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第五章 平和を目指して頑張って来ただけなのに

5-3 なぜか僕が王になってしまいました

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 小鳥のさえずりが聞こえてきて、窓扉の隙間から、明るい日差しが刺し込んでいる。
 もう朝かと服を着ることにしたが、あんなにしまくったからか、アソコが痛む。
 そういえば、フェイと初めてしまくった時も、こんな痛みを覚えたものだ。
 あの時は、フェイを幸せにするぞと思ったが、そのフェイはもういない。
 でも、代わりに、ピッチとフェンが僕の妻となった。
 二人は、毛布をかぶって、幸せそうに寝ていて、改めて、僕が二人を幸せにしなければと考えた。
 同時に、蜘蛛神アクネルの事まで、思い出す。
 第三夫人になると言うのは、きっと冗談だと思うが、約束なので、彼女も抱かなければならない。
 でも、二人に口止めして、まだ関係してないことにすればいいだけの事だ。
 そして、昨日、つい勢いで抱いてしまったルネーラの事も思い出し、彼女がいない事にも気が付いた。
 彼女は、僕と遊びのつもりみたいなので、気にすることではないが、それでも、この亜人領のナンバーワンの領主様なので、今後、どう付き合っていけばいいのかと、頭が痛くなる。

 扉を開けて外にでて、顔を洗う場所を探していると、そのルネーラがいた。
 昨日のトカゲ女ではなく、ちゃんと本来の竜の姿だ。
「御免、昨日は媚薬でおかしくなってしまっていて」
「気にするな。いや、こちらこそ、ありがとうと感謝したい。五十年以上してなかったので、女であったことを忘れていたが、あんな凄い快楽を味わったことで、本来の自分は、セックス好きの色魔だったと思い出した。これからは健斗を主として、仕えることにしたから、これからも宜しく頼む」
「ちょっと待って。してしまった事から逃げる気はないけど、ルネーラ様まで、僕の妻になるということ?」
「ああ、勿論。アクネルが第三夫人だとすれば、私は第四夫人で構わない」
 領主様が、僕の妻だなんて、とんでもないことになってしまったが、これも自業自得だ。
「僕なんかが、領主様の旦那になるなんて、おこがましい事ですが、宜しくお願いします」
 顔を引きつらせながら、形式的な挨拶はした。
「それで、私がしもべとなる以上、貴方にはそれにふさわしい立場になってもらいたい。どうだろう、この地に国を建国し、国王となっては貰えぬか。失われたドワーフの里を取り戻すためにも、リーダーになって欲しい。健斗の力と知識と作戦立案能力、指導力は私よりも上だ。国王たる者には、人を見拭く目や、政治手腕も必要となるが、それも貴方なら、なんとかしてくれると信じている。私が王妃となって、支えていくと言いたいが、それは私も苦手でな。でも、健斗なら大丈夫だろう。どうだ、国王になってもらえぬか」
 いきなり、そんなことを言われても、直ぐに答は出せない。突如、人族に占領され、虐げられているドワーフたちを救い出せないかとは、先日も考えていたが、それとこれとは別の話だ。
「国王になることは、まだ考えられないが、リーダーとなる件は引き受けよう。僕も、ドワーフの民を救出したいとは思っていた」
「そうか。提案をうけいれくれるか。やはり私が見込んだ男だ」

 そして、ルネーラは何を考えているのか、突然、念話で、話し始めた。
「本日をもって、私は、この亜人領の領主を退く。そして、我が主、篠崎健斗が、国王となり、ここにケント王国を建国する」
「おいおい、国王になる件は、まだ考えられないって、いっただろう」
 僕は不満を露わにしたが、ルネーラの念話は続く。
「第一王妃をオーク・ビッチ。第二王妃、フェンリル・フェン。第三王妃、タラテクト・アクネル。第四王妃、ドラゴン・ルネーラ。各王妃が、協力して、この国の治安と秩序を守り、何者にも犯されることのない、安全で平和な国にすることを約束する。そして、建国の手始めとして、半年前に人族に侵略され、奪われた我ら同胞、ドワーフの民の救出に向かう。皆、あと暫く力をかしてほしい」
 エルフたちや、翼竜、狼たちが一斉に拍手喝采を始めたので、もしやと思い確認すると、やはり、この亜人領全員に向けての、建国宣言だった。
 とんでもないことになったが、ビッチとフェンも嬉しそうに飛んで来て、おめでとうと拍手してくれた。

 守り神になれたと思ったら、一夜にして今度は亜人領の国王になってしまい、一人の正妻王妃と、三人のとんでもない化け物王妃とを、もつことになった。
 もう、国王になると宣言した以上、国王らしくこの亜人領を統治していかなければならないが、さてどうしたものか。
 
 フェンには僕に変わる守り神となってもらい、メシウスが統治していた領地を任せ、他の二人は今まで通りに統治しもらえばいいが、ピッチをどうしよう。
 彼女は、僕にないものを沢山もっているので、聖母マリアの様な存在になってもらいたいが……。

 僕は、貿易の要のリットをこの国の首都にして、その拠点を彼女に任せることにした。
 具体的には、リットに病院を建設し、市長兼、病院の医院長兼相談役になってもらう。
 彼女の治癒の技術を生かさない手はないし、花嫁修業であらゆることに精通していて、頭も良いし、人当たりの良い。国民の声を集め、新たな政策を立案する担当として、これ以上の適任者はいない。

 これで王妃四人の役割は決まったが、国王となった僕が、何をするかだ。
 ルネーラは、治安と秩序と言っていたが、確かに、守り神だよりでは、複数個所の問題に同時対処できない。豚獣人の里のように、一か月も放置される事態だって起こりうる。
 警察の様ないつでも動ける治安組織や、基準となる法整備が必要だ。
 幸い王妃の眷属は優秀だし、亜人たちも自衛兵を派遣してくれている。
 直ぐには組織化できないが、この辺も皆で知恵を出し合って、調整して構築して行かなければならない。

 そして、最優先課題は、皆に約束したドワーフの民の救出だ。
 ドワーフの里に奇襲をかけ、里を取り戻すのは、今の僕らと人族の戦力差から考えると、たやすいが、それで、ドワーフを救えるかはわからない。
 先ずは、ドワーフ族の現状の情報収集が重要だ。

 ピッチとフェンの二人に、その聞き込み担当を任せ、エルフの里だけでなく、亜人領各地に赴いて、ドワーフ族の噂話を精査させることにした。
 同時に、フェンに情報収集させるに適した狼戦士六匹の選定をお願いし、彼らに諜報活動してもらうことにした。
 人族領での情報収集には、プレーヤーに成りすますのが良いが、プレーヤーの鑑定結果が少し通常とはちがうためか、プレーヤーへの変身はできなかった。そこで、彼をフェンの姿にかえることにした。
 大女だと目立つので、進化前のフェンだといいんだけどなと考えながら、呪文を唱えたからか、160センチの頃のフェンが現れた。でも、一糸まとわぬ全裸だ。
 他の狼達も驚いて、涎を垂らして、じっとそのフェンを凝視している。
「私にも変身させられるんだ。私でないと分かっているのに、何だが、恥ずかしい」
 フェンは慌てて、プレーヤ防具を取り出し、着せ始めたが、僕が、どんどん狼達をフェンへと変えていくので追いつかない。
 全裸のフェンが何人もできて、自分の胸をさわったり、アソコを確認しようと覗くものまでいる。
「ちょっと、裸の私をこんなに量産しないでよ。あんたたちも、変な事したら殺すからね」
 いろんなド派手な服のフェンが六人できあがった。
 実際に鑑定するとプレーヤーでない事はまるわかりだが、見た目はプレーヤーなので、怪しまれることなく、どこにでも入り込め、話を訊けるはずだ。
 この変化魔法は、時間制限なく、僕が解除しない限り、変身状態を維持し続けるが、十分毎にMP2を消費するので、六人も変身させていると、とんでもない魔力量を吸い取られることになる。
 今の僕なら、それでも問題はないが、当分は、上級魔法は使用しない様に心がけねばならない。

 その情報収集の間に、僕は、迷いの森の復元を始めることにした。
 今の迷いの森は、濃霧すら発生できず、里の入り口が一目瞭然で簡単にみつかってしまうからだ。
 
 ジェニスと二人で、迷いの森の状況を見に行ったが、この森はもう死んでいると言われてしまった。
 燃える木々を必死に消火して廻ったのに、それらの木は、もうほとんどが死んでいて、再生できないのだそう。
 十数本は、なんとか再生可能だということで、その木をなんとか生き残った転送陣のある巨木の周辺に移植することにした。こうすると、この周辺だけは濃霧ば発生でき、里の入り口を隠すことができるのだとか。
 そうだとしても、たったこれだけの木だと、入り口は簡単に発見される。
 それに、木の移植ってどうすればいいんだろうと、頭がいたい。

 とりあえず、その日は、何とか生き残っている木以外の木を引き抜く作業を進めることにした。
 僕の土津波で根っこ毎引き抜き、火球で完全に灰になるまで燃やせば、更地に戻すことなんて簡単だ。
 一日掛かりにはなったが、まだ生きている十数本だけを残し、森は完全な更地になった。

 本来のエルフの里に戻ると、昨晩の復旧が全然進んでいなかった。ジェニスに文句をいうと、エルフは不老長寿の種族の為、怠け者なんだとか。十年も掛ければ元に戻るから問題ないのだと笑って応えた。
 彼らの地なので、彼らの好きに復興させればいいが、呆れてしまった。

 今日は、そのジェニスの家で夕食を食べることになったが、フェン、ビッチの他に、サキュバスというか、魔人形態のアクネルがいた。
 一見すると服を着ている様に見えるが、全裸で服は何も身に付けていない。
 リット砦に、ルネーラが戻って来て、見張りを交代してやってきたのだとか。
 ルネーラの口止めを忘れていたので、僕とするために、態々、ここまでやってきたのだ。

 食事が終わると、「今晩だけは勘弁してあげるから、彼女のことも喜ばせてあげなさい」と、フェンに肩を叩かれた。

 そういう訳で、今晩も、昨日の部屋で、セックスすることになった。
 彼女の身体の作りは、人魚のマームに近く、興奮してくると、乳首がとびだし、股間が割れて、小陰唇が延びてくる。体系もマームに近い、ほどよい大きさだが、フェン以上の大柄女なので、今の僕の手の大きさでも丁度いい大きさだ。体内に隠している種族は、その分、感度が高いみたいで、マーム程ではないが、愛撫だけで簡単に何度も絶頂を迎え、その反応は結構、楽しい。
 そして、本番行為を始めたが、これまた気持ちいい。僕の妻が、三人とも名器だなんて奇跡の様な確率なので、粗マンを覚悟していたのだが、これまた名器だった。人魚のマームに近い絞り系の名器で、絞り位置が引き込む様に動く。
 彼女は絶頂時の痙攣も凄まじく、フェイを思わせる者があり、彼女のいわれるまま二連戦して、行かせ捲ってやった。
 流石に、もう動けなくなり、満足した様なので、僕は彼女の横になり、明日の植林作業をどう進めるかに頭を悩ませた。
 生きている十数本を巨木の周囲に移すのもそうだが、入り口を完全に隠すには、沢山の木が必要で、その樹木をどこからか調達して、移植しなければならないからだ。

「そんなことで悩んでいのか」
 彼女の能力で僕の思考を読んだのか、胸を僕に乗せる様にして甘えて話しかけてきた。
「妾も妻となったのじゃから、気軽に相談すればよいのじゃ。妖精ドリュアスなら、そんなのは一瞬でやってくれる。妾が話を通しておくから、もう一度、精子を注いでくれ」
「ドリュアスなら、知り合いがいる。君の手を煩わせなくても、僕自身でなんとかするよ」
 そして、三回戦をはじめたが、既に身体ができあがっているからが、直ぐに行き捲り、彼女も次第に激しい声を出し始める。
 その声を聞いて、我慢できなくなったのだろう。ピッチとフェイまで、部屋の中に張って来た。
「何度も何度も狡い」
「おまえ、今晩だけは勘弁してやるっていったよな」
「私は、そんなこと、いってませんから」 一足先に服を脱ぎ終えたビッチが迫ってきた。
 結局、今晩もハーレム4P。連日、こんな名器の三人の美女とできるなんて感謝すべきことなんだろうが、精力を吸い取られまくり、過労死してしまいそうだ。

 翌朝、フェンに転送してもらって、ドリーとミリーに会いにいった。
 だが、彼女たちは、服作りが専門なのだそうで、植樹には植樹専用の妖精に頼まなければならないのだそう。
 その妖精を紹介してもらって、迷いの森の再生を協力してもらいたいとお願いした。
 
 すると、またもや、その妖精たちが、只で協力する訳にはいかないと僕を困らせた。しかも、今回は八人相手だ。
 でも、フェンが凄い形相で彼女らを睨みつけてくれたので、僕の提案で納得してもらえ、事なきを得た。
 僕の提案とは、怪我の治療だ。今、リットの街に、リット病院を作る予定でいるので、怪我をした時は、無料で治療するという交換条件で、協力してもらえることになった。

 彼女たちは不思議な魔法で、木を根に土がついた状態で持ち上げ、巨木の周りに移植していく。四時間ほどで、全ての木を映し終え、その木を活性化させ、葉を芽吹かせて見せた。
 ただ、残りの広大な森の植樹が問題だ。
「これだけの広大な森だと、他の森から移植するのではなく、苗木を植えて育てる方がいいわね」
「うん。他の森が枯れちゃうから、時間は掛かるけど、苗木から育てるべきだよ。苗木なら直ぐに調達できるし」
 皆がそういうので、植樹ではなく、苗木を植えて育てる方針に変更した。

 そういう訳て、八人が苗木の調達に行った間に、僕は人手を集めることにした。
 怠慢なエルフはやはり嫌がったが、ジェニスの説得で、なんとか十人程が集まり、ビッチとフェンにも協力してもらい、苗木を植えていく作業をすることになった。

 これだけ広大だと、数日かかるなと覚悟はしていたが、八人の妖精ドリュアス以外にも、小さな妖精がいつの間にか沢山いて、そこらじゅうで苗木を植える作業を手伝ってくれていた。
 ドリュアスより小さい八歳児位の大きさの妖精だが、蝶々の羽根や、蜂の様な透明な羽根がついている。
 そんな訳で、日没時間には、広大な焼け野原は、小さな若木で埋め尽くされた。
 ジェニスによると、この苗木では、霧は発生させられないのだそうだ。
 昔の様な森にするには、数百年かかるが、十年もすれば霧を発生できるくらいに育つから、問題はないのだとか。
 エルフ族は、長大なスパンで物事を考えるが、その十年の間は、入り口が簡単に見つかる状態だということになる。

 やはり、警察の様な組織を早急に作る必要がありそうだ。
 翌日は、ルネーラ、アクネルも含めて、僕の考える交番警備制度を提案した。里ごとに一つ、その地域の代表が巡査となって、里の異変や揉め事の仲裁に動き、魔物問題等の手に余る問題は、本部に救援要請する。
 必要に応じた規模の隊員をその地に転送して、直ちに問題解決するという組織作りの提案だ。
 その組織名は警備隊ガーディアンとし、そのメンバーは、各獣人の里から募るリット自衛兵と、守り神の眷属として、その警備隊長は僕として、三人の守り神が幹部とする組織にした。
 本部は、首都にする予定のリットに置くつもりだ。
 守り神の業務で各地を見回りして廻らなければならず、些細な事で頻繁に呼びだされると、過重労働になりかねないとの意見もあったが、とりあえず試行してみて、不具合を洗い出し、調整する方向で納得してもらった。
 そして、警備隊の仕事の一環として、迷いの森の巡回警備もする。
 エルフの巡査が駐在する交番は、本来の里の中におくが、迷いの森内にも、警邏専門の警備隊の派出所を設け、そこに常に隊員二名を一週間交代で配置して、不審者がエルフの里の入り口に近づかない様に対策する。
 一人でもいいのだが、万が一、そのものがやられたら、警備隊本部に連絡できないまま、エルフの里が襲われる事態になりかねないからだ。
 ついでに、リットを首都にして、そこに僕らの拠点を置き、病院も作ろうと考えている話もして、そっちは大賛成で受け入れてもらえた。
 早速、僕らの城や、病院つくりが専門家を交えて詰めていった。

 夜は、リットの宿屋で宿泊したが、今日はなんと5Pだ。昨晩は一人でゆっくり眠ることができたので、頑張れたが、欲朝、太陽が黄色く見える程疲労困憊していた。

 そして、その朝、ビッチの許に、最後の諜報員のフェンの姿の狼が戻って来た。それまでにも五人が既に帰還していて、既に変身を解除して、話を訊いていたが、この男の話は衝撃的だった。
 ルネーラと、アクネルには何も伝えていなかったので、ピッチから、今まで得た情報を報告した。
 
 名工と呼ばれる数名の鍛冶師のドワーフは、王都「アッシム」の王宮にて、伝説級の武器を作らされている。
 また数名は、王都の高級プレーヤー住宅街の豪邸づくりに従事させられている。
 それ以外のドワーフの男は、ドワーフの里に残り、過酷な労働条件で強制労働させられている。
 ぐうたらで酒ばかり飲む種族なのに、酒を飲む時間どころか、寝る間を与えない酷い労働環境で、一日中、働かされている。
 鍛冶技術のあるものは、最高級の武器や防具を一日中作らされ、その能力のないものは、ミスリルと呼ぶ貴重な鉱物の採掘を一日中強いられる。
 そんな環境でも、反抗もせず大人しく従っているのは、妻子を人質に取られているからだ。
 彼らの妻や子供は、王都の貴族邸やプレーヤー宅に分散して預けられ、そこで下女として働かれている。大事な人質なので、性のはけ口にはされてなく、睡眠も食事も、休憩時間も与えられていて、無事でいるという手紙のやり取りもできるようになっている。
 だが、もし旦那が反抗でもすると、その男の妻子は、見せしめに、恥辱の限りを尽くされ、全裸のまま一日晒し者にされ、斬首刑に処されるのだ。
 だから、男達はどんなに辛くても、一切反抗せず、耐え忍んで、きつい仕事に従事してる。
 最後の密偵が持ち帰ってきたのは、そのプレーヤー宅で起きた悲劇だ。何があったかはしらないが、リット砦の敗戦で、やけになったプレーヤーがとんでもない恥辱の限りをしたらしく、飛び降り自殺して死んだという話だった。
 今回の自殺で発覚したそうだが、水面下で同様の凌辱事件が何件もおきているそうだ。
 憂さ晴らしに、とんでもないことを平然とするプレーヤーを許せない。

 大至急、彼女たちの救出に、王都アッシムに乗り込みたいところだが、ルネーラとアクネルとに止められた。
 既に二万の兵を失って、戦力がないとは言え、人族の本拠地に乗り込むので、それなりの戦力で向かわなければならない。そうなると、僕らの国の守りが手薄になり、再び、魔王軍が侵略してくると指摘だ。

 ピッチが「なら魔王に講和を持ち掛ければいいんじゃないですか」と言ってきた。
 積極的に戦争をしているわけではないが、魔王と不可侵条約を締結するのは確かに名案だ。
 ただ、魔王がそれに応じてくれるかは、わからない。
「魔王が素直に、条約締結に応じてくれるかな。どんな男なの」
 アクネルは、魔王の王妃だったと聞いていたので、アクネルに尋ねると、何故かルネーラが応えてきた。
「三年前までは全くの無名でしたが、群雄割拠する魔界の魔人たちを僅か二年弱でまとめ上げたやり手です。かなり強い男だそうですが、頭も良い男なので、戦力的に不利な状況だと悟れば、条約締結してもらえると思います」
「半年前、ルネーラの許に会いに来たからと、知ったかぶりしてるみたいだけど、何も分かってない。魔王ディボラは、イケメンでそれなりの強い男で、頭いいし、聖人君主のように優しい男なのは確かだがけど、野心はなくビビりの小心もので、魔王の器ではない」
「あなたは、魔族領の出身かもしれないけど、彼と話したことあるの?」
「あるも何も、あ奴は妾の元夫じゃからな。妾が奴の尻を叩き、魔王にしてやったようなものじゃ。だが、力を手にすると、人は変わる。今のあ奴は、誰の耳も貸さぬ、強欲な自信家じゃ。力ずくで敵わないと思わせぬ限り、条約には調印せんじゃろう」
「アクネル、私知らなかったけど、どうして私の所に、亡命してきたの」
「それは、いろいろとあってな。権力を持つと、人は疑心暗鬼になり、性格が変わるのじゃ」
 彼女によると、魔王は恩義のあるアクネルですら、煩わしく思い始め出し、彼女を計略に嵌め、人族と結託しているとして、彼女を処刑しようとしたのだ。
 それで、この地に逃げてきたそうで、ディボラには、一体一の差しの勝負をして、叩きのめしてやりたいと息巻いていた。

 今の魔王軍は、四天王二人を失っている。
 ディボラはアクネルと互角で、少し劣る魔王四天王が二人と、取り巻きの雑魚しかいない。
 四天王は、フェンとルネーラと互角とすれば、こちらの戦力が明らかに勝る。
 ルネーラの言う通りに、打算的に考えてくれるなら、不可侵条約を結んでもらえることになるし、アクネルの様に、戦ってどちらが強いかわからせないとならないとしても、十分に勝てる見込みがある。
 そういう訳で、僕は、三人の化け物王妃を連れて、魔王城へと乗り込むことにした。

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