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第三章 力を持つと人は道を踏み外すのかな
3-1 つらい修行もフェイがいれば幸せだ
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僕は、美味しい朝食を食べながら、フェイを幸せにするには、どうするれば良いかを考え続け、やはり、あの極悪クラン『エルデンリング』を壊滅させなければならないとの結論となった。
魔物に見つからないかと怯えた日々を送らせて良い訳がないし、そもそも人目を避けて生活しなければならないこと自体、間違っている。
山小屋にて、自由に薬草づくりできる環境を彼女に取り戻してあげたい。その思いから、そういう結論となった。
そもそもは、リットとミミの敵討ちしたいという軽い願望に過ぎなかったが、今は、フェイの為に、一刻も早く、あいつらの悪事を世間に暴き、リーダーであるスティーブを刑務所送りにして、『エルデンリング』を解散させねばと、真剣に考えている。
そんな訳で、二人で、食器を片づけると、魔物の森に案内してもらった。
魔物の森は、目の前の滝を上ってすぐの所にあるという話だが、断崖絶壁のため、ぐるっと遠回りして少しずつ上って行かなければならない。
だが、人間は魔物にとって格好の餌。魔物の多くは夜行性だと言うが、昼間活動する魔物も多くいて、昼間だと、発見されやすい。
十五分程で、魔物の入り口に到着したが、その僅かな時間に、五匹もの魔物が襲って来た。
レベル25前後の昆虫型魔物や鳥型魔物だったが、基本能力は全て三桁以下と、僕の能力値と較べれば、問題外に低い。実際、一分もかからず、秒殺して蹴散らせた。
二度目の進化のお蔭か、ダンジョンに潜っていた時より、明らかに強くなっていて、自分の強さに驚くことになった。
その戦闘の際、謎だったSPの意味もなんとなく理解した。魂力、ソールパワーらしい。
襲い掛かってきた時は100だが、徐々に減っていき、勝てないと悟って逃走を図ると大幅に減少し、逃げられないと悟ると、決死の一か八かになるからか、再び半分以上にSPバーが上昇する。そして、体力HPが尽きると、徐々にSPが減少していき、SPがゼロとなった途端、魔物は塵となって魔石を落として消えるのだ。
「凄い、凄い。健斗は、やっぱり、強いね」
魔物の森の入り口で、二匹を相手にして、これまた秒殺してみせると、フェイが拍手してくれた。
「私は、ここまで。この先の魔物の森には、更にレベルが高い魔物ばかりになるので、これ以上は足手まといになるし、薬作りもしないとならないから、ここでお別れ」
「心配だな。道順は分かったから、下まで送っていくよ」
「本当? ありがとう。本当を言うと、魔物にまた襲われるんじゃないかと、怖かったんだ」
そんな訳で、洞窟まで送り届けることにし、その途中で、魔物に襲われた時、どうしていたのかを訊いた。
必死に逃げて、滝や川に飛び込み、水中深く潜って、ひたすら逃げたのだそう。
水の中までは追ってこれないが、鳥系の魔物だと、息継ぎするタイミングを狙って、襲ってきて、爪や嘴で、何度も大怪我して、治癒薬で治療していたとの話だった。
僕は、一刻も早く、レベル70相当の力を身に付けねばならないと、改めて修行に気合いが入った。
フェイと別れると、今度は神速で走り、再び魔物の森の入り口に行き、その森の中に入った。
早速、蛙の魔物に遭遇。ツァトーガという魔物で、レベル32もあり、機動力・精神力は低めだが、攻撃力や防御力、耐久力は1500前後もある。森の外と中とでこんなに強さが違うのかと驚かされた。
