僕の性体験

蒼江 雨

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童貞卒業

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 僕は高校2年生の7月に童貞を卒業した。
 僕はいわいる、Z世代というやつだ。性体験の傾向は、男も女も半数以上が未経験らしい。そうネットに書いてあった。
 実際、これは僕の周りの人間と照らし合わせて見ても確かな数字だと感じる。単純に計算して2人にの内1人は最近の言葉を使うと「やってる」側だ。
 僕の友達も全体的な割合で見ると、半分くらいは「やってる」ことのある人達だ。
 僕は自分の外見を過小評価しすぎている時期があり、自分になんて童貞卒業はおろか、女性と交際をすることもままならないと思っていた。外見のいい友達の性体験の話を聞き、家に帰って、無駄に複雑な当たり判定を潜り抜けた先にある、知らない男女の性行為を見てティッシュペーパーに欲を吐き出す日々。今考えると実に情けない。そんな日々が高校2年生の春まで続いた。
 高校2年生の春先に、僕にも春が来た。
念願の彼女が出来たのだ。他校の同級生で、肌が少し色白で身長152cmの子だった。交際経験が中学2年生以降無かった僕にとっては、とても嬉しい事であった。毎日LINEで連絡をとり、時には寝る間を惜しんで電話をした。多分、ラブラブだった。
 交際が始まって2週間後、年頃の女の子の部屋に、初めて足を踏み入れた。すごくワクワクした。1人、勝手にテンションが上がってしまい、ただ、部屋に遊びに行くだけなのに、背伸びをしてお下がりのブランド物のシャツを着ていった。
内心何かを期待して、張り切っていたのだろう。しかし、僕はその時、童貞だった。キスもしたことが無ければ、ハグすらした事ない初心な僕には、彼女に触れることはとてもハードルが高かった。
 予想的中、話題が尽きると沈黙が続いてしまった。彼女に触れたい欲求と、彼女に嫌がられてしまうのではないかという恐怖が、僕を狂わせた。あとから彼女にも言われたが、「やばい」しか言っていなかったみたいだった(笑)。彼女も緊張している僕の姿をみて面白くなったのか、こっちを見てニコニコしていた。僕は勇気を振り絞って彼女に抱きついてみた。初めての感覚だった。今思えばただの軽いハグだ。しかし、当時の僕にとっては情報量が多すぎた。彼女の匂い、感触、息遣い、すべてが心を踊らせた。その日はハグを5分して帰った。童貞だった僕は友達に自慢をした。そのとき、童貞だと思っていた男友達が、僕の遥か先を行っていてバカにされたのが、未だに心に残っている。
 お互いの熱が冷めないまま、交際1ヶ月の日に僕はファーストキスをした。キスというものを知らなかった僕は、初めてのキスにこんなものか、という感情を抱いた。だが、お互い初めてのキスの癖に舌を絡めた。すごく気持ちが良かった。
体が熱くなり、視界がぼやけていたのをよく覚えている。溶けるように口内で絡みついた舌は止まらなかった。気づいたら1時間経っていたのに衝撃をうけた。交わった舌はお互いを求め、理性をなくしていた。
 それから約1ヶ月後、僕は彼女の部屋にまた足を踏み入れた。それまでに何度か外でキスはしていたが、それ以上のことは避けていた。しかし、彼女の親が買い物に出かけた時に、無意識に作っていたストッパーが外れた。だが、無理矢理というわけではなかった。彼女に性行為をしないか、と問いかけてみた。返事はOKだった。その日、初めて家族以外の女の裸をみた。正直、理想が高すぎて少しガッカリしたのはここだけの話だ。それでも、初めてみた彼女の胸に僕の視線は釘付けだった。人の温もりを肌で強く感じ、避妊具をつけ、挿入しようとした。
 こう見えても、かなりアダルトビデオは見てきた方だと思う。その事もあって、挿入はそこまで難しい事ではないと思っていた。現実は、入口も分からず、ぎこちない体制で挿入しようとしていた。ここから30分ほど入口を探す旅に出てしまった。今思えば黒歴史だ。当てずっぽうで入口を探す旅の途中、僕の興奮は焦りかわっていた。
 ポケットに無作為に入れた小銭から、50円玉を引くくらいの確率で、やっと入口を引けた僕の安心感はとてつもないものだった。その次にティッシュ以外の温もりを感じた。だが、期待しすぎていた分、こんなものかという感情になってしまった自分もいた。それに彼女はひどく痛がっていた。
 僕は行為を続けたかったが、僕の長旅に付き合ってくれた彼女はどうやら、砂漠に辿り着いてしまったようだった。結局、少し挿入をして動かさないまま僕の初体験は終わった。これでも一応童貞卒業だ。そう思って心が踊っていた。それに、快楽を対して得れた訳ではなかったが、彼女との絆が深まった気がしてとても幸福を得た。これが僕の童貞卒業までの物語だ。
 ここから、僕は「やってる」側の仲間入りをし、自信をつけていった。そして、僕自身が作り上げた性行為への理想が壊れ、自信がなく、彼女しか居ないと考えていた僕は崩れて言った...
 
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