上 下
3 / 31

第3話:仮のパーティー

しおりを挟む
勇者パーティーを解雇されたオレは、東の辺境の街ムサスに到着。
新しい街で心機一転、謙虚に生きていくことを決意。

そんな時、広場で困っていた、魔術師の少女サラを助けることにした。



サラに案内されて、彼女の仲間の所に向かう。

「ここが私の仲間がいる冒険者ギルドです、ハリトさん!」

「ここが、この街の冒険者ギルドか」

王都よりは大きくないが、けっこうな立派な建物。
街の規模的にムサスで、ここは唯一の冒険者ギルドなのであろう。

雰囲気的にはコンパクトで、使いやすそう。
悪くない雰囲気だ。

「中に行きましょう!」


サラの案内で、冒険者ギルドの中に入っていく。
中は一般的な作り。

入口の正面にカウンターがあって、受付嬢が座っている。
横の壁には掲示板があり、色んな依頼が張られていた。

あと奥には椅子が並んでいて、冒険者たちが雑談していた。
待機場所なのだろう。

「あの奥に。いるはずなんですが……あっ、いた!」

小走りになったサラの、後を付いていく。
立ち止まったのは、待機場所にいる一人の剣士の前だ。

「兄さん! 支援魔術師の人を、見つけてきたよ!」

「ん? 本当か、サラ⁉」

案内された先にいのは、長身の男の人。
歳はオレよりも、ちょっと上ぐらいかな。

体格がよく剣を下げているので、剣士タイプなのであろう。
結構ハンサムだけど、目つきが鋭い歴戦な戦士な雰囲気だ。

「兄さん? 兄妹の人なんですか?」

「あっ、説明が遅れましたね、ハリトさん。この人が私のパーティーメンバーで、兄のザムスです!」

なるほどサラの仲間は、実のお兄さんだったのか。

そう言われて、改めて二人を見比べてみる。
たしかに顔は似ている、感じがする。

でもサラは小動物系で、ほんわか可愛い感じ。

一方でお兄さんのザムスさんは、精悍せんかんな感じ。
きっと母親と父親に、それぞれ似たのであろう。

「ハリト君と言ったかな? キミは本当に、支援魔術は使えるのか?」

「あっ、はい。一応は」

「あまり自信が無さそうに、見えるが?」

「サラにも言いましたが、オレは“普通”の支援魔術師なので、そこまで期待はしないでください」

「……そうか、分かった」

ふう……緊張した。
なんか尋問っぽい感じだった。

ザムスさんは、かなり鋭い目つきの人。
ちょっと質問されただけでも、かなり緊張する。

たぶんオレのことを、まだ信用をしてないのだろう。

でも、それも仕方がない。
初対面の冒険者を、いきなり信用する方が危ないからな。

ザムスさんか……悪い人はなさそうな気がする。
少なくとも王都の横暴な冒険者たちとは、雰囲気が違う。
本気で冒険者をしている人なんだろう、きっと。

よし、挨拶はできたから本題に移ろう。
今回の要件を、ザムスさんに聞かないと。

「サラに困った問題が、あったと聞きましたが、どんな依頼があったのですか?」

「実は街の近くのある村が、厄介な魔物が狙われている。それを一刻も退治する依頼だ」

「なるほどです。ちなみに支援魔術師が必要だったのは?」

「サラにも聞いたかもしれないが、昨日まで一緒に組んでいた奴が、支援魔術師だった。パーティー編成を変える訳にいかないから、探していた」

なるほど、そういう理由か。

冒険者での集団戦闘は、周りが思っている以上に難しい。

互いの職種や得意なスキル、戦い方の連携を、完璧に合わせる必要がある。

いくら有能な者でも新参者は難しい。
まったく別な職種だと、逆に現場が混乱してしまう危険性もある。

だからザムスさんとサラは、昨日まで慣れていた支援魔術師を探していたのだ。

なるほど理由は分かった。
本当に困っていたし、助けてあげたい。

「分かりました。こんなオレでよかった協力します。ザムスさんの方は、どうですか?」

「少々の不安はある、だが今は時間もあまりない。頼むぞ、ハリト」

「はい、よろしくお願いします!」

なんとかザムスさんに了承してもらった。

そのまま三人で冒険者ギルドのカウンターに移動。
受付のお姉さんに仮のパーティー登録をしてもらう。

「はい、どうぞ。ハリトさん。出来ました」

無事に仮登録完了。
これで今回の依頼が成功したら、オレにも冒険者ポイントが入るようになった。

ちなみにこの大陸での冒険者のランクは、最低がFランクで最高がSランク。
まとめると次のような感じ。

――――◇――――◇――――
《冒険者ランク目安》

・Sランク:大陸の危機に動員されるほどの、伝説級パーティー(大陸にも数人しかいない)

・Aランク:複数の町や国の危機を解決できるほどの、国家級パーティー(一ヵ国に十数人しかいない)

・Bランク:大きな街の危機を解決することができるほどの、凄腕パーティー(大きな街に十数にしかいない)

・Cランク:小さな町や村の危機を解決することができる強さ(そこそこの数がいる)

・Dランク:初心者を脱却。そこそこの冒険者。(けっこうな数がいる)

・Eランク:まだ駆け出しで、弱い魔物を退治するレベル。(かなり多い)

・Fランク:登録したばかりの新人で、雑務がほとんど(多すぎて不明)

――――◇――――◇――――

王都の冒険者ギルドで聞いた説明は、こんな感じ。

冒険者として一人前と言えるのは、Dランクから上の人たち。
EランクとFランクは半人前の扱いをされる。

ランクCまでなら、努力さえすれば常人でも到達可能。
でも到達する前に、死亡率も上がり全体数も少ない。
だからランクCでも、かなり凄腕と頼りにされる。

Bランクより上には、よほどの才能がないと上がれない。
だからランクB以上は本当に凄い人なのだ。

(どれどれ、ちなみにザムスさんたちは、ランクはどんな感じかな?)

貰った仮登録証を、チラリと確認してみる。
ここに書いてあるはずだ。

「えっ……“Bランク”⁉ ザムスさんたちって、ランクBの凄腕パーティーだったんですか⁉」

まさかの高ランカーだった。
王都の冒険者ギルドでも、あんまり見たことがないレベルだ。

「ああ、一応はな。オレは個人ランクBで、サラは個人ランクC。だから上のオレのBが、このパーティーのランクになる」

「そ、そうだったんですか……そんな凄腕のパーティーだったんですか……」

思わず絶句してしまう。
何しろランクB『大きな街の危機を解決することができる凄腕パーティー』だ。

そう言われて改めて、ザムスさんを観察してみる。

うん……歴戦の剣士の雰囲気で、とても強そうだ。

あと、サラも結構な潜在的な魔力を、感じる。

この兄妹パーティー、本当はすごい二人だったんだ。
改めて感心する。

「ちなみにハリト、お前の冒険者ランクは?」

「えーと……恥ずかしながら、個人ランクEです……」

これでも一応は勇者パーティーに、一年間は在籍。
けっこうな数の冒険や事件の任務に、同行してきた。

でもパーティーリーダーの勇者アレックス。
アイツがオレのパーティー登録を、王都の冒険者ギルドに報告を怠っていたのだ。

だから一年間も頑張っていたのに、未だにオレは駆け出しのEのままなのだ。
今思い返しても、本当に悔しい。

「ランクEか……そうか、分かった」

ザムスさんの表情が曇る。
ランクBパーティーに普通は、ランクEはいない。
オレの低ランクに失望もしたのかもしれない。

申し訳ない気分になる。
オレも悔しいから、この後の行動で挽回しないとな。

「よし、それでは早速、依頼のあった村にいくぞ。時間がない!」

ザムスさんは気持ちを切り替えて、出発の号令をかける。
オレとサラも後に続く。

(勇者パーティー以外でのパーティー行動か……オレ、上手くやっていけるかな……)

多くの不安を抱えながら、オレは魔物退治に同行するのであった。





だが、この時のザムスとサラは、気が付いていなかった。

自分たちに同行しているのが、とんでもない規格外の支援魔術師だったことに。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下
ファンタジー
 鍛冶師ハルクは幼い時から、道具作りが好きな青年。だが独裁的な国王によって、不本意な戦争武器ばかり作らされてきた。  そんなある日、ハルクは国王によって国外追放されてしまう。自分の力不足をなげきつつ、生きていくために隣の小国で冒険者になる。だが多くの冒険者が「生産職のクセに冒険者とか、馬鹿か!」と嘲笑してきた。  しかし人々は知らなかった。実はハルクが地上でただ一人《鍛冶女神の加護》を有することを。彼が真心込めて作り出す道具と武具は地味だが、全て《超伝説級》に仕上がる秘密を。それを知らずに追放した独裁王国は衰退していく。  これはモノ作りが好きな純粋な青年が、色んな人たちを助けて認められ、《超伝説級》武具道具で活躍していく物語である。「えっ…聖剣? いえ、これは普通の短剣ですが、どうかしましたか?」

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

薄幸召喚士令嬢もふもふの霊獣の未来予知で破滅フラグをへし折ります

盛平
ファンタジー
 レティシアは薄幸な少女だった。亡くなった母の再婚相手に辛く当たられ、使用人のように働かされていた。そんなレティシアにも幸せになれるかもしれないチャンスがおとずれた。亡くなった母の遺言で、十八歳になったら召喚の儀式をするようにといわれていたのだ。レティシアが召喚の儀式をすると、可愛いシマリスの霊獣があらわれた。これから幸せがおとずれると思っていた矢先、レティシアはハンサムな王子からプロポーズされた。だがこれは、レティシアの契約霊獣の力を手に入れるための結婚だった。レティシアは冷血王子の策略により、無惨に殺される運命にあった。レティシアは霊獣の力で、未来の夢を視ていたのだ。最悪の未来を変えるため、レティシアは剣を取り戦う道を選んだ。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

処理中です...