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シーズン3-ジスト星系編
063-集結する悪
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「断る」
私は、その依頼を蹴った。
まさか断られるとは思っていなかったのだろう、シラードの顔が硬直する。
「......お前、調子に乗り過ぎだろう」
「いいや、これは俺だけの問題では無い」
私は別にお金が問題じゃ無いので断ったけれど、他にも問題はある。
今からそれを、説明していこうと思う。
「俺はシルバー傭兵に過ぎない。この報酬は、俺には過分だ。よくない前例を作ることになる」
「そんなものは、伯爵の権限で揉み消せば良い」
「くわえて、傭兵ギルドの面子にも関わる。俺は奴らとそこまで仲は良くないが、それでも傭兵ギルドとしては、ゴールドやプラチナクラスの傭兵を差し置いて俺を指名したという事実は、不快に映るだろうな」
ランク制は、明確な強さの指標だ。
だからこそ、それに付随する責任と信用がある。
「シラード殿も分かっているように、どんなに強い傭兵でも一人では決して勝てない」
これはお兄ちゃんの受け売りだ。
『一人で戦おうとするな、腐れ縁でも、利害の一致でも良い。いざという時、背中を合わせて戦えるようなヤツを作れ』
とお兄ちゃんはいつも言っていた。
だからこそ、私はそれに従う。
「俺を優先して、傭兵ギルドからの信用を失う必要はない。結果は俺が示すから、その時初めて俺を評価して欲しい」
「ハッ...口先だけは勇敢だな」
シラードは一瞬呆れたように笑ったが、直ぐに頷いた。
金を受け取らないという私の謎の行動に戸惑ったが、すぐに考えを改めたようだ。
「そこまで言うなら、やってみろ。ただし死ぬなよ、ディーから恨まれる」
「ああ」
私も頷く。
まあ、土着の海賊くらいなら、ささっと片付ければ良いよね。
流石にカルメナスはこの件に介入してこないだろうし。
その頃。
ジスト星系の隣接星系フォービュラに、海賊の勢力が集結しつつあった。
彼らが根城にしている、小惑星に偽装されたアステロイド岩塊。
その周囲には、数百の艦船が浮遊していた。
船を家代わりとする彼等にとって、拠点とは補給基地に過ぎない。
そこに船が集まっているということは、何かしらの目的があるということである。
彼等は待っているのだ、首領の言葉を。
そして。
『よくぞ集まってくれた、兄弟!』
通信回線に、野太い声が響く。
ジスティアン星座を管轄する、カルメナス所属の海賊アローグだ。
『おいおい、俺も忘れるなよ』
『ああ、勿論だぜ、クダイの兄貴』
カルを逃した派遣海賊...クダイもそこに居た。
彼等は皆、カルメナスの主人の命令でこの星系にいるのだ。
『俺たちは幸運だ、何しろ...あのスリーパーの兵器が、偶然手に入ったんだからな!』
『アルダネイト様は、この件に関しては最大級の応援をすると言ってるぜ、本国から派遣艦隊200隻が派遣されてくる、あの装置を使ったあと、派手に暴れ回るぞ!』
『『『『オオオオオオオオオオ!!』』』』
海賊たちは奮起する。
スリーパーの兵器といえば、どれも国宝級である。
どんな効果は首領とクダイしか知らないものの、略奪や誘拐に有利なものであるのは間違いない。
だが、彼等は気づいていなかった。
そのスリーパーの兵器よりも強力な艦船が、既にジスト星系に潜んでいることを。
大規模なカルメナスの動きを察知した、TRINITY.の本隊がジスト周辺星系の包囲に動いていることを。
私は、その依頼を蹴った。
まさか断られるとは思っていなかったのだろう、シラードの顔が硬直する。
「......お前、調子に乗り過ぎだろう」
「いいや、これは俺だけの問題では無い」
私は別にお金が問題じゃ無いので断ったけれど、他にも問題はある。
今からそれを、説明していこうと思う。
「俺はシルバー傭兵に過ぎない。この報酬は、俺には過分だ。よくない前例を作ることになる」
「そんなものは、伯爵の権限で揉み消せば良い」
「くわえて、傭兵ギルドの面子にも関わる。俺は奴らとそこまで仲は良くないが、それでも傭兵ギルドとしては、ゴールドやプラチナクラスの傭兵を差し置いて俺を指名したという事実は、不快に映るだろうな」
ランク制は、明確な強さの指標だ。
だからこそ、それに付随する責任と信用がある。
「シラード殿も分かっているように、どんなに強い傭兵でも一人では決して勝てない」
これはお兄ちゃんの受け売りだ。
『一人で戦おうとするな、腐れ縁でも、利害の一致でも良い。いざという時、背中を合わせて戦えるようなヤツを作れ』
とお兄ちゃんはいつも言っていた。
だからこそ、私はそれに従う。
「俺を優先して、傭兵ギルドからの信用を失う必要はない。結果は俺が示すから、その時初めて俺を評価して欲しい」
「ハッ...口先だけは勇敢だな」
シラードは一瞬呆れたように笑ったが、直ぐに頷いた。
金を受け取らないという私の謎の行動に戸惑ったが、すぐに考えを改めたようだ。
「そこまで言うなら、やってみろ。ただし死ぬなよ、ディーから恨まれる」
「ああ」
私も頷く。
まあ、土着の海賊くらいなら、ささっと片付ければ良いよね。
流石にカルメナスはこの件に介入してこないだろうし。
その頃。
ジスト星系の隣接星系フォービュラに、海賊の勢力が集結しつつあった。
彼らが根城にしている、小惑星に偽装されたアステロイド岩塊。
その周囲には、数百の艦船が浮遊していた。
船を家代わりとする彼等にとって、拠点とは補給基地に過ぎない。
そこに船が集まっているということは、何かしらの目的があるということである。
彼等は待っているのだ、首領の言葉を。
そして。
『よくぞ集まってくれた、兄弟!』
通信回線に、野太い声が響く。
ジスティアン星座を管轄する、カルメナス所属の海賊アローグだ。
『おいおい、俺も忘れるなよ』
『ああ、勿論だぜ、クダイの兄貴』
カルを逃した派遣海賊...クダイもそこに居た。
彼等は皆、カルメナスの主人の命令でこの星系にいるのだ。
『俺たちは幸運だ、何しろ...あのスリーパーの兵器が、偶然手に入ったんだからな!』
『アルダネイト様は、この件に関しては最大級の応援をすると言ってるぜ、本国から派遣艦隊200隻が派遣されてくる、あの装置を使ったあと、派手に暴れ回るぞ!』
『『『『オオオオオオオオオオ!!』』』』
海賊たちは奮起する。
スリーパーの兵器といえば、どれも国宝級である。
どんな効果は首領とクダイしか知らないものの、略奪や誘拐に有利なものであるのは間違いない。
だが、彼等は気づいていなかった。
そのスリーパーの兵器よりも強力な艦船が、既にジスト星系に潜んでいることを。
大規模なカルメナスの動きを察知した、TRINITY.の本隊がジスト周辺星系の包囲に動いていることを。
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