上 下
96 / 97
シーズン3-コライドエッジ奪還編

093-コライドエッジ初戦 その2

しおりを挟む
本隊がショートワープでこちらに向かって来た頃には、クロノスは十分な距離を取っていた。
回避は可能、旗艦艦隊の支援砲撃も受けられる。

『再突入ルートをくれ!』
「今、やってます!」

敵の武装、トラッキング速度、射程距離、攻撃軌道を再計算し、再度突入するルートをクロノスに転送する。
後はこれを、クロノスのアドリブに合わせて変化させていくのだ。

『行くぞ!』

クロノスは再度スラスターを起動し、砲火の中へ突っ込んでいく。
私がクロノスに指示したのは、被弾を避けつつ一隻ずつ着実に撃破するプランだ。

「敵の本隊は戦艦が5隻、巡洋艦が12、小型艦が22です」
『まずは戦艦を沈めるわけだな』
「当然、戦艦を守るために護衛艦が動くはずです。ですから――――」

クロノスは戦艦の甲板を蹴って離脱し、その隣にいた戦艦にプラズマキャノンを放った。
プラズマキャノンは先ほどと同じように戦艦を中央から真っ二つにして爆破した。
直ぐに外周部に向けて加速し、レーザーライフルで先ほどまでいた戦艦のシールドを攻撃した。

「敵艦のロックオン信号を複数検知。小型艦隊がこちらに照準を集中させています」
『よっし、行くぜ!』

艦隊の中央部を軸として、その周囲を旋回するようにクロノスは飛ぶ。
敵は複数のロックオン用信号の照射で射撃精度を高めようとしているが、クロノスがチャフをばら撒いている上、高速で移動しているため手間取っていた。

『スラスターを最大出力で起動する! ......正直、出来るかどうか怪しいけどな』
「今のあなたであれば、可能です」
『おう!』

クロノスの速度が大きく変化する。
一瞬で艦隊の後方まですり抜けたクロノスは、そこで一度静止する。

『対艦ミサイル、発射!』

装弾数が30から24へと変化し、六発の対艦小型ミサイルが一斉に小型艦隊へと向かっていく。
勿論、あれは囮に過ぎない。
こんな距離で撃ったところで、迎撃されるのがおちだ。

敵の注意がそちらに向いたところで、クロノスが再度加速する。
宇宙であっても強力なGがコックピットには掛かるものの、私には関係がない。
どんな無理な機動も、ケイローンと全身の小型スラスターで行う事が出来、その結果――――

『すげぇ! 楽しい!』
「余りに調子に乗らないでください」

複雑な機動を描きながら移動することに成功し、敵のセンサーのトラッキングを完全に振り切る事が出来た。
その上で、速度を落とすタイミングで正確に射撃を撃ち込むことで、レーザーライフルの高出力な射撃を生かして三点バーストの要領でシールドを破壊、装甲を破壊、機関部に到達の三ステップを行い続け、小型艦隊の過半数を無力化することに成功した。
流石にこの出力のライフルでは、撃沈させるのは不可能だが.....

『離脱する!』
「了解!」

指定のルートが終わったようであり、クロノスがX-ブーストを使用して離脱する。
小型艦は私たちの艦隊が相手をするとして、後は戦艦4隻と巡洋艦10隻である。

「どうしますか?」
『正攻法で行くしかないだろ?』
「....そうですね、やりましょう」

クロノスのスラスター出力が、一瞬で最大まで跳ね上がる。
速度を増したクロノスは、巡洋艦艦隊の真下まで数秒で移動し、ライフルを構える。
そして、直ぐに射撃を開始する。
ラデウル艦の特徴として、底面部の防御が厚い代わりに武装が貧弱というものがあり、今回はそれを逆手に取った形となる。

『対艦ミサイル発射!』

シールドをライフルの連射で引っぺがし、そこに対艦ミサイルを打ち込む。
例え防御が厚かろうと、正式な軍用の対艦ミサイルである。
巡洋艦6隻の艦底部に穴を開け、気密を失わせる。

「クロノス、艦底部にプラズマキャノンを! エネルギーを低くし、断面部の修復阻害を目的に発射します!」
『おう!』

一隻ずつ、無力化していく。
正直なところ、全ての艦にプラズマキャノンを発射していると電力の供給が追いつかなくなってしまう。

『フフフフフ.......電力を気にしていますね?』

その時。
ZENITHの声が響いた。
私が慌ててそれに応じると、

『送電照射装置稼働!』

グランシオン級の艦首付近が光り、クロノスに何かが照射された。
直後、蓄電池の電力が少しずつ回復していく。

「これは......」
『新装備ですよ。グランシオン級から150km以内であれば電力を回復できます!』
「....!」

これなら、もう少しばかり戦える。
私は、クロノスに次の手を指示する。

「このまま戦艦の直上に回り込みましょう!」
『ああ!!』

クロノスは頷き、スラスターを再度噴射して加速するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

お兄ちゃんのいない宇宙には住めません!~男装ブラコン少女の宇宙冒険記~

黴男
SF
お兄ちゃんの事が大・大・大好きな少女、黒川流歌’(くろかわるか)は、ある日突然、自分のやっていたゲームの船と共に見知らぬ宇宙へ放り出されてしまう! だけど大丈夫!船はお兄ちゃんがくれた最強の船、「アドアステラ」! 『苦難を乗り越え星々へ』の名の通り、お兄ちゃんがくれた船を守って、必ずお兄ちゃんに会って見せるんだから! 最強無敵のお兄ちゃんに会うために、流歌はカルと名を変えて、お兄ちゃんの脳内エミュレーターを起動する。 そんなブラコン男装少女が、異世界宇宙を舞う物語! ※小説家になろう/カクヨムでも連載しています

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...