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シーズン1-序章
050-ホストコンピューター沖海戦
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「う.............」
私は、再び意識を浮上させる。
重大な損傷を受け、出力を維持できなかった私は、一度出力を落とし電力バランスを再調整して再起動したのだ。
しかし。
「........ここは?」
いつの間にか、周囲の景色が変わっていた。
場所は.....不明。
あらゆる通信が遮断され、ネットワークから私は孤立していた。
「.....まさか、ここは」
そして、私の視界にあるものが映る。
それはあってはならないもの。
少なくとも、私が「これ」のある部屋に運ばれた可能性があり得ないという事だけは分かる。
「..........有り得ない、なぜそのような行動を」
暴走しているとはいえ、倒れた私を排除せず、このような――――自分の懐に潜り込ませるような真似をするわけがない。
目の前にあるのは巨大な球体、天井と地面からケーブルが接続されている。
球体のあちこちにはアクセスランプが点灯し、中央のアクセスランプの光が私を照らしている。
ここは――――――中央核、コントロールルームの最奥部であるホストコンピューター室である。
「何のつもりですか」
尋ねてみるが、答えはない。
その代わりというのか、目の前の床が浮上し見慣れた端末が現れた。
「........」
私は起き上がり、アーマーをパージした。
目の前の端末は、アーマーを着たままでは接続できない。
「.........有利なフィールドに誘い込もうという訳ですか?」
しかし答えはない。
仕方がないので、黙って私は端末に接続を試みる。
この端末は、Chronusの操縦席と系列が同じだ。
両手と背にケーブルを繋ぐ。
背もたれに座り、脊髄の部分にある大型コネクタに接続した。
「ッ!!」
直後。
膨大なデータが送信される。
私はそれを受信せず、一時的に拒否して捌く。
実のところ、ここまで私が辿り着いたところで出来る事はない。
装備は出力低下で全滅し、シャードキャノンを接射したところでホストコンピューターの装甲には傷ひとつ付けられないだろう。
ならば、内側から攻略する。
どうせ待っていれば、外からやって来た機兵に無惨に破壊されるだろうし、逃げたところでもうスラスターを満足に起動できる出力もない。
頭部ユニットのない状態でどこまでやれるかは分からない。
「やるだけ......やる!」
メインサーバーにアクセスした私は、意識ごとデータの奔流に巻き込まれそうになる。
『CyberVoyageLawシステム、起動』
『CVLシステムは、お客様に快適な船旅をご提供いたします』
『電子の船旅をお楽しみください、航海の安全を祈ります』
脳裏に声が響き、周囲の様相が一変する。
無数のウィンドウやコードの羅列だったものが、海や水しぶき、島へと変わっていく。
私は小さなヨットに乗り、海の上を中速で駆けていた。
「ここが.........!」
コロニー全体のネットワークと違い、大海に一つの島が浮かんでいた。
島は複数の小島と橋で接続されており、その中心に本島があった。
――――直後、島々から閃光が放たれる。
「これは......!」
閃光はヨットに直撃し、ヨットは姿勢を崩す。
これは.....恐らく、向こうのファイアウォールからの攻撃だ。
招待されたわけではないので、外敵と判断され破壊されそうになっているのだ。
「どうすれば........いや、こうすればいいんだ」
私の前にある数字、それは私が割けるシステムリソースだ。
920/1000
攻撃された時点で減っている。
これが0になれば、恐らくは.......
「障壁展開!」
何ができるかは分からない。
試しの意味も込め、手を前に突き出すと――――半透明の壁が、ヨットの少し前に現れた。
ファイアウォールからの攻撃がその壁に衝突し、壁が少し削れた。
「.........思えば、何でもできるのでしょうか?」
もっと早くならないかな、そう考えたとき、急に速度が上がったのだ。
背後を見れば帆が消えており、最後尾にエンジンがくっ付いていた。
CVLシステム、考えれば考えるほど謎が深まる。
発信元、制作者、製造年月日、詳細――――何もかもが不明なそれは、私の中に最初からインストールされていたのだろう。
でなければ、コロニーのネットワークに接続した時に自動でダウンロードされる等という事はないはずだ。
そんな怪しい現象が起きているのなら、既に対処されているはずなのだから。
「とにかく――――突破します!」
速度を上げ、私は着実に本島へと近づく。
壁に避弾経始を行い、削れる速度を減らそうとしたが、無意味だった。
あくまで情報戦を可視・単純化して描写しているため、物理法則を必ずしも遵守するわけではないのだ。
「ミサイル発射!」
私の真横から、ミサイルポッドが現れる。
その長方形の砲身から、ミサイルが山ほど放たれファイアウォールに衝突する。
こういうものは防がれるのがセオリーだが、問題なくファイアウォールに衝撃を与える。
セキュリティホールをファイアウォールに形成するために、一点を集中して攻撃を加える。
そして――――――
「突入します!」
私は船を加速させ、空いたホールに飛び込んだ。
私は、再び意識を浮上させる。
重大な損傷を受け、出力を維持できなかった私は、一度出力を落とし電力バランスを再調整して再起動したのだ。
しかし。
「........ここは?」
いつの間にか、周囲の景色が変わっていた。
場所は.....不明。
あらゆる通信が遮断され、ネットワークから私は孤立していた。
「.....まさか、ここは」
そして、私の視界にあるものが映る。
それはあってはならないもの。
少なくとも、私が「これ」のある部屋に運ばれた可能性があり得ないという事だけは分かる。
「..........有り得ない、なぜそのような行動を」
暴走しているとはいえ、倒れた私を排除せず、このような――――自分の懐に潜り込ませるような真似をするわけがない。
目の前にあるのは巨大な球体、天井と地面からケーブルが接続されている。
球体のあちこちにはアクセスランプが点灯し、中央のアクセスランプの光が私を照らしている。
ここは――――――中央核、コントロールルームの最奥部であるホストコンピューター室である。
「何のつもりですか」
尋ねてみるが、答えはない。
その代わりというのか、目の前の床が浮上し見慣れた端末が現れた。
「........」
私は起き上がり、アーマーをパージした。
目の前の端末は、アーマーを着たままでは接続できない。
「.........有利なフィールドに誘い込もうという訳ですか?」
しかし答えはない。
仕方がないので、黙って私は端末に接続を試みる。
この端末は、Chronusの操縦席と系列が同じだ。
両手と背にケーブルを繋ぐ。
背もたれに座り、脊髄の部分にある大型コネクタに接続した。
「ッ!!」
直後。
膨大なデータが送信される。
私はそれを受信せず、一時的に拒否して捌く。
実のところ、ここまで私が辿り着いたところで出来る事はない。
装備は出力低下で全滅し、シャードキャノンを接射したところでホストコンピューターの装甲には傷ひとつ付けられないだろう。
ならば、内側から攻略する。
どうせ待っていれば、外からやって来た機兵に無惨に破壊されるだろうし、逃げたところでもうスラスターを満足に起動できる出力もない。
頭部ユニットのない状態でどこまでやれるかは分からない。
「やるだけ......やる!」
メインサーバーにアクセスした私は、意識ごとデータの奔流に巻き込まれそうになる。
『CyberVoyageLawシステム、起動』
『CVLシステムは、お客様に快適な船旅をご提供いたします』
『電子の船旅をお楽しみください、航海の安全を祈ります』
脳裏に声が響き、周囲の様相が一変する。
無数のウィンドウやコードの羅列だったものが、海や水しぶき、島へと変わっていく。
私は小さなヨットに乗り、海の上を中速で駆けていた。
「ここが.........!」
コロニー全体のネットワークと違い、大海に一つの島が浮かんでいた。
島は複数の小島と橋で接続されており、その中心に本島があった。
――――直後、島々から閃光が放たれる。
「これは......!」
閃光はヨットに直撃し、ヨットは姿勢を崩す。
これは.....恐らく、向こうのファイアウォールからの攻撃だ。
招待されたわけではないので、外敵と判断され破壊されそうになっているのだ。
「どうすれば........いや、こうすればいいんだ」
私の前にある数字、それは私が割けるシステムリソースだ。
920/1000
攻撃された時点で減っている。
これが0になれば、恐らくは.......
「障壁展開!」
何ができるかは分からない。
試しの意味も込め、手を前に突き出すと――――半透明の壁が、ヨットの少し前に現れた。
ファイアウォールからの攻撃がその壁に衝突し、壁が少し削れた。
「.........思えば、何でもできるのでしょうか?」
もっと早くならないかな、そう考えたとき、急に速度が上がったのだ。
背後を見れば帆が消えており、最後尾にエンジンがくっ付いていた。
CVLシステム、考えれば考えるほど謎が深まる。
発信元、制作者、製造年月日、詳細――――何もかもが不明なそれは、私の中に最初からインストールされていたのだろう。
でなければ、コロニーのネットワークに接続した時に自動でダウンロードされる等という事はないはずだ。
そんな怪しい現象が起きているのなら、既に対処されているはずなのだから。
「とにかく――――突破します!」
速度を上げ、私は着実に本島へと近づく。
壁に避弾経始を行い、削れる速度を減らそうとしたが、無意味だった。
あくまで情報戦を可視・単純化して描写しているため、物理法則を必ずしも遵守するわけではないのだ。
「ミサイル発射!」
私の真横から、ミサイルポッドが現れる。
その長方形の砲身から、ミサイルが山ほど放たれファイアウォールに衝突する。
こういうものは防がれるのがセオリーだが、問題なくファイアウォールに衝撃を与える。
セキュリティホールをファイアウォールに形成するために、一点を集中して攻撃を加える。
そして――――――
「突入します!」
私は船を加速させ、空いたホールに飛び込んだ。
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