それでも、僕の方が強いが、魔法耐性が高く、雷撃も火球も大きくダメージを削れない。刀で切り殺そうとすると、高速に舌で僕を捕えようとしてきて、なかなか近づかせてもらえない。
しかも、切るとねばねばの体液が身体に付着し、その粘液には痺れ毒までついていた。
高価な毒消し薬を飲んで、大事には至らなかったが、仕留めるまで、三十分近くも掛かった。
さっきまでは秒殺だったのに、実力が均衡していくると接戦になり、戦闘時間は飛躍的に伸びるんだと実感した。
でも、甲斐あって、能力レベル11にレベルアップ。スキルは『連続瞬歩レベル1』、魔法は『グラビティレベル1』を獲得した。耐性は毒か痺れだと信じていたのに『鬼頭刺激耐性レベル2』だった。
フェイの名器の前にやはり早漏だと思っていたのが反映されたらしい。あまり遅漏になるのは望ましくないが、レベルアップしてしまったのだから仕方がない。
「ううっ、ワン、ワン」
蛙を倒した直後、近くから犬の鳴き声が聞こえて来た。
急いで駆けつけると、子犬が蜘蛛の糸に絡めとられ、二メートル以上もある蜘蛛の魔物に対峙していた。
子犬は、蜘蛛にやられたのか、右足にざっくりと深い傷を負っている。
それなのに、怯えてはおらず、牙を剥き出しにして、必死に巨大蜘蛛に吠えて威嚇し、抵抗している。
お蔭で、蜘蛛は僕に気づいていないみたいだが、蜘蛛はゆっくりと近づき身体を起こし、毒牙でしとめる態勢をとった。
僕は、子犬を見殺しにできず、一気に飛び込むつもりで跳躍したら、連続瞬歩の影響なのか、信じられない程高く遠くまで飛べてしまった。
それならそれで構わない。丁度、蜘蛛の真上に落ちそうなので、蜘蛛の背中に、深々と愛刀『篠一文字』を突き立ててやった。
その状態で、グルグルと刀を回して、苦しめていると、蜘蛛は、僕を載せたまま跳躍し、僕を地面に振り落としてきて、目が合った。
蜘蛛は目が沢山あるので、目が合ったという表現はおかしいが、正面に対峙できたので、鑑定したみた。
タラテクトという名の魔物の幼体で、レベルは28だが、攻撃力1582と僕と同等で、防御力、耐久力、精神力は1000程度と低いものの、機動力は2391と僕の二倍以上もあった。
機動力が高いと、火球は勿論、雷撃ですら回避される。指さした途端にジャンプして、雷が虚しく地面に当たるだけになる。
近接して、刀で切り刻むしかないが、敵は蜘蛛の糸を穿き出して来て、近づけさせない。何とか糸を掻い潜って、近接しようと試みたが、逆に粘着糸を足に浴び、動きを封じられて、こちらの危機になった。
今だと蜘蛛が飛びかかって来て、刀で何とか毒牙は防いだが、鎌の様な鋭い前足で、身体を切られた。
仕方なく足が火傷するのを覚悟して、足元に向け火球を放ち、糸を溶かし、再び距離をとり、治癒薬を飲んで、火傷用に術式を組んだリジェネを足に掛けて治療したが、無理して近づこうとすれば、地獄行きだと悟った。
さっき獲得した重力魔法を使えれば、対処できそうだが、今は鑑定がつかえないので、使い方が分からない。
そこで指差しフェントで雷撃だと思わせて、蜘蛛に跳躍回避させ、その空中状態を火球で狙い打った。
空中なら絶対回避できないと思っていたのに、蜘蛛は、糸を吐いた反動で、空中でも回避した。
こうなれば、威力はかなり劣ってしまうが、長距離からの鎌鼬攻撃でダメージを与えるしかない。
鎌鼬は前方三十度範囲に放射状に広がっていくので、距離と反比例して威力が減少するが、かなりの広範囲攻撃となり、回避困難となるという読みだ。
両腕を前に突き出した途端、やはり蜘蛛は回避行動をとってきたが、それは想定内で、攻撃範囲外まで退避できず、鎌鼬を食らう事になった。
僕は、放つと同時に、瞬歩で風を追いかけるように飛び込んで距離を詰めていた。刀はまだ届かないが、かなり近接した距離から、二度目の鎌鼬を発動した。
蜘蛛は粘糸を吐こうとしていたので、回避が遅れ、もろに鎌鼬を浴びることになった。
今の僕の鎌鼬は、レベルMaxなので、これで瀕死だろうと思ったが、それでも、必死に木に飛び退いてきた。SPは減っていないので、逃走しようとしているのではなく、反撃を考えての退避行動だ。
でも、動きは明らかに鈍っている。雷撃を当てて感電させて地面に落とし、後は刀で滅多切りしてやった。
これまた二十分にも及ぶ長期戦になったが、止めを刺すことができた。
子犬を助けようと近づくと、「ううっ」と唸って凄い形相で睨んできて、よしよしと手を出すとガブリと噛まれた。怖い思いをしたので仕方がない事だし、ヒールで治療できるので、噛ませたまま、蜘蛛の糸を取ることにした。
すると、僕の意図が分かったのか、噛むのをやめ、今度は血が出ている僕の手をぺろぺろと舐め始めた。
蜘蛛の糸は、ねばねばで、解放するのは容易でなかったが、それでも悪戦苦闘して子犬の毛から、蜘蛛の糸を丁寧に外し、足もヒールで治療してあげた。
子犬は、クゥーンとすり寄って感謝してきたが、「こんな怖い所に来るんじゃないぞ」とパンと手を叩いて、驚かせ、逃がしてあげた。
子犬はそれでも、僕を見つめて、なごり惜しそうにしていたが、僕の意図を理解してくれたのか、さっと走り去っていった。
「おいおい、そっちじゃない。そっちはもっと怖い魔物がいるから」
森の奥へと走り出したので、慌てて追いかけたが、子犬は神速を持つ僕以上に速く、あっという間に見えなくなった。
そして、僕の目の前には、巨大な蛇の魔物が見下ろしている。不用意に森の奥に走ったので、胴回り六十センチ近く有りそうな蛇の魔物が、鎌首を持ち上げて来たのだ。
鑑定すると、サーペントというレベル32の魔物で、基本能力は僕より全てが劣っていた。
これなら問題なしと、不用意に挑んだのが失敗だった。噛みつかれなければ、毒状態にならないと思い込んでいたが、毒液を吐くこともできたのだ。僕はその毒液を浴び、苦しむことなった。
勿論、毒消しを使って治療し、十五分もかからず止めを刺したが、毒消しを使っても、暫くは毒状態は継続して、体力を大きくけずられることになった。
その後、蛙、蛙、蜘蛛、蛇、蛙と五匹を倒し、本日二度目のレベルアップ。強敵揃いで、かなりの疲労したが、七匹の魔物を倒しただけでレベルアップするなんて、レベルが三倍近い格上を倒すと獲得経験値もとんでもなく大きくなるんだと実感した。
このレベルアップにより、連続瞬歩は使い方が分からない内にレベル2となり、毒耐性もレベル2となり、グランドバリアという魔法を習得した。
滝に戻り、スキルや魔法を鑑定してみると、連続瞬歩は、跳躍力をあげるだけでなく、空中を蹴って移動できるという術だった。空中に飛ぶと、回避困難になる問題があったが、これを使えば、蜘蛛がしていた様な空中で方向転換等の回避が可能となる。
早速試してみたら、垂直に空中を上っていくこともでき、十五分も掛けて迂回した魔物の森の入り口まで、僅か一分で到着できた。これなら積極的に空中戦を挑む事すらできる。
グラビティは発動アクション不要な位置指定型の上級重力魔法で、頭に追い浮かべた任意指定位置の半径二メートル以内の敵の体重を二倍に重くできる。しかも、重複して五回まで重ねることができ、五回連続発動すると、なんと三十二倍。五十キロだった体重が、一トン半以上の重さとなって、全く動けなくなる。
発動後、十二分で解除されるが、効果範囲は半径二メートルもあり、発動の気配も悟られないので、動きが速い敵に有効な魔法だ。
