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第五章 平和を目指して頑張って来ただけなのに
5-1 プレーヤーに嫌がらせしてやりました
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(いよいよ、最終章突入です。あと六話ほどで終わりの予定ですので、もうしばらくお付き合いください)
神同志の熾烈な戦闘で、精も魂も尽き果てた状態だったが、一晩熟睡すると、皆、元気になり、僕らはエルフの里へと出発することになった。
蜘蛛神のアクネルも何故か一緒で、案内は彼女がしてくれることになった。ビッチはアクネルの速度について着れないので、ピッチは彼女の背に乗ってしがみつき、必死に落ちないようした。
アクネルは、ビッチを振り落とさない様に、ゆっくりと移動していると言っているが、蜘蛛の糸を操って、木から木へと素早く高速移動していくのでとんでもなく速い。
僕は瞬歩で、フェンは空中浮遊で、ついていったが、彼女を追いかけていくだけでも必死だった。
お蔭で一時間もかからずに、エルフの里と呼ばれる森についた。
そこは、深い霧に覆われた迷いの森で、ピッチは、ここが里だと勘違いしていたが、アクネルによると、この中に里に繋がる入り口があるだけなのだとか。実際のエルフの里は、誰も近づけない閉ざされた山奥の森の中にあり、ここの入り口が、空間転移でその地に繋がっているだけなのだそう。
そして、エルフの許可を貰えない者は、その里の入り口と呼ばれる転移陣にたどり着けず、延々とこの森の中を彷徨うことになる。
つまり、アクネルがいなければ、僕らは一生エルフの里に立ち入ることができなかった可能性もある。
転移陣といっても、魔法陣が書かれているのではなく、木の幹にできた屈んで何とか通れる程度の小さな穴があるだけで、その穴を抜けると、木漏れ日がこぼれる霧が一切ない新たな森が広がっていた。
ここが、そのエルフの里。空気も美味しく、果物や木の実も沢山実って、甘い香りまでする不思議な森だ。
暫くふらふと歩いていると、一人のエルフの男が現れた。
【
分類 エルフ族
レベル 89
名前 ジェニス・ロエル
年齢 346歳
性別 雌
HP:1087/1087
MP:1120/1123
SP: 78/100
】
確か、フェイがガイウス歴326年と言っていたので、このゲーム開始当初、二十歳の青年として作られ、以来ずっとこの世界に生き続けていることになる。
「長みずからが、出迎えか」 やはりこの男が、エルフの族長らしい。
「アクネル様、この者たちは何者ですか。特に人族なんて連れてこられると困ります」
「この男は、人族ではなく、人神だ。メシウスが亡くなったという話はしたと思うが、この男がその後釜の守り神になる。そして、この女も人族ではなく、メシウスの娘だ」
「そうだったんですか。誤解しておりました。今後はお二人にも、里の入り口を利用できるようにしておきます。オーク族のお嬢さんは、申し訳ありませんが、誰かと同行して起こし下さい」
警戒厳重のようなので、ピッチの許可は得られなかったが、特に困ることはない。
「それより、ルネーラ様が、至急、リット砦に来て欲しいって探しておられました」
「いかん、人族の侵攻が始まると聞いていたのに、つい失念していた。健斗、悪いが暫くここでまっていてくれ」
「アクネル、僕たちも連れて行ってくれないか。実は、この里に来たかった理由は、この亜人領の領主であるルネーラ様にあって、守り神としての許可を貰いたかったからなんだ」
「そんなの妾が、話を通しておくが、どうしてもと言うならついてこい。今度は全速で走る故、ついてこれるかは知らぬがな」
ピッチを連れていては、ついていけないので、ピッチだけおいて、僕とフェンとでアクネルを追いかけた。
だが、予想以上に速い。フェンが遅れだし、地上を走る方が速いと、獣のように、四つん這いになって走った。地上からだと、僕らを見失う事態も度々起きたが、念話で位置を教え合い、何とか離されないようについてくる。
やがて、川が見えてきて、その川沿いにブリッツの街を四分の一位にした小さな街が見えてきた。ここが、リットの街らしい。
その、その脇を抜けて更に進むと、目的のリット砦と呼ばれる前線基地が見えてきた。
翼竜や、蜘蛛、狼の軍団が沢山いて、エルフ、ドワーフ、オーク、兎獣人、猫獣人、半魚人の戦士たちも何人か交っている。
「すまん、ルネーラ。ちょっと訳ありで、遅くなった」
翼竜軍の先頭に、五メートル近くありそうな巨大な赤い竜が居た。
「紹介する。こいつが昨日、人神へと進化した健斗。妾の伴侶じゃ」
「誰が、あんたとの結婚を認めたのよ」はぁはぁと息を切らせて、フェンも到着した。
「よいではないか。そして、この人族の女が……。説明は不要じゃな」
「あの子犬が、もうこんなに強くなったのか。生後半年も経っておらぬのにこの強さとは、将来が楽しみだ」
竜神ルネーラも雌なのか、女性の声だった。そしてこっちを向いたので、鑑定を試みたが、やはりできなかった。
「篠崎健斗。貴様に問う。人神なのに、人族に抗うつもりなのか」
「ああ、プレーヤーにはちょっと恨みがあってな。全てがあいつらみたいな非道者とは思わないが、フェンの為にも敵討ちをしたい。それに、プリッツという人族の街の兵士を、全員屠ったこともある」
「なら、私達と共に、この防衛戦に参加してもらえると考えてよいな」
「ああ、勿論だ」
そういう事で、僕らもアクネルと共に、現在の状況について話を訊くことになったが、どこからともなく巨大な狼がフェンの周辺に集まってきた。
