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シーズン1-序章
042-市街上空戦 中編
しおりを挟む河川上空にて。
クロノスは、八十八まで数を増やした敵機に追われていた。
「ミサイル発射確認、総数......60」
『迎撃する、拡散弾頭に切り替えるぞ』
「ミサイルの軌道を予測します、起爆ポイントを提案」
『提案受諾』
クロノスの背から、六発の小型ミサイルが次々と放たれる。
ミサイルは、こちらを狙って飛んでくる束に向けて飛翔し――――空中で起爆、前面に向けて放射状に弾幕を展開する。
弾幕に襲われ、ミサイルは次々と貫かれ誘爆する。
爆発に巻き込まれたミサイルが誤爆し、誘爆はさらに広がっていく。
「7発接近」
『まあ、流石に無理か』
全弾迎撃なんて、中々あり得る事ではない。
黒煙を破り、7発のミサイルがクロノスに迫る。
「振り切れますか?」
『勿論、酔うなよ』
「酔いません、酔えません」
クロノスは急加速、そのまま垂直に上昇する。
コックピットがGでガタガタと揺れるが、私に大した影響はない。
クロノスは空中で反転、上昇したときと逆の軌道を描いて降下する。
そして、自然にクロノスは敵機の真上へと躍り出る事になる。
当然ながら、戦闘機というものは、クロノスのように無理矢理真上に移動したりする力はない。
「今です! 撃ったらすぐに離脱してください!」
『おう!』
クロノスの背から飛び出したミサイルが、近距離の弾幕を敵編隊のど真ん中に展開する。
後続が軒並み全滅し、敵編隊は足並みを乱す。
その隙に、クロノスはユニットを最大噴射して逃げ出した。
敵機たちは方向転換し、こちらを狙ってくる。
しかし、想定内だ。
直後、眩い光が敵編隊を薙ぎ払う。
河川部周辺に移動してきていた六番艦の護衛艦二隻が砲撃を行ったのだ。
『残りは引き受けます』
『あなたが引きつけてくれたおかげで、敵機の数は減少しています、民間人救助の手伝いをお願いします!』
「了解、クロノス!」
『ああ!』
クロノスは優先コードを切り、その場から全速で離脱する。
あちこちを転々とする戦いだが、しっかりクロノスは付いていけているようだ。
「ターゲットを切れていないようです、二機接近」
『減速してもいいか?』
「構いません」
クロノスは回頭し、ライフルの銃口を二機に向けた。
単発モード.....つまり、迎撃するという事だ。
「射程内です、予測軌道を転送」
『ああ!』
一射。
放たれた実体弾は、片方の機体を半分抉り、その機はスピンしながら落下し、ビルにぶつかって爆発四散した。
二射。
『チッ』
敵機が急減速したため軌道予測がずれ、弾は空を切る。
そして、敵機は絶好の機会とばかりに積んでいたミサイル四機を吐き出した。
「ライフル射撃モードをフルオートに変更してください」
『いや、盾でやり過ごす!』
クロノスが指示を無視して盾を構える。
「どうしてですか!」
『盾も使いたいんだよ!』
「もう知りませんよ!」
直後、盾にミサイルが突き刺さり起爆する。
コロニー防衛用のミサイルの火力では、盾を貫く威力はないが......それでも、絶対ではないはず。
受ける意味はあったのだろうか?
「捕捉」
『ぶっ飛べ』
爆炎越しの射撃。
砲弾は爆炎を吹き散らし、その向こうに迫ってきていた敵機に突き刺さり、その機体をバラバラに破砕した。
「戦闘区域に移動してください」
『ああ!』
クロノスは爆炎を突っ切って加速し、二番艦の展開する地域向けて移動を開始するのだった。
私はその間に、戦闘でたまったキャッシュを削除し、データチェックを行うのだった。
◇◆◇
数分後。
クロノスは二番艦の展開する――――中央ホールのある区画へと到着した。
戦闘機は少ないが、代わりに警備船が大量に展開している。
『上空は任せろ、一般人収容のために降下する救援部隊を支援して欲しい』
「分かりました、注意点などはありますか?」
『その旨はそちらに転送しておく』
「はい」
クロノスはビルの間を慎重に降下し、少し下の高度を移動する小型艦三隻を俯瞰する。
『武装はあるみたいだが、不安定な慣性安定板型の浮力装置で装甲が貧弱だな』
「はい」
『おまけに上方向への武装があまり効果的じゃねえし、散弾型の近接信管ミサイルには弱いな』
「ちゃんと勉強しているのですね」
『そりゃ勿論だぜ! オレはお前とずっと一緒に居たいからな』
クロノスは、不思議な事を言った。
戦争が終われば、私たちは用済みである。
用済みになった道具は、破壊されるか、別の何かに転用されるのが当然である。
私たちが共に居る未来など、存在しないのだ。
「........作戦を開始します、プロトコルA-01パターンをデフォルト戦闘パターンとして適用してください」
『お、おう.....何かお前、また変だぞ?』
「内部にエラーはありません、プリセット戦術パターンBを作戦変更マニュアルに登録します」
『..........まあいいか、作戦変更マニュアルに異常なし、カスタム戦術パターンCを構築して想定外パターンAに組み込んでおくぞ』
「はい」
私はCVLシステムを起動し、戦闘解析システムと同期する。
今まではやってこなかったのだが、何故かはわからない。
私の意識の半分が、クロノスの制御システムと直接接続し、より情報の同期を高速化させる。
『おわっ!? 何するんだ!?』
「戦闘をよりスムーズに行うため、物理的接触とは別にクロノス内部に思考パターンを模倣した分割疑似思考体を設置します」
『お前、やっぱおかしいぞ!』
「戦闘に支障はありません」
私に異常はない。
私に異常はない。
私に異常はない。
エラーはない。
「立体レーダーに反応、機体上部、背面二時方向。二番艦との情報共有――――敵警備船3機を確認しました」
『なあ、無視するなよ......』
「戦闘を続行します。敵警備船、接敵まで27秒、射程距離到達まで14秒。各ウェポンシステムオンライン、Chronus、戦闘準備を完了してください、機体の制御権限は私にはありません」
『...........後で覚えてろよ』
Chronusは不快の感情を示す声を発し、機体の操縦に移ったのだった。
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