54 / 180
シーズン2-エミド再侵攻
054-完璧ゆえの過ち
しおりを挟む
というわけで、流しそうめんの会場が完成した。
水だけはわざわざ水車を繋げて汲み上げているが、構造部分は殆ど手作りだ。
接合部分が漏れないようにするのが大変だった。
「さて、では...謹んで、流しソーメン大会を開会させて頂きましょう!」
そうめんの材料である謎の植物に目をつけ、実際に作ったのはケルビスである。
なので彼を称えて、司会役を命じておいた。
「まずはルールを説明いたします」
ケルビスは、虫が付かない機構のカゴに入れた、大量の麺を手で仰ぐ。
「ここに大量の麺がありますが、参加者の皆様には、これを競い合って取ってもらいます! ただし、取りすぎてはダメだとのエリアス様からの御命令です。消化ユニットに収まる量を予測して取ること、というわけです!」
エクスティラノス達も、最近は食べることに興味を持ったようで、消化ユニットと味覚回路を取り付けていた。
「制限時間は60分、各自配られた器具でのみ、掬う事が可能との事です!」
流石に手掴みは絵面が悪いので、全員にトングを配った。
幅が広く、麺を引っ掛けるのに特化した形状だ。
食べる時は、この世界にもあるフォークで絡めて頂くようだ。
「では、始め!」
その時、ケルビスの横から見慣れない男が出てくる。
恐らく、キジラ=ノクティラノスの義体だ。
キジラはカゴから麺を掬うと、水流に流した。
.....一番手前で、それを、メッティーラが奪い取った。
「済まないエリス、これはどうも、二人でするべき行事だったな....」
「いえっ、いいのよ...こういうのは、雰囲気を楽しむものでしょう?」
その後、何度か麺が流されるが、忖度されて全部こちらに流れてきた。
次はレーンを一つではなく複数に分岐させなければいけないな。
「それにしても、生水をそのまま飲んで大丈夫かしら」
「その身体は半分Ve’zのものだから、細菌程度で体調を崩すことはないはずだ」
事前に自分で汚水を飲んでみたので、間違いない。
少なくとも生水程度で病気になったり、胃腸の異常をきたす事はない。
「流石に僕らではこの量は食べきれないな」
『おっと、失礼いたしました』
その時、僕の呟きを拾ったカサンドラが、量を調節するように掬い始めた。
それを見たエクスティラノス達も、それに同調する。
「.....ふふ」
エリスがそれを見て、笑いをこぼした。
僕は彼女が笑ってくれてよかった、と少しだけ安堵する。
「しかし、水質が良いな」
手付かずの川から引いた水だというのに、その水は澄んでいた。
掬った麺を、麺つゆに付けて食べる。
「....それにしても、これはどこの国の味付けなの? 薄いけど、何だか深い味だわ」
「僕にも分からない、どこか閉じた星の調味料だとは分かっているんだがな」
麺つゆは似たような調味料を混ぜて僕が自作した。
まだ味覚が戻らないので、自信が無かったが....しかし、美味しいのであれば試行錯誤の甲斐があったというものだ。
「......私、ずっと人と関わらないでいたから...みんなでこうやって、楽しんでご飯を食べるのは久々ね」
「そうか」
僕も何だか、こういうアクティビティを他人と行うのは久々のような気がする。
前世を含めても、殆ど参加していない。
「これから増やしていけばいい」
「そうね!」
その時、エリスは何を思ったか、僕の顔の前に麺を突き出してきた。
「...何の真似だ?」
「ちょっと余ったけど、お腹いっぱいなのよ」
「......そうか」
少々マナーに欠けるが、僕は突き出された麵を、口に入れた。
飲み込んでから、前世でこういう行為をする事をなんというか、暫し考えた。
ついぞ思い出せなかったので、その日は疑似睡眠に入るまで、それについて考えたのであった。
水だけはわざわざ水車を繋げて汲み上げているが、構造部分は殆ど手作りだ。
接合部分が漏れないようにするのが大変だった。
「さて、では...謹んで、流しソーメン大会を開会させて頂きましょう!」
そうめんの材料である謎の植物に目をつけ、実際に作ったのはケルビスである。
なので彼を称えて、司会役を命じておいた。
「まずはルールを説明いたします」
ケルビスは、虫が付かない機構のカゴに入れた、大量の麺を手で仰ぐ。
「ここに大量の麺がありますが、参加者の皆様には、これを競い合って取ってもらいます! ただし、取りすぎてはダメだとのエリアス様からの御命令です。消化ユニットに収まる量を予測して取ること、というわけです!」
エクスティラノス達も、最近は食べることに興味を持ったようで、消化ユニットと味覚回路を取り付けていた。
「制限時間は60分、各自配られた器具でのみ、掬う事が可能との事です!」
流石に手掴みは絵面が悪いので、全員にトングを配った。
幅が広く、麺を引っ掛けるのに特化した形状だ。
食べる時は、この世界にもあるフォークで絡めて頂くようだ。
「では、始め!」
その時、ケルビスの横から見慣れない男が出てくる。
恐らく、キジラ=ノクティラノスの義体だ。
キジラはカゴから麺を掬うと、水流に流した。
.....一番手前で、それを、メッティーラが奪い取った。
「済まないエリス、これはどうも、二人でするべき行事だったな....」
「いえっ、いいのよ...こういうのは、雰囲気を楽しむものでしょう?」
その後、何度か麺が流されるが、忖度されて全部こちらに流れてきた。
次はレーンを一つではなく複数に分岐させなければいけないな。
「それにしても、生水をそのまま飲んで大丈夫かしら」
「その身体は半分Ve’zのものだから、細菌程度で体調を崩すことはないはずだ」
事前に自分で汚水を飲んでみたので、間違いない。
少なくとも生水程度で病気になったり、胃腸の異常をきたす事はない。
「流石に僕らではこの量は食べきれないな」
『おっと、失礼いたしました』
その時、僕の呟きを拾ったカサンドラが、量を調節するように掬い始めた。
それを見たエクスティラノス達も、それに同調する。
「.....ふふ」
エリスがそれを見て、笑いをこぼした。
僕は彼女が笑ってくれてよかった、と少しだけ安堵する。
「しかし、水質が良いな」
手付かずの川から引いた水だというのに、その水は澄んでいた。
掬った麺を、麺つゆに付けて食べる。
「....それにしても、これはどこの国の味付けなの? 薄いけど、何だか深い味だわ」
「僕にも分からない、どこか閉じた星の調味料だとは分かっているんだがな」
麺つゆは似たような調味料を混ぜて僕が自作した。
まだ味覚が戻らないので、自信が無かったが....しかし、美味しいのであれば試行錯誤の甲斐があったというものだ。
「......私、ずっと人と関わらないでいたから...みんなでこうやって、楽しんでご飯を食べるのは久々ね」
「そうか」
僕も何だか、こういうアクティビティを他人と行うのは久々のような気がする。
前世を含めても、殆ど参加していない。
「これから増やしていけばいい」
「そうね!」
その時、エリスは何を思ったか、僕の顔の前に麺を突き出してきた。
「...何の真似だ?」
「ちょっと余ったけど、お腹いっぱいなのよ」
「......そうか」
少々マナーに欠けるが、僕は突き出された麵を、口に入れた。
飲み込んでから、前世でこういう行為をする事をなんというか、暫し考えた。
ついぞ思い出せなかったので、その日は疑似睡眠に入るまで、それについて考えたのであった。
11
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
姫様になんてならないから!
三浦むさし
ファンタジー
突然異世界に呼び出されて無理やり女の子に性転換させられてしまった主人公。そのうえ更に王子の婚約者にまで!
いきなりお姫様扱いされたり魔法に驚き戸惑う主人公の行く末は?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる