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シーズン1-ブライトプライム編
033-決闘
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そして、決闘の日がやって来た。
観戦者はおらず、それぞれが控え室で準備をしていた。
「いいか、あいつは俺の贈ったニケを持っているが、それだけだ。射撃の腕前はそこまでではないし、一気に肉薄して...」
「若様、そこまで言わなくとも分かります。大体、シルバー程度に今更遅れは取りませんよ」
東の控室では、アレンスターと筆頭騎士ディラス・ハーネスがヒソヒソと会話をしていた。
その逆側、西の控室でも、
「主人、本当に勝てるのでしょうか?」
「勝ち負けはどうでもいいかな」
「勝って頂けなければ、一族の掟で自分はあの方にお仕えしなければならなくなります」
「それは...うん、頑張るよ」
そして、二人は堂々と訓練場へと足を踏み出す。
「面妖な仮面を....シルバー程度が、闇のヒーローにでもなったつもりか?」
「.......」
ディラスは剣を抜く。
刃は白く輝くエネルギー.....というわけではなく、普通の剣だ。
ただし、刃は限界まで磨き抜かれた特殊金属であり、王国直属の騎士に呑み与えられ製造が許可される特別なものだ。
「(奴は銃を持っているが、王国の戦士は銃などには頼らぬ。その力の真髄を見せてやろう――――)」
直後、ディラスは一気に飛び出す。
そして、神速の一撃にて仮面を斬り飛ばすべく、剣を振るう。
「――――遅い」
「何ッ!?」
カルはそれを、半歩退いて躱す。
「馬鹿な.....まさか、この一撃を躱すとはな.....」
「フン」
しかし、カルの内心は焦りと怒りに満ちていた。
「(お、お兄ちゃんの選んだルックスをバカにしやがってぇえええ....でも、これ勝てるかな......)」
仮面を貶されたカルは怒り狂っていたが、そもそも初撃を避けられたのは、ディラスが自ら踏み込みからの肉薄に入ったからだ。
「(次はどう来る.....!?)」
逆袈裟斬りを回避されたことで、ディラスの姿勢は不安定だ。
ディラスは相手に銃を抜かせる暇を与えてしまった事に焦りを感じていた。
だが。
「なっ!?」
カルはディラスの襟首をつかんだまま足払いを掛け、そのまま床に叩き付けた。
だがディラスも、受け身を取ってから即座に反転し、カルに切っ先を突きつけるべく踏み込む。
「(ヤバイ!)」
カルは慌ててニケを抜き、銃を乱射する。
ディラスの隙を正確に撃ち抜いたはずのそれは、ディラスの剣で容易に弾かれた。
「(ビームも弾けるのか....)」
カルは慌てた。
このままでは防戦一方である。
「覚悟!」
「っ!!」
懐に潜り込まれたカルは後退し、ニケを雑にしまってカルセールを抜く。
「(殺さないように狙っている暇はない....!)」
「終わりだ!!」
ディラスが後退したカルに迫る。
もうカルは迷わなかった。
「すまん!」
「ッ!?」
利き手ではない左手に握られたカルセールはしかし、的確にディラスの眉間を狙う。
そして、引き金を引いた。
銃身に流れていた赤い光が銃口付近に収束し、発射と同時にシリンダーが回転する。
銃口から放たれた光線を見て、ディラスもまた時間が止まるような恐怖を覚えた。
「(な、なんだあの武器は...銃は一つではなかったのか...いやそんなことよりも! あれを防がねば俺は死ぬ...間違いない!)」
ディラスの意識はレーザーの先鋒に集中される。
回避することもできるが、ディラスは先程回転するシリンダーを見ている。
恐らく複数装填可能な小型レーザー砲ともいえる代物。
「ハァアアアアアアアアッ!! ヌゥウウウン!!」
ディラスは全力の一撃にて、レーザーを受け止め、数瞬の間に幾度となく攻防を繰り広げ、遂には弾くことに成功した。
だが、弾かれたレーザーは部屋に張られたシールドを貫通し、天井に小さな穴を開けて空高く消えていった。
「ゼェ...ハァ.........」
ディラスは視界が歪むのを感じた。
必殺の一撃を防いだことで、気が緩んだのだ。
そして、そのまま倒れ込んだ。
「......お、俺の勝ちだ」
「あ、ああ...」
いまいち納得のいっていない様子のアレンスターだったが、直後に戦慄することとなる。
地面に落ちた剣の腹に当たる部分にヒビが入り、そのまま折れたのだ。
「か、勝ちは勝ちだな...」
カル側の武器に使用制限を掛けなかった自分が悪いため、アレンスターはただ負けを認めることしか出来なかった。
観戦者はおらず、それぞれが控え室で準備をしていた。
「いいか、あいつは俺の贈ったニケを持っているが、それだけだ。射撃の腕前はそこまでではないし、一気に肉薄して...」
「若様、そこまで言わなくとも分かります。大体、シルバー程度に今更遅れは取りませんよ」
東の控室では、アレンスターと筆頭騎士ディラス・ハーネスがヒソヒソと会話をしていた。
その逆側、西の控室でも、
「主人、本当に勝てるのでしょうか?」
「勝ち負けはどうでもいいかな」
「勝って頂けなければ、一族の掟で自分はあの方にお仕えしなければならなくなります」
「それは...うん、頑張るよ」
そして、二人は堂々と訓練場へと足を踏み出す。
「面妖な仮面を....シルバー程度が、闇のヒーローにでもなったつもりか?」
「.......」
ディラスは剣を抜く。
刃は白く輝くエネルギー.....というわけではなく、普通の剣だ。
ただし、刃は限界まで磨き抜かれた特殊金属であり、王国直属の騎士に呑み与えられ製造が許可される特別なものだ。
「(奴は銃を持っているが、王国の戦士は銃などには頼らぬ。その力の真髄を見せてやろう――――)」
直後、ディラスは一気に飛び出す。
そして、神速の一撃にて仮面を斬り飛ばすべく、剣を振るう。
「――――遅い」
「何ッ!?」
カルはそれを、半歩退いて躱す。
「馬鹿な.....まさか、この一撃を躱すとはな.....」
「フン」
しかし、カルの内心は焦りと怒りに満ちていた。
「(お、お兄ちゃんの選んだルックスをバカにしやがってぇえええ....でも、これ勝てるかな......)」
仮面を貶されたカルは怒り狂っていたが、そもそも初撃を避けられたのは、ディラスが自ら踏み込みからの肉薄に入ったからだ。
「(次はどう来る.....!?)」
逆袈裟斬りを回避されたことで、ディラスの姿勢は不安定だ。
ディラスは相手に銃を抜かせる暇を与えてしまった事に焦りを感じていた。
だが。
「なっ!?」
カルはディラスの襟首をつかんだまま足払いを掛け、そのまま床に叩き付けた。
だがディラスも、受け身を取ってから即座に反転し、カルに切っ先を突きつけるべく踏み込む。
「(ヤバイ!)」
カルは慌ててニケを抜き、銃を乱射する。
ディラスの隙を正確に撃ち抜いたはずのそれは、ディラスの剣で容易に弾かれた。
「(ビームも弾けるのか....)」
カルは慌てた。
このままでは防戦一方である。
「覚悟!」
「っ!!」
懐に潜り込まれたカルは後退し、ニケを雑にしまってカルセールを抜く。
「(殺さないように狙っている暇はない....!)」
「終わりだ!!」
ディラスが後退したカルに迫る。
もうカルは迷わなかった。
「すまん!」
「ッ!?」
利き手ではない左手に握られたカルセールはしかし、的確にディラスの眉間を狙う。
そして、引き金を引いた。
銃身に流れていた赤い光が銃口付近に収束し、発射と同時にシリンダーが回転する。
銃口から放たれた光線を見て、ディラスもまた時間が止まるような恐怖を覚えた。
「(な、なんだあの武器は...銃は一つではなかったのか...いやそんなことよりも! あれを防がねば俺は死ぬ...間違いない!)」
ディラスの意識はレーザーの先鋒に集中される。
回避することもできるが、ディラスは先程回転するシリンダーを見ている。
恐らく複数装填可能な小型レーザー砲ともいえる代物。
「ハァアアアアアアアアッ!! ヌゥウウウン!!」
ディラスは全力の一撃にて、レーザーを受け止め、数瞬の間に幾度となく攻防を繰り広げ、遂には弾くことに成功した。
だが、弾かれたレーザーは部屋に張られたシールドを貫通し、天井に小さな穴を開けて空高く消えていった。
「ゼェ...ハァ.........」
ディラスは視界が歪むのを感じた。
必殺の一撃を防いだことで、気が緩んだのだ。
そして、そのまま倒れ込んだ。
「......お、俺の勝ちだ」
「あ、ああ...」
いまいち納得のいっていない様子のアレンスターだったが、直後に戦慄することとなる。
地面に落ちた剣の腹に当たる部分にヒビが入り、そのまま折れたのだ。
「か、勝ちは勝ちだな...」
カル側の武器に使用制限を掛けなかった自分が悪いため、アレンスターはただ負けを認めることしか出来なかった。
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