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魔物外交編
新たな決意
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ヘリオスを失った俺達は、モールガン王宮にて世話になる事になった。
料理だけは今一だが、国賓でもあるので、最大級の持て成しを受けている。
でも、キキだけは投獄された。この国には裁判制度はなく、国王が罪を決める慣習なので、ギラが国王に就任後、彼女の処分が決まる事になるらしい。
そして戦争も予想外の方向へと流れる事となった。
ギネ国王の壮大な葬儀が終わった頃、各地から次々と戦況報告の使者が遣って来た。再び戦争を仕掛けてくると危惧していたが、その報告はロシナント軍が占領地を放棄して、撤退して行ったというものばかりだった。
あれ程、領土と賠償金に拘っていたのに、何を考えているか相手の意図が掴めない。
もしかして奴らの守り神の青龍神が死んだ事で、何かのイベントが行われるのかも知れない。それとも、大軍を撤退させた今の状態では、占領地を保持し続けるのは難しいという判断なのかも知れない。
大臣連中は、敵の意図が分らず大騒ぎしていたが、なんら停戦調印すらされないまま、実質上の終戦となった。否、もう一度立て直して、戦争を仕掛けて来る可能性は有るので、長期休戦と言うべきかもしれないが……。
いずれにせよ、モールガン王国に平和が戻ってきた。
そして、ギラ王子の国王就任式がおこなわれた。第二王子だったギグは、ギラの国王就任に伴いモーネスという新たな姓を貰い、戦死して空席となったシャルルの領主となる事になった。
そしてキキの死刑と、その家族の爵位剥奪・王都からの追放も決まった。ギグがキキは魔法に掛けられ操られていたと必死に弁護したが、ギラ国王は国民への示しがつかないからか、慣例通りの決断を下した。
ギグは失意のまま、シャルル領主として着任するための引越し準備をしている。
そして俺らは、王宮のお世話になりながら、今後の相談をした。
ヘリオス無き今、人類受け入れ準備はできない。地球からの移民がセジアスに遣って来るのを待つこともできない。
もう任務放棄して、この地で楽しく生きようという意見も出た。
それが賢明な選択だと思う。
だが、俺は可能性がある限り、諦めたくは無かった。
その可能性とは、このセジアスの統一。この世界を纏め、人類と共存するという教えを語り継いで残すという非実現的な夢だ。
ガスパもケビンも飽きれていたが、俺は独りでもそのチャレンジをしたいと主張した。
「実現不可能だと私も思うけど、モロウがやるなら、私もついてく」
セシルが賛成してくれた。
「仕方がないな。腐れ縁だからついて行ってやるよ」
「俺だけ除け者にするなよ。俺だって手伝うさ。任務だからな」
そんな訳で、俺達はセジアスの覇王になるというとんでもない目標に向かって、セジアス中を旅すると決めた。
先ずは、最初にお世話になった奴隷のガガさんとクルトさんの解放。
彼らは北の弱小国の民だったそうだが、そこに行って交渉する予定だ。
その事をギラ新国王に伝え、今までお世話になったお礼を言って、旅立とうとしていると、ギグが駆けこんで来た。
「モーネス卿、どうしました」
「ギグで良いわ。それより我に何も連絡せずに居なくなろうとするとは何事だ」
「ギグ・モーネス殿、遇うのが辛いという事もあるのです。黙っていなくなった方が、互いのためと判断しました」
セシルが他人行儀に頭を下げた。
「この国を離れ、何処に行く気なんだ。もうヘリオスも偵察艇も無いのだぞ」
「ギグ殿、とりあえずホブリンの行商人に扮して、ロシナントの北東の街に向かう予定です。そこに世話になった奴隷が居るので、まず彼らを助けて、彼等の国に行こうかと思っています」
「そうか。なら、その前に一つ、我の頼みを聞いてくれれぬか。近う寄れ」
ギグの頼みとは、キキが死刑になる前に、牢獄からキキを救出するのを手伝って欲しいという飛んでもないものだった。
「ギグ、あんたね。幾らなんでも、そんな真似できる訳ないでしょう。何、考えてるの」
「そんなことをすれば国家の英雄が、反逆者になるんだぞ」
「それでも構わない。キキをそのまま死なせる訳にはいかないんだ」
「ギグ殿、いやギグ。お前、馬鹿か? 助け出してもキキはもう昔の彼女では無いんだ。何も考えない従順な人形。そんなものを助けて、これからどう一緒に過ごす気だ」
「以前のキキでないとしても、キキはキキだ。ちゃんとやって行ける。セシルが魔法にかかっていた時も、今のセシルとはまったく違う素直で明るい性格だったが、一緒に居て、悪い気はしなかった」
「あんたねぇ。今は最低な性格って暗に言ってるわよ。ロキ、やっちゃいな」
「待て。早まるな。キキもセシル殿と良く似ておる。気が強く、素直でなく、負けず嫌いよ。そのキキも大好きだが、セシル殿と生活していた時、キキも年老いると、こうなるのかなと良く思いだしたんだ。だから、そんなキキでも一緒にやっていける気がする。否、必ず幸せになれる自信がある」
「年老いると言うのが気になるけど、あんたが真剣なのは分った。許す」
「自然に魔法が解ける可能性もあるしな。セシルやキャップに何度も魔法を念押しする様に掛けたろう。解ける事があるから、そうした訳だし……」
「ケビン殿、それは本当か? 魔法が解けるのか?」
「保証はできないが、自然に解除される可能性はある」
「なら、尚の事、助けましょうよ」
「セシル、簡単に言うな。折角、ギラ国王は協力を惜しまないと言ってくれたのに、御破算になりかねない。で、キャプテンはぶっちゃけどうする気だ?」
ガスパからそう訊かれたが、直ぐには答えを出せない。
「たしか、処刑は四日後だよな。今日一日考えさせて欲しい。明日の朝には決めるから」
「頼む。迷惑を掛けるが、お主等に頼るしかないのだ。良い答えを待っている」
それにしても困った事になった。
折角友好関係を築き、この国とは上手くいっているのに、国王殺害の重罪人を逃がしたとなれば、ガスパの言う通り、全てが水泡に帰すことになる。
かと言って、ギグの気持ちも良く分る。父を目の前で殺され、複雑な気持ちの中で、キキを救う決断をした。その英断を無下に断るのも忍びない。
それ以前に今の俺らで助けられれるのか? 光学迷彩マントも無いのだから、直ぐに見つかるし、基礎体力が勝ると言っても、オルグ族とは大差ない。直ぐに取り押さえられるに決まっている。
「キャップ、これからどうするんですか?」
「だから、今、考えてるんだ」
「違いますよ。今晩の宿泊先。何も考えずに、明朝、回答するとか言ったんでしょう。恥を忍んで、もう一泊させてもらいますか?」
ケビンの一言でハッとした。出ていくと言った手前、この王宮でお世話になる訳にもいかないという事実に。
【オルネー公爵の所に挨拶にいくというのは如何でしょう】
ナイスフォロー。
「これからオルネー公の所に挨拶に行こう。今からなら着いた時には丁度夕食時だろう。そのまま一泊させてもらおう」
なんて、図々しい奴と思われようが、背に腹は換えられぬ。それにオルネー公はそんな事考える様な人では無い。
否、あの住み込みの家政婦さんは……。なんか、ミス判断した嫌な予感がして来た。
オルネー公は、俺らを快く受け入れてくれ、その晩はそこで泊まることとなった。
だが、四部屋ある客間の一つは、今は使っておらず、物置になっているのだそう。
「申し訳ありませんが、ダブルベッドの夫婦用の客間で寝て頂けませんか?」
メイトのキキが俺とセシルとを交互に見て言ってきた。
以前に俺が言った婚約者とはセシルの事だと感づいたらしい。
いつ婚約したんだって? まだプロポーズはしてないが、皆、知っているので同じ様な者だ。でも、こうなった以上、今すぐプロポーズしても良い気がしてきた。
「仕方がないから、私達で一緒に寝ましょうか」セシルも乗り気。
普段から隣で寝ている訳だし、二人きりになれるチャンスも殆ど無い。プロポーズする絶好のタイミングかもしれない。
「まあ、それが妥当だろうな。もう結婚するしかない訳だし」
「そうそう。好きあっているのだから、我慢することないです」
おいおいケビン。何を言ってる、流石にエッチはまだしないから……。
そう思っていたら、セシルが嬉しそうに俺の腕を取ってきた。
「別に何かする訳じゃないし、そうしましょう」
何かする訳ないと言いつつも、グイグイと胸を俺の腕を押し当てる。
柔らかな胸の感触で、息子がぐんぐんと大きくなっていく。
一体、今日のセシルはどうしたんだ。異様に積極的だ。
【キャプテンの考えている通りと推察します。それと、キキさんへのライバル心もあるものと推察します】
いや、流石にエッチまでは早過ぎるだろう。今日はキスまでと考えていたが、セシルから迫られたら、我慢する自信はない。
「やはり四部屋用意してくれ。オルロー公爵からは、持てなす様に言われただろう。片づけるのが大変なら、使用人の部屋でもかまわないから」
キキはチッと舌打ちして、渋々、部屋を用意してくれた。
夫婦用客間はセシルに譲り、俺は新たに準備された部屋に泊まることにした。
俺が案内されたのは、使用人の部屋だそうだが、小さいながら綺麗に片付いた質素な部屋。ベッドはシングルより小さく、少し堅かったが、布団はフカフカで快適だった。
隣はキキさんの部屋だそうで、また彼女が夜這いしてくるのではと危惧したが、何にもなく、ぐっすりと熟睡できた。
だが、翌朝、ガスパが眠そうな目で疲れた顔で現れた。どうやら一晩中、メイドのキキさんに付き合わされたらしい。
キキさんは、すっきりした顔で、何もない素振りで給仕しているが、ガスパはさっきからあくびばかりしている。
おめでとうと言うべきか、御愁傷様と言うべきか。
そして丁度、朝食が終わった頃、ギグやってきた。ちゃんと伝言を受け取っていたらしい。
ギグがいきなり「助けてくれると決めてくれたか?」と言いだして、肝を冷やした。
「どうやら私が居ない方が良いようですね。私は何も知りませんから」
オルロー公は、キキを助け出す気だと、気付きながらも、知らない振りをしてくれれた。本当に良く出来た人で有難い。
その後、作戦会議して、膳は急げで、各自、直ちに、救出作戦の準備に動くことにした。
ちゃんと万全に準備してから行動に移すべきだが、一日先延ばして大失敗した轍は踏みたくない。
料理だけは今一だが、国賓でもあるので、最大級の持て成しを受けている。
でも、キキだけは投獄された。この国には裁判制度はなく、国王が罪を決める慣習なので、ギラが国王に就任後、彼女の処分が決まる事になるらしい。
そして戦争も予想外の方向へと流れる事となった。
ギネ国王の壮大な葬儀が終わった頃、各地から次々と戦況報告の使者が遣って来た。再び戦争を仕掛けてくると危惧していたが、その報告はロシナント軍が占領地を放棄して、撤退して行ったというものばかりだった。
あれ程、領土と賠償金に拘っていたのに、何を考えているか相手の意図が掴めない。
もしかして奴らの守り神の青龍神が死んだ事で、何かのイベントが行われるのかも知れない。それとも、大軍を撤退させた今の状態では、占領地を保持し続けるのは難しいという判断なのかも知れない。
大臣連中は、敵の意図が分らず大騒ぎしていたが、なんら停戦調印すらされないまま、実質上の終戦となった。否、もう一度立て直して、戦争を仕掛けて来る可能性は有るので、長期休戦と言うべきかもしれないが……。
いずれにせよ、モールガン王国に平和が戻ってきた。
そして、ギラ王子の国王就任式がおこなわれた。第二王子だったギグは、ギラの国王就任に伴いモーネスという新たな姓を貰い、戦死して空席となったシャルルの領主となる事になった。
そしてキキの死刑と、その家族の爵位剥奪・王都からの追放も決まった。ギグがキキは魔法に掛けられ操られていたと必死に弁護したが、ギラ国王は国民への示しがつかないからか、慣例通りの決断を下した。
ギグは失意のまま、シャルル領主として着任するための引越し準備をしている。
そして俺らは、王宮のお世話になりながら、今後の相談をした。
ヘリオス無き今、人類受け入れ準備はできない。地球からの移民がセジアスに遣って来るのを待つこともできない。
もう任務放棄して、この地で楽しく生きようという意見も出た。
それが賢明な選択だと思う。
だが、俺は可能性がある限り、諦めたくは無かった。
その可能性とは、このセジアスの統一。この世界を纏め、人類と共存するという教えを語り継いで残すという非実現的な夢だ。
ガスパもケビンも飽きれていたが、俺は独りでもそのチャレンジをしたいと主張した。
「実現不可能だと私も思うけど、モロウがやるなら、私もついてく」
セシルが賛成してくれた。
「仕方がないな。腐れ縁だからついて行ってやるよ」
「俺だけ除け者にするなよ。俺だって手伝うさ。任務だからな」
そんな訳で、俺達はセジアスの覇王になるというとんでもない目標に向かって、セジアス中を旅すると決めた。
先ずは、最初にお世話になった奴隷のガガさんとクルトさんの解放。
彼らは北の弱小国の民だったそうだが、そこに行って交渉する予定だ。
その事をギラ新国王に伝え、今までお世話になったお礼を言って、旅立とうとしていると、ギグが駆けこんで来た。
「モーネス卿、どうしました」
「ギグで良いわ。それより我に何も連絡せずに居なくなろうとするとは何事だ」
「ギグ・モーネス殿、遇うのが辛いという事もあるのです。黙っていなくなった方が、互いのためと判断しました」
セシルが他人行儀に頭を下げた。
「この国を離れ、何処に行く気なんだ。もうヘリオスも偵察艇も無いのだぞ」
「ギグ殿、とりあえずホブリンの行商人に扮して、ロシナントの北東の街に向かう予定です。そこに世話になった奴隷が居るので、まず彼らを助けて、彼等の国に行こうかと思っています」
「そうか。なら、その前に一つ、我の頼みを聞いてくれれぬか。近う寄れ」
ギグの頼みとは、キキが死刑になる前に、牢獄からキキを救出するのを手伝って欲しいという飛んでもないものだった。
「ギグ、あんたね。幾らなんでも、そんな真似できる訳ないでしょう。何、考えてるの」
「そんなことをすれば国家の英雄が、反逆者になるんだぞ」
「それでも構わない。キキをそのまま死なせる訳にはいかないんだ」
「ギグ殿、いやギグ。お前、馬鹿か? 助け出してもキキはもう昔の彼女では無いんだ。何も考えない従順な人形。そんなものを助けて、これからどう一緒に過ごす気だ」
「以前のキキでないとしても、キキはキキだ。ちゃんとやって行ける。セシルが魔法にかかっていた時も、今のセシルとはまったく違う素直で明るい性格だったが、一緒に居て、悪い気はしなかった」
「あんたねぇ。今は最低な性格って暗に言ってるわよ。ロキ、やっちゃいな」
「待て。早まるな。キキもセシル殿と良く似ておる。気が強く、素直でなく、負けず嫌いよ。そのキキも大好きだが、セシル殿と生活していた時、キキも年老いると、こうなるのかなと良く思いだしたんだ。だから、そんなキキでも一緒にやっていける気がする。否、必ず幸せになれる自信がある」
「年老いると言うのが気になるけど、あんたが真剣なのは分った。許す」
「自然に魔法が解ける可能性もあるしな。セシルやキャップに何度も魔法を念押しする様に掛けたろう。解ける事があるから、そうした訳だし……」
「ケビン殿、それは本当か? 魔法が解けるのか?」
「保証はできないが、自然に解除される可能性はある」
「なら、尚の事、助けましょうよ」
「セシル、簡単に言うな。折角、ギラ国王は協力を惜しまないと言ってくれたのに、御破算になりかねない。で、キャプテンはぶっちゃけどうする気だ?」
ガスパからそう訊かれたが、直ぐには答えを出せない。
「たしか、処刑は四日後だよな。今日一日考えさせて欲しい。明日の朝には決めるから」
「頼む。迷惑を掛けるが、お主等に頼るしかないのだ。良い答えを待っている」
それにしても困った事になった。
折角友好関係を築き、この国とは上手くいっているのに、国王殺害の重罪人を逃がしたとなれば、ガスパの言う通り、全てが水泡に帰すことになる。
かと言って、ギグの気持ちも良く分る。父を目の前で殺され、複雑な気持ちの中で、キキを救う決断をした。その英断を無下に断るのも忍びない。
それ以前に今の俺らで助けられれるのか? 光学迷彩マントも無いのだから、直ぐに見つかるし、基礎体力が勝ると言っても、オルグ族とは大差ない。直ぐに取り押さえられるに決まっている。
「キャップ、これからどうするんですか?」
「だから、今、考えてるんだ」
「違いますよ。今晩の宿泊先。何も考えずに、明朝、回答するとか言ったんでしょう。恥を忍んで、もう一泊させてもらいますか?」
ケビンの一言でハッとした。出ていくと言った手前、この王宮でお世話になる訳にもいかないという事実に。
【オルネー公爵の所に挨拶にいくというのは如何でしょう】
ナイスフォロー。
「これからオルネー公の所に挨拶に行こう。今からなら着いた時には丁度夕食時だろう。そのまま一泊させてもらおう」
なんて、図々しい奴と思われようが、背に腹は換えられぬ。それにオルネー公はそんな事考える様な人では無い。
否、あの住み込みの家政婦さんは……。なんか、ミス判断した嫌な予感がして来た。
オルネー公は、俺らを快く受け入れてくれ、その晩はそこで泊まることとなった。
だが、四部屋ある客間の一つは、今は使っておらず、物置になっているのだそう。
「申し訳ありませんが、ダブルベッドの夫婦用の客間で寝て頂けませんか?」
メイトのキキが俺とセシルとを交互に見て言ってきた。
以前に俺が言った婚約者とはセシルの事だと感づいたらしい。
いつ婚約したんだって? まだプロポーズはしてないが、皆、知っているので同じ様な者だ。でも、こうなった以上、今すぐプロポーズしても良い気がしてきた。
「仕方がないから、私達で一緒に寝ましょうか」セシルも乗り気。
普段から隣で寝ている訳だし、二人きりになれるチャンスも殆ど無い。プロポーズする絶好のタイミングかもしれない。
「まあ、それが妥当だろうな。もう結婚するしかない訳だし」
「そうそう。好きあっているのだから、我慢することないです」
おいおいケビン。何を言ってる、流石にエッチはまだしないから……。
そう思っていたら、セシルが嬉しそうに俺の腕を取ってきた。
「別に何かする訳じゃないし、そうしましょう」
何かする訳ないと言いつつも、グイグイと胸を俺の腕を押し当てる。
柔らかな胸の感触で、息子がぐんぐんと大きくなっていく。
一体、今日のセシルはどうしたんだ。異様に積極的だ。
【キャプテンの考えている通りと推察します。それと、キキさんへのライバル心もあるものと推察します】
いや、流石にエッチまでは早過ぎるだろう。今日はキスまでと考えていたが、セシルから迫られたら、我慢する自信はない。
「やはり四部屋用意してくれ。オルロー公爵からは、持てなす様に言われただろう。片づけるのが大変なら、使用人の部屋でもかまわないから」
キキはチッと舌打ちして、渋々、部屋を用意してくれた。
夫婦用客間はセシルに譲り、俺は新たに準備された部屋に泊まることにした。
俺が案内されたのは、使用人の部屋だそうだが、小さいながら綺麗に片付いた質素な部屋。ベッドはシングルより小さく、少し堅かったが、布団はフカフカで快適だった。
隣はキキさんの部屋だそうで、また彼女が夜這いしてくるのではと危惧したが、何にもなく、ぐっすりと熟睡できた。
だが、翌朝、ガスパが眠そうな目で疲れた顔で現れた。どうやら一晩中、メイドのキキさんに付き合わされたらしい。
キキさんは、すっきりした顔で、何もない素振りで給仕しているが、ガスパはさっきからあくびばかりしている。
おめでとうと言うべきか、御愁傷様と言うべきか。
そして丁度、朝食が終わった頃、ギグやってきた。ちゃんと伝言を受け取っていたらしい。
ギグがいきなり「助けてくれると決めてくれたか?」と言いだして、肝を冷やした。
「どうやら私が居ない方が良いようですね。私は何も知りませんから」
オルロー公は、キキを助け出す気だと、気付きながらも、知らない振りをしてくれれた。本当に良く出来た人で有難い。
その後、作戦会議して、膳は急げで、各自、直ちに、救出作戦の準備に動くことにした。
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