61 / 186
シーズン2-クロトザク終戦
059-異空間決戦
しおりを挟む
一週間後。
Noa-Tun支配領域外縁部。
そこには、大艦隊が集結していた。
艦隊の前に在るのは、月ほどの大きさがあるワームホール。
「よく見つけたな、こんなもの」
『以前より逃走するドローンの航跡を辿っておりまして、その全ての交点にコレがありました!』
「よくやった」
『ふふん!』
ドローンを派遣してNoa-Tunに損害を与えた謎の存在。
それを探るため、シンはここに大艦隊を派遣した。
主力となるのは、完成した攻城戦艦「アヴェンジャー」。
その威容は、巨大なワームホールの前でも全く揺るがぬ程であった。
周囲を固めるのは、同じく再建を経て完成した戦艦「シンビオシス」六隻。
さらに艦隊の上下に、八の字と逆八の字の形で整列しているのは、戦略護衛戦艦「ガウェイン」十隻。
アヴェンジャーは形容しがたい形状だが、ガウェインは球体関節人形の腕のような形状をしており、SSCのプレイヤーからは「イモムシ」と呼ばれる始末だった。
『中・小型艦隊、ジャンプインします』
先んじて到達していた工作フリゲートであるバックドアがジャンプピンガーを展開し、それに合わせてアコライト・エクサシズム・ブラインドファイス艦隊と、ジャンプスパイダー・ツインフェイト・ダブルエッジ・シンフォニア艦隊がジャンプしてくる。
最後に、角ばった艦....艦載機支援型母艦「ユリシーズ」。
「よし...全艦整列!」
『整列完了します』
全ての艦が、所定の位置に着く。
美しいその整列は、遠目から見れば鋼の鳥のようであった。
「オーロラ、これからワームホールの内部へ向けて最終兵器を使用する。射撃が終了したら、全ての艦を一斉に突入させろ」
『しかし.....過剰な熱量の流出を起こせば、ワームホールが閉じてしまうのでは?』
「そうなったら万々歳、だろう?」
『.....了解』
アヴェンジャーの前面部に、膨大なエネルギーが収束していく。
アヴェンジャーの持つ最終兵器、『ランサー:オーロラ・グランツ』である。
大陸級の持つ『オーロラ・グランツ』を旗艦級用に最適化したものであり、射撃直後にキャパシターが低下して動けなくなる弱点を持つ。
「発射!!」
眩い光が、暗い宇宙を明るく照らす。
大気があれば耳を劈くような轟音を立てて、オーロラ・グランツが世界を緑黄色の光と、宇宙の闇に分かつ。
ワームホールへと直撃したオーロラ・グランツは、その中へと吸い込まれていく。
数秒経ち、オーロラ・グランツは唐突に途切れた。
太陽のような輝きは失われ、周囲は再び静寂と闇を取り戻す。
最終兵器であるオーロラ・グランツを受けてなお口を開けるワームホールを確認し、シンはオーロラに命じる。
「ユリシーズを除く全艦隊に命じる、ワームホールへ向けて前進せよ――――立ちはだかる壁を、打破せよ」
『全艦隊、SWD起動、ワームホールへ前進開始....全艦隊到達を待ち、同時にジャンプします』
「ユリシーズ、アヴェンジャーを牽引し前進を開始せよ」
『ユリシーズ、アヴェンジャーをアンカーし前進を開始』
ユリシーズの後部に取り付けられた、二基のトラクタービームが、動けないアヴェンジャーを掴んで引っ張る。
『アヴェンジャーの機関復帰まで、残り182秒』
そして、全ての艦がワームホールの周囲へと集結する。
一番遅いユリシーズの到達を待ってから、シンは命じた。
「突入!」
そして、空間が歪み――――Noa-Tunの艦隊は、次元ポケットへと侵入した。
侵入した直後、レーダーが反応を捉えた。
その数は、12。
少なすぎると思われたが、シンはそれを否定する。
「あれが奴らの、司令塔だな?」
『はい、恐らく』
他のドローンなど、大したことないと思わせるほどの威圧感を、その不気味な艦は放っていた。
『通信要請を傍受、未知の言語ですが――――』
「翻訳できるか?」
『ラー・アークのオペレーティング・システムに使用されている言語のデータベースと一致、通信を接続します』
そして、シンの目の前で、通信回路が開かれる――――
『‘x@......』
『言語一致』
『そちらの目的は何だ。何故2JZ-GTE星系にて活動している』
「それはこちらの台詞だな。何故俺たちを排除しようとする」
『こちらは指令に従っているのみだ、初期命令はこの星系を監視し、秩序を大きく乱す存在を排除することだった。しかし、お前たちが現れてからは、その命令が歪もうとしている。許されることではない』
「お前は――――誰だ?」
シンの問いに、通信の主は一瞬言いよどむ。
しかしすぐに、答えた。
『我が名は、ナージャ=エクスティラノス。偉大なるVe’zの主、エリアス=アルティノスの命を受け、2JZ-GTE星系を守る者!』
「話にならないな、戦闘開始!」
そして、通信が切断されると同時に、ナージャなる存在は極光を放った。
『高出力のレーザー砲撃を確認、5秒以内に艦隊に到達します!』
オーロラが悲鳴のような声を上げる。
だが、シンは動揺しない。
「――――オーロラ、プランB発動だ、いいな?」
『....了解』
直後、前面に展開したアヴェンジャーが、巨大なレーザーをを真正面から受け止めた。
本来であれば貫かれてもおかしくないその一撃を、アヴェンジャーは防御していた。
それは、旗艦級戦艦のみが装備できる、特殊な兵装のおかげだ。
『一極化大型シールドエンハンサー、正常に稼働!』
シールドの発生理論に干渉し、30秒だけ全ての属性に対するダメージを99%軽減する....それが、一極化大型シールドエンハンサーの効果であった。
しかし、当然ながらデメリットも存在する。
「全小型艦は分散して、敵旗艦に突撃! 艦載機支援型母艦は待機せよ、全戦艦は広範囲に展開してコンパクトジャンプドライブを起動! ジャンプしてからは中・小型艦の接近を待ちながら砲雷撃戦を行え!」
『シールドエンハンサー、効果終了...使用不能です』
「分かった!」
同時に光線は消え、オーロラもシンも胸を撫で下ろす。
しかし。
『....!? 敵旗艦に再度エネルギー集中!』
「連射できるのか! くそっ、変異型シールドブースターを全部オーバークロック! 耐えきるぞ!」
『了解!』
再度放たれた一撃が、アヴェンジャーのシールドと激しく拮抗する。
その横を、ガウェイン艦隊が駆け抜けていく。
Noa-Tun支配領域外縁部。
そこには、大艦隊が集結していた。
艦隊の前に在るのは、月ほどの大きさがあるワームホール。
「よく見つけたな、こんなもの」
『以前より逃走するドローンの航跡を辿っておりまして、その全ての交点にコレがありました!』
「よくやった」
『ふふん!』
ドローンを派遣してNoa-Tunに損害を与えた謎の存在。
それを探るため、シンはここに大艦隊を派遣した。
主力となるのは、完成した攻城戦艦「アヴェンジャー」。
その威容は、巨大なワームホールの前でも全く揺るがぬ程であった。
周囲を固めるのは、同じく再建を経て完成した戦艦「シンビオシス」六隻。
さらに艦隊の上下に、八の字と逆八の字の形で整列しているのは、戦略護衛戦艦「ガウェイン」十隻。
アヴェンジャーは形容しがたい形状だが、ガウェインは球体関節人形の腕のような形状をしており、SSCのプレイヤーからは「イモムシ」と呼ばれる始末だった。
『中・小型艦隊、ジャンプインします』
先んじて到達していた工作フリゲートであるバックドアがジャンプピンガーを展開し、それに合わせてアコライト・エクサシズム・ブラインドファイス艦隊と、ジャンプスパイダー・ツインフェイト・ダブルエッジ・シンフォニア艦隊がジャンプしてくる。
最後に、角ばった艦....艦載機支援型母艦「ユリシーズ」。
「よし...全艦整列!」
『整列完了します』
全ての艦が、所定の位置に着く。
美しいその整列は、遠目から見れば鋼の鳥のようであった。
「オーロラ、これからワームホールの内部へ向けて最終兵器を使用する。射撃が終了したら、全ての艦を一斉に突入させろ」
『しかし.....過剰な熱量の流出を起こせば、ワームホールが閉じてしまうのでは?』
「そうなったら万々歳、だろう?」
『.....了解』
アヴェンジャーの前面部に、膨大なエネルギーが収束していく。
アヴェンジャーの持つ最終兵器、『ランサー:オーロラ・グランツ』である。
大陸級の持つ『オーロラ・グランツ』を旗艦級用に最適化したものであり、射撃直後にキャパシターが低下して動けなくなる弱点を持つ。
「発射!!」
眩い光が、暗い宇宙を明るく照らす。
大気があれば耳を劈くような轟音を立てて、オーロラ・グランツが世界を緑黄色の光と、宇宙の闇に分かつ。
ワームホールへと直撃したオーロラ・グランツは、その中へと吸い込まれていく。
数秒経ち、オーロラ・グランツは唐突に途切れた。
太陽のような輝きは失われ、周囲は再び静寂と闇を取り戻す。
最終兵器であるオーロラ・グランツを受けてなお口を開けるワームホールを確認し、シンはオーロラに命じる。
「ユリシーズを除く全艦隊に命じる、ワームホールへ向けて前進せよ――――立ちはだかる壁を、打破せよ」
『全艦隊、SWD起動、ワームホールへ前進開始....全艦隊到達を待ち、同時にジャンプします』
「ユリシーズ、アヴェンジャーを牽引し前進を開始せよ」
『ユリシーズ、アヴェンジャーをアンカーし前進を開始』
ユリシーズの後部に取り付けられた、二基のトラクタービームが、動けないアヴェンジャーを掴んで引っ張る。
『アヴェンジャーの機関復帰まで、残り182秒』
そして、全ての艦がワームホールの周囲へと集結する。
一番遅いユリシーズの到達を待ってから、シンは命じた。
「突入!」
そして、空間が歪み――――Noa-Tunの艦隊は、次元ポケットへと侵入した。
侵入した直後、レーダーが反応を捉えた。
その数は、12。
少なすぎると思われたが、シンはそれを否定する。
「あれが奴らの、司令塔だな?」
『はい、恐らく』
他のドローンなど、大したことないと思わせるほどの威圧感を、その不気味な艦は放っていた。
『通信要請を傍受、未知の言語ですが――――』
「翻訳できるか?」
『ラー・アークのオペレーティング・システムに使用されている言語のデータベースと一致、通信を接続します』
そして、シンの目の前で、通信回路が開かれる――――
『‘x@......』
『言語一致』
『そちらの目的は何だ。何故2JZ-GTE星系にて活動している』
「それはこちらの台詞だな。何故俺たちを排除しようとする」
『こちらは指令に従っているのみだ、初期命令はこの星系を監視し、秩序を大きく乱す存在を排除することだった。しかし、お前たちが現れてからは、その命令が歪もうとしている。許されることではない』
「お前は――――誰だ?」
シンの問いに、通信の主は一瞬言いよどむ。
しかしすぐに、答えた。
『我が名は、ナージャ=エクスティラノス。偉大なるVe’zの主、エリアス=アルティノスの命を受け、2JZ-GTE星系を守る者!』
「話にならないな、戦闘開始!」
そして、通信が切断されると同時に、ナージャなる存在は極光を放った。
『高出力のレーザー砲撃を確認、5秒以内に艦隊に到達します!』
オーロラが悲鳴のような声を上げる。
だが、シンは動揺しない。
「――――オーロラ、プランB発動だ、いいな?」
『....了解』
直後、前面に展開したアヴェンジャーが、巨大なレーザーをを真正面から受け止めた。
本来であれば貫かれてもおかしくないその一撃を、アヴェンジャーは防御していた。
それは、旗艦級戦艦のみが装備できる、特殊な兵装のおかげだ。
『一極化大型シールドエンハンサー、正常に稼働!』
シールドの発生理論に干渉し、30秒だけ全ての属性に対するダメージを99%軽減する....それが、一極化大型シールドエンハンサーの効果であった。
しかし、当然ながらデメリットも存在する。
「全小型艦は分散して、敵旗艦に突撃! 艦載機支援型母艦は待機せよ、全戦艦は広範囲に展開してコンパクトジャンプドライブを起動! ジャンプしてからは中・小型艦の接近を待ちながら砲雷撃戦を行え!」
『シールドエンハンサー、効果終了...使用不能です』
「分かった!」
同時に光線は消え、オーロラもシンも胸を撫で下ろす。
しかし。
『....!? 敵旗艦に再度エネルギー集中!』
「連射できるのか! くそっ、変異型シールドブースターを全部オーバークロック! 耐えきるぞ!」
『了解!』
再度放たれた一撃が、アヴェンジャーのシールドと激しく拮抗する。
その横を、ガウェイン艦隊が駆け抜けていく。
16
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
Apricot's Brethren
七種 智弥
SF
~あらすじ~
目覚めた時、少年は自分がどこにいるのかわからなかった。周囲は見知らぬ風景で、何の手掛かりもない。記憶喪失に陥り、自分の正体や過去のことを思い出すことができないのだ。
少年は不安と焦りを感じながらも、周囲を探索し始める。いつの間にか迷い込んだ家屋の中で、何か手掛かりを見つけることを期待しながら。
しかし、その最中に家主に発見されてしまう。驚きとパニックに襲われる中、少年は説明しようとするものの、家主は警戒心を抱いている様子だった。
男との腹を割った会話の末、少年は家主に自分の状況を説明する。記憶喪失であり、自分の正体を探しているのだと。家主は悶着の末、少年と行動を共にすることとなる。
そして少年の正体を追求するための冒険へ。彼らは様々な場所を訪れ、人々と出会いながら少年の謎を解き明かしていく。
果たして、少年Xの正体とは何なのか。彼の過去や記憶はどこにあるのか。そして、この見知らぬ世界に迷い込んだ理由とは何なのか。
少年と男の物語は、彼らの運命を変える大きな真実へと続いていく……。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!
べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
EX HUMAN
ゆんさん
SF
「EXって元~(何なに)って意味なんだって」
鳴門ちゃんが言った。
鳴門の渦のように世の中を巻き込む人間になりなさい。ってこの名前を付けた彼女のお母さんも大概変だけど、彼女に育てられた鳴門ちゃんは凄く変な人だった。
だけど、そういうのも含めて、凄く人間らしい人なんだ。
僕は「奴らみたいに」人間捨ててるわけじゃない‥って思うけど、ホントに、自分らしく‥人間らしく生きられてるのかな? って時々自問自答する位‥
平凡な人間なんだ。
機動戦士ガンダム ルナイブス
阿部敏丈
SF
第一次地球降下作戦でオデッサを手に入れたジオン軍は、次の第二次地球降下作戦を支援すべく大西洋に向けて軍を進めた。
ベッカー中佐により設立された特殊部隊「LUNA‐WOLFS」略して、ルナイブスを任されたラーセン・エリクソン大尉は優秀な部下たちと最前線を転戦していく。
一番はじめのガンダムのお話から自分のアレンジを作りました。
子供の頃に熱中したガンダムの二次作品です。古いファンなので、後付け設定は最低限度にして、本来の設定になるべく近く書いています。
かなり昔に考えていたネタでしたが、当時は物語を構成する力がなくて断念しました。
昨年から色々と作品を作り出して、ちょうどネットフリックスでもガンダムが始まったので書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる