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獣人村たぶんスローライフ編

138話 獣人村の歓迎

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 久し振りの獣人村に心が暖かくなる夏希。

 夏希達が乗る馬車は獣人村に近付いていく。

「夏希、もうすぐ会えるのじゃな。ワレの腹を痛め付けてくれた猛者ラグに。ぶふっ!」

 スズランは既に馬車の荷台で腹を押さえて転げ回っていた。とても苦しそうに笑いながら。

「スズラン、どこかでトレント生け捕りにしてくるか?それかラグの背中にに蛾の羽を付けて来ようか?あっ!シルバーに踏んでもらう?」

「ぶふぉー!な、夏希…ワレを殺す気か!」

「ラグ? トレント? ラグは魔物?」

「ん?ああ、真冬は知らないんだな。ラグと言うのは俺の一番の親友だ。獣人のな」

 真冬が小首を傾げている姿を見て夏希は笑う。

 獣人村の門番が夏希達に気が付いたようで、門が開き1人の獣人が手を振って向かってきた。

「おっ?あの銀髪にゴッツい体はラグだな。スズラン、シルバーに足踏みさせとけ!」

「おお、来るか!どうするっ!ワレはトレントに取り込まれるラグが見たいのじゃっ!」

 夏希もスズランも悪ノリMAXだ。

「おーい!夏希ー!戻って来たか!」

 ラグは立ち止まり両手を振って飛び跳ねる。

「おおっ!スズランよく見とけ!ラグが蛾になって飛ぶぞ!舞い上がれ、ラグ蛾よ!」

「ぐふっ!シ、シルバー、お主の出番じゃ」

「ヒョホー、ヒョホー」

 シルバーも何故か喜び足踏みしていた。

 ラグが再び馬車向かって走り出し目の前まで来る。

「夏希、久し振りだな。元気だったか?」

 ラグはニコニコしながら話し掛けてくる。

「ああ、元気だぞ。ラグも元気そうだな。トレントには襲われなかったのか?」

「ぶふっ!」

「ん?トレント?なんだそれは?まあ、元気でなによりだ。ところでそこの笑い転げてる女の子はどうしたんだ?腹を押さえているが大丈夫なのか?」

 ラグは心配そうにスズランを見ていた。

「ああ、あれは発作だ。偶になるんだが心配ない」

「ま、まあ大丈夫ならいいんだ」

「紹介するよ。発作少女はスズランで、後ろで寝転んでるのが真冬だ。2人は俺の仲間だな」

 真冬は起き上がり、スズランは発作から回復し、ラグに挨拶をした。(普通に真面目な挨拶だよ)

 ラグは皆に知らせてくると言って村に戻って行き、夏希達は馬車でゆっくりと進んで行く。そして獣人村の門を通ると懐かしい風景が夏希を迎える。

(なんか感動するな。嬉しくなってくる)

 馬車はラグ家に向かって進んで行く。夏希に気付いた村人達が「戻って来たのか!」「元気だったか!」と声を掛けてくる。そしてラグ家に着いた。

「バンッ!夏希お兄ちゃん!」

 ラグ家のドアが激しく開くと小さな少女が走ってくる。そして夏希目掛けて抱き付いて来た。

「ははは、アンナちゃん、久し振りだが元気そうだな。会いたかったぞ」

 夏希は抱き付いてきたアンナの頭を撫でながら、御者台から降りてアンナを抱き抱え直した。

「アンナね、ずっと待ってんだよ。寂しかったんだよ。でもね、頑張ってお料理とかもしたんだよ。夏希お兄ちゃんに食べてもらうの。それでね、「美味しい」って言ってもらうの!あとね、あとね、」

 アンナは夏希を抱き締めたまま、顔を近付け途切れなく話し続ける。満面の笑みを見せて。

「ふふふ、やっと会えたわね。王子様に。お帰りなさい夏希さん。元気そうで良かったわ」

「サーラさん、ただいま帰りました」

(ああ、帰ってきた実感がする。安心する)

「夏希、早くワレ達を紹介するのじゃ」

 スズランと真冬は馬車を家の離れに止め、シルバーを庭に離してから夏希の横に来ていた。

「ああ、すまん。サーラさん、アンナちゃん、紹介するね。この銀髪の子がスズランで黒髪の子が真冬です。一応、俺の冒険者仲間かな」

「ワレがスズランじゃ。宜しくな。サーラさんとアンナちゃん」

「私が真冬 よろしく」

 夏希に抱き付いているアンナが2人を見ている。

「夏希お兄ちゃん、降ろして」

(ん?なんかアンナちゃんの雰囲気変わったぞ)

 アンナは夏希に降ろしてもらうとスズランに向かって歩いていく。そしてじっと見つめている。

「ガシッ!」

 アンナはスズランに抱き付いた。

「なにこの子、凄い可愛い!この着てる服も可愛いの!スズランちゃんは私の妹になるの!」

(スズランはアンナちゃんより背が少しだけ高いけど妹扱いなんだな。あとペンギンパーカーね)

 アンナに頬擦りされるスズランは苦笑いだ。

「ガシッ!」

 真冬がアンナとスズランの2人に抱き付いた。

「ペンギンとモフモフ 好き」

 スズランは諦めた様子でアンナは驚いていた。

(真冬は可愛いモノ大好きだな)

「ふふふ、3姉妹みたいね。さあ帰ってきたばかりだから疲れてるでしょ?まずはお家に入ってお茶でも飲んで落ち着きましょうね。ほら、アンナ。旦那様をお家に案内してあげなさい」

「はーい!夏希お兄ちゃん、案内するね!」

 アンナは真冬の拘束から逃れ、スズランと手を繋いで歩き始める。ラグ家と違う方向に向かって。

「あれ?アンナちゃん何処行くの?」

「ん?夏希お兄ちゃんの家だよ?」

(どういうこと?俺の家?無いよ?そんなの)

 アンナに案内されて僅か2分。ラグ家の西側に真新しい大きな家が見える。

「ここが夏希お兄ちゃんの家だよ」

 夏希はその家を眺める。

 木造2階建で大きさは豪邸と言っていいほどだ。1階は大きな両開きの引戸があり店舗のような雰囲気がある。2階はお洒落な窓枠の部屋が複数あり、真ん中の部屋には大きなベランダが付いている。

「ふふふ、この家はね。ネネさんが音頭を取って村人全員で建てたのよ。「アイツには世話になってるんだ。これぐらいでは足らんがな!」なんて言ってね。村の人達も「戻って来たら驚かせるんだ!」って、村人総出で2ヶ月掛からずに建てたのよ」

 サーラは嬉しそうに話してくれた。アンナも「私も手伝ったんだよ!」と夏希に訴えていた。

(マジか……でもこれは貰いすぎだぞ……)

「サーラさん、でもこれは貰いすぎですよ」

 サーラは夏希を見て微笑む。

「でも夏希さんは、これからもお金を取る気は無いんでしょ?代わりに野菜は渡してるけど私達はそれが苦痛なの。これは村人全員の意見よ。
 夏希さんにはこれからもお店を開いて欲しいの。だからその対価なの。あの家はね。勿論、今まで通り野菜を支払うわよ。それで足りない分は追加で倉庫や希望するものを村で手配するわ」

 夏希は思い悩む。この村にお世話になっているのは俺の方だとしか思えない夏希であった。

「夏希、あまり難しく考える必要は無いのじゃ。これは村人達のお前に対する気持ちじゃ。だから夏希は素直に感謝すればいい。そして今度はお前がその気持ちに答えて行けばいいだけの事じゃ」

 スズランの言葉に夏希の心が少し軽くなる。

「サーラさん、ありがとうございます。村の人達にもお礼を言わないといけないですね」

「ふふふ、それなら大丈夫よ。だって今日の夜は村総出で夏希さんの新築祝いの宴があるの。そこで挨拶すればいいわ。今日は夏希さんが好きなお祭りよ」

 夏希はとても大きな幸せを感じていた。

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