47 / 51
第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛
若竹の伸びたる力 夢も押し
しおりを挟む
私が日本にいるのは後三日。あの後も、二度、一緒にお風呂に入ったけど、何も進展なしで、婚約も解消していない。
ママから、婚約解消するように言われたけど、私の気持ちが曖昧なままだと、婚約解消してくださいとも、切り出せない。
そろそろ、はっきりさせないとならないと分かっているけど、未だどうするのがいいのかが分からない。
そして、今日の天気は、私の気持ちを反映しているみたいに、一日中雨。
それでも、傘を差して、私は一人で出かけた。
昨日の水曜日、横浜国大の蛇口教授からメールが届いたのだ。
ダッドがいろいろと頑張ってくれたけど、やはり日電通研究所の見学は無理で、山田さんとの面談も駄目だった。けど、蛇口教授との面談だけは、なんとか了承してもらえた。
そのメールにて、午後三時に横浜国大の彼の研究室に来て欲しいと書いてあったので、その時間に合わせて、外出することにしたというわけ。
少し早かったけど、蛇口教授は、私を迎い入れてくれ、教授室の応接スペースで、研究室の紹介から話してくれた。
蛇口教授の研究室は、私の会社と同じ目的の次世代ネットワークの研究室で、主に次世代ファイアーウォールの研究をしているのだそう。
現主流のUTM型との違いは、AFCと呼ぶアプリケーションフローチェック機能を備えている点だと言う。最近のUTMは、アプリケーションフィルタ機能も備えているが、透過可能設定されたアプリケーションのヘッダ情報を借用して、通信すると、別アプリなのに、通信許可されてしまう。
ところが、AFCでは、ソフト固有のパケットフロトコルの癖を機械学習し、癖とは違うフロトコルを発生するアプリは、偽アプリとみなして通信遮断すると言う。
勿論、アプリケーションフィルタ機能と同様に、プロキシ経由でも、このフィルタは有効で、本来の運用想定されているソフト以外の侵入を完全にシャットアウトできる技術らしい。
これはうちの会社の武器にできる技術なのは間違いなく、私の会社との共同開発研究を提案してみた。
すると、教授も、もう少し研究費が欲しかったから、喜んで契約したいと言ってもらえた。
まだ社長承認も得られておらず、契約も後日となるが、思わぬ収穫で、きっとデビッドとゲイリーも賛同してくれると確信している。
その後は、先生の研究室でやっている研究の詳細説明を、研究室見学をしながら説明してくれた。
説明は、修士の学生さんがしてくれたけど、私が鋭い質問をすると、赤くなって、少しどもりはじめ、ゲイリーみたいで楽しかった。
その後、教授室に戻り、本題であるエバネッセント波活用のフォトニックルーターについて訊いた。
もちろん、研究資料を盗み出して見たとは言っていない。義父のヒントから、自分なりに考え出した装置原理を私が説明し、それに対する意見を求める形で質問した。
先生は、日電通時代に同じような装置を作って、実験した事があると話を始めた。
実際の数値データは言わなかったが、チャンピオン性能としては、とんでもない高性能の通過速度を記録したそうだ。しかも、それを出したのは、かなり昔だと言う。
なのに、実用化されないのは、組立て時の加工精度に問題があるらしい。
この性能を出すには、20nm以下の精度が必要で、量産は困難なレベル。日電通では、見切りをつけてお蔵入り技術になっていると言う。
これでずっと頭に掛かっていたもやもやが晴れた。やはり、先人に話を聞けて良かった。
その後も、院生二人と学生四人とを交えて、研究室でビールを飲みながら、私の買ってきたクロッカンシューザクザク食べ、意見交換と言う白熱した議論を交わした。
私の会社で取っているセキュリティー対策を紹介したり、さっき説明を受けた研究に対するハッカーとして思ったセキュリティー欠陥なんかを指摘したりして、あっという間に三時間が過ぎた。
好きな研究の話をするのは本当に楽しい。
蛇口教授に、丁重にお礼をして帰宅し、直ぐに会社の二人と連絡を取り、共同研究契約の承認も得られた。
蛇口教授にも、その事を知らせ、後日、契約のため、社長と共に訪問させてもらうと、あらためてメールでお礼した。
本当に有意義な一日だった。
そして、私は今回の蛇口研究室の見学で確信した。
私に、会社を辞めて、日本で生活する選択肢はなく、翔とは結婚できないと、明確になった。
翔にアメリカに来てもらうと言う選択子はあるけど、その選択は、翔の事を大切に考えると有りえない。
そして、結婚しないなら、セックスもしない。そんなことすれば、彼の心にも大きな傷跡を残すときづいたから。
私としては、彼との思い出の一つとして、セックスも含めたいけど、それは自分の我儘に過ぎず、彼の気持ちを全く考えていない行為だと分かった。
だから、全ての約束を白紙に戻して、何もないまま別れましょうというつもり。
勿論、ママに言われたように、自分勝手に決めつけてはいけないので、翔に私の本当の気持ちをぶつけて、彼に判断を委ねるつもり。
彼は、我儘は言わないと思うけど、もしそれでも抱きたいと言ってきたら、抱かせてあげ、それで終わりにするつもり。
その夜、私は、そっと自分の部屋を抜け出し、二階への階段を上って行った。
ママから、婚約解消するように言われたけど、私の気持ちが曖昧なままだと、婚約解消してくださいとも、切り出せない。
そろそろ、はっきりさせないとならないと分かっているけど、未だどうするのがいいのかが分からない。
そして、今日の天気は、私の気持ちを反映しているみたいに、一日中雨。
それでも、傘を差して、私は一人で出かけた。
昨日の水曜日、横浜国大の蛇口教授からメールが届いたのだ。
ダッドがいろいろと頑張ってくれたけど、やはり日電通研究所の見学は無理で、山田さんとの面談も駄目だった。けど、蛇口教授との面談だけは、なんとか了承してもらえた。
そのメールにて、午後三時に横浜国大の彼の研究室に来て欲しいと書いてあったので、その時間に合わせて、外出することにしたというわけ。
少し早かったけど、蛇口教授は、私を迎い入れてくれ、教授室の応接スペースで、研究室の紹介から話してくれた。
蛇口教授の研究室は、私の会社と同じ目的の次世代ネットワークの研究室で、主に次世代ファイアーウォールの研究をしているのだそう。
現主流のUTM型との違いは、AFCと呼ぶアプリケーションフローチェック機能を備えている点だと言う。最近のUTMは、アプリケーションフィルタ機能も備えているが、透過可能設定されたアプリケーションのヘッダ情報を借用して、通信すると、別アプリなのに、通信許可されてしまう。
ところが、AFCでは、ソフト固有のパケットフロトコルの癖を機械学習し、癖とは違うフロトコルを発生するアプリは、偽アプリとみなして通信遮断すると言う。
勿論、アプリケーションフィルタ機能と同様に、プロキシ経由でも、このフィルタは有効で、本来の運用想定されているソフト以外の侵入を完全にシャットアウトできる技術らしい。
これはうちの会社の武器にできる技術なのは間違いなく、私の会社との共同開発研究を提案してみた。
すると、教授も、もう少し研究費が欲しかったから、喜んで契約したいと言ってもらえた。
まだ社長承認も得られておらず、契約も後日となるが、思わぬ収穫で、きっとデビッドとゲイリーも賛同してくれると確信している。
その後は、先生の研究室でやっている研究の詳細説明を、研究室見学をしながら説明してくれた。
説明は、修士の学生さんがしてくれたけど、私が鋭い質問をすると、赤くなって、少しどもりはじめ、ゲイリーみたいで楽しかった。
その後、教授室に戻り、本題であるエバネッセント波活用のフォトニックルーターについて訊いた。
もちろん、研究資料を盗み出して見たとは言っていない。義父のヒントから、自分なりに考え出した装置原理を私が説明し、それに対する意見を求める形で質問した。
先生は、日電通時代に同じような装置を作って、実験した事があると話を始めた。
実際の数値データは言わなかったが、チャンピオン性能としては、とんでもない高性能の通過速度を記録したそうだ。しかも、それを出したのは、かなり昔だと言う。
なのに、実用化されないのは、組立て時の加工精度に問題があるらしい。
この性能を出すには、20nm以下の精度が必要で、量産は困難なレベル。日電通では、見切りをつけてお蔵入り技術になっていると言う。
これでずっと頭に掛かっていたもやもやが晴れた。やはり、先人に話を聞けて良かった。
その後も、院生二人と学生四人とを交えて、研究室でビールを飲みながら、私の買ってきたクロッカンシューザクザク食べ、意見交換と言う白熱した議論を交わした。
私の会社で取っているセキュリティー対策を紹介したり、さっき説明を受けた研究に対するハッカーとして思ったセキュリティー欠陥なんかを指摘したりして、あっという間に三時間が過ぎた。
好きな研究の話をするのは本当に楽しい。
蛇口教授に、丁重にお礼をして帰宅し、直ぐに会社の二人と連絡を取り、共同研究契約の承認も得られた。
蛇口教授にも、その事を知らせ、後日、契約のため、社長と共に訪問させてもらうと、あらためてメールでお礼した。
本当に有意義な一日だった。
そして、私は今回の蛇口研究室の見学で確信した。
私に、会社を辞めて、日本で生活する選択肢はなく、翔とは結婚できないと、明確になった。
翔にアメリカに来てもらうと言う選択子はあるけど、その選択は、翔の事を大切に考えると有りえない。
そして、結婚しないなら、セックスもしない。そんなことすれば、彼の心にも大きな傷跡を残すときづいたから。
私としては、彼との思い出の一つとして、セックスも含めたいけど、それは自分の我儘に過ぎず、彼の気持ちを全く考えていない行為だと分かった。
だから、全ての約束を白紙に戻して、何もないまま別れましょうというつもり。
勿論、ママに言われたように、自分勝手に決めつけてはいけないので、翔に私の本当の気持ちをぶつけて、彼に判断を委ねるつもり。
彼は、我儘は言わないと思うけど、もしそれでも抱きたいと言ってきたら、抱かせてあげ、それで終わりにするつもり。
その夜、私は、そっと自分の部屋を抜け出し、二階への階段を上って行った。
1
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる