39 / 59
ラバニエル王国編
第34話 白の聖女と隠密部隊
しおりを挟む
商業の神エイビステインと白い空間で話をした私は思う。神様は私に道を誤るなと伝えたかったのではと。
私の体は粒子状から元の体へと徐々に戻り、ギルド長室のソファーに座る状態で戻ってきた。手や足を動かしてみたがなんの違和感もなく動く。そんな私は長いため息をついてテーブルにあるお茶を飲んで心を落ち着けた。
「ふぅ~、ちょっと疲れたかな」
それから落ち着いた私は周りを見ると唖然として固まっている3人が居た。そして最初に動きを見せたのはエルフィーさんだった。
「か、奏‥‥今のはなんだ‥‥お前が突然消えたと思ったら霧のように小さな粒か集まり再びお前が現れた。なにかワシの知らない魔法でも使ったのか?」
そのエルフィーさんの質問に私の対面に座るダルダンさんと90度横に座るメリーナさんも興味深く私の答えを待っている。
(もうこれは隠しきれないね。この人達なら話しても大丈夫だよね?)
そう思った私は3人に「ドアの外に出ず少しだけ待ってて」と言って立ち上がる。そしてドアの外に出た私は天井に向かって小さな声で呼び掛けた。
「ねぇ、カリーナさんの部下の人、ちょっと話があるから降りてきて。今ならあの3人は出て来ないからお願い」
すると少し経ってから天井の一部が取り外され、そこから小柄の2人が全く音を立てず飛び降りてくる。さすが隠密部隊だ。
その2人は男女で背格好から顔までよく似ているので双子かも知れない。年齢は私と同じくらいだろうか、女の子は背は私より頭1つ分高く、長く赤い髪をポニーテールにしている。顔は少しつり目で目付きが鋭く目鼻は小さい。そして体は細く俊敏そうで小さな女豹を想像させた。(お?そのどこも出てないスリムな体型は親近感が湧くね。もうお友達だね!)
男の子の方は同じような体型で短めの赤い髪。顔はよく似てるが目はつり目でなく細かった。そして同じく俊敏そうなんだけど何故かチワワを想像させた。(守ってあげたくなる感じだね!)
そして私に声を掛けてきたのは鋭い目付きの女の子。とても不機嫌そうな表情だ。
「私達はまだ若いがレベルの高い気配遮断のスキルの腕を認められ隠密部隊に入った。それが何故お前のような小娘に見破られるのだ。教えろ!いったいどうやって見破ったんだ」
(うわっ、見た目通りの性格してる。これを無視して違う話をしたら面白そうなんだけど、時間が無いから種明かししてあげよう)
私は真面目な顔で答えてあげた。
「あのね、私は自然を鋭く感じる事が出来るの。まあ誰でも風や音で感じ取れる事なんだけど、それが異常レベルなの。
元々持ってた能力だと思うんだけど、小さい頃から大自然の中で生きるか死ぬかの生活をしてたから研ぎ澄まされたんだろうね」
そこで話を一区切りすると、女の子は「それがどうした」と言った顔をしている。
「それでね。カリーナさんもそうだったけど気配遮断を使うとそこだけ自然が無くなるの。人の形でポッカリとね。だから私にはすぐ判るの。あっ、気配遮断は完璧だと思うよ。この能力を使える人はそんなに居ないから」
私がそう言うと思案顔をする女の子。そして納得したのかつり目が少しだけ和らいだ。
「そうか。確か複数ある隠密系スキルを全て極めると、自然と同化出来ると聞いたことがある。そうなればお前に見破られる事も無くなるのか。話してくれて助かった。感謝する」
(そうか良かった。怖そうな雰囲気だけど案外素直で優しい女の子かも知れないね)
「それで用件はなんだ?」
(おっと、忘れてそのまま戻るとこだった)
「カリーナさんはまだ戻ってないんだよね?」
「いや、昨日の夜遅くに戻ってきている。ただ重要案件があってこちらに顔を出すことが出来ないんだ。その用件が終わればお前に会いに行くと思うがな」
(そうか。なら丁度いいや。ダジール女王陛下とカリーナさんに報告してもらおう)
「だったらダジール女王陛下とカリーナさんに報告してもらえるかな。私の正体をカルビーンお爺さん夫婦とエルフィーさん、そして冒険者ギルドのダルダンさんとメリーナさんに教えるって。状況は私が城下町に来た時からずっと見てたんだから判るよね?」
すると女の子は隣の男の子と顔を見合せ渋い顔をする。その男の子も苦笑いだ。
「はぁ、最初から気が付いてたのか。もう私の気配遮断に対する自信が粉々に砕け散ったぞ。
それで状況は理解してるから説明は不要だが、ダジール女王陛下とカリーナ隊長に報告したら驚かれるぞ。カルビーン夫婦の病気を完治し、名匠エルフィーのナイフを金貨1枚で譲り受け、ドワーフを唸らせるウイスキーという酒を聖女の力で造り、挙げ句の果てその名匠エルフィーを酒造職人に転職させた事をな。それもまだ城下町に来てたった2日だぞ?」
そう言って渋い顔から呆れ顔に変える女の子。隣の男の子も「ウンウン」と頷いている。
「ははは、私もちょっと疲れました。それじゃあ報告よろしくお願いします」
私はそう言って戻ろうとドアノブに手を掛けた。すると女の子が待てと言う。
「聞き忘れていたことがあった。さっきお前は突然消え、そして現れた。あれはいったいなんだ?なにが目的だったんだ?」
私はドアノブに手を掛けたまま振り返り、ニヤリと微笑み言ってやった。
「あれはね。商業の神エイビステイン様に呼ばれてお話ししてきたの。とっても面白かったよ。あと私も言い忘れてたことがあったよ。監視はいいけど節度を守ってね」
私はそう言って唖然とする2人を背にギルド長室へと戻った。
私の体は粒子状から元の体へと徐々に戻り、ギルド長室のソファーに座る状態で戻ってきた。手や足を動かしてみたがなんの違和感もなく動く。そんな私は長いため息をついてテーブルにあるお茶を飲んで心を落ち着けた。
「ふぅ~、ちょっと疲れたかな」
それから落ち着いた私は周りを見ると唖然として固まっている3人が居た。そして最初に動きを見せたのはエルフィーさんだった。
「か、奏‥‥今のはなんだ‥‥お前が突然消えたと思ったら霧のように小さな粒か集まり再びお前が現れた。なにかワシの知らない魔法でも使ったのか?」
そのエルフィーさんの質問に私の対面に座るダルダンさんと90度横に座るメリーナさんも興味深く私の答えを待っている。
(もうこれは隠しきれないね。この人達なら話しても大丈夫だよね?)
そう思った私は3人に「ドアの外に出ず少しだけ待ってて」と言って立ち上がる。そしてドアの外に出た私は天井に向かって小さな声で呼び掛けた。
「ねぇ、カリーナさんの部下の人、ちょっと話があるから降りてきて。今ならあの3人は出て来ないからお願い」
すると少し経ってから天井の一部が取り外され、そこから小柄の2人が全く音を立てず飛び降りてくる。さすが隠密部隊だ。
その2人は男女で背格好から顔までよく似ているので双子かも知れない。年齢は私と同じくらいだろうか、女の子は背は私より頭1つ分高く、長く赤い髪をポニーテールにしている。顔は少しつり目で目付きが鋭く目鼻は小さい。そして体は細く俊敏そうで小さな女豹を想像させた。(お?そのどこも出てないスリムな体型は親近感が湧くね。もうお友達だね!)
男の子の方は同じような体型で短めの赤い髪。顔はよく似てるが目はつり目でなく細かった。そして同じく俊敏そうなんだけど何故かチワワを想像させた。(守ってあげたくなる感じだね!)
そして私に声を掛けてきたのは鋭い目付きの女の子。とても不機嫌そうな表情だ。
「私達はまだ若いがレベルの高い気配遮断のスキルの腕を認められ隠密部隊に入った。それが何故お前のような小娘に見破られるのだ。教えろ!いったいどうやって見破ったんだ」
(うわっ、見た目通りの性格してる。これを無視して違う話をしたら面白そうなんだけど、時間が無いから種明かししてあげよう)
私は真面目な顔で答えてあげた。
「あのね、私は自然を鋭く感じる事が出来るの。まあ誰でも風や音で感じ取れる事なんだけど、それが異常レベルなの。
元々持ってた能力だと思うんだけど、小さい頃から大自然の中で生きるか死ぬかの生活をしてたから研ぎ澄まされたんだろうね」
そこで話を一区切りすると、女の子は「それがどうした」と言った顔をしている。
「それでね。カリーナさんもそうだったけど気配遮断を使うとそこだけ自然が無くなるの。人の形でポッカリとね。だから私にはすぐ判るの。あっ、気配遮断は完璧だと思うよ。この能力を使える人はそんなに居ないから」
私がそう言うと思案顔をする女の子。そして納得したのかつり目が少しだけ和らいだ。
「そうか。確か複数ある隠密系スキルを全て極めると、自然と同化出来ると聞いたことがある。そうなればお前に見破られる事も無くなるのか。話してくれて助かった。感謝する」
(そうか良かった。怖そうな雰囲気だけど案外素直で優しい女の子かも知れないね)
「それで用件はなんだ?」
(おっと、忘れてそのまま戻るとこだった)
「カリーナさんはまだ戻ってないんだよね?」
「いや、昨日の夜遅くに戻ってきている。ただ重要案件があってこちらに顔を出すことが出来ないんだ。その用件が終わればお前に会いに行くと思うがな」
(そうか。なら丁度いいや。ダジール女王陛下とカリーナさんに報告してもらおう)
「だったらダジール女王陛下とカリーナさんに報告してもらえるかな。私の正体をカルビーンお爺さん夫婦とエルフィーさん、そして冒険者ギルドのダルダンさんとメリーナさんに教えるって。状況は私が城下町に来た時からずっと見てたんだから判るよね?」
すると女の子は隣の男の子と顔を見合せ渋い顔をする。その男の子も苦笑いだ。
「はぁ、最初から気が付いてたのか。もう私の気配遮断に対する自信が粉々に砕け散ったぞ。
それで状況は理解してるから説明は不要だが、ダジール女王陛下とカリーナ隊長に報告したら驚かれるぞ。カルビーン夫婦の病気を完治し、名匠エルフィーのナイフを金貨1枚で譲り受け、ドワーフを唸らせるウイスキーという酒を聖女の力で造り、挙げ句の果てその名匠エルフィーを酒造職人に転職させた事をな。それもまだ城下町に来てたった2日だぞ?」
そう言って渋い顔から呆れ顔に変える女の子。隣の男の子も「ウンウン」と頷いている。
「ははは、私もちょっと疲れました。それじゃあ報告よろしくお願いします」
私はそう言って戻ろうとドアノブに手を掛けた。すると女の子が待てと言う。
「聞き忘れていたことがあった。さっきお前は突然消え、そして現れた。あれはいったいなんだ?なにが目的だったんだ?」
私はドアノブに手を掛けたまま振り返り、ニヤリと微笑み言ってやった。
「あれはね。商業の神エイビステイン様に呼ばれてお話ししてきたの。とっても面白かったよ。あと私も言い忘れてたことがあったよ。監視はいいけど節度を守ってね」
私はそう言って唖然とする2人を背にギルド長室へと戻った。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
召喚され、あっという間に殺されることになった魔力ゼロの聖女。チート無双もできるけど、のんびり異世界で暮らすことにした。
SHEILA
ファンタジー
自宅でお腹がいっぱいになって気持ちよく眠っていたニナ。
目が覚めると「聖女」として異世界に召喚されていた。
「お前にはこの国を豊かにし、あらゆる脅威から国を守り、魔物を駆逐し、魔の森を浄化するという重要な役目をやろう。生涯儂に仕えさせてやる。感謝するがいい。」
とガマガエル顔の国王に言われるも、ステータスを鑑定され、職業は「聖女」ではなく、一般的には役立たずの代名詞の「万能職」で、更には魔力がゼロだと分かると、禁術による異世界からの聖女召喚の証拠隠滅のため、ニナを魔獣に食わせろと国王から死刑宣告を受ける。
内包魔力がゼロでも、魔素変換で無限に魔法が使えるチートを【創造神のお詫び】として貰ったニナは、無事ガマガエル顔の王がいる国から逃げ出すことに成功する。
ニナは間違いなく「聖女」だったが、異世界の基準で与えられた「聖女」という職業だったため、この世界の鑑定では「聖女」と認識されず、難を逃れたのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
聖女追放ラノベの馬鹿王子に転生しましたが…あれ、問題ないんじゃね?
越路遼介
ファンタジー
産婦人科医、後藤茂一(54)は“気功”を生来備えていた。その気功を活用し、彼は苦痛を少なくして出産を成功させる稀代の名医であったが心不全で死去、生まれ変わってみれば、そこは前世で読んだ『聖女追放』のラノベの世界!しかも、よりによって聖女にざまぁされる馬鹿王子に!せめて聖女断罪の前に転生しろよ!と叫びたい馬鹿王子レンドル。もう聖女を追放したあとの詰んだ状態からのスタートだった。
・全8話で無事に完結しました!『小説家になろう』にも掲載しています。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
流石に異世界でもこのチートはやばくない?
裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。
異世界転移で手に入れた無限鍛冶
のチート能力で異世界を生きて行く事になった!
この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる