトたち。
それを横目に私はその輪に入っていけないのよ。
うっ……想像しただけでも、寂しい。
今までも一人(ぼっち)だったのに、学園祭の後には更に強化されてしまう。
これはマズイ。何とかしないと。
よし、決めた!
「ヒドリーナ様、私も名乗りをあげますわ」
「名乗り……ですか?」
ヒドリーナさんは首をかしげて、訪ねてくる。
私がいったい何をしようとしているか、分からないのだ。
「ええ、そうですわ。学園祭で私も協力することを、これから皆さまにお願いしてきますわ!」
「ええ、マリアンヌ様⁉」
ヒドリーナさんは驚いていた。
普通は高位の令嬢は、自ら雑務を引き受けたりしないのだ。
でも私は決めていた。
ぼっち強化フラグを回避するために、勇気を出してクラスのみんなに歩み寄るんだ。
「では、行ってまいりますわ」
こうしてク学園祭の打ち合わせをしている教室へ、私は足を進めるのであった。
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