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第四章 僕が神様なんかになっていいのかな
4-1 フェンの進化は刺激的過ぎます
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「ここはどこだ」僕はなぜか、見知らぬの森の中で目をさました。しかも、一糸まとわぬ全裸でだ。
『ここは、レジェンド・オブ・ヒーローというゲーム世界で、あなたの臨んだ全てがそろっています』
転生の女神の声が聞こえて来た。
(そうか、これは僕が女神に転生してもらった直後の記憶だ。僕は、夢を見ていて、あの時の事が再現されている)
[作者注釈:紛らわしくて申し訳ありませんが、()内は、夢を見ている現在の健斗の思考となり、括弧なしは転生直後の健斗の説明、思考となります]
『ゲームの世界と言っても、この世界の全てが、人工知能で日々学習成長しているので、あなたの望む異世界と何ら変わりません。一年前から運用を開始していますが、それ以前に一年ほど、三百倍速で成長させていたので、この世界が誕生して三百年以上が経過して定常化した世界になっています。建国三百年以上がたった普通の世界と考えて、あなたの人生を楽しんでください。因みに、今現在、この世界は現実世界の時間の流れに対し、二倍速で運用されています。なので、私はゆっくりと話しているつもりですが、早口で聞こえているかもしれませんね』
(プレーヤーが超高速で動いていたのは、その時間の流れの違いによるものだったのか)
『それから、あなたに謝っておくことが有ります。転生処理の際、この世界のシステムに介入されて転生処理に失敗してしまいました。胎児化させることも、記憶消去することもできず、こんな危険な場所に転移させることしかできませんでした。本当に御免なさい。今はレベル1で最弱のままですが、ボーナス加護で直ぐに強くなれる筈です。その加護は能力値が通常の四倍で成長し、レアなスキルや魔法もレベルアップ毎に得られるというものです。私も陰ながら、あなたの活躍を見させていただきますので、頑張って夢をかなえて下さい』
女神はそう言うと、その後、一切、彼女との交信ができなくなってしまった。
ここは、月明かりもほとんど届かない、深い森の中の深夜で、今は冬なのか、身体がブルブルと震える程寒い。
どうすれば、人里にたどり着けるのかもわからず、彷徨っていると、突如、頭の中に声がした。
『緊急事態発生。未知の生命体の出現を確認。魔物の森南部Dの魔物は、直ちに排除せよ。繰り返す。魔物の森南部Dの魔物は未確認生命体を発見次第直ちに排除せよ』
知らない女性の声だったが、近くできらりと目が光った。巨大蛙だ。
(ここはいつもの森とは違うので、この蛙の魔物はツァトーガとは違う種類の蛙の魔物だ)
僕は必死にダッシュして逃げたが、今度は巨大なカナブン。その甲虫に体当たりされて突き飛ばされて、僕は崖から落とされそうになった。
何とかしがみついたが、腕力がないので、崖から上がることもできない。崖の石になんとかつま先が掛かり、体重を分散できてはいるが、この姿勢では長くはもたない。
しかも甲虫は僕を見下ろし、僕の指にその手でピシピシと踏みつけ攻撃してくる。もうだめだ。転生したばかりで、もう死んでしまうのか。
そう思った時、この甲虫は、突如暴れ出した。なにか別の動物に襲われているらしい。
助かったらしいが、僕の腕はもう限界だった。足も親指が何とか掛かっている程度なので、足で支えることもできない。
僕は力尽きて、そのまま後ろ向きに落下した。
「痛て」 僕の夢は、フェンによって中断されてしまった。
顔面に、踵落としを食らったのだ。
夢と言うより、現実にあった体験を思い出しただけだが、確かにはっきりと思い出した。
あの後、僕は全身打撲を負ったが、落ちた所は湖で、命だけは助かった。
だが、僕は泳ぎが得意じゃない。直ぐに滝があり、必死にそこに落ちない様にもがいたが、滝へと流れ落ちる水流に逆らえず、そのまま落下して、滝壺に落ちて失神した。
そして、早朝、フェイに助けてもらい、その二日後の夜、目を覚ましたという訳だ。
だが、その時の恐怖は、魔物に食われて殺された時よりもはるかに大きかった。それで、転生してから、滝壺に落ちて失神するまでの記憶を脳内に押し込め、逆向性健忘症になっていた。
それにしても、フェンの寝相の悪さはなんとかしてほしい。
犬だった時は、大人しく寝ていたのに、人型形態になった途端、とんでもなく寝相が悪くなった。
早朝、帰宅して、二人で一つ布団で寝ていた筈なのに、いつの間にか上下が入れ替わり、僕の顔に踵を落とすまでになっている。
もう、かなり外が明るいし、お腹もペコペコなので、まだ眠いが、僕は起き出すことにした。
四時間は寝た筈だし、今は空腹を満たすことが先決と、フェンを残し、食べ物探しに出かけることにした。
フェンは指とかアソコとか、少しはお腹に入れているが、僕は、昨日の昼以降、何も食べていない。
先ずは川で魚を刀で突いて獲り、罠にかかっていた兎を捌き、山小屋で火を起こし、焼肉と焼き魚を食べ始めた。
僕も随分サバイバーとなっていて、魚は勿論、兎でも平気で捌けるようになった。それでも魚の骨だけは無理だ。特に、今日の魚は二十センチ以上あるので、綺麗に残した。
『健斗、どこなの』 漸く、フェンも目覚めた見たいで、以心伝心で伝えて来た。
『昨日の山小屋で食事中』
『ひとりだけ狡い。私も直ぐに行く』
『なら、川で魚を調達してこいよ。魚は今、食べ終わったから』
『魚はいらない。お肉はある?』
『ああ、兎の肉だけどな』
僕が焼肉をたらふく食べ終えた頃、フェンがずぶぬれ姿で現れた。
「まさか、川をそのまま走って来たのか。なんのための空中浮遊だ」
「御免、つい忘れてた」
今朝、日の出前の曙の頃、ここに戻って来て、それから僕とフェンとの鑑定をした。
その際、フェンは空中浮遊を習得していた。
どの段階で習得したのかは不明だが、レベル16から18のいずれかで取得した。
因みに、最後の千人殺しはほとんど僕一人で倒したようなものなので、フェンはレベル18にしか上がっていない。
フェンの能力は以下で、精神力が予想以上に低かった。
【
攻撃力 5291
防御力 4534
耐久力 4912
精神力 3533
機動力 9456
知力 1217
創造力 378
】
機動力は最初から高かったので、高いのは当たり前で、思ったほど増加していないくらいだが、人型になったからかもしれないが、ずっと100で全く成長しなかった創造力が増加し始めたのも特徴だ。
どうも、能力値の増加は、前レベル時にどんな戦闘をしたかで決まるみたいだ。フェンは魔法をほとんど使わなかったので、精神力が延びなかったのだと理解した。
僕は現在レベル24で、肉体増強進化も逃してしまったが、それでも以下だ。
【
攻撃力 6932
防御力 7013
耐久力 7297
精神力 8863
機動力 7060
知力 1954
創造力 1712
】
今回、上級魔法を多用したためか、精神力が大きく上昇した。
昨日は、六段階もレベルアップしたが、獲得したスキルは『黄龍脚』『鳳凰拳』『断頭脚』『斧無双』『挑発』『真空斬』で、耐性は、『熱耐性レベル4』『極寒耐性レベル4』で、魔法は『状態異常無効化レベル3』『魔法無効化レベル3』だ。
習得したレベルアップ型の魔法は、使わないでいると、能力レベルアップ時に魔法がレベルアップするみたいだ。少しもったいない気がするので、今後はどんどん魔法を使う様にして、違う種類の魔法を習得するように心がけたい。
