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第四章 僕が神様なんかになっていいのかな

4-7 もう一人の守り神は、蜘蛛の魔物でした

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 朝食後、ニキータの案内で、エルフの里へと出発することにしたが、徒歩で二日も掛かるとの話しで、それなりの準備が必要となる。
 族長から、リュックを譲ってもらい、食料、水、毛布等を詰め込み、僕がそれを背負って、昔の冒険者に戻った気分で、徒歩での旅に出発した。

 でも、僕は居ても立っても居られない。針の筵にいる様な気分だ。
 二人が仲直りしてくれていれば良かったのだが、ニキータは結局、フェンには何ら謝罪しなかったらしい。
 しかも、あんなに虐めてやったのに、また虐めて欲しいのか、僕に何度も色目を使ってくる。
 だから、ニキータとフェンの関係は最悪で、一触即発の雰囲気なのだ。
 こんな状態が、二日も続くのかと思うと、僕の精神は疲弊していった。

 その夕暮れに、またも砦のような小さな村が見えてきた。農耕民族の集落なのか、周囲に畑も沢山ある。
「あれも獣人の里なのか?」
「ああ、オークの里だ。野宿なんて嫌だから、ここの族長の家に泊めてもらう。ビーフンの親仁とうちの親父は旧友なんだよ」
 オークって、豚の魔獣だよな。そう思っていたが、見えてきた入り口の門番二人は、確かに猫獣人以上に人間に近かった。垂れ耳がついているが、人間の様な肌をしていて、防具で全身を覆っている。
 オークと言えば、豚鼻のイメージしかなかったが、顔も普通の人間と変わらない亜人種で、尻尾も見当たらない。服の中にしまっているのかもしれないが、耳以外は人間そのものだ。
 門番の恰幅のよい二人を鑑定してみると、『獣人族 オーク』となっていて、彼らは年相応の見かけだった。
「あたいは、ニー・キャット族の族長の三女ニキータ。この二人をエルフの里まで案内する途中で、立ち寄らせてもらった。族長のビーフンさんとの面会を望む。族長の家にはどう行けばいい」
「このまままっすぐに行けば、族長のお屋敷がある。勝手に通りなさい」
 その門番は、無警戒というか、温厚というか、僕らに付き添う事もなく、通してもらえた。

 ここも、猫獣人と同じ位に沢山の人がいたが、皆、恰幅がいい。スリムな人もいることはいるが、大半は恰幅がいいというかデブだ。
 女性も半数以上が、ぽっちゃりタイプの寸胴体系で巨乳が多い。
 彼らは、不審者への警戒心もなく、僕らを見ても笑顔で挨拶してくる。本当に無警戒すぎるくらいに温厚だ。

 族長のお屋敷というのは、本当にすごい豪邸で、プリッツでもあまり見掛けない魔道具の呼び鈴までついていた。
 その呼び鈴を押すと、可愛いメイド服を着た女性が現れた。
 彼女は巨乳ではなく、程よい大きさの胸で、柳原加奈子を長髪にしてもう少し細身にして、豚耳をつけた感じの可愛い感じのぽっちゃり美女だ。
 鑑定してみると、ピッチ・ロードという名の、二十歳の女性だった。
 ロードというセカンドネームまであるので、まさかという気もしたが、お嬢様という服装ではないので、メイドに違いないと、判断した。
 彼女は僕らを応接室に案内し、僕らにお茶と茶菓子をだしてくれ、用件をメモしながら聞くと、「族長に御用件を伝え、お会いになられるか聞いてまいります」と出て行った。
 調度品も高価なものばかりで、ここの人たちは結構裕福な生活をしているらしい。

 暫くすると、相撲取りの様な体格の大男が現れた。身長も僕と同じ位だ。
 立ち上がろうとすると、「そのままでいいから」と、彼は僕らの目の前のソファにどかっと腰かけた。
 ビーフン・ロードと言う名の四十二歳で、レベルはなんと82とかなり強い。ロードという家名で、そういえばさっきの彼女と顔が少し似ている。あの子は、やはり族長の娘だったんだとどうでもいいことを考えた。

「話を聞いたが、儂なんか頼ってくれるとは有り難い限りだ。良く来てくれた。急な話なので、ろくな歓迎ができぬが、自分の家だと思って、ゆっくりしていきなさい。それで、疑っているわけではないが、メシウス様の縁者という証の品なんかがあればみせてもらいたのだが」
 そんなものは持ち合わせていないが、魚人族の族長が書いてくれた書簡を差し出した。
「ほう。その娘がメシウス様の御令嬢で、そちに託してなくなられたのか。しかも、メシウス様に匹敵する強さをもってるのか。それは頼もしい。では、悪いが、その力を少し貸しては貰えぬか」
 一年前に、魔族領からこの地に蜘蛛の魔物がやって来たのだそう。その魔物は特に敵対する訳ではなかったので、好きにさせていたら、沢山の子供を産んで、物凄い数になり、森の恵の食料を食い尽くしだした。自ら討伐隊を指揮して、掃討に出たが、半分も倒せぬうちに親蜘蛛が襲ってきて、逃げ帰るしかなかったのだとか。
 そこで、僕らの力を見込んで、その蜘蛛の魔物を壊滅してほしいという話だった。
 見栄を張らずに、話してくれて好感がもてる。

「ビーフンの親仁、ここはアクネル様の管轄地だよな。そんなのはアクネル様にお願いしろよ」
「勿論したさ。だが、それでも討伐に来てくぬ故、討伐の協力を願いたいというわけだ」
 この地の守り神であるアクネルは、かなりの怠け者らしく、一年近く、この地に顔をだしていないらしい。その結果、魔物がこんな数にまで、膨れあがってしまった。
 一か月前には、森の奥にキノコ狩りに行った仲間の一人が犠牲になり、このままでは大変なことになると、アクネルに使者まで送ったが、それでも未だに討伐に来てくれない。
 森の奥には立ち入らないようにと徹底させたが、守らないものも居て、先週も一人内緒で、森の奥に獣狩りに行ったものがいて、襲われたのか帰らぬ人となった。彼で、蜘蛛よる被害者は、三人になったのだそう。
「アクネル様って、そんなに職務怠慢な守り神なのかよ。酷い話だな。だか、流石に管轄が違う。第一、ビーフンの親仁達が束になっても勝てない程の強い魔物なんでろう。勝てたとしても、大怪我するのは必至だ。二人が討伐に行く義理はない。無視すればいい」
 確かに、レベル82クラスが、束になっても逃げ返るしかない敵なら、僕らでも敵わない可能性が高い。アクネルもそのうち討伐に来てくれる筈だし、森の奥まで行かなければ、被害者がでないのなら、かかわらない方が良い。
「困っている人が目の前にいるのに、無視しろと言うなんて、だから盛り猫は嫌いないのよ。健斗、助けてあげましょう」
 フェンが甘えるような目を向けてきた。
 単に、ニキータに反発しただけの様な気もするが、フェンにそんな顔で言われると引き受けざるを得ない。
「僕たちで、掃討できるかはわかりませんが、できるだけの事はしてみます」
「そうか。ありがとう。感謝する」
「お前たちの旅だ。好きにしろ。でも、あたいは参加しないからな」
「ええ、あなたなんて、足手まとい以外のなんでもないから」
「なんだ、この胸無し」
「ちがうもん。私のは……」
「族長の前で、失礼だろう」
 やれやれだが、ニキータは足手まといでしかないので、その方が都合がいい。

「お食事の準備が整いました」 丁度、ピッチが顔を見せてくれ、助かった。
 服を着替えたらしく、可愛いお嬢様らしいドレスを着ていて、さっきより胸が大きく見える。
 顔は丸顔で、ぽっちゃりに見えたが、後ろから見ると、普通の女の子の体系で、僕の背の高さだと、谷間が見え隠れしていて、気になって仕方ない。

 そして、食堂に案内されたが、そのテーブルには待望の料理がならならんでいた。
 鳥の骨付きもも焼きや、スープ、サラダだけでなく、マカロニグラタン、オムライスといった炭水化物食品があったのだ。
「こんな家庭料理しか準備できないが、許しくれ」
「グラタンとオムライスは、この子が作ったんですよ」
 Hカップはありそうな明らかにぽっちゃりの巨乳の奥様が、族長の右隣に腰かけた。
 胸がドレスからぽろりとこぼれそうで、目に毒だ。
「健斗、どうだ。うちの娘のピッチは。胸こそ小さいが、なかなかの美人だろう。お前の嫁さんにどうだ」
 族長は、突然、とんでもないことを言い出した。隣で、フェンも凄い目で僕を睨んでいる。
「折角のお話ですが、僕の妻が、先日、亡くなったばかりなので、御遠慮させて頂きます」
「そうか。残念だが、仕方がない。まあ、気が向いたら、嫁にしてやってくれ。オークは抱き心地最高で、アソコも名器だから、一度抱けばやみつきになるからな。わっはっは」
 確かに、体脂肪率の高い巨乳美女の方が、抱くのは楽しいかもしれないが、妻にするというのはセックスだけの問題ではない。

 頂きますして、御馳走になったが、グラタンもオムライスも絶品で、フェイの料理のように美味しかった。
「ピッチを嫁にする話は、保留にしておくが、明日はこいつに案内させる。足手まといならない者は、こいつぐらいしかしないのでな。ピッチは、すばしっこく、治癒魔法も使えるので、迷惑にはならないはずだ」
 本当かなと、彼女の能力等をしっかりと鑑定させてもらったが、確かに、治癒回復ヒール解毒治療ポイゾナを習得していて、機動力も7254と見かけによらず高かった。
 だが驚いたのはその耐久力。なんと18043と化け物並みの耐久力を備えていた。
 攻撃力は三桁しかなく、戦闘力は皆無だが、こんな耐久力があり、治癒が使えれば、間違いなく彼女の事は気にせず戦える。

 食事が終わると、お風呂も準備してあると言われ、久しぶりにお風呂に浸かれることになった。
「私、お風呂は嫌いだから」ニキータはそんなことを言い出した。
「分かりました。それでは客間まで案内いたしますが、その前に二人を浴室に案内しますので、この場でお待ち頂けますか」
「ええっ、先に案内してよ」 とんでもない我儘猫娘だが、僕たちは行方を訊き、二人だけで浴室に向かう事にして、ピッチには、ニキータを客間へと案内をさせた。

 フェンは鼻が利くので、なんとなくお風呂の場所もわかり、僕らは迷うことなく、お風呂場にたどり着くことができた。
 そこは銭湯ほどは広くないが、かなり広いお風呂場だった。
 四人位楽に浸かれる大きな浴槽があり、洗い場が三つもある。
「こんなに大きいお風呂に浸かれるなんて最高」フェンは服を脱ぎ散らかして、浴室に先に入って行った。
 身体は大人でも、やはり子供だ。
 言い忘れていたが、礼儀作法も毎日教えていて、今のフェンはそれなりに女らしくなっている。
 今日は、嬉しくてついこんなはしたない真似をしただけだ。

 僕が中に入ると、既にフェンは浴槽を泳いでいたが、入浴の作法もちゃんと教えてあげた。
 五右衛門風呂とは違い、湯温も安定して丁度良い温度で、足を延ばして入浴できるなんて最高だ。

 そんなことを思っていると、浴室のドアが開き、ピッチが恥ずかしそうに、タオルで隠すようにしてあらわれた。
「父から、お体をお流しする様にと言われまして」
 そんな必要はないと断ったら、「父に怒られますから」と言われ、フェンも「身体を洗うくらいさせてあげれば」と言ってきたので、三助さんをお願いすることにした。
 アソコも洗おうとしてきたが、そこは遠慮して、自分で洗った。

 その後、彼女はフェンの身体を洗い始めたが、僕は浴槽に浸かりながら、つい彼女の全裸姿をまじまじと見てしまった。
 やはり、くるっと一周するような小さな尻尾がついていたが、かなり小さく、パンツの中に隠せる大きさだ。
 それに体形も悪くない。腕も少し太く、ぽっちゃりなのは確かだが、お腹の肉は段になっていないし、樽型でなく、ウエストはちゃんと縊れている。しかも、フェイの様に色白で、後ろからでも乳房の大きさがハッキリわかり、なかなかの色っぽい肉体をしている。
 その上、アソコも名器だそうで、オークの女もなかなか捨てたものじゃない。
 そんなことを考えながら、眺めていると、彼女が立ち上がって、前まで完全に見えてしまった。
 僕と目が合い、ボット赤くなって、慌てて隠したが、小さいと言うがやはり釣鐘型の巨乳で、その胸で戯れたいと思ってしまう程のいい女だった。

 その後、二人も浸かりに来て、僕が先に出たが、脱衣所には、バスタオルやバスローブまで準備してもらえていた。
 遠慮なく、それを着て、二人を待ったが、その時も恥ずかしそうに隠していて、つい可愛いと思ってしまった。

 冷たい牛乳まで出してもらえ、彼女なら、よく気が利くよい嫁になりそうだ。
 
 その後、寝室に案内してもらったが、族長の家は本当に広く、客間も三部屋あり、今日は三人別々の部屋で寝ることになった。
 そして、バスロープのまま寝転んで寝ようとすると、ニキータの盛りのついた声が聞こえて来た。
 発情期という話だったので、我慢できずに、オークの男を買ったらしい。
 これじゃ、寝られない。困った女だと思っていると、ドアのノック音がした。
「父から、マッサージするようにと言われまして」
 ピッチがさっきのバスローブ姿のままやってきた。
「もしかして、皆の所にも、マッサージ師が行ってるのかな」
「はい」
 ニキータはそのマッサージ師のオークの男と楽しんでいたのだ。
 なら、フェンもと、嫌な予感がしたが、フェンならちゃんと断るはずだ。
 僕は、問題は起きないと安心して、マッサージしてもらうことにした。

 彼女は、マッサージも凄く上手で、気持ちよかった。
 訊いてみると、子供の頃から、良いお嫁さんになる様に、ありとあらゆる勉強を積んできたのだとか。
「セックスのテクニック等も磨いてきたの?」と揶揄ったら、「はい」と応えて来た。
「冗談ですよ」
 そう笑ったが、裸でお風呂に入って来るし、こんな男の部屋にも一人で来る女なので、満更嘘とは思えなかった。

 なら、彼女は、夜のお勤めに来たに違いない。どんな名器なのか味わってみたい欲求が沸き上がってきたが、フェンと約束したので、もうエッチな行為をするつもりはない。
 誘ってきたらちゃんと断ろうと思っていたら、余りの気持ち良さから、いつの間にか眠ってしまっていた。

 気づくと、ピッチが裸でベッドの横に居て、パンツを脱ごうとしていた。
「ちょっと、何をしてるんだ」僕は、身体を起こした。
「下のお世話はさせてもおうかと……」
「気持ちだけで十分だ。正直、迷惑なんだ。僕はもうフェンを裏切る訳にはいかないんだ」
「フェンさんに、お風呂で確認したら、否定してきたので、そういう関係ではないと思っていましたが、やはり、そういうことだったんですね。わかりました。もう諦めます」
 彼女は、涙を浮かべ、ローブを羽織って部屋を出て行った。
 ニキータの声は未だに続いていて、僕はフェンがどうしたか、気になったが、そのまま眠りについた。