グランドバリアは思っていた通り、土の防壁を周囲に展開する防御魔法。今の所あまり使い道はないが、詠唱は「グランドバリア」だけで、直ちに二メートルほどの分厚い防壁で守ってもらえるので、使いやすい魔法ではある。
「お帰りなさい。レベルアップできた?」
洞窟に戻ると、フェイが笑顔で出迎えてくれ、暖かい料理を作って待っていてくれた。
その笑顔を見ると疲れまで吹っ飛び、結婚できて本当に幸せだと実感した。
この日は、お風呂はいいと言ってきたが、僕は彼女をお姫様抱っこして、連続瞬歩で空を走って、彼女を連れて行った。
フェイは、最初は驚き、怖がっていたが、途中から「川がきらきら光っていて素敵」と、空からの景色を楽しんでいた。
その夜は、官能魔法を封印したが、鬼頭刺激耐性がレベルアップしたからか、一回目からフェイは二回も絶頂を迎えた。そして、その二回目の絶頂の直後、僕も絶頂を迎えたのだが、あり得ない程の強烈な快感に襲われた。身体がビクン、ビクンと何度も痙攣して、その都度、射精し、連続四回も出し続けることになって、意識が飛びそうになった。
射精後の余韻漏れではなく、毎回、あの絶頂感が襲ってきて、その快感が重畳され、信じられない程の快感になるのだ。
どうやら、鬼頭刺激耐性のレベルアップで、僕の絶頂の閾値が飛んでもなく上昇していたため、こんなことになったらしい。
気持ちよすぎるのも問題で、鬼頭が敏感になりすぎて動けず、「早く動いて」と催促されてしまうほどだった。
今日は、フェイは癲癇発作状態にはならなかったが、それでもすさまじい痙攣を何度も繰り返し、この日も四回戦までさせられた。
その四回戦目は、僕が三十分近く動きつづけたからか、五回連続で射精しても止まらず、そのあまりの快感に耐えきれず、僕は連続六回目の射精の際、意識喪失することになった。
「健斗、大丈夫」
今度は、フェイが心配してくれているうちに目が覚めたが、もう一度、鬼頭刺激耐性が上がると、おそらく僕は腹上死するに違いない。
僕は『もう遅漏で、フェイも充分に満足しているから』と、これ以上の鬼頭刺激耐性が上がらないように、呪文のように唱え続けた。
魔物に見つからないかと怯えた日々を送らせて良い訳がないし、そもそも人目を避けて生活しなければならないこと自体、間違っている。
山小屋にて、自由に薬草づくりできる環境を彼女に取り戻してあげたい。その思いから、そういう結論となった。
そもそもは、リットとミミの敵討ちしたいという軽い願望に過ぎなかったが、今は、フェイの為に、一刻も早く、あいつらの悪事を世間に暴き、リーダーであるスティーブを刑務所送りにして、『エルデンリング』を解散させねばと、真剣に考えている。
そんな訳で、二人で、食器を片づけると、魔物の森に案内してもらった。
魔物の森は、目の前の滝を上ってすぐの所にあるという話だが、断崖絶壁のため、ぐるっと遠回りして少しずつ上って行かなければならない。
だが、人間は魔物にとって格好の餌。魔物の多くは夜行性だと言うが、昼間活動する魔物も多くいて、昼間だと、発見されやすい。
十五分程で、魔物の入り口に到着したが、その僅かな時間に、五匹もの魔物が襲って来た。
レベル25前後の昆虫型魔物や鳥型魔物だったが、基本能力は全て三桁以下と、僕の能力値と較べれば、問題外に低い。実際、一分もかからず、秒殺して蹴散らせた。
二度目の進化のお蔭か、ダンジョンに潜っていた時より、明らかに強くなっていて、自分の強さに驚くことになった。
その戦闘の際、謎だったSPの意味もなんとなく理解した。魂力、ソールパワーらしい。
襲い掛かってきた時は100だが、徐々に減っていき、勝てないと悟って逃走を図ると大幅に減少し、逃げられないと悟ると、決死の一か八かになるからか、再び半分以上にSPバーが上昇する。そして、体力HPが尽きると、徐々にSPが減少していき、SPがゼロとなった途端、魔物は塵となって魔石を落として消えるのだ。
「凄い、凄い。健斗は、やっぱり、強いね」
魔物の森の入り口で、二匹を相手にして、これまた秒殺してみせると、フェイが拍手してくれた。
「私は、ここまで。この先の魔物の森には、更にレベルが高い魔物ばかりになるので、これ以上は足手まといになるし、薬作りもしないとならないから、ここでお別れ」
「心配だな。道順は分かったから、下まで送っていくよ」
「本当? ありがとう。本当を言うと、魔物にまた襲われるんじゃないかと、怖かったんだ」
そんな訳で、洞窟まで送り届けることにし、その途中で、魔物に襲われた時、どうしていたのかを訊いた。
必死に逃げて、滝や川に飛び込み、水中深く潜って、ひたすら逃げたのだそう。
水の中までは追ってこれないが、鳥系の魔物だと、息継ぎするタイミングを狙って、襲ってきて、爪や嘴で、何度も大怪我して、治癒薬で治療していたとの話だった。
僕は、一刻も早く、レベル70相当の力を身に付けねばならないと、改めて修行に気合いが入った。
フェイと別れると、今度は神速で走り、再び魔物の森の入り口に行き、その森の中に入った。
早速、蛙の魔物に遭遇。ツァトーガという魔物で、レベル32もあり、機動力・精神力は低めだが、攻撃力や防御力、耐久力は1500前後もある。森の外と中とでこんなに強さが違うのかと驚かされた。
それでも、僕の方が強いが、魔法耐性が高く、雷撃も火球も大きくダメージを削れない。刀で切り殺そうとすると、高速に舌で僕を捕えようとしてきて、なかなか近づかせてもらえない。
しかも、切るとねばねばの体液が身体に付着し、その粘液には痺れ毒までついていた。
高価な毒消し薬を飲んで、大事には至らなかったが、仕留めるまで、三十分近くも掛かった。
さっきまでは秒殺だったのに、実力が均衡していくると接戦になり、戦闘時間は飛躍的に伸びるんだと実感した。
でも、甲斐あって、能力レベル11にレベルアップ。スキルは『連続瞬歩レベル1』、魔法は『グラビティレベル1』を獲得した。耐性は毒か痺れだと信じていたのに『鬼頭刺激耐性レベル2』だった。
フェイの名器の前にやはり早漏だと思っていたのが反映されたらしい。あまり遅漏になるのは望ましくないが、レベルアップしてしまったのだから仕方がない。
「ううっ、ワン、ワン」
蛙を倒した直後、近くから犬の鳴き声が聞こえて来た。
急いで駆けつけると、子犬が蜘蛛の糸に絡めとられ、二メートル以上もある蜘蛛の魔物に対峙していた。
子犬は、蜘蛛にやられたのか、右足にざっくりと深い傷を負っている。
それなのに、怯えてはおらず、牙を剥き出しにして、必死に巨大蜘蛛に吠えて威嚇し、抵抗している。
お蔭で、蜘蛛は僕に気づいていないみたいだが、蜘蛛はゆっくりと近づき身体を起こし、毒牙でしとめる態勢をとった。
僕は、子犬を見殺しにできず、一気に飛び込むつもりで跳躍したら、連続瞬歩の影響なのか、信じられない程高く遠くまで飛べてしまった。
それならそれで構わない。丁度、蜘蛛の真上に落ちそうなので、蜘蛛の背中に、深々と愛刀『篠一文字』を突き立ててやった。
その状態で、グルグルと刀を回して、苦しめていると、蜘蛛は、僕を載せたまま跳躍し、僕を地面に振り落としてきて、目が合った。
蜘蛛は目が沢山あるので、目が合ったという表現はおかしいが、正面に対峙できたので、鑑定したみた。
タラテクトという名の魔物の幼体で、レベルは28だが、攻撃力1582と僕と同等で、防御力、耐久力、精神力は1000程度と低いものの、機動力は2391と僕の二倍以上もあった。
機動力が高いと、火球は勿論、雷撃ですら回避される。指さした途端にジャンプして、雷が虚しく地面に当たるだけになる。
近接して、刀で切り刻むしかないが、敵は蜘蛛の糸を穿き出して来て、近づけさせない。何とか糸を掻い潜って、近接しようと試みたが、逆に粘着糸を足に浴び、動きを封じられて、こちらの危機になった。
今だと蜘蛛が飛びかかって来て、刀で何とか毒牙は防いだが、鎌の様な鋭い前足で、身体を切られた。
仕方なく足が火傷するのを覚悟して、足元に向け火球を放ち、糸を溶かし、再び距離をとり、治癒薬を飲んで、火傷用に術式を組んだリジェネを足に掛けて治療したが、無理して近づこうとすれば、地獄行きだと悟った。
さっき獲得した重力魔法を使えれば、対処できそうだが、今は鑑定がつかえないので、使い方が分からない。
そこで指差しフェントで雷撃だと思わせて、蜘蛛に跳躍回避させ、その空中状態を火球で狙い打った。
空中なら絶対回避できないと思っていたのに、蜘蛛は、糸を吐いた反動で、空中でも回避した。
こうなれば、威力はかなり劣ってしまうが、長距離からの鎌鼬攻撃でダメージを与えるしかない。
鎌鼬は前方三十度範囲に放射状に広がっていくので、距離と反比例して威力が減少するが、かなりの広範囲攻撃となり、回避困難となるという読みだ。
両腕を前に突き出した途端、やはり蜘蛛は回避行動をとってきたが、それは想定内で、攻撃範囲外まで退避できず、鎌鼬を食らう事になった。
僕は、放つと同時に、瞬歩で風を追いかけるように飛び込んで距離を詰めていた。刀はまだ届かないが、かなり近接した距離から、二度目の鎌鼬を発動した。
蜘蛛は粘糸を吐こうとしていたので、回避が遅れ、もろに鎌鼬を浴びることになった。
今の僕の鎌鼬は、レベルMaxなので、これで瀕死だろうと思ったが、それでも、必死に木に飛び退いてきた。SPは減っていないので、逃走しようとしているのではなく、反撃を考えての退避行動だ。
でも、動きは明らかに鈍っている。雷撃を当てて感電させて地面に落とし、後は刀で滅多切りしてやった。
これまた二十分にも及ぶ長期戦になったが、止めを刺すことができた。
子犬を助けようと近づくと、「ううっ」と唸って凄い形相で睨んできて、よしよしと手を出すとガブリと噛まれた。怖い思いをしたので仕方がない事だし、ヒールで治療できるので、噛ませたまま、蜘蛛の糸を取ることにした。
すると、僕の意図が分かったのか、噛むのをやめ、今度は血が出ている僕の手をぺろぺろと舐め始めた。
蜘蛛の糸は、ねばねばで、解放するのは容易でなかったが、それでも悪戦苦闘して子犬の毛から、蜘蛛の糸を丁寧に外し、足もヒールで治療してあげた。
子犬は、クゥーンとすり寄って感謝してきたが、「こんな怖い所に来るんじゃないぞ」とパンと手を叩いて、驚かせ、逃がしてあげた。
子犬はそれでも、僕を見つめて、なごり惜しそうにしていたが、僕の意図を理解してくれたのか、さっと走り去っていった。
「おいおい、そっちじゃない。そっちはもっと怖い魔物がいるから」
森の奥へと走り出したので、慌てて追いかけたが、子犬は神速を持つ僕以上に速く、あっという間に見えなくなった。
そして、僕の目の前には、巨大な蛇の魔物が見下ろしている。不用意に森の奥に走ったので、胴回り六十センチ近く有りそうな蛇の魔物が、鎌首を持ち上げて来たのだ。
鑑定すると、サーペントというレベル32の魔物で、基本能力は僕より全てが劣っていた。
これなら問題なしと、不用意に挑んだのが失敗だった。噛みつかれなければ、毒状態にならないと思い込んでいたが、毒液を吐くこともできたのだ。僕はその毒液を浴び、苦しむことなった。
勿論、毒消しを使って治療し、十五分もかからず止めを刺したが、毒消しを使っても、暫くは毒状態は継続して、体力を大きくけずられることになった。
その後、蛙、蛙、蜘蛛、蛇、蛙と五匹を倒し、本日二度目のレベルアップ。強敵揃いで、かなりの疲労したが、七匹の魔物を倒しただけでレベルアップするなんて、レベルが三倍近い格上を倒すと獲得経験値もとんでもなく大きくなるんだと実感した。
このレベルアップにより、連続瞬歩は使い方が分からない内にレベル2となり、毒耐性もレベル2となり、グランドバリアという魔法を習得した。
滝に戻り、スキルや魔法を鑑定してみると、連続瞬歩は、跳躍力をあげるだけでなく、空中を蹴って移動できるという術だった。空中に飛ぶと、回避困難になる問題があったが、これを使えば、蜘蛛がしていた様な空中で方向転換等の回避が可能となる。
早速試してみたら、垂直に空中を上っていくこともでき、十五分も掛けて迂回した魔物の森の入り口まで、僅か一分で到着できた。これなら積極的に空中戦を挑む事すらできる。
グラビティは発動アクション不要な位置指定型の上級重力魔法で、頭に追い浮かべた任意指定位置の半径二メートル以内の敵の体重を二倍に重くできる。しかも、重複して五回まで重ねることができ、五回連続発動すると、なんと三十二倍。五十キロだった体重が、一トン半以上の重さとなって、全く動けなくなる。
発動後、十二分で解除されるが、効果範囲は半径二メートルもあり、発動の気配も悟られないので、動きが速い敵に有効な魔法だ。
グランドバリアは思っていた通り、土の防壁を周囲に展開する防御魔法。今の所あまり使い道はないが、詠唱は「グランドバリア」だけで、直ちに二メートルほどの分厚い防壁で守ってもらえるので、使いやすい魔法ではある。
「お帰りなさい。レベルアップできた?」
洞窟に戻ると、フェイが笑顔で出迎えてくれ、暖かい料理を作って待っていてくれた。
その笑顔を見ると疲れまで吹っ飛び、結婚できて本当に幸せだと実感した。
この日は、お風呂はいいと言ってきたが、僕は彼女をお姫様抱っこして、連続瞬歩で空を走って、彼女を連れて行った。
フェイは、最初は驚き、怖がっていたが、途中から「川がきらきら光っていて素敵」と、空からの景色を楽しんでいた。
その夜は、官能魔法を封印したが、鬼頭刺激耐性がレベルアップしたからか、一回目からフェイは二回も絶頂を迎えた。そして、その二回目の絶頂の直後、僕も絶頂を迎えたのだが、あり得ない程の強烈な快感に襲われた。身体がビクン、ビクンと何度も痙攣して、その都度、射精し、連続四回も出し続けることになって、意識が飛びそうになった。
射精後の余韻漏れではなく、毎回、あの絶頂感が襲ってきて、その快感が重畳され、信じられない程の快感になるのだ。
どうやら、鬼頭刺激耐性のレベルアップで、僕の絶頂の閾値が飛んでもなく上昇していたため、こんなことになったらしい。
気持ちよすぎるのも問題で、鬼頭が敏感になりすぎて動けず、「早く動いて」と催促されてしまうほどだった。
今日は、フェイは癲癇発作状態にはならなかったが、それでもすさまじい痙攣を何度も繰り返し、この日も四回戦までさせられた。
その四回戦目は、僕が三十分近く動きつづけたからか、五回連続で射精しても止まらず、そのあまりの快感に耐えきれず、僕は連続六回目の射精の際、意識喪失することになった。
「健斗、大丈夫」
今度は、フェイが心配してくれているうちに目が覚めたが、もう一度、鬼頭刺激耐性が上がると、おそらく僕は腹上死するに違いない。
僕は『もう遅漏で、フェイも充分に満足しているから』と、これ以上の鬼頭刺激耐性が上がらないように、呪文のように唱え続けた。
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