因みに、女神は僕に斧戦士を目指せと言っている気がする。『黄龍脚』『鳳凰拳』『断頭脚』は格闘スキルなので、拳闘士を目指せといっているのかと誤解していたが、斧戦士も蹴りや打撃を多用する職種。格闘技の習得も斧戦士には必要なので、段階的に斧戦士へと誘導してる様にしか思えない。
状態異常無効化や魔法無効化も、タンク向きの魔法と言えなくもない。
これからは斧戦士となり、フェンを守る様な戦い方をしろと言っているのだと理解した。
この山小屋に来たのは、食材を調理する為だが、薪割り用の斧を武器として回収に来たという意味もある。
因みに、フェンは、スキルが『断頭脚』『気孔波』『異次元格納』の三つ。魔法は、『防御増加』『空間跳躍』『空中浮遊』の三つだ。
攻撃増加、防御増加は、支援魔法だし、異次元格納や空間跳躍も、旅を楽にする支援系だ。
どうやら女神は、フェンを僕と常に同伴する支援者の格闘家にしたいらしい。
それならそれで構わないが、問題は、どのように彼女の能力を伸ばしていくかだ。
能力は必ずしも均等に増やすのがいいとは言えない。得意を極端に伸ばす方がいい場合もある。
だが、空間跳躍は距離に応じて魔力消費量が変わるので、魔力量増加は必要だ。
そういう訳で、精神力を伸ばせば、魔力量も増えると勝手に解釈して、今後は後衛で魔法主体の戦闘を身に付けさせることにした。
フェンもお腹が膨れたみたいなので、その後は、二人で魔物の森に出かけた。
もうレベルアップする必要はないが、女神の意図する戦い方を身に付けるための訓練として出かけた。
だから、今日は刀ではなく、斧を持って、斧戦士としての戦い方を研究する。フェンにも、魔法防壁や攻撃増加、防御増加を掛けてからでないと、戦闘参加させない様にして、必ず魔法を使わせるようにした。
程なく、フェンはレベル19になり、やっと単体攻撃魔法を覚えた。『水刃レベル1』という単体攻撃の中級水魔法だ。
それからは、極力、格闘技は使わないようさせ、ほとんど魔法だけで戦わせるようにした。
なのに、突然、フェンが魔物に噛みつき、食べ始めた時は驚いた。
「だって、朝のお肉が少なすぎて、腹が減ったんだもの」と言われ、怒れなかった。
そう言えば、僕もお腹が空いていたので、少し早かったが、その日は、この場所に転送陣を書いから、帰宅した。
空間跳躍は、どこにでも移動できるのではなく、転送陣を書いた場所にしか飛べず、その転送先は最大六個までと制限されている。一度転送陣を書けば、それが消えても、空間座標として登録しているので、いつでも移動でき、術者と接触さえしていれば、一緒に転送できる。
隠れ家、山小屋、フェイの墓、魔物の森の右奥の森の中と、一瞬で自由に移動でき、本当に便利だ。
その後、罠に兎は掛かっていなかったが、猪や兎を二人で狩って、フェンがもう食べきれないという程、しっかり夕食を食べた。
ただ、僕は、主食となる炭水化物食品がないので、無性に、炭水化物を欲する様になっていった。
そして、その夜、布団に二人で寝ることにしたのだが、フェンがにやりと不気味に笑って来た。
「ねえ、フェン、今日は偉かったでしょう。ご褒美頂戴」と手を広げ、目をつぶり、顔を突き出して来たのだ。
「昨日も言ったけど、子供には早い」」
「してくれないと、明日はいうこと聞いてあげないんだから」
確かに、今日は聞き分けよく、魔法を沢山使って頑張ってくれた。なら、頬にチュぐらいのご褒美を上げてもいいかもしれない。
「分かったよ。じゃあ、目を瞑って」
そう言って、フェンのほっぺに接吻しようとすると、フェンがさっと顔の向きを変え、唇にキスすることになった。しかも、フェイの真似をして、がっちりとハグして胸をおしつけて、足まで絡めて来た。
胸のない十歳児なので興奮なんてしないが、これまたフェイを真似、僕のアソコを擦ってきた。
勃起こそしなかったが、とんでもないませガキだ。
その日も、金蹴りや、鳩尾蹴りを食らい、何度も目覚めることになった。本当に、フェイの寝相を何とかしないと、寝不足でしんでしまう。
翌日は、共に、レベルアップせず。流石にこのレベルになると五十匹以上レベル30強の魔物を二人で倒し続けてもレベルアップしなくなる。
それでも、僕も斧戦士のタンク役として様になって来たし、フェイの水刃もレベルMaxとなり、一撃で重傷を負わせられるまでの威力になった。
その日は、初めてフェンを五右衛門風呂に入れたが、嫌がって大変だった。フェンに腕や肩を噛みつきつかれたのだ。手加減してやめろと言う意味での噛みつきだったが、それでも飛んでもなく痛く、大変だった。
まあ、温まって気持ち良さを実感したみたいなので、これからは素直に入ってもらえそうだ。
そのお風呂の時、誰かに覗かれている様な視線を感じた。さっと窓格子を見ると確かに誰かが頭を下げた。僕の僕の気配感知では、人間は分からないので、フェンに確認してもらったが、やはり誰もいないとの結論になった。
でも、明らかに誰かに覗かれていたような気がしてならなかった。
翌日は、フェンが漸くレベル20に到達。肉体増強進化してみたが、大変なことになった。
いつものように痛がりながら、身体が大きくなっていったが、その成長が予想以上で止まらない。一歳位大きくなる予想だったのだが、十分近い進化となって、どんどん大きくなり、しかも、胸も膨らみだし、腰も大きくなって、本当に大人の女性へと成長していったのだ。
しかも、子供用の服や下着を着ていたので、大変なことになった。
「痛いよ。パンツが食い込んで痛い」
確かに腰が大きくなったので、物凄く食い込んでいる。
仕方なく進化途中でパンツを脱がしたが、完全に成人の女性器になっていた。
進化が終わると、服も苦しいからと言い出し、フェンは全裸になったから、これまた大変。フェンを鑑定することもできなくなった。
まだ胸は未成熟でフェイよりも小さく、陥没乳首で、顔も童顔だが、それでもそれなりに発育した十五歳位の女性になってしまった。
直ぐに、隠れ家に空間跳躍し、フェイの服を着せ、再び、森で狩りを始めたが、目のやり場に困る。
ブラをしていないので、小さいといってもかなり揺れるし、戦闘で興奮すると、性的興奮でなくても乳首が浮き上がってくるのだ。
十歳の時はなんともなかったけど、こんな身体になってしまうと、困ってしまう。
その日は、僕もレベル25となり、肉体増強進化が可能となった。
今回も隠れ家に帰還してから、進化することにし、陽が暮れるまで狩りを続けた。
進化前後の能力値変化を確認する意味もあるが、ズボンのウエストが心配だった。今のズボンは進化することも考慮して、ウエストもかなり大きいので、ズボンそのものは問題ないのだが、ベルトがもう限界なのだ。
だから進化の際には、ベルトを外す必要があり、進化後のベルトの代用品も用意してから望みたかった。
予想した通り、二メートル越えの大男になったが、ズボンはきついくらいになり、代用のベルトは不要だった。
その夜、危惧していた事態となった。フェンが女の身体になったので、嫌な予感はしていたのだが、二人で布団に入ると、やはり迫って来た。
「ねえ、この身体になったんだから、あれしてよ」
「確かに、女らしくなったが、まだ大人の身体じゃない。この次に進化したらな」
「けち。今度進化したら、絶対だよ。でも、キスはして」
仕方なくハグしてキスだけはしてやったが、前回とはやはり違う。胸の感触が伝わって来て、しかも今回も擦って来るから、勃起してしまった。
「あっ。大きくなった。見せて」
「ぱか、やめろ」
何とか、やめさせて寝ることになったが、興奮してなかなか寝付けなかった。
『ここは、レジェンド・オブ・ヒーローというゲーム世界で、あなたの臨んだ全てがそろっています』
転生の女神の声が聞こえて来た。
(そうか、これは僕が女神に転生してもらった直後の記憶だ。僕は、夢を見ていて、あの時の事が再現されている)
[作者注釈:紛らわしくて申し訳ありませんが、()内は、夢を見ている現在の健斗の思考となり、括弧なしは転生直後の健斗の説明、思考となります]
『ゲームの世界と言っても、この世界の全てが、人工知能で日々学習成長しているので、あなたの望む異世界と何ら変わりません。一年前から運用を開始していますが、それ以前に一年ほど、三百倍速で成長させていたので、この世界が誕生して三百年以上が経過して定常化した世界になっています。建国三百年以上がたった普通の世界と考えて、あなたの人生を楽しんでください。因みに、今現在、この世界は現実世界の時間の流れに対し、二倍速で運用されています。なので、私はゆっくりと話しているつもりですが、早口で聞こえているかもしれませんね』
(プレーヤーが超高速で動いていたのは、その時間の流れの違いによるものだったのか)
『それから、あなたに謝っておくことが有ります。転生処理の際、この世界のシステムに介入されて転生処理に失敗してしまいました。胎児化させることも、記憶消去することもできず、こんな危険な場所に転移させることしかできませんでした。本当に御免なさい。今はレベル1で最弱のままですが、ボーナス加護で直ぐに強くなれる筈です。その加護は能力値が通常の四倍で成長し、レアなスキルや魔法もレベルアップ毎に得られるというものです。私も陰ながら、あなたの活躍を見させていただきますので、頑張って夢をかなえて下さい』
女神はそう言うと、その後、一切、彼女との交信ができなくなってしまった。
ここは、月明かりもほとんど届かない、深い森の中の深夜で、今は冬なのか、身体がブルブルと震える程寒い。
どうすれば、人里にたどり着けるのかもわからず、彷徨っていると、突如、頭の中に声がした。
『緊急事態発生。未知の生命体の出現を確認。魔物の森南部Dの魔物は、直ちに排除せよ。繰り返す。魔物の森南部Dの魔物は未確認生命体を発見次第直ちに排除せよ』
知らない女性の声だったが、近くできらりと目が光った。巨大蛙だ。
(ここはいつもの森とは違うので、この蛙の魔物はツァトーガとは違う種類の蛙の魔物だ)
僕は必死にダッシュして逃げたが、今度は巨大なカナブン。その甲虫に体当たりされて突き飛ばされて、僕は崖から落とされそうになった。
何とかしがみついたが、腕力がないので、崖から上がることもできない。崖の石になんとかつま先が掛かり、体重を分散できてはいるが、この姿勢では長くはもたない。
しかも甲虫は僕を見下ろし、僕の指にその手でピシピシと踏みつけ攻撃してくる。もうだめだ。転生したばかりで、もう死んでしまうのか。
そう思った時、この甲虫は、突如暴れ出した。なにか別の動物に襲われているらしい。
助かったらしいが、僕の腕はもう限界だった。足も親指が何とか掛かっている程度なので、足で支えることもできない。
僕は力尽きて、そのまま後ろ向きに落下した。
「痛て」 僕の夢は、フェンによって中断されてしまった。
顔面に、踵落としを食らったのだ。
夢と言うより、現実にあった体験を思い出しただけだが、確かにはっきりと思い出した。
あの後、僕は全身打撲を負ったが、落ちた所は湖で、命だけは助かった。
だが、僕は泳ぎが得意じゃない。直ぐに滝があり、必死にそこに落ちない様にもがいたが、滝へと流れ落ちる水流に逆らえず、そのまま落下して、滝壺に落ちて失神した。
そして、早朝、フェイに助けてもらい、その二日後の夜、目を覚ましたという訳だ。
だが、その時の恐怖は、魔物に食われて殺された時よりもはるかに大きかった。それで、転生してから、滝壺に落ちて失神するまでの記憶を脳内に押し込め、逆向性健忘症になっていた。
それにしても、フェンの寝相の悪さはなんとかしてほしい。
犬だった時は、大人しく寝ていたのに、人型形態になった途端、とんでもなく寝相が悪くなった。
早朝、帰宅して、二人で一つ布団で寝ていた筈なのに、いつの間にか上下が入れ替わり、僕の顔に踵を落とすまでになっている。
もう、かなり外が明るいし、お腹もペコペコなので、まだ眠いが、僕は起き出すことにした。
四時間は寝た筈だし、今は空腹を満たすことが先決と、フェンを残し、食べ物探しに出かけることにした。
フェンは指とかアソコとか、少しはお腹に入れているが、僕は、昨日の昼以降、何も食べていない。
先ずは川で魚を刀で突いて獲り、罠にかかっていた兎を捌き、山小屋で火を起こし、焼肉と焼き魚を食べ始めた。
僕も随分サバイバーとなっていて、魚は勿論、兎でも平気で捌けるようになった。それでも魚の骨だけは無理だ。特に、今日の魚は二十センチ以上あるので、綺麗に残した。
『健斗、どこなの』 漸く、フェンも目覚めた見たいで、以心伝心で伝えて来た。
『昨日の山小屋で食事中』
『ひとりだけ狡い。私も直ぐに行く』
『なら、川で魚を調達してこいよ。魚は今、食べ終わったから』
『魚はいらない。お肉はある?』
『ああ、兎の肉だけどな』
僕が焼肉をたらふく食べ終えた頃、フェンがずぶぬれ姿で現れた。
「まさか、川をそのまま走って来たのか。なんのための空中浮遊だ」
「御免、つい忘れてた」
今朝、日の出前の曙の頃、ここに戻って来て、それから僕とフェンとの鑑定をした。
その際、フェンは空中浮遊を習得していた。
どの段階で習得したのかは不明だが、レベル16から18のいずれかで取得した。
因みに、最後の千人殺しはほとんど僕一人で倒したようなものなので、フェンはレベル18にしか上がっていない。
フェンの能力は以下で、精神力が予想以上に低かった。
【
攻撃力 5291
防御力 4534
耐久力 4912
精神力 3533
機動力 9456
知力 1217
創造力 378
】
機動力は最初から高かったので、高いのは当たり前で、思ったほど増加していないくらいだが、人型になったからかもしれないが、ずっと100で全く成長しなかった創造力が増加し始めたのも特徴だ。
どうも、能力値の増加は、前レベル時にどんな戦闘をしたかで決まるみたいだ。フェンは魔法をほとんど使わなかったので、精神力が延びなかったのだと理解した。
僕は現在レベル24で、肉体増強進化も逃してしまったが、それでも以下だ。
【
攻撃力 6932
防御力 7013
耐久力 7297
精神力 8863
機動力 7060
知力 1954
創造力 1712
】
今回、上級魔法を多用したためか、精神力が大きく上昇した。
昨日は、六段階もレベルアップしたが、獲得したスキルは『黄龍脚』『鳳凰拳』『断頭脚』『斧無双』『挑発』『真空斬』で、耐性は、『熱耐性レベル4』『極寒耐性レベル4』で、魔法は『状態異常無効化レベル3』『魔法無効化レベル3』だ。
習得したレベルアップ型の魔法は、使わないでいると、能力レベルアップ時に魔法がレベルアップするみたいだ。少しもったいない気がするので、今後はどんどん魔法を使う様にして、違う種類の魔法を習得するように心がけたい。
因みに、女神は僕に斧戦士を目指せと言っている気がする。『黄龍脚』『鳳凰拳』『断頭脚』は格闘スキルなので、拳闘士を目指せといっているのかと誤解していたが、斧戦士も蹴りや打撃を多用する職種。格闘技の習得も斧戦士には必要なので、段階的に斧戦士へと誘導してる様にしか思えない。
状態異常無効化や魔法無効化も、タンク向きの魔法と言えなくもない。
これからは斧戦士となり、フェンを守る様な戦い方をしろと言っているのだと理解した。
この山小屋に来たのは、食材を調理する為だが、薪割り用の斧を武器として回収に来たという意味もある。
因みに、フェンは、スキルが『断頭脚』『気孔波』『異次元格納』の三つ。魔法は、『防御増加』『空間跳躍』『空中浮遊』の三つだ。
攻撃増加、防御増加は、支援魔法だし、異次元格納や空間跳躍も、旅を楽にする支援系だ。
どうやら女神は、フェンを僕と常に同伴する支援者の格闘家にしたいらしい。
それならそれで構わないが、問題は、どのように彼女の能力を伸ばしていくかだ。
能力は必ずしも均等に増やすのがいいとは言えない。得意を極端に伸ばす方がいい場合もある。
だが、空間跳躍は距離に応じて魔力消費量が変わるので、魔力量増加は必要だ。
そういう訳で、精神力を伸ばせば、魔力量も増えると勝手に解釈して、今後は後衛で魔法主体の戦闘を身に付けさせることにした。
フェンもお腹が膨れたみたいなので、その後は、二人で魔物の森に出かけた。
もうレベルアップする必要はないが、女神の意図する戦い方を身に付けるための訓練として出かけた。
だから、今日は刀ではなく、斧を持って、斧戦士としての戦い方を研究する。フェンにも、魔法防壁や攻撃増加、防御増加を掛けてからでないと、戦闘参加させない様にして、必ず魔法を使わせるようにした。
程なく、フェンはレベル19になり、やっと単体攻撃魔法を覚えた。『水刃レベル1』という単体攻撃の中級水魔法だ。
それからは、極力、格闘技は使わないようさせ、ほとんど魔法だけで戦わせるようにした。
なのに、突然、フェンが魔物に噛みつき、食べ始めた時は驚いた。
「だって、朝のお肉が少なすぎて、腹が減ったんだもの」と言われ、怒れなかった。
そう言えば、僕もお腹が空いていたので、少し早かったが、その日は、この場所に転送陣を書いから、帰宅した。
空間跳躍は、どこにでも移動できるのではなく、転送陣を書いた場所にしか飛べず、その転送先は最大六個までと制限されている。一度転送陣を書けば、それが消えても、空間座標として登録しているので、いつでも移動でき、術者と接触さえしていれば、一緒に転送できる。
隠れ家、山小屋、フェイの墓、魔物の森の右奥の森の中と、一瞬で自由に移動でき、本当に便利だ。
その後、罠に兎は掛かっていなかったが、猪や兎を二人で狩って、フェンがもう食べきれないという程、しっかり夕食を食べた。
ただ、僕は、主食となる炭水化物食品がないので、無性に、炭水化物を欲する様になっていった。
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「ねえ、フェン、今日は偉かったでしょう。ご褒美頂戴」と手を広げ、目をつぶり、顔を突き出して来たのだ。
「昨日も言ったけど、子供には早い」」
「してくれないと、明日はいうこと聞いてあげないんだから」
確かに、今日は聞き分けよく、魔法を沢山使って頑張ってくれた。なら、頬にチュぐらいのご褒美を上げてもいいかもしれない。
「分かったよ。じゃあ、目を瞑って」
そう言って、フェンのほっぺに接吻しようとすると、フェンがさっと顔の向きを変え、唇にキスすることになった。しかも、フェイの真似をして、がっちりとハグして胸をおしつけて、足まで絡めて来た。
胸のない十歳児なので興奮なんてしないが、これまたフェイを真似、僕のアソコを擦ってきた。
勃起こそしなかったが、とんでもないませガキだ。
その日も、金蹴りや、鳩尾蹴りを食らい、何度も目覚めることになった。本当に、フェイの寝相を何とかしないと、寝不足でしんでしまう。
翌日は、共に、レベルアップせず。流石にこのレベルになると五十匹以上レベル30強の魔物を二人で倒し続けてもレベルアップしなくなる。
それでも、僕も斧戦士のタンク役として様になって来たし、フェイの水刃もレベルMaxとなり、一撃で重傷を負わせられるまでの威力になった。
その日は、初めてフェンを五右衛門風呂に入れたが、嫌がって大変だった。フェンに腕や肩を噛みつきつかれたのだ。手加減してやめろと言う意味での噛みつきだったが、それでも飛んでもなく痛く、大変だった。
まあ、温まって気持ち良さを実感したみたいなので、これからは素直に入ってもらえそうだ。
そのお風呂の時、誰かに覗かれている様な視線を感じた。さっと窓格子を見ると確かに誰かが頭を下げた。僕の僕の気配感知では、人間は分からないので、フェンに確認してもらったが、やはり誰もいないとの結論になった。
でも、明らかに誰かに覗かれていたような気がしてならなかった。
翌日は、フェンが漸くレベル20に到達。肉体増強進化してみたが、大変なことになった。
いつものように痛がりながら、身体が大きくなっていったが、その成長が予想以上で止まらない。一歳位大きくなる予想だったのだが、十分近い進化となって、どんどん大きくなり、しかも、胸も膨らみだし、腰も大きくなって、本当に大人の女性へと成長していったのだ。
しかも、子供用の服や下着を着ていたので、大変なことになった。
「痛いよ。パンツが食い込んで痛い」
確かに腰が大きくなったので、物凄く食い込んでいる。
仕方なく進化途中でパンツを脱がしたが、完全に成人の女性器になっていた。
進化が終わると、服も苦しいからと言い出し、フェンは全裸になったから、これまた大変。フェンを鑑定することもできなくなった。
まだ胸は未成熟でフェイよりも小さく、陥没乳首で、顔も童顔だが、それでもそれなりに発育した十五歳位の女性になってしまった。
直ぐに、隠れ家に空間跳躍し、フェイの服を着せ、再び、森で狩りを始めたが、目のやり場に困る。
ブラをしていないので、小さいといってもかなり揺れるし、戦闘で興奮すると、性的興奮でなくても乳首が浮き上がってくるのだ。
十歳の時はなんともなかったけど、こんな身体になってしまうと、困ってしまう。
その日は、僕もレベル25となり、肉体増強進化が可能となった。
今回も隠れ家に帰還してから、進化することにし、陽が暮れるまで狩りを続けた。
進化前後の能力値変化を確認する意味もあるが、ズボンのウエストが心配だった。今のズボンは進化することも考慮して、ウエストもかなり大きいので、ズボンそのものは問題ないのだが、ベルトがもう限界なのだ。
だから進化の際には、ベルトを外す必要があり、進化後のベルトの代用品も用意してから望みたかった。
予想した通り、二メートル越えの大男になったが、ズボンはきついくらいになり、代用のベルトは不要だった。
その夜、危惧していた事態となった。フェンが女の身体になったので、嫌な予感はしていたのだが、二人で布団に入ると、やはり迫って来た。
「ねえ、この身体になったんだから、あれしてよ」
「確かに、女らしくなったが、まだ大人の身体じゃない。この次に進化したらな」
「けち。今度進化したら、絶対だよ。でも、キスはして」
仕方なくハグしてキスだけはしてやったが、前回とはやはり違う。胸の感触が伝わって来て、しかも今回も擦って来るから、勃起してしまった。
「あっ。大きくなった。見せて」
「ぱか、やめろ」
何とか、やめさせて寝ることになったが、興奮してなかなか寝付けなかった。
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それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
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異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
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第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
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