 翌朝、フェンと顔を合わせるとすぐ、マッサージ師が来たかと訊いてみた。
「うん。来たよ。マッサージしてもらって、気持ち良くてうとうとしていると、よろしければもっと気持ちいいこともさせて頂きますがと、言ってきた。その意味は直ぐ分かったけど、健斗ばかりしてくやしいから、抱いてもらうことにした」
「僕にはするなと言っといて、楽しんだのかよ」
「良いじゃない。私だって、皆がしたがるセックスがどんな感じなのか知りたかったの。彼のキスも愛撫も、凄く上手で、本当に気持ちよかった。でも、アソコを舐めようとしてきた時、急にあの時の光景が蘇って来て、怖くて震えちゃったの。だから、そのまま帰ってもらった」
 本番まではしてないみたいで、一安心したが、やはり、あの時の事がトラウマになっているらしい。
「私、大人の女性の身体に戻っても、健斗とできるか自信がなくなっちゃった。どうしよう」
「何、馬鹿なこといってるんだ。そんな関係はなくても、家族なのはかわらないだろう」
 そういって、頭を撫でてやったが、性嫌悪症を患っているのは間違いなく、なんとかしなければならない。

 その後、美味しい朝食を食べて、ピッチに案内されて、その蜘蛛が沢山いるという森に出かけて行った。
 ニキータは「私も行った方がいいか」と訊いてきたが、足手まといになるので「これは僕たちが勝手に引き受けたことだから、僕たちだけでなんとかするよ」と丁重に断り、ピッチとフェンと僕の三人で出かけた。

 ここの森も、魔物の森と似た感じで、動物だけでなく、魔物もいるが、点在しているだけだ。蜘蛛が沢山いるようには思えない。
 どんどん奥に進むと、蜘蛛の巣が見えてきて、動物も魔物も完全にいなくなった。どうやら、近くの魔物を全て食い尽くしたということなのだろう。
「この辺りに沢山の蜘蛛が現れます」
 そう言われたが、気配感知では魔物はいない。でも、蜘蛛の巣が急激に増え始めているのは確かだ。
 蜘蛛の巣が多くなっている方に進むことにして、そのフェンの火炎放射で、蜘蛛の巣を焼き払いながら、進んでいると、突如、上空から一メートル程の蜘蛛が襲い掛かってきた。
 なんとか回避したが、いつの間にか蜘蛛の大軍に包囲されていた。
 鑑定してみると、ポイズンタラテクトというレベル40前後の蜘蛛で、隠密というスキルを持っていた。
 このスキルにより、気配感知に察知されずに、行動できるみたいだ。
 タラテクト同様に、能力は均等に高く、起動力が飛びぬけて高い。しかも、毒霧という毒を飛ばすスキルも持っていて、魔法防壁マジックバリアという魔法まで持っている。
 格下ながら、手ごわい相手が、ざっと数えて四十匹。
 
 僕は辺り一面に重力魔法をかけつつ、フェンに指示を出す。
「フェン。タラテクトと似てるが、こいつらは魔法防壁まで持ってる。そのうえ、毒の遠隔攻撃もあるから、それにも注意して、肉弾戦な」
 僕は敵視を取って、フェンが攻撃されない様にしつつ、蜘蛛を切っていく。
 レベル40なので、簡単にHPを大きく削れるが、流石に数が多すぎる。
 一斉に襲ってくるのではなく、時間差で次々と襲ってきて、しかも離れた位置から毒を拭いてくるので、僕もフェンも毒を浴びてしまった。僕は状態異常無効化マイティガードレベル3があるので、初回ダメージだけで、継続ダメージは受けないが、フェンは、毒状態になり、徐々に体力を削られていく。
 でも、ピッチが身体を切られながらも、僕らの傍まで来てくれて、解毒治療ポイゾナを掛けてくれた。
 本当に頼もしい。

 少しづつ、敵を減らしていき、残り十匹ほどになった時、「危ない」とピッチの声。
 何が危ないのか分からなかったが、僕は連続瞬歩で、大きく回避した。
 だが、フェンは確認しようとして、退避が遅れ、ズシンという音と共に生じた広範囲の衝撃波を食らった。吹っ飛ばされて木に激しく身体を打ち付けられる。
 なんと、三メートル位ある巨大な蜘蛛の魔物が上空から押しつぶすように飛び降りてきたのだ。
 この巨大蜘蛛が、母親蜘蛛らしい。
 そして、その親蜘蛛は、ふらふらになっているフェンに飛びかかり、フェンも必死に防戦しつつ、腕に噛みつき、腕の一本をかみ砕いた。
 僕も急いで救援に向かい、なんとか、フェンを助け出し、敵視を取ったが、なんとレベル89もあった。攻撃力・防御力・耐久力は、いずれも一万を超えていて、しかも機動力は二万近くもある。
 背後から、フェンが必死に攻撃していて、前後から挟撃している状態ではあるが、これは確実に積んだ。殺される。
「全速力で、逃げるぞ」
 僕らは、必死に逃げたした。
 だが、蜘蛛は逃がすまじと、僕を追いかけてくる。
 フェンとピッチは別方向に逃げ、僕だけ逃げ切ればよいと思ったが、甘かった。
 親蜘蛛は僕を追いかけながら、フェンにも蜘蛛の粘糸を飛ばし、足に当てて、彼女を転ばせてしまったのだ。そして、子蜘蛛十匹が、フェン目掛けて、襲い掛かる。
 僕は慌てて彼女を助けに向かったが、そうはさせぬとばかりに、親蜘蛛が僕に対峙してきた。
 フェンは、子蜘蛛十匹に毒牙で噛まれまくり、弄ばれている。
 僕は、受けに徹して、致命傷を防ぐのが、精一杯でフェンを助けに行くことができない。
 フェンの防御力や、体力は相当なので、簡単には死なないが、このままでは確実に殺されてしまう。

 そんな絶対絶命の局面で、信じられないことが起きた。ピッチがフェンの上にのしかかり、蜘蛛の攻撃を一手に受けてくれたのだ。
 更に、その状態で精神統一して、フェンの治療や、蜘蛛の糸まで必死に取り始めた。
 なんて、献身的な女性だろう。彼女なら、かなりの時間耐えられるはずだ。
 でも、このままでいいわけがない。なんとかしないと。

 その親蜘蛛が子供達の様子を見ようとよそ見したので、僕は今だと切りかかった。
 だが、それは僕に無理な攻撃を誘う為の罠だった。防御に徹せられると、致命傷を与えられない。だから、僕が攻撃にでるように、態と隙を見せただけだった。
 僕はその作戦にまんまと引っかかり、カウンターのようにつき出した前足で、身体を突かれ、腹を貫通する程の致命傷を負ってしまった。
 そこに、親蜘蛛が毒霧を吹きかけ、更に粘糸で身動きできなくしてきた。
 親蜘蛛は、勝ちを確信したのか、立つ様に身体を起こし、毒牙を剥き出しにして、止めを刺しに来た。

「カキン」 死んだと思ったが、その毒牙を前足で抑えたもう一匹の蜘蛛が出現した。
 二メートルもない母蜘蛛よりずっと小さい蜘蛛だが、これまた今までに見たことがない新種の蜘蛛の魔獣だ。
 蜘蛛の前足は、どの種類の魔物も、鋭利な刃物の様になっているが、この蜘蛛の前足は完全にカマキリの鎌の様な巨大鎌になっているし、身体に綺麗なストライプの模様がある。
「人族の癖に、こいつを討伐しようとするとは、見上げたものだ。だが、私が助ける義理はない。そんな拘束ぐらい自分でなんとかしてみせなさい」
 蜘蛛の魔獣は、女の声でそう言って僕を見つめた。
 鑑定してみたが、鑑定阻害で情報は得られない。

「アクネル様」 ピッチが彼女の方をみてそう口にした。
 この蜘蛛が、職務怠慢で怠け者のアクネルという守り神だったのか。
「ああ、ビーフンの所の娘か。たしか、ビッチだったか」
 親蜘蛛は必死に攻撃しているのに、余裕で受けながら、よそ見をしている。
「ピッチです。助けに来ていただき、感謝します」
「そうそう。ピッチだったな。ここだけでなく、ルッツの所にも、魔族領から魔物が次々と流れ込んできて、更に、人族がまた侵攻を始めてな。時間が取れなかったのだ。遅くなったが、依頼の討伐にきてやったぞ。感謝しろ」
 そういって、「お前、うざい。消えろ」と、その親蜘蛛を蹴飛ばして、信じらない程のの高速で飛び込み、その腹をずたずたに引き裂き始めた。
 半端ない強さだ。
 僕は、大きく穴が開いた腹の治療をして、今度は火傷用のリジェネを掛けて、身体を燃やして粘糸を溶かして、抜け出した。

 そして、子蜘蛛を退けながら、二人を救出していると、女神の声。
『能力レベルが30に上昇しました。スキル「並列思考レベル1」を習得しました。耐性「熱耐性レベル4」が「熱耐性レベルMax」に上がりました。魔法「スケーリング」を習得しました。能力レベルが30になったことにより、肉体増強進化が可能です。直ちに進化しますか?」
 こんな時に進化はできないから、当然『一時保留』と応えたが、フェンまで「どうしよう、この身体のまま進化するとどうなるのかな」と訊いてきた。
 蜻蛉退治でレベル27になった時以降、進化したよとは聞いていなかったが、考えてみれば、あの大蛇を倒し、蜘蛛をこんなに狩ったのだから、進化していてもおかしくない。
 胸や指が欠損した状態で進化するとどうなってしまうのだろう。不安と期待が渦巻いたが、いずれにせよ。今は進化している状態ではない。

 その後、アクネルもこっちにやって来て、三人で残りの十匹の子蜘蛛も一掃して、討伐は完了した。
「ほう。おまえ、メシウスの娘のチビか。随分、成長したみたいだな。そして、こいつがお前の仕える篠崎健斗というわけか。変な名前で、人族とは思えぬ強さをもち、フェンリルを眷族にできる資格を持つ男。お前、もしかして転生者か」
 守り神と言うだけあって、何でもお見通しだった。
「はい、お察しの通りに転生者で、神の加護を持っています」
「なるほどな。魔王から、プレーヤーとは異なる転生者が現れるとの予言を聞いていたが、お前がその転生者だったか。いろいろと話を訊きたいところだが、今は大変な時なのでな。こんなところに、長居はできないんだ。さらばじゃ」
 そういって、蜘蛛の糸を木に吹き付けて、スパイダーマンのように、消えてしまった。
 職務怠慢の怠け者だと思っていたが、本当に忙しくて手が回らなかっただけみたいだ。

 それにしも、守り神というのは、とんでもなく強い。フェンリルパパもとんでもなく強かったが、僕が守り神になってもいいなんて考えてしまった事が、恥ずかしくなるほど、レベルが違い過ぎる。
 メシウスは、守り神の一人と言っていたので、他にも何人もあんな強い守り神が沢山いるのだろうか。
 僕は、自分で治療して立ち上がったピッチに、その事を尋ねることにした。
「ねぇ、守り神って、メシウス、アクネル以外にもいるの?」
「この亜人の地は、領主のルネーラ様を含む、三神により統治され守らています。といっても、アクネル様は魔王軍の元最高幹部だったとかで、一年半前にこの地に来られたばかりで、守り神に就任して、わずか一年半しかたっていません。ここは、以前の三神の一人、ローレライ様の治める地だったのですが、アクネル様が彼女を破って、その後、ルネーラ様とメシウス様とも互角に渡り合い、新たな守り神につかれたのです」
 それで、魔王の予言なんて知っていたのか。
「それより、その服、どうしましょう。ここには裁縫道具を持って来ていませんので、酷い恰好のままで申し訳けありませんが、このまま里にもどり、服の修復は、それからでかまいませんか」
 粘糸が溶けた所で消火し、大雨ヘビィレインで消火したので、なんとか、服は燃えつきなかったが、ズボンは半ズボン状態で、上着も半袖状態で黒焦げだらけだ。
「いや、もうこの服はだめだし、仕立て直しても貰うつもりだから、気にしなくてもいいよ。それより、早く君のお父さんに、報告にいこう」
 そういう訳で、ボロボロの服のまま、オークの里に戻ることにした。

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 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
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アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

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