32 / 180
シーズン1-悪夢の始まり
032-エリスの過去
しおりを挟む
エリスは、惑星ディラボーンⅤの生まれであった。
アンデュラス合衆国に存在する首都惑星デュラボーンⅤは、発展した世界の中では異質な、緑と水に溢れた素晴らしい星だった。
しかし、ここでとある事件が発生する。
アンデュラスが開発した新兵器が、戦争のバランスを大きく乱す代物であったのだ。
そして、それを知ったエミドが動き出した。
アンデュラス最強の防衛艦隊は、ワームホールを通って現れたエミドの侵略艦隊相手に4時間と保たずに敗北した。
敗北のニュースが伝わる前に避難はほぼ完了していたが、それは一部だけの事だった。
「ねぇ、どうしてパパとママは行けないの...?」
不安がるエリスに、エリスの両親は笑って答えた。
「大丈夫さ、すぐに合流するから」
「ええ、先発便は子供だけなのよ」
エリスはそれでも納得しなかったが、両親はそんなエリスにクマのぬいぐるみを渡して、送り出した。
そしてエリスは見た。
自分たちの故郷が、無惨に破壊されるのを。
Ve‘zの惑星破壊とは違い、エミドの惑星破壊兵器は重力場を破壊して惑星としての意義を失わせるものであり、岩盤が砕け散って宇宙に散り、大気が崩壊する様を、ゆっくりと死んでいく星の有様を見せつけられたのだ。
だが、彼女の運命はそれだけでは終わらない。
エミドは秘密兵器の存在を知る者全てを抹殺するため、アンデュラスの首都星系にある惑星を全て破壊し尽くして、コロニーやステーションを破壊して回った。
エリスのいたステーションも砲撃に遭い、カーゴコンテナに逃げ込み中の空気だけで生き残ったエリスだけが助かった。
それがエリスの生い立ちではあるものの、もしかすると死神は彼女を殺し損ねたのではと思うほど、彼女の生の道程には死が転がっていた。
「う、ウソ...なんでよ...!」
そして、エリスは最後の不運を引いたのだ。
座標入力が行われていないワープによって、時間が無限に引き延ばされた次元断層へと侵入してしまったのである。
内部ではあらゆる法則が意味を成さず、空腹や絶望を感じなかっただけマシであろうが、彼女はその状態で数百年を過ごした。
船は耐用年数を大きく超えた状態で次元断層内を彷徨っていたが、断層内では全ての物質の状態が遷移する速度が極端に落ちていたため、有機生命体である彼女が適切な修理を行うことにより、なんとかもっていた。
それでも。
「...誰かと話したい...」
その願いは消えなかった。
この空間は、物質と意識だけがゆっくりと朽ちていく場所である。
孤独はとても辛く、しかしながら自殺しようとしたところで、死ねないのだ。
何度か体を傷つけたが、血が流れることはなく痛みがやってくる事もなかった。
そんな時。
「...光?」
空間に歪みが現れたのだ。
アロウトの機関が始動したことによる重力変動で、ワームホールが発生したのである。
そんな事を知る由もない彼女は、言葉も発さず船をワームホールに向けた。
「ここは....!?」
そして、エリスの船はアロウトに墜落した。
ハッチを剥がして入ってきたモノを見て、エリスは戦慄した。
それは、触手を背中から生やした、明らかに人間ではないモノ。
人の形をしているが、エリスが今まで見た誰よりも.....綺麗だった。
「........くッ!!」
エリスは慌てて銃を撃ったが、ソレには通用せず、触手に掴まれて外へと放り出された。
それからは、エリアスの観測したとおりである。
だからこそ。
「.......あのね、私――――どうでも良かったの」
「え?」
エリアスに髪を洗ってもらいながら、エリスはふと口にした。
「........どういうことだ?」
エリアスは前後の文脈が繋がっていない言葉に混乱する。
だが、エリスは説明せず続ける。
「私、ほんとは見てないもの、撃ったところ」
「.....そうなのか?」
「Ve’zの一部になったからか、撃ったことを後から知ったのよ」
「....そうか」
エリスは何か言いたかったが、やっぱりやめておいた。
エリアスが本気で反省しているのを知っているからだ。
「(......真面目過ぎるのよねー.....)」
エリスは内心溜息を吐くのであった。
アンデュラス合衆国に存在する首都惑星デュラボーンⅤは、発展した世界の中では異質な、緑と水に溢れた素晴らしい星だった。
しかし、ここでとある事件が発生する。
アンデュラスが開発した新兵器が、戦争のバランスを大きく乱す代物であったのだ。
そして、それを知ったエミドが動き出した。
アンデュラス最強の防衛艦隊は、ワームホールを通って現れたエミドの侵略艦隊相手に4時間と保たずに敗北した。
敗北のニュースが伝わる前に避難はほぼ完了していたが、それは一部だけの事だった。
「ねぇ、どうしてパパとママは行けないの...?」
不安がるエリスに、エリスの両親は笑って答えた。
「大丈夫さ、すぐに合流するから」
「ええ、先発便は子供だけなのよ」
エリスはそれでも納得しなかったが、両親はそんなエリスにクマのぬいぐるみを渡して、送り出した。
そしてエリスは見た。
自分たちの故郷が、無惨に破壊されるのを。
Ve‘zの惑星破壊とは違い、エミドの惑星破壊兵器は重力場を破壊して惑星としての意義を失わせるものであり、岩盤が砕け散って宇宙に散り、大気が崩壊する様を、ゆっくりと死んでいく星の有様を見せつけられたのだ。
だが、彼女の運命はそれだけでは終わらない。
エミドは秘密兵器の存在を知る者全てを抹殺するため、アンデュラスの首都星系にある惑星を全て破壊し尽くして、コロニーやステーションを破壊して回った。
エリスのいたステーションも砲撃に遭い、カーゴコンテナに逃げ込み中の空気だけで生き残ったエリスだけが助かった。
それがエリスの生い立ちではあるものの、もしかすると死神は彼女を殺し損ねたのではと思うほど、彼女の生の道程には死が転がっていた。
「う、ウソ...なんでよ...!」
そして、エリスは最後の不運を引いたのだ。
座標入力が行われていないワープによって、時間が無限に引き延ばされた次元断層へと侵入してしまったのである。
内部ではあらゆる法則が意味を成さず、空腹や絶望を感じなかっただけマシであろうが、彼女はその状態で数百年を過ごした。
船は耐用年数を大きく超えた状態で次元断層内を彷徨っていたが、断層内では全ての物質の状態が遷移する速度が極端に落ちていたため、有機生命体である彼女が適切な修理を行うことにより、なんとかもっていた。
それでも。
「...誰かと話したい...」
その願いは消えなかった。
この空間は、物質と意識だけがゆっくりと朽ちていく場所である。
孤独はとても辛く、しかしながら自殺しようとしたところで、死ねないのだ。
何度か体を傷つけたが、血が流れることはなく痛みがやってくる事もなかった。
そんな時。
「...光?」
空間に歪みが現れたのだ。
アロウトの機関が始動したことによる重力変動で、ワームホールが発生したのである。
そんな事を知る由もない彼女は、言葉も発さず船をワームホールに向けた。
「ここは....!?」
そして、エリスの船はアロウトに墜落した。
ハッチを剥がして入ってきたモノを見て、エリスは戦慄した。
それは、触手を背中から生やした、明らかに人間ではないモノ。
人の形をしているが、エリスが今まで見た誰よりも.....綺麗だった。
「........くッ!!」
エリスは慌てて銃を撃ったが、ソレには通用せず、触手に掴まれて外へと放り出された。
それからは、エリアスの観測したとおりである。
だからこそ。
「.......あのね、私――――どうでも良かったの」
「え?」
エリアスに髪を洗ってもらいながら、エリスはふと口にした。
「........どういうことだ?」
エリアスは前後の文脈が繋がっていない言葉に混乱する。
だが、エリスは説明せず続ける。
「私、ほんとは見てないもの、撃ったところ」
「.....そうなのか?」
「Ve’zの一部になったからか、撃ったことを後から知ったのよ」
「....そうか」
エリスは何か言いたかったが、やっぱりやめておいた。
エリアスが本気で反省しているのを知っているからだ。
「(......真面目過ぎるのよねー.....)」
エリスは内心溜息を吐くのであった。
12
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
姫様になんてならないから!
三浦むさし
ファンタジー
突然異世界に呼び出されて無理やり女の子に性転換させられてしまった主人公。そのうえ更に王子の婚約者にまで!
いきなりお姫様扱いされたり魔法に驚き戸惑う主人公の行く末は?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる