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シーズン5-ショートバケーション編

127-それでも仕事はする

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「ワープ終了、機関に問題なし」
「了解。グラームプライムⅡへの降下軌道へ入る」

二日後。
私たちはグラームプライムⅡへと来ていた。
太陽に一番近いこの星は、惑星の半分の空を金属で覆う逆半ダイソン球みたいなことをしていた。
よって、アドアステラが降りれるのは、夜である場所だけ。
昼の場所に向かって装甲/発電板が移動するから、必ず夜の場所にしか降りれないのが難点だけど.....流石はリゾート星系で、夜は繁華街に暖簾替えして賑わうそうだ。

「......興味はないんだが」

繫華街というと、大人のお店が脳裏に浮かぶ。
私は全く興味はないけど、みんなはいずれそういうのに興味を持つのかもしれない。
そうなったらちょっと、嫌だな.....

『こちらエンフォース所属、アドアステラ! 傭兵ギルドの専用ドックを借りたい』
『こちら傭兵ギルド。只今照合中.......把握した、ゴールド傭兵カル・クロカワ。貴君の来訪を歓迎する!』

ジスト星系では困ったドック場所も、ここでは特に困らない。
それに、ゴールドランクになったことで、ギルド所有のドックを優先的に使えるようになったのも大きい。

「じゃあ、留守番よろしく」
『お任せください』

シトリンに留守番を任せ、私たちは地上に降りる。
低い位置に建造されたドックからは、光り輝くビルの灯りが見えていた。
サイバーパンクでよく見るネオンの光ではないが、それでもこの都市が栄えている証ではあると私は思った。

「おい、あれって.....」
「ああ、ゴールドの――――」

降りた私たちは、一斉に注目を浴びる。
当然だが、ギルドランキングは、他所から移動してきた人間がその星系のどこかでギルド情報にアクセスした瞬間に更新される。
だから、私たちがグラーム星系に入った瞬間にゴールドランクのランキングに私が出現したことになる。
シルバーとは一味違うゴールドランク傭兵は、プラチナ程とは言えないが注目の対象になる。

「こんにちは」
「あ.....はい、こんにちは」

仮面に驚いたのか、受付嬢は一瞬目を見開いて硬直するものの、すぐにこちらを真っすぐ見てきた。
流石は傭兵ギルド所属、落ち着いている。

「ゴールド向けの依頼を見せてほしい」
「かしこまりました、護衛任務、討伐任務、採取任務のどれになさいますか?」
「討伐任務で頼む」
「はい」

転送された依頼リストを眺め、受付から離れてみんなと相談する。

「どうする?」
「全部受けてしまい、一日で片づけるのはいかがでしょうか」
「それもいいな.....」
「おいおい、一日で全部片づける? バカ言ってんじゃねえよ!」

その時。
会話を聞かれていたのか、禿げたおっさんが突っかかってきた。

「人のやり方に口を挟むのは感心しないな」
「そうやって死んだ奴を俺は何人も見たぜ! ゴールドに上がったくらいで調子に乗るんじゃない」

もしかして偉い人?
そう思ってプロフィールを参照するが、ブロンズだった。

「なんだ、万年ブロンズの戯言か....」
「何だと、この野ろ――――いてててて!!」

ファイスに速攻で取り押さえられていた。
とはいえ、彼の意見を無碍にするのも可哀想だ。

「成功者に突っかかるのはいいが、それでお前の人生は何もよくならないぞ」
「うるせぇっ......俺だって、お前と同じ環境にいりゃ.....!」
「人生は交換できないからな、それより自分を見つめなおせ」
「........見つめなおして、それで良くなるならとっくに上手くいってんだよ!」

ダメだな、こりゃ。
傭兵の質が悪いわけだ、物事を軽く見る人間が多すぎるんだろう。

「まあ、命を大事にするのは分かった。お前のぼろ船と違って高性能品だが、命は大切にしないとな」

正直、傭兵に嫌われようがそんな事はどうでもいい。
私はそう言うと、受付嬢のもとへ向かう。

「討伐依頼を受ける、送信したものをすべて受理してくれ」
「あ....はい」

まさか、ここで起こした事件が、後々意外な縁になってめぐってくるとは、私は微塵も思わないのであった.....
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