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シーズン5-ビージアイナ決戦編

108-餌の時間

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こうして、順調にビージアイナ戦線を進めていた俺たちではあったが...
スターゲートをガン無視して襲ってくる敵も偶に存在する。
それが、この一例であった。

「他に手段が無かったとはいえ、流石に頭がどうかしているとしか思えないな...」

なぜかと言えば、防衛側は周辺からいくらでも戦力をかき集められるのに対し、攻撃側はゲートがないために数は有限である。

「で、総数は?」
『3200ですね、主力艦ではありませんが超大型艦がいます』
「やっぱりバカだな」

帰還の見込みもないのに大型艦を投入するとは...
くわえて、こちらはジャンプドライブによって50星系くらいを範囲としてジャンプが出来る。
そこからプリメイドジャンプゲートとアクセラレートゲートを経由しジャンプを続ければ、数時間で応援が到着出来る。
司令部との通信もリアルタイムで行えるのだ。
あの艦隊程度では勝てる術があるとは到底思えない。

「よし、ルル」
「はいっ」
「ネム」
「は、はいっ!」

楽勝っぽいので、俺は二人に告げる。

「ネム、お前は巡洋艦隊の指揮を任せよう、ルル、お前はスワロー・エッジに乗ることを許可する、ユリシーズにて天空騎士団の皆と共に戦え」
「「はい!」」

二人は最近頑張っているが、実力を示せない事に苛立っている様子だった。
だからこそ、俺は二人に出番を与えたい。
前線に立つことの多いアインスやツヴァイは、換えの効く存在に過ぎないが、この二人は違う。

「いいか、危険な事はするな...ああ、戦うことは既に危険か。...もし覚醒を切る局面になったら、必ず逃げに転じるんだ。艦はいくら沈んでも構わないが、お前達は...俺の妻なんだろう?」
「はい、分かりました!」
「きもに、命じます!」

二人の、決死というにはあまりにも可愛い覚悟を目にして、俺は顔を厳しいものへと変えた。

「よし、艦隊集結開始! 四時間後には出発する!」
『天空騎士団に招集を掛けました。ルートはどうされますか?』
「ジャンプフィールドジェネレータで、最も遠い星系に艦隊をジャンプさせ、そこから最短ルートを通れ」
『了解』

今回はナージャには首都防衛に努めてもらう。

「頼むぞ」
『その代わり、デート』
「ああ」

彼女が人間の恋愛行動について学びたいというので、ある程度は付き合ってやるつもりだ。
流石に肉体関係を迫られたら逃げるつもりだが...






数時間後。
Noa-Tun連邦領土内『ZC-XFR』星系に鎮座するビージアイナ艦隊旗艦『クーデルハイド』では。
艦長であり、総指揮官であるハーマン・アーラウェイ伯爵は、不気味な静けさに不安を覚えていた。

「ダメです、完全に通信が遮断されています」
「レーダー感度良好、ただし周辺に敵影なし」
「何をしている...? 我々は、領土内に陣取っているのだぞ...?」

ハーマン艦長が警戒心を露わにする中、それは起きた。
レーダーが、新たに出現した対象を示す音を上げたのだ。

「何だ...何が起きている!?」
「分かりません、急に艦隊内に不明な艦船が出現!」

直後。
艦隊を綺麗に覆うような形で重力以上が発生し、それを行った船は合流する事なく各個に分散、ワープアウトした。

「追え、ラッセン艦隊を五分隊に分け、追撃開始せよ」
「か、閣下」
「どうした? 何か問題が発生したか?」

ハーマンは滅多に口答えをしない部下の言葉に耳を傾ける。

「ワープが出来ません、正確には、ワープドライブの次元回廊が構築できないのです」
「何っ、まさか!」
「レーダーに感あり、ワープではない!」

その時、艦隊の後方に小型艦、凡そ300隻が瞬時に出現した。

「敵艦隊、ミサイル、もしくは魚雷らしき投射物を発射!」
「げ、撃墜するのだ!」

一瞬平静を失いかけたハーマン艦長だったが、すぐに正気を取り戻し、撃墜するように命令する。
だが、もう遅い。
発射された時点で撃墜されていなければならないそれを、通常の旋回速度の砲台で撃つことは不可能であった。
艦隊の中央で、複数の爆発が巻き起こる。

「ぐ、おおおお!!」

衝撃波で艦列が乱れ、クーデルハイドもまた衝撃波をもろに受けて大きく傾く。
更に二発目、三発目が着弾し、

「クーデルハイド、シールド出力が大幅に低下!」
「友軍の61%をロスト!!」

シールドが耐えられなかった小・中型艦船の殆どが残骸へとなり果てた。

「反撃開始! あの艦隊に向けて砲撃を!」
「ほ、砲撃開始!」

砲撃が開始されるが、既に爆撃艦隊はワープに入っており、射撃が到達する前に消える。
体勢を立て直そうとハーマン艦長が指示を出そうとしたとき、再びアンノウンターゲットの増加を示すレーダーアラートが響く。

「艦隊直上に敵艦隊出現!」
「更に、艦隊右舷後方に大型艦を含む艦隊が出現!」

こうして、局面――――否、「調理」の過程は最終過程へと移ったのであった。
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