上 下
66 / 158
シーズン3-ジスト星系編

066-虎穴へ

しおりを挟む
そんなこんなで、一日が終わった。
海賊の拠点を五つほど潰した私は、シトリンと共に解析作業に入る。
まずは、他の拠点の特定。
これは割とすぐに終わった。
海賊船が普段通らない空白地帯は、確実に別の海賊がいるからだ。

「次は、データの解析だな」
『はい』

キャッシュデータや暗号化データを、既存の最適化・暗号解読システムに当てはめて紐解いていく。
そうすることで、略奪品のリスト、艦船の横流しを行った場所、違法薬物の販売ルートなどが出て来た。
だが、これだけではない。
更にセキュリティの高い領域へとハッキングを仕掛け、情報を抜き取る。
すると、重要な会話ログがいくつか出て来た。

『どうして『積荷』が重要なんだ?』
『それがすげえ高価な品なんだと』
『じゃあ、カルとかいうやつの船を襲えば良いんだな?』
『そうだ』

間違いない。
こいつらは、誰か上の組織を持っている。
私の情報の共有が早すぎるからだ。

『.........の野郎によると......には...がある。既にフォービュ...の海賊どもには......相談済みだ......メナスから、救援が......』

このログは壊れていて、ほとんど解読できなかった。
しかし、いくつか固有名詞を読み取れたので、考察する。
どこかの誰かから情報を得た海賊達は、フォービュラ星系に連絡を入れ、そこから海賊国家カルメナスの救援がやってくると。

「このままだとまずいな」

私はシラードに秘匿通信を行う。

『どうした? 傭兵』
「カルだ、フォービュラ星系に一度移動する」
『それは構わないが...どうした?』
「海賊の戦力が恐らくフォービュラに集結している。そこを叩き、情報を集める予定だ」
『...分かった、こちらもフォービュラ側のゲートに戦力を集めようじゃないか。死ぬなよ』
「ああ」

通信は切れた。
シラードは相当私に信用を置いてくれているようだ。
言葉こそ乱暴だが、私にはそれがわかる。
どこにそんな要素があっただろう?

「これよりフォービュラのスターゲートへとワープを開始する」
「「「「了解」」」」

その場にいた全員が頷く。
アドアステラはフォービュラのスターゲートへと回頭する。
そして、最高速まで加速を続け...ワープへと入る。

「変、ですね」
「どういう事だ?」

ノルスが不意に口にする。
彼はヘッドフォンを、感覚器官である耳たぶに当てた状態だ。

「この時間にしては、フォービュラ側のシップスキャンに反応が多いです」
「それは、伯爵が船の配備数を増やしたからだろう」

今さっきの通話だが、もともと配備数を増やす計画はあったのだろう。
そう思った私だったが、ノルスは違うと首を振る。

「多いなんてものではないです、数百...?」
「...ッ! 総員戦闘配備!」

判断は早かった。
こういう経験はSNOの時代でもよくあった。
ゲート前に船が大量にいて、通ろうとする船をインターディクターで捕まえて、タコ殴りにするのだ。
酷い場合だと、ゲート前で静止して起動する瞬間に爆弾で吹き飛ばすという悪質なものまであった。
ワープに入ってしまった以上、ダメージをなるべく減らした上で逃げる方法を模索するしかない。

『ワープフィールド離脱まで、残り5秒、4、3、2、1...』

そして...アドアステラは通常空間へと躍り出る。
ゲート前には、夥しい数の船が待ち構えていた。

『推定艦船数、121。残骸がデブリとして浮遊しています、接触しないように...』
「CJD起動! ゲートに飛び込む!」
「はっ!」

私は退却より、進むことを選んだ。
このまま戦うよりは、伯爵の星系軍との挟み撃ちにした方がいい。
包囲戦ができるほど頑丈な船でもないし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドレスを着たら…

奈落
SF
TSFの短い話です

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。

広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ! 待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの? 「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」 国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男
SF
東京の大学に通っていた普通の学生、三星治明(みほし はるあき)はある日突然、異世界に転生してしまう。 しかし、転生先はファンタジーの溢れる世界などではなく、シークトリアという名前の銀河に跨る星間国家。 しかも、治明は人間ではなくロボットに転生していたのだった。 シークトリアを含めて全部で七つある星間国家のうちの三つが連合軍を形成してシークトリアに攻め込んできており、シークトリアはプレトニアと呼ばれる星間国家と同盟軍を結成し、これに対抗している。 そんな情勢の中開発された人型のロボット兵器、『Chronus』。 そのパイロットとして開発・製造されたロボ、『Clavis』に転生したハルアキは、Chronus…クロノスに宿る親友の魂を見つけ、前世の親友と共に戦いへと身を投じる。 更新は月、水、金の週三日になります。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...