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自己嫌悪

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 やがて、予定されていた政治宣伝プロパガンダ映像の収録が終了した。
「お疲れ様でした。セレスティア殿のご協力で、素晴らしいものができたと思います」
「少しでも、お力になれたなら、光栄です」
 カドッシュにねぎらわれ、セレスティアは微笑んだ。
「フェリクス、ちょっと、お話ししたいのですが、一緒に来てもらえますか」
 収録に使用していた部屋から出たところで、セレスティアに声をかけられたフェリクスは、ぴくりと肩を震わせた。
「ここのところ、あまり話せていなかったでしょう?」
 そう言って、セレスティアはフェリクスの手を取った。
 二人を見送りながら片目をつぶってみせるアーブルが、フェリクスの視界の端に映った。
 セレスティアが向かったのは、自身が寝泊まりしている部屋だった。
 フェリクスを部屋に招き入れ、扉を閉めると、セレスティアは彼に向き合った。
「……俺は、君が面白いと思うような話はできないが」
 フェリクスは、ぼそりと言ってから、何故そのようなことを口走ってしまったのかと、自身が分からなくなった。
 ただ、ここしばらくの間に胸の底で澱のように沈んでいた不快なものが、再び立ち昇ってくるかのような感覚があった。
「……やはり、何か気に障ることがあったのですね」
「別に、何もない」
 平静を装ったつもりのフェリクスだったが、声が震えるのを抑えられなかった。
「そんな筈、ありません。助けられた、あの日から、ずっと一緒にいたのだから、分かります」
「何もないと言っているだろう……俺が、勝手に不愉快な気持ちになっているだけだ」
 フェリクスが言うと、セレスティアは、驚いたように、彼の顏を見上げた。
「――そうだ。誰も悪くない……だが、君が俺以外の者と楽しそうに話しているのを見ると、胸が苦しくなって、とても嫌な気分になる……大勢の者が君を見ていて、その所為で、君が遠くに行ってしまったようで……誰かが、君に触れるのさえ嫌だ……」
 ぽつぽつと話すフェリクスを、セレスティアは、黙って見ている。
「……こんなことを言えば、君を不快にさせてしまうことも、君に嫌悪されるということも分かっているのに……なぜ言わずにいられないのか……自分でも、分からないんだ……」
 フェリクスは、目の前がぼやけるのを感じて、思わず歯を食いしばった。
 ふぅ、とセレスティアが小さく溜め息をついた。
「あなたは、本当に、何も分かっていないのですね」
 セレスティアの言葉に、フェリクスは身を竦ませた。
 非難されているのだ、と感じた。
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