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魔物外交編
国王ギネ・モールガンの憂鬱
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夕日が差し込む国王執務室にて、国王ギネは、写真を眺めていた。モロウ達から貰ったアルバム(A4用紙に写真を纏めてプリントアウトした数枚の束にすぎないが)の一枚で、全員がまるでそこに集合している様にいて、笑っている。
他にも、皆が最高の笑顔を見せている写真が一枚の紙に幾つもまとめられていて、それが何枚もある。
こんな想い出に残る贈り物は、初めてで感慨一入。
他にも、素晴らしい贈り物を幾つも貰った。
王妃には輝く透明な石をちりばめた首輪のネックレス、ギラには白く軽く鋭利な刀剣、キキには音の出る宝石箱、儂には双眼鏡とかいう遠眼鏡と額縁付の大きな写真の肖像画とを貰った。
皆、大喜びで、きっと今晩は昂奮して寝むれない事だろう。
本日、ヘリオスなる彼らの飛空艇に乗った。
天から一瞬で楕円体の鉄の塊が落ちて来た時は弩肝を抜かれ、儂も死を覚悟したものたが、空中でぴたりと静止し、静かに地上に降り立った。
その船から降りてきた鉄の階段で中に入り、先ず制御室なる所に連れていかれ、椅子に座らせ、拘束された。
だが、そこからの出来事は夢だったとしか思えない。
室内から外の風景が見えたと思ったら、目に見えない力で押しつぶされそうになり、物凄い速度で上昇して行く。何がなんだかわからない内に、躰がフワフワと浮きだし、モロウは、前面パネルに映っている青い球体を、我が大地だとか言いよった。
実際にあの日と同じように、ズームなる処理をして、神の目で民をこの目で見せられると、紛れもなく我が大地であると認識させられたが、未だに信じられない。
その後も再び、目に見えない力が掛かり、僅か数秒で、我が大地をぐるっと一周回転させて見せ、今度は月に向かって進み、月に着陸してみせよった。
それから艦内見学がはじまったが、身体が軽いだけでなく、見るもの全てが、驚異の連続。
太陽光まで作りだした室内菜園。材料なしに一瞬で料理を作り出す魔法の箱。肉体を極限まで鍛える事のできる装置。我々の知らない愉快で楽しい遊び道具の詰まった娯楽設備。銃という武器や、開発中という誰でも魔法を出せる杖まであった。
そして出されたおやつも絶品で、彼等の星の説明が始まった。
突然壁に現れた彼らの世界の動く風景。信じられない程密集した人間種の一団。喧嘩が起きてもおかしくない程の密集状態なのに、イキイキして、笑顔を向け、楽しそうにしている。
平和で何の不自由も無く、満ち足りた生活を送っている証拠だ。
そして、天まで届きそうな建物が無数に並び建つ街並み。信じられない程広い道が縦横無尽に走り、地下や空にまで道がある。
道には高速馬車や鉄の馬が行きかい、馬車はそのまま空を飛ぶことさえできる。
夜も明るく賑やかで、眠らず活動をつづけ、地下にまで街を作っている。
こういう街を、三百年掛けて、この地に造るのだとモロウは言う。
そして始まった人間移住計画の詳細と、具体的な街づくり計画の説明。
ロボットによる無人作業とかいう理解しがたい説明だったが、壁に説明が文字と絵と共に浮き上がる説明方法は、こちらでも好きに内容確認でき、実にすばらしい。
これからの企画書は、こういう方式で纏めさせようと大いに参考になった。
そして、実際に見てもらうのが早いと、何も無いテーブルに突如森が浮き上がり、街づくりが始まった。王都サイズが大きなお盆サイズに縮小されているが、森林がこのヘリオスにて平地に整地され、そこに無数のロボットが現れ、作業を始める。地面を固め、道を作り、次第に異世界の摩天楼が何本も伸びていく。
本当に実物がある様に思え、皆が思わず手を出して触ろうとする場面もしばしばだった。
その後、スケルトン兵のように命のないロボットによる、月面作業の実演まで見せてくれた。
一体で、十人以上の作業を短時間でこなしていく。それが五体。目の前で、この計画は現実可能だとデモンストレーションしてくれた。
儂を説得しようと、ここまでしてくれたのだろうが、その必要はなかった。
ギグが言うように、彼等の計画は彼等の持てる技術力に裏打ちされた完璧なる計画だと、資料説明だけで、十分に理解できた。
彼等もまた神なのだ。我々の遠く及ばない存在で、抗う事も叶わぬ存在。神々の計画に間違いがあるわけがない。
そして、いよいよアヘン製造拠点の壊滅となった。
準備に暫く時間がかかると言うので、儂とギラ以外は、娯楽室に遊びに出かけたが、二人はガスパールさんの作業を見学させてもらった。
月から切り出してきた大きな石の塊を、あっと言う間に球体に整形し、特殊な塗料を吹きかけていく。
良く分らぬが、これは砲弾だそうで、熱で燃え尽きない様に、耐熱処理をしているのだとか。その身長ほどある球体を五つ作り、準備完了。
再び宇宙なる身体か浮く空間に出て、その砲弾をヘリオスから次々と打ち出した。
目の前の巨大パネルには、神の目により、芥子畑や工場が映っているが、砲弾はそこに目掛けて炎の玉になって、落下して行く。
ただそれだけなのだが、一つの砲弾だけで、一瞬で畑が吹っ飛ぶ程の威力。ロシナント王国の誇る魔法師団の爆裂魔法の比では無い。桁違いの破壊力。それが次々と五つも降り注ぐ。
爆煙が治まると、大地に巨大な大穴ができ、何もない荒れ地に変貌していた。
確認までに、その地にヘリオスを降ろして、我々も外にでたが、神の目で見たままの光景。まさに神の鉄槌と呼ぶべき天罰だった。
もはや、彼等の移住要求を受け入れるしかないのは明らかだが、それでもギネは迷っている。
その理由は、モールガン王国国内の腐敗が大きくかかわっている。
現在、モールガン王国は破滅への道を突き進んでいる。
南部諸国の相次ぐ反乱と戦で、豊かな農地も荒れ果て、税収が激減。加えて、アヘンの普及で治安が行き届かず、急速にスラム化が進んでいる。無法者が次々とシンジケートを組織し、勝手に民から税の徴収をするから、国民の不満が募り、益々国内腐敗が加速して行く悪循環。
彼等と手を組み私腹を肥やす大臣まで出てきたほどで、国政そのものにまで腐敗の毒が廻ってしまっている。
最近では性病なる新たな病気も蔓延を始め、死者も急増している。
このままでは、近いうちにこの国が滅ぶのは目に見えている。
麻薬輸入ルートを断ったとしても、それで済む問題ではないところまで、この国は腐敗している。
彼ら人間種に土地を分け与えるのは簡単だが、彼等がいるだけで、問題が更に増える。
彼等の力を悪用しようとする輩が必ずあらわれる。シンジケートに限らず、大臣連中まで、彼等の力を悪用しようと動くに違いない。
そうなれば、ロシナント王国の二の舞だ。
彼等は神で、寛大な心を持っているのは分っているが、怒らせれば制裁を受ける。今の国力ではその代償を埋め合わせるだけの財力はないし、怒らせないように、統制する力もない。
その後も暫く考え続け、彼は第一王子であるギラを呼びつけ、側近の人払いをした。
国王ギネは、やってきたギラに向い、ゆっくりと話し出す。
「明日の夕刻までに、人間種の受け入れの回答をしなければならない。彼らの計画は三百年にもおよび、儂だけの問題では済まない。お前や、孫にも引き継いで、継続して守らねばならない案件だ。だから、お前の意見を聞きたいと思い、呼びつけた」
「私は国王陛下の判断に従います。ですが、応えは決まっているではありませんか。陛下が何を悩んでいるのか、浅学非才の私には分りかねます」
「お前は、ロシナント王都に関する調査報告書を読んでいるな」
「はい。ロシナントは人間と敵対しようとしたのではなく、人間を利用しようとし、逆鱗に触れたという内容ですよね。それが……」
「今の腐ったこの国で、シンジゲートらの人間悪用を防止・統制できるとでも思っているのか。人間を騙し、悪用しようとした者には、神の裁きが必ず下る。悪巧みを企てたシンジケートが壊滅するのは好都合だが、周辺にも被害はでて、なにもしてない民にまで被害がでる。お前も神の鉄槌の威力を見たであろう。そして、直ぐに後釜が生まれ、懲りることなく、次々とそんな輩が現れる。その繰り返し。そうなれば、再開発費用だけで莫大な額を要する。放置しておけばますます治安は悪化するし、重税を掛ければ国民に不満が溜まり、内乱に発展し、更なる治安の悪化を招く。そこに、手ぐすねを引いて機会を伺っていたロシナントも攻め入って来るのは必至。トカゲ族にこの国を乗っ取られるのは明らかだ」
「しかし、女王マルンがあれだけの事をしながら、ロシナント王宮の被害は軽微でした。その点から鑑みれば、砲弾攻撃のような手荒な真似はしないのではないでしょうか」
「確かに神は心優しく寛大だ。だが、悪巧みしたものには、二度と刃向かわなくなる様な制裁を必ずする。軽微な被害とはいえ、死傷者は出ているし、塔が壊滅し、王宮の修理費も相当な額のはずだ。人間が近くに居る限り、そんな被害が続くことになる。それに、アヘン製造拠点の壊滅が、人間の仕業なのは明らか故、あやつらをかくまっているとマルンが知れば、直ちに条約破棄して攻め込んでくる事態すらありうる。いや……、待てよ……。アヘンがこの国を堕落させる戦略であったのなら、我が国力が回復する前に動くのではないか。この機に、攻め入って来る可能性は高いぞ。これは不味い。やはり、受け入れらないと断って、別の国に行ってもらうしかないのか。そうなれば、新たな脅威を産むだけだし……。完全に詰んだ。打つ手が無い」
「なら、いっそのこと、治安回復と国土防衛を人間に任せてはどうでしょう」
「馬鹿を言うな。我が国の恥をさらし、内政の一部をゆだねるというのか。儂の無能を晒す様な真似ができるか。それにこの国は儂の国ぞ。お前に相談した儂が馬鹿じゃった。直ぐに出て行け」
つい頭に来て、ギラを追い出したギネだったが、自分の無能を晒すだけで、国を守れるのであれば、それもありではないかと考え始めたのだった。
他にも、皆が最高の笑顔を見せている写真が一枚の紙に幾つもまとめられていて、それが何枚もある。
こんな想い出に残る贈り物は、初めてで感慨一入。
他にも、素晴らしい贈り物を幾つも貰った。
王妃には輝く透明な石をちりばめた首輪のネックレス、ギラには白く軽く鋭利な刀剣、キキには音の出る宝石箱、儂には双眼鏡とかいう遠眼鏡と額縁付の大きな写真の肖像画とを貰った。
皆、大喜びで、きっと今晩は昂奮して寝むれない事だろう。
本日、ヘリオスなる彼らの飛空艇に乗った。
天から一瞬で楕円体の鉄の塊が落ちて来た時は弩肝を抜かれ、儂も死を覚悟したものたが、空中でぴたりと静止し、静かに地上に降り立った。
その船から降りてきた鉄の階段で中に入り、先ず制御室なる所に連れていかれ、椅子に座らせ、拘束された。
だが、そこからの出来事は夢だったとしか思えない。
室内から外の風景が見えたと思ったら、目に見えない力で押しつぶされそうになり、物凄い速度で上昇して行く。何がなんだかわからない内に、躰がフワフワと浮きだし、モロウは、前面パネルに映っている青い球体を、我が大地だとか言いよった。
実際にあの日と同じように、ズームなる処理をして、神の目で民をこの目で見せられると、紛れもなく我が大地であると認識させられたが、未だに信じられない。
その後も再び、目に見えない力が掛かり、僅か数秒で、我が大地をぐるっと一周回転させて見せ、今度は月に向かって進み、月に着陸してみせよった。
それから艦内見学がはじまったが、身体が軽いだけでなく、見るもの全てが、驚異の連続。
太陽光まで作りだした室内菜園。材料なしに一瞬で料理を作り出す魔法の箱。肉体を極限まで鍛える事のできる装置。我々の知らない愉快で楽しい遊び道具の詰まった娯楽設備。銃という武器や、開発中という誰でも魔法を出せる杖まであった。
そして出されたおやつも絶品で、彼等の星の説明が始まった。
突然壁に現れた彼らの世界の動く風景。信じられない程密集した人間種の一団。喧嘩が起きてもおかしくない程の密集状態なのに、イキイキして、笑顔を向け、楽しそうにしている。
平和で何の不自由も無く、満ち足りた生活を送っている証拠だ。
そして、天まで届きそうな建物が無数に並び建つ街並み。信じられない程広い道が縦横無尽に走り、地下や空にまで道がある。
道には高速馬車や鉄の馬が行きかい、馬車はそのまま空を飛ぶことさえできる。
夜も明るく賑やかで、眠らず活動をつづけ、地下にまで街を作っている。
こういう街を、三百年掛けて、この地に造るのだとモロウは言う。
そして始まった人間移住計画の詳細と、具体的な街づくり計画の説明。
ロボットによる無人作業とかいう理解しがたい説明だったが、壁に説明が文字と絵と共に浮き上がる説明方法は、こちらでも好きに内容確認でき、実にすばらしい。
これからの企画書は、こういう方式で纏めさせようと大いに参考になった。
そして、実際に見てもらうのが早いと、何も無いテーブルに突如森が浮き上がり、街づくりが始まった。王都サイズが大きなお盆サイズに縮小されているが、森林がこのヘリオスにて平地に整地され、そこに無数のロボットが現れ、作業を始める。地面を固め、道を作り、次第に異世界の摩天楼が何本も伸びていく。
本当に実物がある様に思え、皆が思わず手を出して触ろうとする場面もしばしばだった。
その後、スケルトン兵のように命のないロボットによる、月面作業の実演まで見せてくれた。
一体で、十人以上の作業を短時間でこなしていく。それが五体。目の前で、この計画は現実可能だとデモンストレーションしてくれた。
儂を説得しようと、ここまでしてくれたのだろうが、その必要はなかった。
ギグが言うように、彼等の計画は彼等の持てる技術力に裏打ちされた完璧なる計画だと、資料説明だけで、十分に理解できた。
彼等もまた神なのだ。我々の遠く及ばない存在で、抗う事も叶わぬ存在。神々の計画に間違いがあるわけがない。
そして、いよいよアヘン製造拠点の壊滅となった。
準備に暫く時間がかかると言うので、儂とギラ以外は、娯楽室に遊びに出かけたが、二人はガスパールさんの作業を見学させてもらった。
月から切り出してきた大きな石の塊を、あっと言う間に球体に整形し、特殊な塗料を吹きかけていく。
良く分らぬが、これは砲弾だそうで、熱で燃え尽きない様に、耐熱処理をしているのだとか。その身長ほどある球体を五つ作り、準備完了。
再び宇宙なる身体か浮く空間に出て、その砲弾をヘリオスから次々と打ち出した。
目の前の巨大パネルには、神の目により、芥子畑や工場が映っているが、砲弾はそこに目掛けて炎の玉になって、落下して行く。
ただそれだけなのだが、一つの砲弾だけで、一瞬で畑が吹っ飛ぶ程の威力。ロシナント王国の誇る魔法師団の爆裂魔法の比では無い。桁違いの破壊力。それが次々と五つも降り注ぐ。
爆煙が治まると、大地に巨大な大穴ができ、何もない荒れ地に変貌していた。
確認までに、その地にヘリオスを降ろして、我々も外にでたが、神の目で見たままの光景。まさに神の鉄槌と呼ぶべき天罰だった。
もはや、彼等の移住要求を受け入れるしかないのは明らかだが、それでもギネは迷っている。
その理由は、モールガン王国国内の腐敗が大きくかかわっている。
現在、モールガン王国は破滅への道を突き進んでいる。
南部諸国の相次ぐ反乱と戦で、豊かな農地も荒れ果て、税収が激減。加えて、アヘンの普及で治安が行き届かず、急速にスラム化が進んでいる。無法者が次々とシンジケートを組織し、勝手に民から税の徴収をするから、国民の不満が募り、益々国内腐敗が加速して行く悪循環。
彼等と手を組み私腹を肥やす大臣まで出てきたほどで、国政そのものにまで腐敗の毒が廻ってしまっている。
最近では性病なる新たな病気も蔓延を始め、死者も急増している。
このままでは、近いうちにこの国が滅ぶのは目に見えている。
麻薬輸入ルートを断ったとしても、それで済む問題ではないところまで、この国は腐敗している。
彼ら人間種に土地を分け与えるのは簡単だが、彼等がいるだけで、問題が更に増える。
彼等の力を悪用しようとする輩が必ずあらわれる。シンジケートに限らず、大臣連中まで、彼等の力を悪用しようと動くに違いない。
そうなれば、ロシナント王国の二の舞だ。
彼等は神で、寛大な心を持っているのは分っているが、怒らせれば制裁を受ける。今の国力ではその代償を埋め合わせるだけの財力はないし、怒らせないように、統制する力もない。
その後も暫く考え続け、彼は第一王子であるギラを呼びつけ、側近の人払いをした。
国王ギネは、やってきたギラに向い、ゆっくりと話し出す。
「明日の夕刻までに、人間種の受け入れの回答をしなければならない。彼らの計画は三百年にもおよび、儂だけの問題では済まない。お前や、孫にも引き継いで、継続して守らねばならない案件だ。だから、お前の意見を聞きたいと思い、呼びつけた」
「私は国王陛下の判断に従います。ですが、応えは決まっているではありませんか。陛下が何を悩んでいるのか、浅学非才の私には分りかねます」
「お前は、ロシナント王都に関する調査報告書を読んでいるな」
「はい。ロシナントは人間と敵対しようとしたのではなく、人間を利用しようとし、逆鱗に触れたという内容ですよね。それが……」
「今の腐ったこの国で、シンジゲートらの人間悪用を防止・統制できるとでも思っているのか。人間を騙し、悪用しようとした者には、神の裁きが必ず下る。悪巧みを企てたシンジケートが壊滅するのは好都合だが、周辺にも被害はでて、なにもしてない民にまで被害がでる。お前も神の鉄槌の威力を見たであろう。そして、直ぐに後釜が生まれ、懲りることなく、次々とそんな輩が現れる。その繰り返し。そうなれば、再開発費用だけで莫大な額を要する。放置しておけばますます治安は悪化するし、重税を掛ければ国民に不満が溜まり、内乱に発展し、更なる治安の悪化を招く。そこに、手ぐすねを引いて機会を伺っていたロシナントも攻め入って来るのは必至。トカゲ族にこの国を乗っ取られるのは明らかだ」
「しかし、女王マルンがあれだけの事をしながら、ロシナント王宮の被害は軽微でした。その点から鑑みれば、砲弾攻撃のような手荒な真似はしないのではないでしょうか」
「確かに神は心優しく寛大だ。だが、悪巧みしたものには、二度と刃向かわなくなる様な制裁を必ずする。軽微な被害とはいえ、死傷者は出ているし、塔が壊滅し、王宮の修理費も相当な額のはずだ。人間が近くに居る限り、そんな被害が続くことになる。それに、アヘン製造拠点の壊滅が、人間の仕業なのは明らか故、あやつらをかくまっているとマルンが知れば、直ちに条約破棄して攻め込んでくる事態すらありうる。いや……、待てよ……。アヘンがこの国を堕落させる戦略であったのなら、我が国力が回復する前に動くのではないか。この機に、攻め入って来る可能性は高いぞ。これは不味い。やはり、受け入れらないと断って、別の国に行ってもらうしかないのか。そうなれば、新たな脅威を産むだけだし……。完全に詰んだ。打つ手が無い」
「なら、いっそのこと、治安回復と国土防衛を人間に任せてはどうでしょう」
「馬鹿を言うな。我が国の恥をさらし、内政の一部をゆだねるというのか。儂の無能を晒す様な真似ができるか。それにこの国は儂の国ぞ。お前に相談した儂が馬鹿じゃった。直ぐに出て行け」
つい頭に来て、ギラを追い出したギネだったが、自分の無能を晒すだけで、国を守れるのであれば、それもありではないかと考え始めたのだった。
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