狼は、あの荒野にいたスコルハングと似ているが、その進化種なのか『ルーンウルフ』という魔獣で、レベル90前後のとんでもない強者ばかりだ。
「もしかして、メシウス様とリンリン様のお嬢様であらせられますか?」
その狼の一頭が、フェンに話しかけてきた。
「ママって、リンリンという名前だったんだ。生後三か月までの記憶はほとんどないんだよね」
「おお、姫様がお戻りになられたぞ」「ウォ~~~~ン」
その後、僕まで難癖付けられて、実力を見せろと喧嘩まで売られたが、僕の『覇王の威厳』で一旦硬直させ、解除してやると、狼全員が大人しくなり、僕は彼らのボスに着くことになった。
肝心の守り神の許可は、今回の戦闘の様子を見てとなったが、その前に一仕事することにした。
ドワーフの里の際は奇襲され、侵略されてしまったが、今回は事前に防衛線を引けたので、ここから一歩も先にすすませないと、息巻いているが、皆の戦意や士気がガタ落ちだったのだ。
敵兵力も不明で、いつ開戦が始まるかもわからず、ずっと緊張し続けていた所為で、戦う前から兵が疲れ果てていた。
そんな訳で、変化魔法をレベルアップさせるのに丁度いいと、僕とフェンの二人で情報収集すると名乗りでた。
僕の身体は光を放ち目立つので、偵察には向かないと言われたが、蛙に変身してみせると、あっさり了承してもらえた。
物陰に隠れて、敵陣営から二百メートル程まで近ずくと、僕とフェンは蛙に変身した。
蛙になると、耐久力、精神力以外の能力値まで蛙になり、めちゃめちゃ弱くなるが、耐久力はあるので、例え攻撃されても、問題はない。
足も遅くなるので、二百メートルがとんでもなく遠く感じたが、しっかりと兵士とプレーヤーの作戦確認や、プレーヤー間の雑談等を盗み聞きして、必要な情報を無事、手に入れた。
問題は、ここからだ。この身体の儘、敵を倒さないと、変化魔法はレベルアップしない。
そこで、蛙の姿のまま、絶対氷結を繰り出した。
でも、倒れて壊れたのは数名だけで、千人程の兵は凍り付いたままだ。
蛙のまま飛び蹴りしたが倒れてくれない。なら、物理攻撃になる魔法をと考えた時、フェンの不満が爆発した。
『これじゃ、私がまたレベルアップできないじゃない。変身解除してよ』
まだ遠方に沢山の陣があり、こっちの異変に気付いたみたいで、こちらを凝視しているが、フェンを元の姿に戻してあげた。
僕は目立つので、蛙の姿のまま、土津波を発動した。
フェンは百人ほどしか殺せず、不満そうだったが、僕の周辺の凍結兵は、一掃でき、範囲外の敵は、フェンがドミノ斃しの要領で、全て倒した。
お蔭で、フェンも二段階レベルアップしてレベル33となり、僕の変化魔法も、一気にレベルMaxとなった。
周囲から、一斉に兵が走り寄って来ていたので、僕は変身を解き、氷の破片に映して鑑定した。
やはり予想通り、何にでも変身可能だったが、一度鑑定したことのあるものにしか変身できないという条件があった。
つまり、アクネルや、ルネーラ等には変化できない。
もたもたしてると、大軍やプレーヤーにやられるので、僕らは全速力で逃走した。
この程度なら、二人で戦っても、勝てる気はしたが、やはり数は脅威で万が一のことがあるし、プレーヤーはとんでもないアイテムを所持している可能性があるので、やはり脅威だ。
僕らが全速力で逃げれば、誰も追いつけず、無事に砦に帰還できた。
「作戦決行は今晩九時だそうだ。敵兵は、目の前に見えているのが、レベル20から30の敵が約一万。それだけでなく、右翼、左翼に四千ずつ伏兵している。更に二千が、右翼のさらに離れた森の中に潜んでいて、開戦後二時間遅れで、背後から挟撃する作戦になっている。正面兵のうちの千は、さっき全滅させてきたので、人族兵は総勢一万九千人だが、開戦時にはプレーヤーがほぼ全員で攻めてくるみたいだ。プレーヤーの配分等は分からなかった」
「二万の人族に、全プレーヤーか。ドワーフ領土侵略作戦規模の戦闘になるな。貴重な情報、感謝する」
こちらの兵数を訊いてみると、ここにいるのが全兵力だそうで、僅か五百。それでも、一人が人族百人に匹敵するそうで、五万に相当する兵力なのだそう。
ただ、問題はプレーヤー。あの時は五十人掛かりだったが、メシウスを瀕死にするほどの力を備えている。
現プレーヤー数は僅か千人ほどで、レベル五十越えは、百人もいないという話だが、それでもかなり脅威だ。プレーヤーのアイテム次第で戦局は大きく変わる。
結局、壮絶な争いになる予想で、今のうちに、身体を休めておこうとなった。
「九時開戦なら、まだまだ八時間ある。二日がかりの長期戦が予想される故、お前たち二人は今のうちに休んでおけ。他の者たちには、私が念話でつたえる」
そういう訳で、全く眠くなかったが、僕らの為に準備してくれたテントの中に入り、準備してくれていたパンを食べ、昼過ぎの一時から夜七時までの六時間、睡眠をとることにした。
フェンは直ぐにスヤスヤと寝息を立て始めたが、僕はなかなか寝付けない。
それでも、漸く寝つけたと思たらすぐ、股間に違和感を感じ、目を覚ました。
僕の足元に、サキュバスが居て、僕のパンツを脱がせようとしている。
「また僕の大事なものを食べるつもりだな」
「そのためにきたんだ。当たり前のことをいうでない」
鑑定してみたが、この悪魔も鑑定できない。かなりの強敵なのは間違いない。
僕はパンツを奪われ、下半身まるだしのまま、斧を取って身構えた。脱がせる前に擦られていたのか、アソコもビンビンに勃起したままの情けない格好だ。
「勘違いするでない。妾じゃ。サキュバスのような中級悪魔なんぞと同じにするでない」
「アクネルなのか?」
「どうじゃ。この身体なら、抱けるじゃろう。メシウスの娘が目を覚まさぬうちに、さっさとするぞ」
そう言って立ち上がってゆっくりと迫ってきた。
下半身はスパッツを吐いている様に黒く、乳首も見えなかったので、服を着ているのかと思ったが、全裸だった。
股間に陰唇までついているし、乳首の位置に人魚と同じような穴が開いている。
乳房は歩く度にブルンと揺れて柔らかそうで、結構妖艶で僕好みの体系だ。
お蔭で下がりかけていた僕の息子が再び、鎌首も持ち上げて行った。
熱い接吻しながら、胸に触ると、やはり人魚と同じで、隠れていた乳首が飛び出してきた。
感度も良いみたいで甘い声まで上げてくる。
僕はそのまま、彼女を押し倒したが、その時、フェンが視界に入った。
フェンは、熟睡しているみたいで、全く気付いておらず、今ならいいかと思ってしまったが、やはりフェンとの約束は破れない。
「アクネルが、こんな美女だなんて思わなかった。正直、このとおり、僕の息子もしたがってる。でも、フェンとも、ビッチともしていないのに、三号のアクネルを先に抱くわけにはいかないだろう。二人とした後に必ず抱いてやるから、今日の所は戻ってくれ」
「なんじゃ。てっきりとっくにしていると思ったが、まだ手も出していなかったのか。仕方ない。今日の所は引き下がってやるが、約束じゃぞ。二人とすませたら、たっぷりと妾の中に、精子をそそぐのじゃ」
そういって、蜘蛛の姿に戻って出て行った。
その後興奮してしまい、全く寝付けなくなってしまった事はいうまでもない。
そして、二時間ほどしか寝れなかったが、七時になり、夕食を皆で食べながら作戦会議した。
開戦直前には、兵が一斉に並ぶはずなので、そこを狙う。先制攻撃すればいいのに、竜神は卑怯な事はしない性格みたいで、敵が動きはじめたのを見てから、僕の爆裂魔法を、正面と左右両翼三か所に同時発動する。
敵が混乱して怯んだところに、こちらの兵を差し向ける。
敵兵数が圧倒的に多い正面は、アクネル率いる蜘蛛軍団と、兎獣人、オークの精鋭兵で掃討する。
左右から、蜘蛛軍団を襲いに来るはずだが、それをさせない様に、左翼はルネーラ率いる翼竜軍、エルフ、ドワーフの戦士で壊滅。右翼は、僕とフェンと狼軍、魚人、猫獣人で抑える。
人間兵は、これで壊滅させられるはずだが、問題はプレーヤー。その見た目から直ぐに判断がつくが、その見た目とは裏腹に、とんでもなく強く、強力なアイテムを使ってくる。
メネーラは、彼らを見つけたら、必ず複数人で当たれとか、手に何かが出現したら、その場から直ちに離れ警戒しろと、適切な指示をだしていたが、それではだめだ。
僕は、山際武に手痛い復讐をしようと、ずっと考えてきた秘策を伝授することにした。
「いや、プレーヤを優先して倒すのは間違いだ。人族より優先して複数で対処するのは正しいが、戦闘不能にするだけで、決して殺すな。倒すと消えるので、殺したと勘違いしているようだが、プレーヤーは決して死なない。別の位置にて、万全に体力回復して復元される。そして、転送アイテム等で、再び戦闘エリアから少し離れた安全な位置に移動して、再び参戦してくるんだ」
メシウスは気づいていたが、アクネルもルネーラも知らなかったみたいで、目を丸くして驚いていた。
「だから、手足を切り落とし、死なない様に、戦闘不能にしろ。先ずはアイテムを取り出す利き腕。その腕を最優先で潰せ。そして、戦えなくしたら、武器と防具を必ず奪え。奴らはその武器と防具で、その実力を大きく上昇させることができる。とんでもない大金をつぎ込んで、入手したものなので、それを奪われるのが一番の痛手になる。万一、死んで生き返っても、武器も防具もない状態なら、もう参戦しようとは思わない筈だ」
流石は人神だと、感心されたが、惨めな全裸姿を晒して恥をかかせるのも、あいつらへの復讐の一環だ。
そして、九時の開戦時刻が近づき、予定通りに正面に人族の兵士が整列し始めた。左右の兵は気づかれない様に隠れているが、気配感知して目をこらせば、どこに固まっているかを知ることができる。
僕が、爆裂魔法の舞を踊り始めると、アクネルとルネーラがやはり笑いだしたが、もう慣れた。
「エクスプロージョン」の叫びと共に、三か所同時に大爆発が起きて、敵は予想通りに大混乱。
その爆音を合図に、各自、持ち場へと全速力で掛けていく。
右翼陣営のプレーヤーは、四十人弱、一人で百人程の兵を指揮しながら自ら先頭で戦っている。やはり予想通りの強さで、狼二人がかりでも、人族の兵までいるので、押される状態だ。
僕も光拘束で援護したが、それでも数は脅威。狼達は体中を切られ、血まみれにされていく。このままではこっちが負ける。
幸い、彼の居た陣の背後には川がながれている。、
「フェン、大津波をだすから、皆に、一旦川向うに退避する様に指示を出してくれ」
「分かった」
以心伝心で、仲間全員に退避命令を出してもらったが、戦闘中だと簡単には戦線離脱できない。
僕の大津波に、仲間もかなり巻き込まれてしまったが、これ位は想定内だ。
津波は大ダメージを与え全て押し流していくが、体力を考えれば、これくらではくたばらない。僕か回復して回れば、彼を再び全快状態にすることができる。
プレーヤも対策アイテムを準備していなかったようで、ふらふらになって薬を飲み始めたが、直ぐには回復しない。その間に、川向うに退避していた狼たちが、押し寄せてきて、次々とその腕をかみ砕いて、片端にしていく。
狼だと、武器強奪程度しかできないので、装備解除して、裸にするのはフェンの仕事。異次元格納で、武器や装備を次々と異次元空間に放り込んでいく。
『下着はなぜか脱がせられないよ』どうやらプレーヤーは裸にされない様な対策がとられているらしい。
『下着何て、高級品ではないから服だけでいいぞ』
戦闘不能にして、防具をはぐ作戦は、予想以上に効果的で、仲間が裸にされているのを見ると、戦闘を中断して仲間を助けに来る。当然隙が生まれ、芋づる式に、プレーヤーを戦闘不能にすることができた。
一時間もすると、フレーヤー三十八人が、裸のまま動けなくなっていた。
「くそっ。こうなったら、最後の手段だ。強制ログオフして離脱するぞ」
リーダーらしいネカマが、皆に声を掛けると、次々とプレーヤーがその場から姿を消していった。
「フェンは、正面のアクネル達の援護に行け。僕は、そろそろ動き出し始める遊撃部隊の掃討にいく」
「分かった。きっちり、アクネルに恩を売っとくから」
ついてくるとごねるかと思ったが、自分がまた拘束の首枷で動けなくされ、足手まといになると気づいてくれたみたいだ。
僕が気配感知を使いながら、人族の集団へと近づくと、その遊撃隊千名は、既に移動を開始していた。やはり、プレーヤーが三十人ばかりいたが、その中に、憎き国生ローラこと、山岸武の姿を発見した。
頭に血が上り、直ぐに殺したくなったが、僕は彼らに見つからない様に、距離を保ちながら、ついていく。今すぐ戦っても、仲間の援軍が期待できないからだ。
そして彼らが定位置につき、遅れていたプレーヤーも集結してきて、そろそろ動き出すころあいだなとなって、僕は千人を網羅する様に、半径二メートルの有効範囲を考えて、四か所に重力魔法を掛けた。
直ぐに、異変に気付いたものも居たみたいだが、それでも油断しているので、二重、三重に重力魔法を重ねていった。
「魔法攻撃されてるぞ。身体が重い。散開しろ」 流石に気づて指示を出して来たがもう遅い。
僕は恥ずかしいアクションをしながら、彼らの許に近づいてく。
「お前、篠崎健斗か。こんなところに居たのか」 あの時のリーダーもいた。
そして、襲ってくるころには詠唱も終わり、「アブソリュートゼロ」と絶叫した。
プレーヤーは全員生き残る予想でいたが、今回は、僕を討伐する目的ではなかったからか、半数近くが人族兵士と共に凍り付いてしまった。
プレーヤは殺さず、甚振る予定だったので、誤算だが、いちいち見定めて壊していくと陽がくれる。
土津波で、全員一掃して、生き残っている十六人のみを、順番に再起不能にしていった。
先ずは、憎き山際武からだ。光拘束で動けなくして、斧で足を切り落とし、彼の槍を奪い取って、右腕を何度もその槍でついて、使い物にならない様にしてから、引きちぎってやった。左は彼のナイフで、指を五本とも切り落とす。
防具を脱がす前に、助けがきて、それは出来なかったが、今の僕はとんでもなく強い。
彼らの腕を切り落として、十六人を戦闘不能にするのに、三十分もかからなかった。
それから、奴らの裸にひん剥いていく。確かに下着は身体の一部となっていて、それ以上は脱がせられなかったが、それならそれで、屈辱を味わせる方法はある。
先ずは、全員を裸にしてやった。服と言うか、防具や武器は一か所に山積みにして、フェンが来たら格納してもらうつもりだ。ただ、『ホーリーアックス改』と『妖刀ムラマサ改』だけは僕の武器にした。現在の斧もメシウスの身体に深々と刺さっていたプレーヤー武器の『ルーンアックス』という強力な武具だが、『ホーリーアックス改』の方が性能がいいし、魔力を内部に込めて魔斧として使える。もう剣士ではないので、刀不要だが、あの時、本物の刀を見て、ぜひとも欲しいと思っていたので、これも僕の第二の武器として帯刀しておくことにした。
そして、こいつらは痛みも感じないので、恥辱行為として、先ずは国生ローラから、イラマチオしてやった。
喉奥まで突っ込んでも、苦しそうではなく、嘔吐反応も起こらないようだが、それでも男が男に甚振られているので、相当な屈辱には違いない。山際は僕のをかみ切ろうとしているようだ、僕のアソコはオーラで守られているので、噛むこともできない。
「健斗」 フェンの声が聞こえてきた。
全員を甚振ってやるつもりだったが、山際だけで満足してやることにし、僕はパンツと服を着て、服装をただした。
どうやら、正面や左翼の掃討も終わったみたいで、アクネルやルネーラを含む全員が来てくれた。
「あっ、やべえ」
声の方をみると、十メートル程の位置に、何人ものプレーヤーが潜んでいた。
氷結魔法で瞬殺されたプレーヤ十人位が、再び参戦しようとしてやって来てたみたいで、あんなことをしていたので、今がチャンスだとこんな近くまで近接されていた。
だが、僕に援軍が来たのを見て、慌てて転送アイテムを取り出して、次々と消えて行った。
もう少し、皆の到着が遅ければ、今度は僕が拘束の首枷をされ、爆弾を飲まされ、殺されていたかもしれなかった。
仕方がないので、恥辱行為第二弾として、髪型を変えてやる。復活時に髪型が戻る可能性もあるが、惨めな屈辱を味わせられるだけでも十分だ。
僕は国生の頭に鋭利な妖刀を当て、中央五センチ程を前から頭頂部まで、剃り上げ、落ち武者刈りにしてやった。本当に惨めで笑える髪型だ。
「何その髪型。笑える」やってきたフェンが大笑いした。
「確かに」
皆も集まって来て大笑いして、僕に倣って、武者刈りの髪型にしていく。
すると、仲間同士でなじりあいが始まり、やはり強制ログアウトして逃げ出すものがでた。
一人が逃げると、連鎖的につぎつぎと消えていき、全員がいなくなった。
「本当に、健斗は大した男だ。あの作戦のお蔭で、最初こそ苦戦したが、時間と共に圧倒的な差になり、簡単に勝つことができた。感謝する」
二日も続く激戦が予想されたが、わずか三時間で、わが軍の大勝利で、リットの戦いは幕を閉じた。
神同志の熾烈な戦闘で、精も魂も尽き果てた状態だったが、一晩熟睡すると、皆、元気になり、僕らはエルフの里へと出発することになった。
蜘蛛神のアクネルも何故か一緒で、案内は彼女がしてくれることになった。ビッチはアクネルの速度について着れないので、ピッチは彼女の背に乗ってしがみつき、必死に落ちないようした。
アクネルは、ビッチを振り落とさない様に、ゆっくりと移動していると言っているが、蜘蛛の糸を操って、木から木へと素早く高速移動していくのでとんでもなく速い。
僕は瞬歩で、フェンは空中浮遊で、ついていったが、彼女を追いかけていくだけでも必死だった。
お蔭で一時間もかからずに、エルフの里と呼ばれる森についた。
そこは、深い霧に覆われた迷いの森で、ピッチは、ここが里だと勘違いしていたが、アクネルによると、この中に里に繋がる入り口があるだけなのだとか。実際のエルフの里は、誰も近づけない閉ざされた山奥の森の中にあり、ここの入り口が、空間転移でその地に繋がっているだけなのだそう。
そして、エルフの許可を貰えない者は、その里の入り口と呼ばれる転移陣にたどり着けず、延々とこの森の中を彷徨うことになる。
つまり、アクネルがいなければ、僕らは一生エルフの里に立ち入ることができなかった可能性もある。
転移陣といっても、魔法陣が書かれているのではなく、木の幹にできた屈んで何とか通れる程度の小さな穴があるだけで、その穴を抜けると、木漏れ日がこぼれる霧が一切ない新たな森が広がっていた。
ここが、そのエルフの里。空気も美味しく、果物や木の実も沢山実って、甘い香りまでする不思議な森だ。
暫くふらふと歩いていると、一人のエルフの男が現れた。
【
分類 エルフ族
レベル 89
名前 ジェニス・ロエル
年齢 346歳
性別 雌
HP:1087/1087
MP:1120/1123
SP: 78/100
】
確か、フェイがガイウス歴326年と言っていたので、このゲーム開始当初、二十歳の青年として作られ、以来ずっとこの世界に生き続けていることになる。
「長みずからが、出迎えか」 やはりこの男が、エルフの族長らしい。
「アクネル様、この者たちは何者ですか。特に人族なんて連れてこられると困ります」
「この男は、人族ではなく、人神だ。メシウスが亡くなったという話はしたと思うが、この男がその後釜の守り神になる。そして、この女も人族ではなく、メシウスの娘だ」
「そうだったんですか。誤解しておりました。今後はお二人にも、里の入り口を利用できるようにしておきます。オーク族のお嬢さんは、申し訳ありませんが、誰かと同行して起こし下さい」
警戒厳重のようなので、ピッチの許可は得られなかったが、特に困ることはない。
「それより、ルネーラ様が、至急、リット砦に来て欲しいって探しておられました」
「いかん、人族の侵攻が始まると聞いていたのに、つい失念していた。健斗、悪いが暫くここでまっていてくれ」
「アクネル、僕たちも連れて行ってくれないか。実は、この里に来たかった理由は、この亜人領の領主であるルネーラ様にあって、守り神としての許可を貰いたかったからなんだ」
「そんなの妾が、話を通しておくが、どうしてもと言うならついてこい。今度は全速で走る故、ついてこれるかは知らぬがな」
ピッチを連れていては、ついていけないので、ピッチだけおいて、僕とフェンとでアクネルを追いかけた。
だが、予想以上に速い。フェンが遅れだし、地上を走る方が速いと、獣のように、四つん這いになって走った。地上からだと、僕らを見失う事態も度々起きたが、念話で位置を教え合い、何とか離されないようについてくる。
やがて、川が見えてきて、その川沿いにブリッツの街を四分の一位にした小さな街が見えてきた。ここが、リットの街らしい。
その、その脇を抜けて更に進むと、目的のリット砦と呼ばれる前線基地が見えてきた。
翼竜や、蜘蛛、狼の軍団が沢山いて、エルフ、ドワーフ、オーク、兎獣人、猫獣人、半魚人の戦士たちも何人か交っている。
「すまん、ルネーラ。ちょっと訳ありで、遅くなった」
翼竜軍の先頭に、五メートル近くありそうな巨大な赤い竜が居た。
「紹介する。こいつが昨日、人神へと進化した健斗。妾の伴侶じゃ」
「誰が、あんたとの結婚を認めたのよ」はぁはぁと息を切らせて、フェンも到着した。
「よいではないか。そして、この人族の女が……。説明は不要じゃな」
「あの子犬が、もうこんなに強くなったのか。生後半年も経っておらぬのにこの強さとは、将来が楽しみだ」
竜神ルネーラも雌なのか、女性の声だった。そしてこっちを向いたので、鑑定を試みたが、やはりできなかった。
「篠崎健斗。貴様に問う。人神なのに、人族に抗うつもりなのか」
「ああ、プレーヤーにはちょっと恨みがあってな。全てがあいつらみたいな非道者とは思わないが、フェンの為にも敵討ちをしたい。それに、プリッツという人族の街の兵士を、全員屠ったこともある」
「なら、私達と共に、この防衛戦に参加してもらえると考えてよいな」
「ああ、勿論だ」
そういう事で、僕らもアクネルと共に、現在の状況について話を訊くことになったが、どこからともなく巨大な狼がフェンの周辺に集まってきた。
狼は、あの荒野にいたスコルハングと似ているが、その進化種なのか『ルーンウルフ』という魔獣で、レベル90前後のとんでもない強者ばかりだ。
「もしかして、メシウス様とリンリン様のお嬢様であらせられますか?」
その狼の一頭が、フェンに話しかけてきた。
「ママって、リンリンという名前だったんだ。生後三か月までの記憶はほとんどないんだよね」
「おお、姫様がお戻りになられたぞ」「ウォ~~~~ン」
その後、僕まで難癖付けられて、実力を見せろと喧嘩まで売られたが、僕の『覇王の威厳』で一旦硬直させ、解除してやると、狼全員が大人しくなり、僕は彼らのボスに着くことになった。
肝心の守り神の許可は、今回の戦闘の様子を見てとなったが、その前に一仕事することにした。
ドワーフの里の際は奇襲され、侵略されてしまったが、今回は事前に防衛線を引けたので、ここから一歩も先にすすませないと、息巻いているが、皆の戦意や士気がガタ落ちだったのだ。
敵兵力も不明で、いつ開戦が始まるかもわからず、ずっと緊張し続けていた所為で、戦う前から兵が疲れ果てていた。
そんな訳で、変化魔法をレベルアップさせるのに丁度いいと、僕とフェンの二人で情報収集すると名乗りでた。
僕の身体は光を放ち目立つので、偵察には向かないと言われたが、蛙に変身してみせると、あっさり了承してもらえた。
物陰に隠れて、敵陣営から二百メートル程まで近ずくと、僕とフェンは蛙に変身した。
蛙になると、耐久力、精神力以外の能力値まで蛙になり、めちゃめちゃ弱くなるが、耐久力はあるので、例え攻撃されても、問題はない。
足も遅くなるので、二百メートルがとんでもなく遠く感じたが、しっかりと兵士とプレーヤーの作戦確認や、プレーヤー間の雑談等を盗み聞きして、必要な情報を無事、手に入れた。
問題は、ここからだ。この身体の儘、敵を倒さないと、変化魔法はレベルアップしない。
そこで、蛙の姿のまま、絶対氷結を繰り出した。
でも、倒れて壊れたのは数名だけで、千人程の兵は凍り付いたままだ。
蛙のまま飛び蹴りしたが倒れてくれない。なら、物理攻撃になる魔法をと考えた時、フェンの不満が爆発した。
『これじゃ、私がまたレベルアップできないじゃない。変身解除してよ』
まだ遠方に沢山の陣があり、こっちの異変に気付いたみたいで、こちらを凝視しているが、フェンを元の姿に戻してあげた。
僕は目立つので、蛙の姿のまま、土津波を発動した。
フェンは百人ほどしか殺せず、不満そうだったが、僕の周辺の凍結兵は、一掃でき、範囲外の敵は、フェンがドミノ斃しの要領で、全て倒した。
お蔭で、フェンも二段階レベルアップしてレベル33となり、僕の変化魔法も、一気にレベルMaxとなった。
周囲から、一斉に兵が走り寄って来ていたので、僕は変身を解き、氷の破片に映して鑑定した。
やはり予想通り、何にでも変身可能だったが、一度鑑定したことのあるものにしか変身できないという条件があった。
つまり、アクネルや、ルネーラ等には変化できない。
もたもたしてると、大軍やプレーヤーにやられるので、僕らは全速力で逃走した。
この程度なら、二人で戦っても、勝てる気はしたが、やはり数は脅威で万が一のことがあるし、プレーヤーはとんでもないアイテムを所持している可能性があるので、やはり脅威だ。
僕らが全速力で逃げれば、誰も追いつけず、無事に砦に帰還できた。
「作戦決行は今晩九時だそうだ。敵兵は、目の前に見えているのが、レベル20から30の敵が約一万。それだけでなく、右翼、左翼に四千ずつ伏兵している。更に二千が、右翼のさらに離れた森の中に潜んでいて、開戦後二時間遅れで、背後から挟撃する作戦になっている。正面兵のうちの千は、さっき全滅させてきたので、人族兵は総勢一万九千人だが、開戦時にはプレーヤーがほぼ全員で攻めてくるみたいだ。プレーヤーの配分等は分からなかった」
「二万の人族に、全プレーヤーか。ドワーフ領土侵略作戦規模の戦闘になるな。貴重な情報、感謝する」
こちらの兵数を訊いてみると、ここにいるのが全兵力だそうで、僅か五百。それでも、一人が人族百人に匹敵するそうで、五万に相当する兵力なのだそう。
ただ、問題はプレーヤー。あの時は五十人掛かりだったが、メシウスを瀕死にするほどの力を備えている。
現プレーヤー数は僅か千人ほどで、レベル五十越えは、百人もいないという話だが、それでもかなり脅威だ。プレーヤーのアイテム次第で戦局は大きく変わる。
結局、壮絶な争いになる予想で、今のうちに、身体を休めておこうとなった。
「九時開戦なら、まだまだ八時間ある。二日がかりの長期戦が予想される故、お前たち二人は今のうちに休んでおけ。他の者たちには、私が念話でつたえる」
そういう訳で、全く眠くなかったが、僕らの為に準備してくれたテントの中に入り、準備してくれていたパンを食べ、昼過ぎの一時から夜七時までの六時間、睡眠をとることにした。
フェンは直ぐにスヤスヤと寝息を立て始めたが、僕はなかなか寝付けない。
それでも、漸く寝つけたと思たらすぐ、股間に違和感を感じ、目を覚ました。
僕の足元に、サキュバスが居て、僕のパンツを脱がせようとしている。
「また僕の大事なものを食べるつもりだな」
「そのためにきたんだ。当たり前のことをいうでない」
鑑定してみたが、この悪魔も鑑定できない。かなりの強敵なのは間違いない。
僕はパンツを奪われ、下半身まるだしのまま、斧を取って身構えた。脱がせる前に擦られていたのか、アソコもビンビンに勃起したままの情けない格好だ。
「勘違いするでない。妾じゃ。サキュバスのような中級悪魔なんぞと同じにするでない」
「アクネルなのか?」
「どうじゃ。この身体なら、抱けるじゃろう。メシウスの娘が目を覚まさぬうちに、さっさとするぞ」
そう言って立ち上がってゆっくりと迫ってきた。
下半身はスパッツを吐いている様に黒く、乳首も見えなかったので、服を着ているのかと思ったが、全裸だった。
股間に陰唇までついているし、乳首の位置に人魚と同じような穴が開いている。
乳房は歩く度にブルンと揺れて柔らかそうで、結構妖艶で僕好みの体系だ。
お蔭で下がりかけていた僕の息子が再び、鎌首も持ち上げて行った。
熱い接吻しながら、胸に触ると、やはり人魚と同じで、隠れていた乳首が飛び出してきた。
感度も良いみたいで甘い声まで上げてくる。
僕はそのまま、彼女を押し倒したが、その時、フェンが視界に入った。
フェンは、熟睡しているみたいで、全く気付いておらず、今ならいいかと思ってしまったが、やはりフェンとの約束は破れない。
「アクネルが、こんな美女だなんて思わなかった。正直、このとおり、僕の息子もしたがってる。でも、フェンとも、ビッチともしていないのに、三号のアクネルを先に抱くわけにはいかないだろう。二人とした後に必ず抱いてやるから、今日の所は戻ってくれ」
「なんじゃ。てっきりとっくにしていると思ったが、まだ手も出していなかったのか。仕方ない。今日の所は引き下がってやるが、約束じゃぞ。二人とすませたら、たっぷりと妾の中に、精子をそそぐのじゃ」
そういって、蜘蛛の姿に戻って出て行った。
その後興奮してしまい、全く寝付けなくなってしまった事はいうまでもない。
そして、二時間ほどしか寝れなかったが、七時になり、夕食を皆で食べながら作戦会議した。
開戦直前には、兵が一斉に並ぶはずなので、そこを狙う。先制攻撃すればいいのに、竜神は卑怯な事はしない性格みたいで、敵が動きはじめたのを見てから、僕の爆裂魔法を、正面と左右両翼三か所に同時発動する。
敵が混乱して怯んだところに、こちらの兵を差し向ける。
敵兵数が圧倒的に多い正面は、アクネル率いる蜘蛛軍団と、兎獣人、オークの精鋭兵で掃討する。
左右から、蜘蛛軍団を襲いに来るはずだが、それをさせない様に、左翼はルネーラ率いる翼竜軍、エルフ、ドワーフの戦士で壊滅。右翼は、僕とフェンと狼軍、魚人、猫獣人で抑える。
人間兵は、これで壊滅させられるはずだが、問題はプレーヤー。その見た目から直ぐに判断がつくが、その見た目とは裏腹に、とんでもなく強く、強力なアイテムを使ってくる。
メネーラは、彼らを見つけたら、必ず複数人で当たれとか、手に何かが出現したら、その場から直ちに離れ警戒しろと、適切な指示をだしていたが、それではだめだ。
僕は、山際武に手痛い復讐をしようと、ずっと考えてきた秘策を伝授することにした。
「いや、プレーヤを優先して倒すのは間違いだ。人族より優先して複数で対処するのは正しいが、戦闘不能にするだけで、決して殺すな。倒すと消えるので、殺したと勘違いしているようだが、プレーヤーは決して死なない。別の位置にて、万全に体力回復して復元される。そして、転送アイテム等で、再び戦闘エリアから少し離れた安全な位置に移動して、再び参戦してくるんだ」
メシウスは気づいていたが、アクネルもルネーラも知らなかったみたいで、目を丸くして驚いていた。
「だから、手足を切り落とし、死なない様に、戦闘不能にしろ。先ずはアイテムを取り出す利き腕。その腕を最優先で潰せ。そして、戦えなくしたら、武器と防具を必ず奪え。奴らはその武器と防具で、その実力を大きく上昇させることができる。とんでもない大金をつぎ込んで、入手したものなので、それを奪われるのが一番の痛手になる。万一、死んで生き返っても、武器も防具もない状態なら、もう参戦しようとは思わない筈だ」
流石は人神だと、感心されたが、惨めな全裸姿を晒して恥をかかせるのも、あいつらへの復讐の一環だ。
そして、九時の開戦時刻が近づき、予定通りに正面に人族の兵士が整列し始めた。左右の兵は気づかれない様に隠れているが、気配感知して目をこらせば、どこに固まっているかを知ることができる。
僕が、爆裂魔法の舞を踊り始めると、アクネルとルネーラがやはり笑いだしたが、もう慣れた。
「エクスプロージョン」の叫びと共に、三か所同時に大爆発が起きて、敵は予想通りに大混乱。
その爆音を合図に、各自、持ち場へと全速力で掛けていく。
右翼陣営のプレーヤーは、四十人弱、一人で百人程の兵を指揮しながら自ら先頭で戦っている。やはり予想通りの強さで、狼二人がかりでも、人族の兵までいるので、押される状態だ。
僕も光拘束で援護したが、それでも数は脅威。狼達は体中を切られ、血まみれにされていく。このままではこっちが負ける。
幸い、彼の居た陣の背後には川がながれている。、
「フェン、大津波をだすから、皆に、一旦川向うに退避する様に指示を出してくれ」
「分かった」
以心伝心で、仲間全員に退避命令を出してもらったが、戦闘中だと簡単には戦線離脱できない。
僕の大津波に、仲間もかなり巻き込まれてしまったが、これ位は想定内だ。
津波は大ダメージを与え全て押し流していくが、体力を考えれば、これくらではくたばらない。僕か回復して回れば、彼を再び全快状態にすることができる。
プレーヤも対策アイテムを準備していなかったようで、ふらふらになって薬を飲み始めたが、直ぐには回復しない。その間に、川向うに退避していた狼たちが、押し寄せてきて、次々とその腕をかみ砕いて、片端にしていく。
狼だと、武器強奪程度しかできないので、装備解除して、裸にするのはフェンの仕事。異次元格納で、武器や装備を次々と異次元空間に放り込んでいく。
『下着はなぜか脱がせられないよ』どうやらプレーヤーは裸にされない様な対策がとられているらしい。
『下着何て、高級品ではないから服だけでいいぞ』
戦闘不能にして、防具をはぐ作戦は、予想以上に効果的で、仲間が裸にされているのを見ると、戦闘を中断して仲間を助けに来る。当然隙が生まれ、芋づる式に、プレーヤーを戦闘不能にすることができた。
一時間もすると、フレーヤー三十八人が、裸のまま動けなくなっていた。
「くそっ。こうなったら、最後の手段だ。強制ログオフして離脱するぞ」
リーダーらしいネカマが、皆に声を掛けると、次々とプレーヤーがその場から姿を消していった。
「フェンは、正面のアクネル達の援護に行け。僕は、そろそろ動き出し始める遊撃部隊の掃討にいく」
「分かった。きっちり、アクネルに恩を売っとくから」
ついてくるとごねるかと思ったが、自分がまた拘束の首枷で動けなくされ、足手まといになると気づいてくれたみたいだ。
僕が気配感知を使いながら、人族の集団へと近づくと、その遊撃隊千名は、既に移動を開始していた。やはり、プレーヤーが三十人ばかりいたが、その中に、憎き国生ローラこと、山岸武の姿を発見した。
頭に血が上り、直ぐに殺したくなったが、僕は彼らに見つからない様に、距離を保ちながら、ついていく。今すぐ戦っても、仲間の援軍が期待できないからだ。
そして彼らが定位置につき、遅れていたプレーヤーも集結してきて、そろそろ動き出すころあいだなとなって、僕は千人を網羅する様に、半径二メートルの有効範囲を考えて、四か所に重力魔法を掛けた。
直ぐに、異変に気付いたものも居たみたいだが、それでも油断しているので、二重、三重に重力魔法を重ねていった。
「魔法攻撃されてるぞ。身体が重い。散開しろ」 流石に気づて指示を出して来たがもう遅い。
僕は恥ずかしいアクションをしながら、彼らの許に近づいてく。
「お前、篠崎健斗か。こんなところに居たのか」 あの時のリーダーもいた。
そして、襲ってくるころには詠唱も終わり、「アブソリュートゼロ」と絶叫した。
プレーヤーは全員生き残る予想でいたが、今回は、僕を討伐する目的ではなかったからか、半数近くが人族兵士と共に凍り付いてしまった。
プレーヤは殺さず、甚振る予定だったので、誤算だが、いちいち見定めて壊していくと陽がくれる。
土津波で、全員一掃して、生き残っている十六人のみを、順番に再起不能にしていった。
先ずは、憎き山際武からだ。光拘束で動けなくして、斧で足を切り落とし、彼の槍を奪い取って、右腕を何度もその槍でついて、使い物にならない様にしてから、引きちぎってやった。左は彼のナイフで、指を五本とも切り落とす。
防具を脱がす前に、助けがきて、それは出来なかったが、今の僕はとんでもなく強い。
彼らの腕を切り落として、十六人を戦闘不能にするのに、三十分もかからなかった。
それから、奴らの裸にひん剥いていく。確かに下着は身体の一部となっていて、それ以上は脱がせられなかったが、それならそれで、屈辱を味わせる方法はある。
先ずは、全員を裸にしてやった。服と言うか、防具や武器は一か所に山積みにして、フェンが来たら格納してもらうつもりだ。ただ、『ホーリーアックス改』と『妖刀ムラマサ改』だけは僕の武器にした。現在の斧もメシウスの身体に深々と刺さっていたプレーヤー武器の『ルーンアックス』という強力な武具だが、『ホーリーアックス改』の方が性能がいいし、魔力を内部に込めて魔斧として使える。もう剣士ではないので、刀不要だが、あの時、本物の刀を見て、ぜひとも欲しいと思っていたので、これも僕の第二の武器として帯刀しておくことにした。
そして、こいつらは痛みも感じないので、恥辱行為として、先ずは国生ローラから、イラマチオしてやった。
喉奥まで突っ込んでも、苦しそうではなく、嘔吐反応も起こらないようだが、それでも男が男に甚振られているので、相当な屈辱には違いない。山際は僕のをかみ切ろうとしているようだ、僕のアソコはオーラで守られているので、噛むこともできない。
「健斗」 フェンの声が聞こえてきた。
全員を甚振ってやるつもりだったが、山際だけで満足してやることにし、僕はパンツと服を着て、服装をただした。
どうやら、正面や左翼の掃討も終わったみたいで、アクネルやルネーラを含む全員が来てくれた。
「あっ、やべえ」
声の方をみると、十メートル程の位置に、何人ものプレーヤーが潜んでいた。
氷結魔法で瞬殺されたプレーヤ十人位が、再び参戦しようとしてやって来てたみたいで、あんなことをしていたので、今がチャンスだとこんな近くまで近接されていた。
だが、僕に援軍が来たのを見て、慌てて転送アイテムを取り出して、次々と消えて行った。
もう少し、皆の到着が遅ければ、今度は僕が拘束の首枷をされ、爆弾を飲まされ、殺されていたかもしれなかった。
仕方がないので、恥辱行為第二弾として、髪型を変えてやる。復活時に髪型が戻る可能性もあるが、惨めな屈辱を味わせられるだけでも十分だ。
僕は国生の頭に鋭利な妖刀を当て、中央五センチ程を前から頭頂部まで、剃り上げ、落ち武者刈りにしてやった。本当に惨めで笑える髪型だ。
「何その髪型。笑える」やってきたフェンが大笑いした。
「確かに」
皆も集まって来て大笑いして、僕に倣って、武者刈りの髪型にしていく。
すると、仲間同士でなじりあいが始まり、やはり強制ログアウトして逃げ出すものがでた。
一人が逃げると、連鎖的につぎつぎと消えていき、全員がいなくなった。
「本当に、健斗は大した男だ。あの作戦のお蔭で、最初こそ苦戦したが、時間と共に圧倒的な差になり、簡単に勝つことができた。感謝する」
二日も続く激戦が予想されたが、わずか三時間で、わが軍の大勝利で、リットの戦いは幕を閉じた。
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